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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
毎日欠かせない愛犬のお手入れ。しっかり行っているつもりが、やり方によっては逆効果になることがあるようです。そんな犬のお手入れについて、特にやり方を間違えやすいものを4つピックアップ。それぞれNG行動になってしまう理由やお手入れの改善ポイントを、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生に解説していただきました。
目次
- 犬のお手入れのNG行動①強めのブラッシング
- 犬のお手入れのNG行動②耳掃除に綿棒を使う
- 犬のお手入れのNG行動③ドライヤーの温風だけで洗った犬を乾かす
- 犬のお手入れのNG行動④足を洗った後、拭かずにそのままにする
- 犬のお手入れの注意点
犬のお手入れのNG行動①強めのブラッシング
やり方を誤りやすい犬のお手入れとして、まず挙げたいのがブラッシング。ブラシの素材や力加減などによって犬の皮膚を傷つける可能性が高く、皮膚炎を引き起こしてしまうことがあるのです。ブラッシングをNG行動にしないためにはどうすればいいのか、改善ポイントを挙げてみましょう。
ちょうどいい力加減を把握する
ブラッシングの力加減を把握する方法としておすすめしたいのが、ブラッシング後に犬の毛をかき分けて、皮膚を確認してみることです。皮膚の赤みが濃くなっていたり、ひっかき傷のようなものができていたりするなら、ブラシをかける力が「強過ぎ」と言えます。皮膚がそのような状態でなく、犬がブラッシングを嫌がるような行動もなければ、力加減は「問題なし」と考えて大丈夫です。
また、折れ耳タイプの犬の耳の付け根や脇などは、摩擦が起こりやすく毛玉になりがち。そうした部位のブラッシングは、毛玉がブラシに絡まって痛みを生じやすいので、力加減を調整してあげるといいでしょう。
犬がブラッシングを嫌がっていたら見直しを
犬がブラシを見て噛もうとしたり、ブラッシング中にじっとしていないのは、ブラッシングを嫌がっているサイン。力加減が強過ぎるか、ブラシの素材に原因があるのかもしれません。力加減に問題がなければ、道具を見直してみてください。
特に、犬の毛を伸ばす道具「スリッカー」を使っている場合は、注意が必要です。スリッカーはトリマーさんがよく使う道具ではありますが、ご家庭のブラッシングで使うには犬の皮膚を傷つけやすく、力加減が難しい一面も。慣れるまでは、ラバー製の柔らかいものや毛先が丸くなったブラシを選ぶとよいでしょう。
犬のお手入れのNG行動②耳掃除に綿棒を使う
犬の耳掃除に綿棒を使うのは、おすすめできません。犬の耳は、奥に向かうほど耳道内が狭くなっています。このため、綿棒を耳に差し込むことで、鼓膜や耳道内の皮膚を傷つけて炎症を起こしてしまう可能性が高いからです。耳道の奥のほうを傷つけて起こった炎症が神経の異常まで波及してしまう「ホルネル症候群」という病気につながる恐れもあります。
耳掃除にはウエットティッシュをメインに使う
犬の耳掃除をNG行動にしないためには、主にウェットティッシュを使って耳掃除を行うことをおすすめします。もともと、犬の耳は汚れが外に出やすいようなラッパ状の形になっています。耳垢が自然と外側に押し出されてきたら、アルコールが含まれていないウェットティッシュでそっと拭き取りましょう。
犬の耳介にはデコボコがたくさんあり、ウエットティッシュだけでは上手に拭き取れない場合もあります。拭き取りにくい部分に限っては、注意しながら綿棒を使って耳垢を取り去るとよいでしょう。
イヤークリーナーを使う
耳掃除には、耳用の洗浄液(イヤークリーナー)を使いましょう。ただし、耳道内に水を入れるのはNGです。イヤークリーナーは揮発しやすい成分を含んでいるため、乾きやすく、耳道内に入れられる液体となっています。必ず専用のものを使用しましょう。
犬のお手入れのNG行動③ドライヤーの温風だけで洗った犬を乾かす
犬の体を洗った後の乾かし方にも注意が必要です。濡れた犬の体をドライヤーの温風だけで乾かそうとすると、温風ドライヤーの熱で皮膚の表面が過度に乾燥することがあるのです。その結果、皮脂分泌が活発になって皮膚炎につながるなど、皮膚のコンディションが悪化してしまいます。また、ドライヤーとの距離が近いと、低温やけどを起こすこともあります。しかし、だからといって、自然乾燥も好ましくありません。水分が十分に飛ばせずに雑菌が繁殖し、皮膚炎になることがあるからです。
タオルドライ後にドライヤー
洗った犬の乾かす基本は、タオルドライとドライヤーによる方法です。まず、タオルで水分を除去します。ゴシゴシ擦らずに、吸水性が高いタオルを使うのがおすすめです。その後、大きめのバスタオルで犬の体全体をしっかり包み、押さえるようにして水分を取っていきます。その際、犬自身の体温によっても少しずつ水分は蒸散してきます。乾きにくい四肢や指先の水分は、タオルをもう1枚用意して拭き取っていくとよいでしょう。
タオルドライである程度水分を取り除いた後に、ようやくドライヤーの出番です。ドライヤーの冷風で残った水分を飛ばしてあげると、皮膚へのダメージは少なくなります。温風を使う場合は、ドライヤーの風力を強くして犬との距離をしっかり取ってください。
温風ドライヤーは犬から離して使う
ドライヤーの温風による低温火傷は、犬とドライヤーの距離をしっかりとることで防止できます。ドライヤーを使う場合、犬の皮膚に手を当てて、どのくらいの熱さの温風が当たっているのか確認しながら行うと安心でしょう。
犬のお手入れのNG行動④足を洗った後、拭かずにそのままにする
散歩などで犬の足が汚れたら、帰宅後にしっかり洗うことはとても大事です。ただし、洗った足を拭かずに濡れたままにしておくのはNG。足に湿気が残って雑菌が繁殖し、炎症を起こしやすくなってしまいます。
足を洗った後はしっかり拭く
犬の足を洗った後は、タオルなどで指の間までしっかりと水気を拭き取りましょう。せっかく汚れを落としても、湿気が残っていると蒸れてしまい炎症に繋がりやすくなってしまいます。
足を拭く際に傷のチェックも行う
足を拭かれるのを犬が嫌がる場合は、傷などの違和感があって足を触られたくないのかもしれません。散歩時にはガラスの破片による傷や、熱くなったアスファルトを踏むことによる火傷などが、肉球間などにできることがよくあります。足を洗って拭くときに、肉球間などに傷や赤みがないか見てチェックしてみましょう。これを習慣にできると、傷や皮膚炎の早期発見が期待できます。
犬のお手入れの注意点
飼い主の都合で、お手入れそのものを行う適切なタイミングを逃したり、サボったりしてしまうと、犬の健康状態が悪化したり、病気や異常の発見が遅れたりすることがあります。NGなお手入れをしないことだけでなく、定期的に行うこともとても大事です。犬種や犬の体質によって、お手入れの頻度や方法は変わります。愛犬の体質を把握した上で、健康チェックも兼ねて定期的に適切なお手入れを行うようにしましょう。