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2020年4月から、明治神宮の森と一体となり都心の貴重な森となっている代々木公園の公園長に着任。国内外のお客様をおもてなしする場として重要な役割を果たしている。
代々木公園と聞けば、広大な自然を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。公園内には、広さ3620平方メートルにも及ぶ都内最大級のドッグランがあります。
利用者は都内近隣の方ばかりかと思いきや、なんと大阪やその他の地域から登録に来た方もいらっしゃるとのこと。ワンちゃん連れで東京へ遊びに来る方々にとっても、活用しやすい魅力的な施設のようです。
今回は、そんな代々木公園の園長を務める小林さんに取材を実施。より心地よく公園やドッグランを活用するための秘訣などをお伺いしました。
目次
- 平日でも100頭以上が遊ぶ。都内最大級のドッグランを擁する代々木公園
- ドッグランの運営はボランティア団体もサポート
- お散歩の利用者も多い代々木公園。マナーを守ることが愛犬の安全も守る
- 公園の中でワンちゃん連れ同士のコミュニティーが生まれている?
- 犬を飼っている人も、飼っていない人も。交流を通して相互理解を深めることが大切
平日でも100頭以上が遊ぶ。都内最大級のドッグランを擁する代々木公園
——代々木公園のドッグランは都内最大級と伺いました。実際、どれくらいのワンちゃんが利用しているのでしょう?
小林園長(以下、小林):年間を通して9千〜1万頭くらいの登録があります。実際の利用状況は毎日お昼頃にドッグランに行ってカウントしているのですが、平日でも100頭くらいいるんですよ。
——そんなにたくさん……!
小林:でも、走り回るワンちゃんを数えるのは難しいので(笑)、「1人の飼い主さんに1頭」というルールを踏まえて、ドッグラン内にいる人間の人数を数えて把握しています。
——ドッグランは誰でも利用できるんですか?
小林:ドッグランの利用には、事前登録が必要です。その年度の狂犬病予防注射済票の現物をサービスセンターにお持ちいただけると、ドッグランの利用登録ができます。利用者みなさんとそのワンちゃんの安全を守るため、ルールもドッグラン利用者のみなさまにはお知らせしています。
——なるほど。ちなみに、ドッグラン内はどのようなエリア分けになっているのですか?
小林:体重別でエリアを分けていて、10kg以上の「中・大型犬用エリア」、12kgまでの「小・中型犬用エリア」、5kgまでの「超小型犬専用エリア」に分かれています。微妙な境目のキロ数の場合ですと、そのときどきに遊んでいるワンちゃんの様子を見て、飼い主さんのご判断で選んでいただくのが良さそうですね。あまりに大きさが違うのは危ないですが、ワンちゃんのキャラクターもありますから。
——代々木公園のドッグランを利用するワンちゃんは、どのサイズが多いのでしょう?
小林:大型犬、中型犬ですね。たとえば先週の日曜日では、お昼の1時間で166頭のワンちゃんがいたのですが、そのうち163頭が大型犬・中型犬でした。
——なんと。やっぱり大型犬や中型犬は運動量が多いので、ドッグランで遊ばせる機会が多くなるのかもしれないですね。
小林:たしかに、そうかもしれませんね。
ドッグランの運営はボランティア団体もサポート
——次に、ドッグランの運営体制について教えてください。
小林:運営は代々木公園がおこなっており、一部を「ドッグランサポーターズクラブ」というボランティア団体がサポートしてくれています。ドッグランがある都立公園には、運営をサポートするボランティア団体が設置されているのが条件なんです。
——ボランティアの方々が運営をサポートしているんですね。
小林:そうなんです。代々木公園の場合は「代々木ドッグランサポーターズクラブ」という名前ですね。そういった「ドッグランサポーターズクラブ」が都内のさまざまな公園にあるんです。
——そうなんですね! サポーターの方々は、どんな方々なんでしょうか?
小林:参加していただいているサポーターさんたちは、ワンちゃん好きの一般の方々です。個人情報の問題もあるので詳しくは言えませんが、普段はお仕事をされている方もいらっしゃいます。サポートしていただいている業務は、お掃除や登録証の発行など。また、困りごとがあったときの相談に乗ってもらったりもしています。
——ドッグランを運営する上で、実際に困っていることなどはありますか?
小林:そうですね……。ドッグランを利用する際は、まずリードをつけた状態で中に入り、中にいるワンちゃん同士の相性に問題がないか、犬同士の挨拶を済ませます。それからリードを放していただくことが大切です。また、遊ばせている間、飼い主さんが愛犬から目を離さず、様子をよく見ておいて欲しいですね。
——万が一、トラブルが発生した場合はどうすればよいのでしょうか?
小林:代々木公園としては、公園管理者として利用規約は設けていますが、基本的に利用者の方々ご自身で仲良く過ごしていただく、という部分でお任せをしています。利用規約でもお知らせしていますが、ドッグラン利用者同士のあいだで問題が発生した際は、原則的に当事者で解決していただくようにしているんです。
お散歩の利用者も多い代々木公園。マナーを守ることが愛犬の安全も守る
——小林さんは、いつから園長さんのお仕事に就いたのですか?
小林:2020年の4月からです。園長になる前は、複数の公園を管轄している部署にいました。園長になったころは、まさに新型コロナウイルス感染拡大の真っ只中でした。代々木公園も感染拡大防止のために一時的に閉鎖していたエリアもあったのですが、それが解除されたあと、公園をお散歩しているワンちゃんの姿を見ることは多かったですね。
——代々木公園には、どうしてワンちゃん連れが集まってくるのでしょうか?
小林:これだけのワンちゃん連れが毎日訪れてくださるのは、ドッグランがあるからこそだと思っています。都内の一等地でこんなに大きなドッグランがあるというのは園長の任に就いて改めて素晴らしいことだと感じましたし、都民にとってもよいことだと思いますね。
——新型コロナウイルス流行の前後で何か変化はありましたか?
小林:新型コロナウイルス感染拡大に伴って、ワンちゃん連れの公園利用者が増えたということは聞きました。もともとはイベントなどで人出の多かった週末も、2020年ごろはイベント自粛で人が少なかったんです。それでも、ワンちゃん連れはずっといる、というのは印象的でしたね。ワンちゃんにとって、コロナ禍であってもお散歩は欠かせないものですからね。
——ドッグランだけでなく、お散歩に来るワンちゃんも多いということですよね。公園の利用で気をつけることなどがあればお聞かせいただけますか?
小林:公園の利用で気をつけることについては、まずは基本的なマナーを守っていただきたいと思っています。たとえば、おしっこやウンチの始末。ワンちゃんのウンチを回収した袋は持ち帰っていただけるようお願いしているのですが、実際には、ゴミ箱にたくさん捨てられてしまっているという現実があります。
——それはとても残念ですね……。
小林:もちろん、きちんとルールを守って持ち帰っている飼い主さんもたくさんいらっしゃいます。認知を高めるように、もっと周知していきたいと思います。
——この記事も周知のきっかけになればうれしいです。他には何かありますか?
小林:そうですね、ノーリードやロングリードを避けていただくこともお願いしています。これだけの広さがあるので空間を広く使って遊ばせてあげたい、という気持ちもわかるのですが、ロングリードを使わないということは、公園の利用者や飼い主さんだけではなく、ワンちゃんの安全にとっても大切なことなんです。
——公園でロングリードの使用は避けた方がいいんですね。
小林:はい。広さがある分だけ、すごいスピードで自転車が迫っていることに気づくことができず、ワンちゃんが突っ込んでしまったり、小さなお子様がリードに引っかかって転んでしまったりと、いろいろなトラブルの原因になるんです。自由に遊ばせてあげたいときには、ドッグランを活用していただけると安心ですね。ご自身の愛犬を守ることが、周りの人を守ることにもつながる、と捉えていただけたらうれしいです。
——それはたしかに、とても大切なことですね。
小林:公園ごとにルールが異なるので、他の公園でOKなことが代々木公園ではNGだったりします。たとえば代々木公園のドッグランではボールやフリスビー遊びは禁止なのですが、他のドッグランでは許可されていたりする。そういった点にも注意していただきつつ、代々木公園の広々とした自然をワンちゃんと楽しんで遊んでいただきたいですね。
公園の中でワンちゃん連れ同士のコミュニティーが生まれている?
——日常的に使う公園となると、ご近所づきあいのような、いつも顔を合わせる利用者同士のコミュニティーもできてきたりするのでしょうか?
小林:そういった人間同士のつながりもあるみたいですね。それも、ひとつではなくいろんなコミュニティーが生まれているようです。世間話をするだけだったり、仲間内でしつけの仕方を教えてあげたり。
——なるほど。ドッグランはただ犬を遊ばせる目的だけでなく、人同士のコミュニケーションの場にもなっているんですね。
小林:はい。ドッグランでは自由にワンちゃん同士で追いかけっこをしたり走り回ったりできますよね。この運動量を散歩で補うとなったら、大型犬だったりすると飼い主の人間の方が疲れてしまいます(笑)。ドッグランは、飼い主さんにとっても息抜きになったり、ワンちゃんに関する情報交換ができたりする場所になっているのではないでしょうか。
——公園を利用するワンちゃんの中には、犬同士の交流が苦手なケースもありそうですね。
小林:そうですね。ワンちゃん同士でのコミュニケーションが苦手な子もいますし、飼い主さんご自身が話しかけられたりコミュニケーションを取ったりするのが苦手という方もいらっしゃいます。それぞれの心地よい使い方を尊重し合いながら利用していただけるのが理想です。
犬を飼っている人も、飼っていない人も。交流を通して相互理解を深めることが大切
——公園にはペットを飼っていない利用者の方もたくさんいるかと思います。そういった方々とワンちゃんとの交流も生まれていますか?
小林:はい。たとえばご家族連れで週末などに公園に遊びにきている方が、ドッグランの近くまで来て柵越しに交流している姿などはよく見かけますよ。交流を持っていただくことで、相互理解が進むのも大事なことですよね。「犬は怖い」と思っていた人が、公園での交流を通して大丈夫になるケースもあると思います。
——一人暮らしであったり、住環境がペット禁止だったりして、飼いたくても飼えないという場合もありそうです。そういう方にとっても憩いの場として公園が機能することもありますよね。
小林:そうですね。みなさんにとって憩いの場になることを願いながら、日々運営をしています。大事なのは、公園という空間の中には、「いろんな人がいる」と理解して使っていただくこと。たとえば「歩行者優先なのでは」という意見を耳にすることもありますが、「利用者全員が優先」という気持ちで運営しているんです。せっかく都内の貴重な森がある場所でもあるわけですから、譲り合って気持ちよく使っていただきたいですね。
実は、人間やワンちゃんだけではなく、ニワトリやウサギといった他の動物などを散歩に連れてくる方もいらっしゃるんですよ。そうそう、ペットではないですが、公園内で暮らしているタヌキもいますよ。
——なんと、タヌキまで……!
小林:それだけ自然が豊かな場所、とも言えます。だからこそ、利用者のみなさんにも、ワンちゃんにも、ゆったりとよりよい公園ライフを過ごしていただけるように、ご協力をいただけたらうれしいなと思っています。
——公園を利用する全ての人や全ての生き物にとって過ごしやすい心がけを学べた気がします。小林さん、ありがとうございました。
小林:ありがとうございました!