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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
琉球犬とは古来より沖縄で飼育されてきた地犬の1種で、本州では非常に珍しい犬種です。そのため沖縄県外では「実物を見た経験がある」という人は少ないでしょう。テレビ番組などで琉球犬を見かけ、興味を持っている方も多いはずです。
そこで本記事では琉球犬の特徴や入手方法、上手な飼い方などを紹介します。興味をお持ちでしたら、ぜひ内容を参考にしてください。
目次
- 琉球犬とは
- 琉球犬は飼育が可能?
- 琉球犬の上手な飼い方
- まとめ
琉球犬とは
琉球犬
琉球犬とは、特定の地域にのみ生息している「地犬(じいぬ)」の1つです。地犬には琉球犬のほか、岩手犬・三河犬・薩摩犬・十石犬・山陰柴犬などが挙げられます。
日本犬として国の天然記念物に指定されているのは「秋田犬・甲斐犬・紀州犬・柴犬・四国犬・北海道犬」の6種類です。地犬は上記の日本犬6種類よりも数が少なく、すでに絶滅してしまった犬種も存在します。
琉球犬も、第二次世界大戦の影響などを受けて、一時は絶滅の危機に瀕していた犬です。しかし平成2年4月には琉球犬保存会が発足し、全体的な数は増加の傾向にあります。
琉球犬の歴史
琉球犬は、縄文犬の遺伝子を濃く受け継いでいるとされる犬種です。見た目の特徴も、ほかの日本犬とは違いがあります。2023年3月現在の段階では、琉球犬はジャパンケネルクラブや国際畜犬連盟(FCI)などでの登録がありません。
沖縄教育委員会の資料によると、かつて沖縄には野生の犬が存在していなかったとされています。約5500年前の土器とともに、琉球犬の骨が見つかり、そこから「九州から琉球犬の先祖が連れてこられたのが約5500年前だろう」と推測されています。
琉球犬には、山原系・八重山系の2系統があります。長く琉球犬の保存を行ってきたのが、第二次世界大戦で激戦を免れた沖縄北部および八重山地域です。1995年12月22日、琉球犬は沖縄の天然記念物に指定されました。保存会が発足したこともあり、琉球犬の数は増加しつつあります。
その珍しさから、琉球犬はたびたびテレビ番組などでも紹介されている犬です。そこで沖縄に限らず、本州で飼育を希望する人も増えています。
琉球犬の特徴
大きさの分類では、琉球犬は中型犬に該当します。琉球犬の体高・体重は以下の通りです。
【体高】オス48~52センチ メス47センチ
【体重】16~20キログラム
山原系・八重山系とも、基本的な外見の特徴は似ています。琉球犬の多くは、鼻と額のあいだにある「ストップ」が浅めで、しっぽは差尾または半巻尾です。
飼育環境にもよりますが、贅肉が少なくて引き締まった体型をしています。短毛で立ち耳の個体が多いのも、琉球犬に見られる特徴です。2006年の琉球犬保存会による調査では、垂れ耳の個体は確認されていません。調査によって、琉球犬は北海道犬(アイヌ犬)と類似の体型であることも判明しています。
嗅覚が極めて優れており、小動物にも敏感に反応する犬です。勇敢で飼い主に忠実なこともあって、沖縄では狩猟犬として人気があります。後ろ足には狼爪(ろうそう)があるのも、琉球犬が持つ大きな特徴の1つです。狼爪とは痕跡器官で、哺乳類・鳥類・爬虫類などに見られます。
琉球犬の毛色
琉球犬として保存会が認定している毛色は次の5種類です。
- アカトゥラー(赤虎)……茶色に黒の縞模様
- シロトゥラー(白虎)……黒字に茶の縞模様
- クロトゥラー(黒虎)……白地の黒の縞模様
- アカイン(マスク)
- アカイン(ゴールドアイ)
虎毛(縞模様)を持つのがアカトゥラー・シロトゥラー・クロトゥラーの3種類です。地色によって、縞模様の色には若干の違いがあります。
シロトゥラーの地色は、どちらかといえば白よりもアイボリーに近い色です。虎毛がない単色の赤色は、沖縄ではアカインと呼ばれています。アカインは、鼻が黒い「マスク」と、目が金色で鼻が茶色い「ゴールドアイ」の2種類です。
ただし純血種同士の組み合わせによっては、アイボリー・白・黒・ゴマなどの毛色も生まれます。アイボリー・白・黒は単色です。
琉球犬の性格
琉球犬は、温和で友好的な性格の犬種です。そのため沖縄以外でも人気があり、本州でも飼育を希望する人が多く存在します。また狩猟目的で琉球犬を探している人も少なくありません。
飼い主に従順であるのも琉球犬の性格です。そのため家庭でも飼いやすい性格の犬だといえるでしょう。
琉球犬は飼育が可能?
沖縄県の天然記念物に指定されている琉球犬ですが、入手・飼育自体は可能です。ただし稀少な犬であるため、ペットショップで見つけるのは非常に困難であると考えられます。
琉球犬の現実的な入手方法として挙げられるのが次の2つです。
- ブリーダーから購入する
- 里親募集を利用する
それぞれの方法についてチェックしてみましょう。
純血種なら沖縄県のブリーダーから子犬の購入が可能
純血種の子犬を探しているのなら、まずは沖縄で活動しているブリーダーに相談してみましょう。沖縄県外でも琉球犬を取り扱っているブリーダーが存在しますが、数は多くありません。
琉球犬の価格は、ブリーダーによって大きく違ってきます。信頼できるブリーダーなのか知るために、現地で飼育状況を確認してみると安心です。予約待ちとなっている可能性もありますので、飼育を考えているのなら早めに相談してみましょう。
かつては琉球犬保存会でも子犬の頒布を行っていましたが、現在はブログの更新がありません。そのためもっとも現実的な方法がブリーダーへの相談です。ただし飼育や繁殖を行っている人を知っているのなら、直接相談してみるのも方法の1つです。
ミックスなら里親募集の利用も可能
琉球犬は数が少ないため、純血種にこだわると見つからない可能性があります。しかしミックスであれば、比較的見つけやすくなるでしょう。
ミックスの琉球犬探しに役立てられるのが、インターネットの里親募集サイトです。里親募集サイトであれば、琉球犬ミックスを探しやすいでしょう。子犬の里親募集が行われていることもありますので、興味があったらチェックしてみてください。
ただし里親募集サイトを利用するのなら、事前にルールの確認が必要です。手渡しのみ・誓約書が必要など、里親募集サイトにはいろいろルールがあります。トラブルを防ぐために、まずは里親募集サイトでルールを確認してみましょう。
琉球犬の上手な飼い方
琉球犬の上手な飼い方についても紹介します。
温和で友好的な性格を持つ琉球犬は、比較的飼いやすい犬種です。しかし本州では見かけない稀少な犬であるため、飼い方についての資料はそれほど多くありません。そのため飼育できるかわからず、悩んでいる人も多いでしょう。
琉球犬を飼うにあたって特に大きなポイントとして考えられるのは、次の3つです。
- 毎日1時間を目安に散歩をする
- 狼爪の手入れをする
- こまめにブラッシングをする
3つのポイントについて解説していきますので、琉球犬の飼育を検討しているのならぜひご覧ください。
毎日1時間を目安に散歩をする
琉球犬の運動量は、毎日1時間が目安だとされています。速足で30分程度の散歩を、1日2回行うとよいでしょう。
琉球犬の運動量自体は「普通程度」だといわれています。ただし琉球犬は狩猟にも使われている犬です。信頼関係を深め、ストレスを解消するためにも、琉球犬は毎日散歩させましょう。
狼爪の手入れをする
琉球犬を飼うのなら、忘れずに後ろ足にある狼爪(ろうそう)の手入れを行う必要があります。足の高い場所に生えているのが狼爪と呼ばれる部分です。後ろ足の狼爪は、すべての犬が持っているわけではなく、個体によります。ついていても切除される犬もいるため、「1度も見たことがない」という人も多いでしょう。
ただし狼爪自体は、足の異常・奇形などではありません。現代の生活では必要がなくなった器官であり、先祖の名残だといえます。子犬の狼爪を切除するのは、予防医学として、あるいは犬種標準に合わせるためです。ブリーダーがJKCの犬種標準に合わせている場合は、狼爪を切除する可能性があるでしょう。たとえばサモエドは、2021年1月の改正によって、犬種標準に狼爪の切除が追加されました。
しかし現在のところ、琉球犬はJKCやFCIなどによる犬種標準はありません。先祖から受け継いだ狼爪をどうするかは、獣医師・ブリーダーと相談のうえで慎重に検討しましょう。普段は地面につく場所ではないため、狼爪を放置していると次第に伸びていきます。狼爪を切除しないのなら、引っかけて裂けないよう長さを見ながらお手入れを行ってください。
こまめにブラッシングをする
琉球犬は、柴犬やビーグルと同じく、ダブルコートを持つ短毛種です。抜け毛が多くない時期であれば、ブラッシングの頻度は週に1~2回を目安にするとよいでしょう。しかし換毛期には、なるべくこまめにブラッシングをする必要があります。換毛期のブラッシングは、1日1~2回を目安に考えるのがおすすめです。
ブラッシングは、愛犬とのコミュニケーションを深めるのにも役立ちます。また皮膚に生じたトラブルの早期発見にも役立つため、非常に大切です。愛犬が快適に過ごせるよう、なるべくこまめなブラッシングを行ってください。
まとめ
琉球犬は本州では見かけない稀少な犬種ですが、ブリーダーから購入可能です。またミックスであれば、里親募集サイトでも見つかります。本州での飼育を考えているのなら、まずは琉球犬をよく知るブリーダーに相談するのがおすすめです。その際に、配送にかかる費用も確認するといいでしょう。
家族として迎え入れたあとは、散歩や狼爪の手入れを行ってください。ダブルコートの犬種であるため、こまめなブラッシングも大切です。
沖縄では、琉球犬は狩猟犬・番犬として今も愛されています。沖縄で見かける機会があったら、ぜひほかの犬との違いをチェックしてみてくださいね。