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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
キャンプグッズやキャンプ飯などが定期的に話題になり、ホームセンターや雑貨店でも便利なアイテムをよく見かけますよね。これからの季節、愛犬と一緒にキャンプを楽しみたい!という方も多いと思いますが、犬をキャンプに連れて行く際にはどんなことに気をつければ良いのでしょうか? 今回の記事では、愛犬とキャンプをより快適に楽しむために必要な持ち物や、注意点などをふくふく動物病院 院長の平松育子先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- 犬をキャンプに連れていくメリットは?
- いつから犬をキャンプに連れていって良い?
- 犬をキャンプに連れていく前に必要な準備は?
- 犬と一緒のキャンプを楽しむためのポイントは?
- 犬とキャンプする際の注意点は?
- 犬とキャンプをする際に気をつけたいマナーは?
- 犬とキャンプする際の持ち物は?
- キャンプデビューした犬が不安で鳴き続けている時の対処法は?
- ルールを守って他の方への配慮を忘れずに、帰る際もきれいに掃除を!
犬をキャンプに連れていくメリットは?
キャンプ場で愛犬と過ごす時間は飼い主にとって楽しいものですが、実は犬にとっても次のようなメリットがあります。
飼い主と犬の信頼関係を深める
キャンプ場はいつもの散歩コースやドッグランに比べて広々としている上に自然豊かで楽しい刺激が多い場所です。一緒にキャンプに行くことで、楽しい思い出とともに飼い主との絆や信頼関係も深まります。
犬の運動不足やストレス解消
キャンプ場の中にはドッグラン付きの施設もあります。大自然の中で思う存分走ったり、遊んだりすることで運動不足やストレスを解消することができます。
いつから犬をキャンプに連れていって良い?
犬は生後すぐにでもキャンプに連れて行けるわけではありません。キャンプデビューの適齢期について知っておきましょう。
キャンプデビューは何歳からがおすすめ?
犬をキャンプに連れて行くのは、ワクチンプログラムを終えて、免疫がしっかりついた6か月齢頃からが理想でしょう。最新のワクチンプログラムでは、初年度のワクチンを2~4か月の間に合計3回接種し、最終の3回目のワクチンを16週齢以降に行うというのが一般的です。
犬の社会化期である生後3〜12週間には色々な経験をさせてあげたいものですが、ワクチンプログラムがぎりぎり終了していないため、キャンプに連れて行くのは難しいかもしれません。子犬のころは免疫が弱く、感染症から自分自身を守ることが難しい状態です。しっかり免疫力をつけた状態で外出させましょう。
まずはデイキャンプからがおすすめ
慣れないキャンプ場は楽しい反面、ストレスもかかります。食欲不振、嘔吐、下痢、発熱などの可能性もありますので、最初はデイキャンプで様子を見るのがおすすめです。キャンプ以降も体調不良が見られないなら、1泊2日にチャレンジして少しずつ滞在期間を延ばしていくと良いでしょう。
犬をキャンプに連れていく前に必要な準備は?
犬をキャンプに連れて行く時は、事前にしっかりと準備を整えることが大切です。必要な準備について見ていきましょう。
ワクチン接種
キャンプ場は山や川に近いので、レプトスピラの入っている混合ワクチンの接種を受けておくのが理想です。レプトスピラは野生動物の尿に混じって排泄され、山や川などの土壌に生息する細菌です。キャンプ場はより野生動物に近い場所にあり、不特定多数の犬が出入りする場所のためレプトスピラの予防をしておきましょう。
ノミ・ダニ予防
特にダニは草むらに潜んでいることが多く、バベシアやSFTSなどの命にかかわる病気を媒介します。SFTSはヒトにも感染するため注意しなければなりません。定期的なノミ・ダニ予防を行いましょう。
フィラリア予防
キャンプ場は虫が多く、フィラリアを媒介する蚊には注意が必要です。フィラリア予防薬を定期的に使うことで、たとえ蚊に刺されてしまっても命にかかわるフィラリア症から愛犬を守ることができます。
マスターしておくべきしつけ
慣れない場所で他の人や犬に吠えてしまうこともあるため、声をかけることで静止させるしつけはマナー上必要でしょう。また、排泄のしつけを済ませておくことも重要です。
毛が地面につくくらい長い子はトリミングしておく
被毛が長いと土がついたり、草がついたりする可能性があります。病気を引き起こしてしまう微生物や寄生虫がつきやすくなり衛生上良くないため、長すぎる被毛はカットしておきましょう。
抜け毛が飛ばないようにブラッシングしておく
特に換毛期は犬の抜け毛が気になります。身体を掻いた時や震わせた時に、抜け毛が周囲へ飛び散ることも。風に乗って飛んでしまうと周辺でキャンプをしている人や、後日キャンプに来た人に迷惑がかかります。日頃からしっかりブラッシングを行いお手入れしておきましょう。
犬と一緒のキャンプを楽しむためのポイントは?
愛犬と一緒に行くキャンプでは犬も飼い主も目いっぱい楽しみたいですよね。そのために押さえておくべきポイントを見ていきましょう。
キャンプ場の雰囲気に慣れてきたらケージから出す
初めてのキャンプ場は、風景も臭いも普段と異なります。さらに、他の人や犬の姿が見えると、興奮してしまったり怖がって萎縮したりしてしまうかもしれません。そのような状況で犬をケージから出すとどこかに逃走してしまう恐れがあるため、キャンプ場の雰囲気に慣らしてからケージから出すようにしましょう。
キャンプ時の犬の定位置を作っておく(ドッグコット、ソフトケージ、チェア、など)
自宅の中でもそうですが、何かあった時に戻ったり安心して休んだりすることができる場所をキャンプ地でも作っておくことが大切です。そうした場所として、ドッグコットやソフトケージ、犬用のチェアなどを活用すると良いでしょう。家庭内で使っていて愛犬が慣れているものの方が安心できるかもしれません。
フードやペットシーツなどの消耗品は予定の泊数より多めに持っていく
キャンプ地では何が起こるかわかりません。フードやペットシーツなどは、万が一不足しても購入する場所が見つからない可能性の方が高いといえます。念のために消耗品は予定より多めに持っていきましょう。
夏はテントよりも冷房付きのコテージがおすすめ
夏は台風の発生や急な大雨など、天気が急変する恐れがあります。また、夏用テントは通気性を良くしたり、蒸れないように生地に工夫が施されていたりするものが多いですが、やはり天候によっては暑いです。急に雨が降ってきてテントに雨が打ち付けられると、その音で犬が怖がりパニックになることもあります。そのため、夏はテントより冷房付きコテージの方がおすすめです。
犬とキャンプする際の注意点は?
キャンプ場でのトラブルを防ぐためにも、犬をキャンプに連れて行く際は次の点に注意しましょう。
暑さ、寒さ対策をする(熱中症、低体温症に注意)
キャンプ中は室内のようにエアコンで環境の温度調整をすることができません。暑さ、寒さ対策を考えておくことが大切です。特に熱中症には注意が必要です。日陰の確保や、水分補給が十分できるように準備しましょう。寒さ対策としては、ブランケットやしっかり保温ができる服を準備してください。また、キャンプ場の近くにある動物病院の連絡先や場所、休診日と診察時間も確認し、いざという時にすぐ連れて行けるようにしておくと安心です。
ノミ、ダニなど虫対策をする
ノミ・ダニ対策として、定期的に予防薬を投与しておきましょう。ノミ・ダニが嫌がる臭いのスプレーを活用するのもおすすめです。ただ、スプレーだけでは不十分です。特にダニは草むらに潜んでいることが多いので、できるだけ入らせないようにしてください。
ハチやヘビといった毒を持つ生き物に注意
キャンプ場は自然豊かであるため、ハチやヘビなどの毒をもつ生き物がいます。ヘビは草むら、岩陰などに潜んでいることが多いので要注意です。噛まれると痛みが生じ、動くことで毒が体内に回ってしまうことがありますので、できるだけ動かさずに動物病院に連れていきましょう。ハチは様々な種類がいますが、ミツバチの場合は刺された時に毒針器官が犬の体内に残ることがあり危険です。場合によってはアナフィラキシーショックを起こしてしまいますので、すぐ動物病院に連れていきましょう。
たき火に近づき過ぎないようにする
たき火の火自体も危ないですが、飛んだ火の粉がかかることで被毛に火が燃え移ったり、火傷したりしてしまいます。地面に落ちた火の粉を知らないうちに踏んでしまうこともあるので、たき火には近づき過ぎないようにしましょう。
誤飲、誤食に注意
キャンプではいつもと違う環境で人も不注意になりがちです。バーベキューの際、トウモロコシの芯や竹串、骨付き肉の骨などを犬が間違って食べてしまい、後から体調が悪くなるケースも見受けられます。飲み残しのジュースやアルコール類を知らないうちに犬が飲んでしまう恐れもあります。ジュースの場合、下痢などが起こることがあるものの大事に至ることは少ないですが、アルコールの場合だと犬はアルコール分解酵素を持っていないため、急性アルコール中毒を引き起して死に至る危険性が高くなります。誤飲・誤食を防ぐため、犬が自由に行動しないように注意を払ってください。
寝不足で体調不良を起こさないよう見守る
日常から離れ、楽しい雰囲気に包まれると人も寝る時間が遅くなってしまいがちです。それに合わせて犬も起きていたり、落ち着かなくて眠りが浅くなったりすることも考えられます。睡眠不足は体調不良や食欲不振の原因になってしまいます。落ち着いて眠ることができるように灯を少し落としたり、小さめの声で話したりするようにしましょう。
犬とキャンプをする際に気をつけたいマナーは?
犬をキャンプに連れて行く時は、犬の行動が周囲の人や他の犬の迷惑にならないよう飼い主がしっかりとマナーを心得ておくことが大切です。次に、守るべきマナーについて見ていきましょう。
トイレのマナーを守る
犬があちこちに排泄してしまうと、誰かが気づかずに踏んでしまうかもしれません。他の犬が臭いを気にして臭いをかいだり、軽くなめてしまったりする可能性もあります。排泄物は感染症を引き起す原因にもなりますので持ち帰るようにしましょう。
吠え声に注意
キャンプ場は犬にとって知らない場所であることに加え、見知らぬ犬や人に対して警戒して吠えてしまうこともあります。軽く吠えるのはお互い様ですが、吠え続ける、誰かが通るたびに吠えたてるのは迷惑行為になりかねません。お互いに楽しいキャンプの時間を過ごすためにも、吠え声のマナーに注意しましょう。
脱走防止のため、基本的にリードを付ける
慣れないキャンプ場では恐怖心から逃げ出したくなる犬もいるでしょう。脱走されると発見できなくなることもあります。首輪やハーネスが抜けないかどうかを確認した上で、必ずリードを付けてください。
抜け毛が多い子には洋服を着せる
日頃からお手入れをしていても、抜け毛は多少出てしまいます。抜け毛のことが気になってせっかくのキャンプを楽しめないのは残念です。袖の長いものや身体を包み込むタイプの洋服が販売されていますので、着せてあげて抜け毛対策をするのも良いでしょう。
犬とキャンプする際の持ち物は?
犬とキャンプをする際には、どのような持ち物を準備すれば良いのでしょうか。キャンプ場に着いてから不足に気づくことのないよう、以下を参考に事前にしっかりと準備しておきましょう。
いつも食べているフード、おやつ、食器
キャンプ場で犬は、移動や慣れない環境によってストレスがかかりやすい状態にいます。そこで、急にいつもと違うものを食べると、普段以上に胃腸に負担がかかってしまいます。フードやおやつは愛犬が食べ慣れているものを持参しましょう。食器も同様で、キャンプだからといって特別なものにする必要はありません。
ベッド、犬用寝袋
ベッドは自分のにおいがすると安心できるため、普段から愛犬が使用しているものを持っていきましょう。性格にもよりますが、慣れない環境で初めて見るものは警戒して使ってくれない可能性が高いです。犬用の寝袋は自宅で一度使って慣らしてあげると良いでしょう。
毛布やカイロ
急に天候が変わり寒くなったり、山間部では夏といえども夜間の冷え込みが強くなったりします。どのような状況になっても対応できるように毛布やカイロを持参しましょう。
アウトドア用のウエア(防蚊加工のウェアなど)
キャンプの時には防虫対策をしっかりとりたいものです。防蚊加工されたウェアが販売されているので、フィラリア予防のためにも、飼い主・愛犬で一緒に着用すると安心です。
首輪、リード、ハーネス
首輪、リード、ハーネスは出かける前に必ず点検しましょう。バックルの止まり具合や、ほつれ、破れがないかどうかを確認して必要であれば新しいものに交換しましょう。念のため、予備を一揃え持参すると安心です。
クレート、アウトドアサークル
クレートは使い慣れたものを持参しましょう。周りを気にせず眠ることができる場所や、何かあった場合に隠れる場所として必要です。サークルを持っていくと、その中で自由に過ごすことができるほか、飼い主の手が離せない時に一時的に入ってもらえるので便利です。使う際は、倒れないようにしっかりと設営してください。
タオル、ウエットティッシュ
何かと必要なのが、タオルやウエットティッシュです。汚れを拭き取ったり、濡れた場所を拭いたりと様々な場面で活躍します。多めに持参しましょう。
ペットシーツ、うんち袋、消臭剤
排泄物の処理にペットシーツやうんち袋は必須です。ストレスから軟便や下痢、嘔吐をしてしまう恐れもありますので多めに持参しましょう。便がきれいに拭き取れない時は、消毒薬をスプレーしてペットシーツで拭き取る配慮も必要ですので、消毒薬や消臭スプレーも忘れないようにしましょう。
常備薬
キャンプ時に何が起こってもできるだけの対処ができるように、常備薬や傷の消毒薬などは持参しましょう。常日頃から投薬している愛犬の場合は薬を忘れないようにし、予備として予定の日数以上持っていってください。特に持病がない場合も、下痢止めや吐き気止めなどを持参しておくと良いでしょう。万が一投薬しないといけない状態になった場合は、かかりつけの動物病院に連絡し指示を仰ぐと安心です。
迷子札
迷子札を首輪などに付けておくと、キャンプ場で万が一行方が分からなくなった時に発見の手がかりになります。犬は見知らぬ場所で飼い主を探しながら走り回ることで、さらに迷子になってしまいます。そうした状況で迷子札が濡れることもあるので、文字が読み取れるように油性ペンなどで書くようにしましょう。カプセル型で中に情報を書いた紙を入れることができるもの、彫刻タイプなど種類も豊富です。首輪に印字や刺繡ができるものもあるので利用してみても良いでしょう。
狂犬病予防注射済票、混合ワクチン接種証明書
キャンプ場のほとんどが、混合ワクチンと狂犬病の接種を利用条件にしています。証明書を忘れずに持っていきましょう。ノミ・ダニ、フィラリア予防を義務付けることもあるため、キャンプに行く前によく確認し、必要であれば動物病院で証明書を発行してもらいましょう。
キャンプデビューした犬が不安で鳴き続けている時の対処法は?
初めて行くキャンプ場という慣れない環境の中で、犬が不安になるのは当然です。しばらく一緒に歩いたり、声をかけたり、できそうであれば一緒に遊んだりして、犬がリラックスできるようにしてあげましょう。どうしても落ち着かない場合は、車の中で一緒に過ごしクールダウンさせるのも良いでしょう。
ルールを守って他の方への配慮を忘れずに、帰る際もきれいに掃除を!
キャンプは終わったあとの後始末も大切です。6章で紹介した気をつけたいマナーをはじめ、帰る際には抜け毛、粗相の後などがないかチェックし、後から利用する方が不愉快な思いをしないように配慮しましょう。