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海動物病院所属。潜水士免許保有。動物検疫所、製薬会社での勤務を経て、海動物病院に所属。自宅で猫、実家で犬を飼っており、最近は自宅でも犬をお迎えしようか検討中。
犬は暑さに強くない動物のため、夏は特に注意が必要な季節。飼い主の無意識の行為が犬に苦痛を与えていたり、悲惨な事故につながったりすることもあるんです。今回は、海動物病院の鈴木佐弥香先生に教えていただいた、夏に絶対にしてはいけない犬へのNG行為や注意点、暑さに弱い犬種について解説していきます。
目次
- 夏は犬にとって危険な季節!
- 夏に絶対してはいけない犬へのNG行為9選
- NG行為1. 日中に散歩に行く
- NG行為2. 暑いからと散歩に行かない
- NG行為3. 長時間の散歩をする
- NG行為4. 車の中に放置する
- NG行為5. 部屋をエアコンで冷やしすぎる
- NG行為6. 極端なサマーカットにする
- NG行為7. 長時間水遊びをさせる
- NG行為8. 飲み水が無くなっているのに気づかない
- NG行為9. フィラリア症やノミ、マダニの対策をしない
- 暑さに弱い犬種は?
夏は犬にとって危険な季節!
夏の厳しい暑さは人間にとっても過酷ですが、犬にとっても過酷です。体高が低く地面に顔が近くなる上、全身を毛に覆われている犬は、より一層暑さを感じやすい動物です。他の季節と比べても、夏は犬にとってさまざまなリスクが考えられる季節です。そのため、飼い主が十分に気をつけなければいけません。
例えば、夏場の昼の散歩では、アスファルトに触れる肉球の火傷や熱中症の危険があります。暑さによる体調不良や夏バテの恐れだけでなく、エアコンで部屋を冷やしすぎることで風邪を引いてしまうケースも。食べ物も腐りやすいので、適切に管理をしないと食中毒の危険も考えられます。また、屋外では草むらなどに潜むノミやマダニが原因となる感染症にも注意が必要です。
夏に絶対してはいけない犬へのNG行為9選
数々のリスクが潜む夏場に、飼い主が犬にしてはいけない“NG行為”にはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれの行為が犬にとって危険である理由と、その対処法をあわせて見ていきましょう。
NG行為1. 日中に散歩に行く
アスファルトやマンホール、側溝の蓋などは、太陽の熱を溜めこみやすいため、夏場では60℃を超えることも。人間のように靴で足が保護されていない犬は、その上を直接歩くことで、肉球に火傷を負ってしまうことがあります。
<対処法>
昼間の散歩は避け、比較的暑さが和らいでいる早朝や夕方以降に行くようにしましょう。その場合も、飼い主が道路を手の甲で触って熱くないか確認してあげると安心です。靴下を履かせてあげることも対策のひとつですが、たとえ肉球を守っても、お座りや伏せなどをしてしまうと肉球以外の皮膚を火傷してしまうこともあるので注意しましょう。
NG行為2. 暑いからと散歩に行かない
いくら暑いからといって散歩に全く行かないと、筋肉が衰え、体力の低下や老化の進行を招きます。また、散歩に行けないことは犬にとってストレスです。ストレスがたまると免疫力も低下します。さらに、散歩に行って外の空気を吸ったり、ほかの犬と出会ったり、匂いを嗅いだりするといった刺激がなくなると、長期的にみると認知症のリスクにもつながることもあります。
<対処法>
早朝や夕方以降の時間帯に散歩に連れていってあげましょう。暗くなってから散歩に行く場合、体高が低い犬は特に、自転車や車などから気づかれにくいことがあります。発光するタイプや反射テープのついている首輪やリード、洋服などを装着し、安全対策をとることも忘れないようにしましょう。
NG行為3. 長時間の散歩をする
地面の温度がそれほど高くない早朝や夕方以降の時間帯であっても、夏の蒸し暑さには注意が必要です。犬は基本的に肉球からしか汗が出ないので、人間のように汗をかいて体温調節をすることが苦手。長時間の散歩によって、熱中症や脱水を引き起こしてしまうことがあります。
<対処法>
夏の蒸し暑い時期は、長時間の散歩は避け、こまめに水分補給をしてあげるようにしましょう。
NG行為4. 車の中に放置する
短時間で用事を済ませるつもりでも、犬を車の中に放置することは大変危険です。炎天下の車内の温度は、エアコンを停止していると50℃以上まで上がることもあり、わずか15分で熱中症指数が危険レベルに達することが分かっています。
<対処法>
夏は絶対に、犬を車の中に放置するような状況をつくらないことが大切です。犬にとっての適温は18〜22℃といわれています。エアコンをつけた状態で車の中で待っていたとしても、車内の温度が25℃を超えてしまうこともあるので犬を車に乗せる時間はできるだけ短くしましょう。
NG行為5. 部屋をエアコンで冷やしすぎる
部屋をエアコンで冷やしすぎると、クーラー病になってしまうことがあります。クーラー病とは、夏の暑い外気温と冷えた室温との差によって自律神経が乱れたり、冷えすぎた床や壁に触れ続けたりすることで体調を崩してしまうことです。食欲や元気がない、咳やくしゃみ、鼻水が出る、下痢や嘔吐を繰り返す、といった症状が見られる場合には要注意。冷たい空気は下にたまるため、体高の低い犬は特に気をつけなくてはいけません。
<対処法>
エアコンの設定温度を低くしすぎない、エアコンの風が直接当たるような場所は避ける、窓を開けて外の風を取り入れる、扇風機を使う、犬が休憩する場所にはマットを敷いてあげるといった工夫をしてあげましょう。
NG行為6. 極端なサマーカットにする
いくら犬を涼しくさせようとしても、極端なサマーカットにはデメリットがあります。犬の被毛には、ノミやダニ、蚊といった虫や物理的刺激、紫外線から皮膚を守ったり、被毛の空気の層で体温調節をしたりする役割があります。そのため、極端なサマーカットにしてしまうと、感染症をもたらす虫に刺されて皮膚炎を患うリスクがあります。ほかにも、シミができやすくなる、体が冷えすぎる、怪我をしやすくなるといった問題も挙げられます。
<対処法>
基本的に、犬の肌が露出しない程度の長さでカットにします。肌が露出するようなカットは一部だけにすることで、リスクを避けられます。
NG行為7. 長時間水遊びをさせる
あまり長い時間水遊びをさせると、暑さによる熱中症や、水温が低く低体温症になってしまう恐れがあります。また、水を大量に飲みこんでしまうことによる水中毒にも注意が必要です。
<対処法>
水遊びさせるときは、15分を目安に適宜休憩をとってあげましょう。休憩の際には体の水分をよく拭き、水分補給させることも忘れずに。また、ボールなどのおもちゃをくわえたまま泳ぐと水が口から入りやすく、水中毒の危険が高まるので気をつけましょう。
NG行為8. 飲み水が無くなっているのに気づかない
犬は人間のように汗をかいて体温調節することが上手ではありません。主に、舌を出してハッハッと浅く速く呼吸をするパンティングによって体温を下げていますが、水を飲むことも体温を下げるのに有効です。そのため、飲み水が無くなっていることに気づかず、犬が水分不足に陥ると、夏場は特に脱水症や熱中症になってしまう危険があります。
<対処法>
夏の暑い時期には、飲み水が足りているか意識的に確認するようにしましょう。また、犬に留守番させて出かけるときには、あらかじめ水を多めに用意したり、自動給水器を利用したりして、飲み水が足りなくなることがないようにしましょう。
NG行為9. フィラリア症やノミ、マダニの対策をしない
夏場は、蚊が媒介するフィラリア症や、草むらなどに潜むノミやマダニに噛まれて起こる感染症にも注意が必要です。犬の心臓や肺動脈に寄生虫が寄生するフィラリア症は、症状が出る頃には重度の感染状態に陥っている場合も。外科手術が必要になることもあり、最悪、命を落としてしまうケースも見られます。
また、ノミにはアレルギー症状や貧血、瓜実条虫による感染症、マダニにもアレルギー症状のほか、バベシア症、ライム病、SFTS(重症熱性血小板減少症)などの感染症を引き起こすリスクがあり、重症化すると死に至ることもあります。
<対処法>
フィラリア症やノミ・マダニには月に1度の予防薬があります(フィラリア症は年に1度、注射での対策方法もあります)。かかりつけの動物病院で相談し、しっかりと対策をとった上で散歩に連れて行くようにしましょう。
暑さに弱い犬種は?
暑さに対する耐性は犬種によっても違いがあり、暑さに弱い犬種は特に夏場の対策が重要になります。暑さに弱いのは、どのような犬種でしょうか。
短頭種
フレンチ・ブルドッグやパグなどの短頭種は、鼻が短く口腔の面積が他の犬種と比べて狭いため、パンティングによる体温調節が苦手です。体の熱をうまく逃がせず、熱中症などを引き起こしやすくなります。
短足
ダックスフンドやコーギーなどの足の短い犬種は、顔が地面に近いため、地面からの放射熱の影響を受けやすいため、熱中症などのリスクが高まります。
ダブルコートの長毛種
ダブルコートといって、オーバーコートとアンダーコートの二重構造でできた被毛は、被毛間に熱をためこみやすいため、寒さに強い一方、暑さに対しては脆弱です。それに加えて長毛の場合は、なおさら熱を逃しにくくなります。
寒冷地出身の犬
ハスキーやセントバーナードなどの寒冷地出身の犬は、もともと寒い環境で生活していたため、被毛がダブルコートで、その特徴や生い立ちゆえに暑さには弱い犬種が多いといえます。
子犬やシニア犬
子犬は体温調節が未熟、シニア犬は体力が衰えているため、暑さによる影響を受けやすく注意が必要です。
肥満気味
脂肪は熱を伝えにくいため、肥満気味の犬は熱を体内にためこみやすく、夏の暑さは苦手な犬が多いでしょう。
持病がある
心臓病や呼吸器系に疾患がある犬はパンティングによる体温調節がうまくできないことがあるため、暑さに弱いことも考えられます。
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