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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
飼い主に従順で献身的なオーストラリアン・シェパードですが、飼い始めるにあたっては、どんな性格なのか、飼う上で気をつけることは何かなど、気になることは多いはずです。そこで今回は、獣医師の茂木千恵先生に教えていただいた、オーストラリアン・シェパードの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- オーストラリアン・シェパードの歴史やルーツ、英語名は?
- オーストラリアン・シェパードのオスとメスの体高や体重は?
- オーストラリアン・シェパードの平均寿命は?
- オーストラリアン・シェパードの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- オーストラリアン・シェパードはどんな性格、習性?
- オーストラリアン・シェパードを迎える際にかかる費用は?
- オーストラリアン・シェパードのしつけと社会化トレーニングのポイント
- オーストラリアン・シェパードに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- オーストラリアン・シェパードを飼うのに向いている人は?
- オーストラリアン・シェパードがかかりやすい病気と予防法は?
- オーストラリアン・シェパードの日常のお手入れ方法
- オーストラリアン・シェパードとの生活で注意すべきことは?
オーストラリアン・シェパードの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 |
オーストラリアン・シェパード |
英語名 |
Australian Shepherd |
原産国 |
アメリカ合衆国 |
分類 |
中型犬 |
グループ |
1G:牧羊犬・牧畜犬 |
オーストラリアン・シェパード【英語名:Australian Shepherd】は、オーストラリアの名がついていますが、スペインとフランスの国境にまたがるピレネー山脈のバスク地方の牧羊犬が祖先といわれています。バスク地方の羊飼いがオーストラリアからアメリカに渡り、改良を重ねて誕生したのがオーストラリアン・シェパードです。
ジャパンケネルクラブの犬種分類では、家畜を集め、群れを誘導して保護する「1G:牧羊犬・牧畜犬」に属します。
オーストラリアン・シェパードのオスとメスの体高や体重は?
体高:オス51~58cm、メス46~53cm
体重:オス、メス共に16~32kg
オーストラリアン・シェパードは中型犬に分類されます。筋肉質でバランスの取れた体型です。
オーストラリアン・シェパードの平均寿命は?
オーストラリアン・シェパードの平均寿命は13~15歳といわれています。『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、中型犬の平均寿命は13.4歳となっています。平均からやや長生きすると考えておきましょう。
犬を迎える際は、最期の時までしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
オーストラリアン・シェパードの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
オーストラリアン・シェパードの毛色は、ブルーマール、レッドマール(マールとは、薄い色の上に濃い色が不規則にまだら状になっているものを指す。大理石の表面に似ている)、ブラック、レッド。白斑のあるものや、タン(黄褐色)ポイントのあるものもいて、多種多様です。直毛かウェーブがかったオーバーコートと、アンダーコートからなるダブルコートです。
外貌は筋肉質で脚が長く、バランスがとれた体型をしており、耳は垂れています。しっぽは生まれつき短いか、断尾をしていることが多いようですが、動物愛護の観点から断尾が禁止されている国もあり、断尾せず長い尾や自然な短い尾のオーストラリアン・シェパードもいます。
オーストラリアン・シェパードはどんな性格、習性?
オーストラリアン・シェパードは愛情深く献身的で、飼い主に忠実な性格をしています。
羊飼いのパートナーとして羊を管理、誘導する賢さと、広大な牧羊地を走り回る疲れ知らずでタフな一面があり、スタミナがあります。牧羊犬のため、自分より小さな動物には軽く噛んでコントロールしようとする習性があります。
オーストラリアン・シェパードを迎える際にかかる費用は?
オーストラリアン・シェパードを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約30万円~ |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000~10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000~10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
オーストラリアン・シェパードをペットショップから迎える際の価格は、約30万円からが目安です。月齢や血統などにより、値段が上がることもあります。他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
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飼い続けるために必要な費用
犬を養育する上での生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。
なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
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オーストラリアン・シェパードを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。オーストラリアン・シェパードは多くの運動を必要とするため、ボール遊びなどをさせて思い切り走り回れるようにするのがおすすめです。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどですが、オーストラリアン・シェパードは体が大きいので食事量は多く、トイレシーツも大型タイプを選ぶ必要があるので平均よりかかると見込みましょう。
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2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主の元へ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、オーストラリアン・シェパードを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策を取るのもおすすめです。
オーストラリアン・シェパードのしつけと社会化トレーニングのポイント
オーストラリアン・シェパードは賢く、飼い主の期待に応えることが好きな、トレーニングを覚えやすい犬種です。わが家にお迎えした日からしつけを始めましょう。子犬の頃から、家族以外の人や他の動物、車や電車の音などに慣れさせること(社会化)も必要です。小さいうちに外界の刺激に慣れておくと、必要以上に警戒することがなくなります。
また、オーストラリアン・シェパードは寂しがり屋で分離不安になりやすい面があります。自宅だけでは「飼い主と離れることに慣れる」「犬同士のコミュニケーションに慣れる」などのトレーニングは難しいため、犬の幼稚園のような施設を利用することをおすすめします。
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オーストラリアン・シェパードに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:1時間を1日2回
✓運動量:多い
✓おすすめの遊び:ドッグラン、ボール遊び、フライングディスク
オーストラリアン・シェパードは活発で遊ぶことが大好きです。毎日のお散歩はもちろん、ボールやフライングディスクなどで十分に運動させ、ストレスをためないようにしましょう。従順で賢く、飼い主の要求に応えることが得意なため、ドッグダンスやアジリティー(障害物競技)などトレーニング性のある遊びもおすすめです。なお、牧羊犬をルーツに持つため、走る人や自転車を追いかけたり、噛みついたりすることがあるので注意が必要です。
オーストラリアン・シェパードを飼うのに向いている人は?
✓子どものいる家庭でも大丈夫
オーストラリアン・シェパードは子どもが好きな犬として知られているため、小さなお子さまがいるご家庭でも犬がストレスを感じにくいでしょう。また、子犬期からしっかりとトレーニングをすれば、優れた家庭犬になります。とはいえ、牧羊犬のルーツを持つため急な動作は噛みついてしまうこともあるため注意しましょう。
✓十分な運動をさせてあげられる環境
オーストラリアン・シェパードは活動的で瞬発力が高く、体も大きめです。散歩では速く歩くなどして運動量を確保したいため、体力に自信がある人に向いているでしょう。長い散歩やハイキングに連れていくなど、アウトドアでアクティビティーを一緒に楽しめる時間が必要です。
オーストラリアン・シェパードがかかりやすい病気と予防法は?
オーストラリアン・シェパードがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓進行性網膜萎縮症
遺伝性の疾患で、目の奥にある網膜の視細胞が変性、萎縮を起こし、視力が落ちて最終的には失明してしまいます。また、コリー系やシェットランド・シープドッグに多く見られる遺伝性の眼疾患「コリーアイ症候群」も見られます。眼底を包む脈絡膜に欠損や薄い部分が発生する病気です。多くは無症状ですが、重症化すると視力障害が起こり、物にぶつかったり鼻で探りながら歩いたりするようになります。眼底出血や網膜剥離を起こすと失明の可能性があります。
✓股関節形成不全
大型犬にリスクの多い病気です。成長過程で、股関節に異常が出て痛みや歩行障害が起こります。急激な肥満などが誘発することがあるので、体重管理を心がけましょう。
✓外耳炎
湿気が耳道にこもりやすい垂れ耳の犬種に多い病気です。原因はアレルギーや細菌性の炎症など。強いかゆみを引き起こし、頭を激しく振ったり、耳を足で激しく掻きむしったりしますが、点耳薬などで治療できます。定期的な耳掃除で予防しましょう。
そのほか、脳内の神経の異常でけいれんを起こす「てんかん」や、目の水晶体の一部や全体が白く混濁する「白内障」、遺伝性の先天性疾患であり視力の低下や失明の危険がある「コリーアイ」などにも気を付けましょう。
オーストラリアン・シェパードの日常のお手入れ方法
✓ブラッシング:1週間に2、3回
✓シャンプー:1カ月に1、2回程度
✓トリミング:1カ月に1回程度
オーストラリアン・シェパードは上下の二重構造であるダブルコートで長毛なため、週に2、3回程度のブラッシングが必要です。活動的ですから、散歩の後にも毛が絡まないようにブラッシングをしてあげましょう。
春と秋は換毛期で、春は冬毛から夏毛に、秋は夏毛から冬毛に生え変わるため大量に毛が抜けます。この時期は、こまめなブラッシングを心がけましょう。
ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯みがきは毎日~2日に1回、耳掃除や肛門腺絞り、爪切りは2週~1カ月に1回の頻度で行います。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床で滑りやすくなるためカットしてください。
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オーストラリアン・シェパードとの生活で注意すべきことは?
オーストラリアン・シェパードと生活する上で注意すべきポイントを紹介します。
✓湿気の多い季節は、耳のお手入れをいつもより念入りに!
垂れ耳の犬種は、梅雨時期から夏にかけて耳や皮膚のトラブルが増えます。耳の色やにおい、耳垢の様子をこまめにチェックしましょう。ただし、過度な耳掃除は耳を傷つける恐れがあります。かかりつけの動物病院でケアしてもらうと安心です。
✓暑さに注意!
毛量が豊富なため、夏の暑さで熱中症のリスクが高くなります。暑い日に呼吸が速くなり舌を出してよだれを垂らしたりしていたら、すぐに体温が下がるような環境に移動しましょう。
✓定期的にブラッシングをしよう!
オーストラリアン・シェパードのようなダブルコートの犬は毛が密生しているため、むだ毛が絡まったり、毛玉になったりすることを防ぐためにも定期的なブラッシングを心がけましょう。その他、月に1、2回の頻度でシャンプーすることもおすすめです。肌のバリア機能が低下する原因にもなるため、洗いすぎは禁物です。