公開
愛犬と暮らすメンバーで構成された、犬愛の強いメディア編集部です。 「犬想い」を軸に、ワンちゃんと飼い主さんの暮らしが上向く情報をお届けします。
「パブロフの犬」という言葉を聞いたことがある方も多いかと思います。しかし、その意味や詳しい実験内容について、深く理解している方は限られているでしょう。今回は、パブロフの犬の意味と実験の背景について解説します。パブロフの犬の意味を知ると、愛犬へのトレーニングにも役立ちますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- パブロフの犬とは
- パブロフの犬の実験の概要
- パブロフの犬の実験で活躍した犬種は?
- 犬の条件反射は他にもある
- 犬のトレーニングに活かせるパブロフの犬
- 条件反射のトレーニングは根気よく
- まとめ
パブロフの犬とは
パブロフの犬とは、ソビエト連邦(現在のロシア)の生理学者イワン・パブロフがおこなった、犬の条件反射の実験結果から名付けられた言葉を指します。
パブロフの犬とは、トレーニングによって身につけた条件反射のことです。簡単に説明すると、「一定の条件下で無意識のうちに起こる反応や行動」を総じてパブロフの犬と呼びます。
ここではパブロフの犬という言葉が生まれた経緯を紹介します。
ノーベル賞を受賞したイワン・パブロフ
イワン・パブロフは、1849年9月14日に現在のロシアで生まれました。サンクトペテルブルク大学へ進学した後に外科医となりますが、その後、軍医学校に進学しました。軍医学校で医師免許を取得したのち、師ボートキンの生理学研究所に就職し、この研究所でさまざまな研究をおこないました。
当時、犬で唾液腺の研究をしていたイワン・パブロフは、人間の足音で犬が唾液を出していることを発見し、ここから条件反射の実験を本格的におこなうようになりました。
1904年には消化腺の研究が評価され、ロシア人として初めてとなるノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ノーベル賞授賞式では、消化腺の研究よりも条件反射や無条件反射について演説しています。
パブロフの犬の例文
「パブロフの犬」を使った例文は、以下のように使われます。条件反射のことをパブロフの犬と理解すれば、さまざまな場面で利用できます。
- 梅干しを見ると唾液が出ることを「パブロフの犬のようだ」。
- 上司の演説を聞いて、パブロフの犬のように社員が拍手をする。
- 虫を見ただけでパブロフの犬のように逃げ回る。
このように「パブロフの犬」は、ポジティブにもネガティブにも使える言葉です。条件反射が生じる状態をうまく表現できるため、比喩として活用してみるといいでしょう。
パブロフの犬の実験の概要
パブロフの犬は、イワン・パブロフが偶然に見つけた犬の反応から実験がおこなわれました。どのような実験がおこなわれたのか、具体的な実験内容を紹介します。
パブロフの犬の実験内容
イワン・パブロフは唾液腺研究のため、唾液が口の外に出るよう手術した犬の研究をしていました。その手術は、犬の頬に穴をあけて管を通すというものです。この実験中、飼育員の足音を聞くだけで、犬が唾液を分泌していることに気付き、条件反射に関する実験を開始します。
通常、犬がエサをもらっている間は、唾液の分泌量は増えてきます。しかし、犬が飼育員の足音を聞くだけで唾液を分泌しているのは、エサと連想しているとイワン・パブロフは考えました。
そのため、犬にエサを与えている間、ベル(メトロノームという説もあり)を鳴らし続けます。この実験を繰り返していると、ベルの音を聞いただけで犬は唾液の分泌量が増えるようになりました。つまり、ベルの音=エサと犬は学習したということです。実験結果より犬の学習反応は「条件反射」と呼ばれています。
イワン・パブロフの詳しい実験内容について知りたい方は、以下の書籍がおすすめです。パブロフの犬は、心理学でも用いられることがあります。
書籍名 |
著者名 |
出版社 |
出版年 |
ノーベル賞を知る①命を救う大発見!ノーベル生理学・医学賞 |
若林 文高 |
講談社 |
2020/2/10 |
パブロフの犬―実験でたどる心理学の歴史 |
アダム ハート=デイヴィス |
創元社 |
2016/11/10 |
条件反射と無条件反射の違い
イワン・パブロフが発見した条件反射は、学習によって身につけられた反射的行動のことを指します。
たとえば、梅干しを見たら唾液が出るという現象は、梅干しが酸っぱいということを理解している(実際に食べて学習している)から起きるものです。一方で無条件反射とは、学習せずとも無意識に起こる行動のことを言います。熱い鍋に手が当たったとき、無意識に手を引っ込める行動も無条件反射です。
これにより、条件反射とはトレーニングや経験によって起こる行動であることがわかります。
犬がご飯を見て唾液の分泌量が増えるのは無条件反射ですが、パブロフの犬のように、ベルの音を聞いて唾液の分泌量が増えるのは条件反射となります。イワン・パブロフは、犬にベルの音をご飯の合図と学習させたことにより、条件反射の定義が確立しました。
パブロフの犬の実験で活躍した犬種は?
イワン・パブロフは実験でどんな犬種を使ったのでしょうか。ここでは実験で使われた犬種や、イワン・パブロフの実験風景が見学できる場所を紹介します。
実験で活躍した犬の犬種
イワン・パブロフは、もともと実験で使用する犬の種類にこだわりはなく、また特定の犬種に絞って実験をすることはなかった、と言われています。実際に使われた犬種の多くが雑種だったようです。
実験で活躍した犬種を見学できる場所
ロシアのパブロフ博物館やモスクワ博物館では、実際に実験に使われた犬が展示されています。数々の犬を実験に使っており、その様子はパネルで紹介されています。また、パブロフ博物館では、敷地内にイワン・パブロフが生活した自宅も公開されているため、セットで回ると当時の様子がよくわかるでしょう。
【パブロフ博物館】
営業時間 |
火曜~金曜:09:00~18:00 土曜~日曜:10:00~18:00 |
休館日 |
月曜日 |
公式HP |
https://www.pavlovmuseum.ru/ |
犬の条件反射は他にもある
犬の条件反射は、ご飯をもらえるときの唾液だけではありません。
たとえば、散歩へ行く前にリードや散歩バッグを持つと、愛犬が興奮して騒ぎ出すということがあるかと思います。これは、「リードや散歩バッグ=散歩」と犬が学習しているからです。ほかにも、飼い主がカギを持つと吠えるという行動も立派な条件反射です。「カギを持つ=ひとりぼっちになる」と知っているため、寂しくて吠えてしまいます。
このように愛犬の行動を見てみると、意外なところで学習して行動していることがたくさんあるでしょう。
犬のトレーニングに活かせるパブロフの犬
パブロフの犬は、犬のトレーニングにも活かせるため積極的に利用してみましょう。トレーニングは、コミュニケーションが取れるだけでなく、いざというときに安全の確保にも役立ちます。まずは押さえておきたい基本のトレーニングについて、パブロフの犬を取り入れながら紹介します。
待て
待ては、飼い主の指示が出るまで動きを止めて待たせるトレーニングです。
犬が見上げるぐらいの高さで手のひらを見せ「待て」と言います。犬の動きが止まったら数秒そのまま待たせます。犬が動かないことが確認できたら「ヨシ」と言って、おやつをあげたり撫でたりして褒めてあげましょう。待ての間隔はトレーニングを重ねるごとに秒数を増やしていくのがおすすめです。
お座り
お座りは、お尻を地面につけてしゃがむような体制にするトレーニングです。
グーの手を犬の鼻近くまで持っていき「お座り」と言いながら手を上へあげます。犬はグーを見ることで、自然にお尻が地面につく体制になります。お座りの状態が確認でき、しばらくじっと待てたら、「待て」のときと同様、たくさん褒めてあげましょう。
うまくお座りができない場合は、グーの中におやつを忍ばせておくのもおすすめの方法です。グーの手から匂いがするため、グーに集中して自然にお尻が地面につくようになるでしょう。ちゃんとお座りができたら「おやつがもらえる」と学習するため、グーを見ただけでお座りができるようになります。
伏せ
伏せは、前足の肘からお腹が地面につく体制にするトレーニングです。
お座りができた状態から、グーの手を徐々に下げていきます。と同時に、手を犬の手前にズラしていくと伏せがしやすくなります。お腹が地面についたら、待てやお座りのときと同様におやつをあげたり褒めたりしてあげましょう。
お手
お手は、片足を差し出して飼い主と握手できるトレーニングです。
最初のうちは犬がお座りをしているときに、前足に手を差し出してみましょう。犬が片足を持ち上げたら、思いっきり褒めてあげます。手を差し出すときは「お手」という声掛けも忘れないでください。
お手は、犬が興奮しているときはトレーニングしにくいので、気持ちが落ち着いているときにするのがおすすめです。
条件反射のトレーニングは根気よく
条件反射を活用したトレーニングは、一度のトレーニングでは習得できません。何度も繰り返し犬に学習させることで覚えていきます。万が一、トレーニングをして愛犬ができなかったとしても、怒ったり暴力を振るったりすることは絶対にいけません。犬も恐怖を感じた出来事は深く記憶に刻まれるため、トレーニングを嫌がる可能性が出ています。また、愛犬の性格によってもトレーニングの方法は変わってくるでしょう。
トレーニングでパブロフの犬を取り入れる際は、犬に「〇〇ができたらご褒美がもらえる」「うれしいことが待っている」と知ってもらうのが大切です。そのため、「条件反射=繰り返しの学習」と考えて、長い目で愛犬に接するようにしてください。
まとめ
パブロフの犬の意味を知ると、愛犬に当てはまるものが多くあるでしょう。もともとは犬の実験結果より名付けられた言葉ですが、条件反射は犬だけでなく人間にも当てはまることがたくさんあります。パブロフの犬の意味を知っておくことで今後の犬のトレーニングにも役立ちますので、愛犬の訓練にぜひ活用してみてください。