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東大農学部獣医学専修卒後、ウガンダ国立遺伝資源研究所でのリサーチフェローや動物病院での臨床業務に従事。2020年に保護犬たちを新しい形でサポートする事業を開始。
立ち耳と愛らしい表情が魅力的で人気の高いノーリッチ・テリアですが、ノーリッチ・テリアを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、獣医師の寺田かなえ先生に教えていただいた、ノーリッチ・テリアの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- ノーリッチ・テリアの歴史やルーツ、英語名は?
- ノーリッチ・テリアの体高や体重は?
- ノーリッチ・テリアの平均寿命は?
- ノーリッチ・テリアの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- ノーリッチ・テリアはどんな性格、習性?
- ノーリッチ・テリアを迎える際にかかる費用は?
- ノーリッチ・テリアのしつけと社会化トレーニングのポイント
- ノーリッチ・テリアに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- ノーリッチ・テリアを飼うのに向いている人は?
- ノーリッチ・テリアがかかりやすい病気と予防法は?
- ノーリッチ・テリアの日常のお手入れ方法
- ノーリッチ・テリアとの生活で注意すべきことは?
ノーリッチ・テリアの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | ノーリッチ・テリア |
英語名 | Norwich Terrier |
原産国 | イギリス |
分類 | 小型犬 |
グループ | 3G:テリア |
ノーリッチ・テリアは、1800年代にイギリスでアナグマ、ネズミなど獲る猟犬として活躍したテリア系の犬種が基礎になっていると考えられています。
1800年代末頃から1900年代初頭、ケンブリッジ大学の学生たちの間で、ネズミを捕まえるための小型犬を飼うことがブームでした。1900年頃には、ノーフォーク州ノーリッチに持ち込まれた「ラグズ」という愛称の犬が、ネズミを捕る能力を遺憾なく発揮し、注目を集めます。ネズミ害に悩まされる農業地帯のノーフォークで重宝され、大規模な繁殖が行われました。
この犬種が1932年に、イギリスのケネルクラブから「ノーリッチ・テリア」の名前で公認されました。当初は立ち耳の犬も垂れ耳の犬も同じ犬種名でしたが、垂れ耳の犬種は後にノーフォーク・テリアと名付けられました。
もともと猟犬だったノーリッチ・テリアですが、アメリカに輸出されるようになると、人懐っこい性格や小さいながらも美しい姿への評価が高まりました。
ノーリッチ・テリアの体高や体重は?
体高:約25〜26cm前後
体重:約5〜6kg
ノーリッチ・テリアは小型犬に分類され、体格はオス・メスであまり差はありません。テリアの仲間の中で、最も小さい部類に入りますが、がっしりした骨格と筋肉を持っています。
ノーリッチ・テリアの平均寿命は?
ノーリッチ・テリアの平均寿命は12〜14歳とされています。ノーリッチ・テリアは小型犬に分類されますが、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、小型犬の平均寿命は14.4歳のため、平均とほぼ変わらないといえるでしょう。
犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
ノーリッチ・テリアの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
レッドや小麦色のウィートン、黄褐色のブラック&タン、黒、灰色、赤色の混合色のグリズルといった毛色があります。子どもの頃は黒っぽい毛色をしており、成長するにつれて明るいトーンへと変わっていくのが特徴です。
被毛はオーバーコートとアンダーコートがあるダブルコートです。
ノーリッチ・テリアはどんな性格、習性?
ノーリッチ・テリアはもともと狩猟犬の血統であるため、好奇心が強く、物おじしない性格をしています。活発で明るく陽気で遊ぶのが大好きです。社交的で人懐っこい面がありますが、独占欲が強い性質もあるので、他の犬や小さな子どもとは相性が悪くなることもあるでしょう。
また物覚えが良いためトレーニングには困らない反面、天真爛漫な性格とテリア種特有の頑固な性格が合わさり、注意されても同じことを繰り返す場合もあります。トレーニングをする側も根気強く取り組むことが大切です。番犬としても活躍できる強い警戒心がありますが、無駄吠えをしないよう子犬のうちにトレーニングをする必要があります。
ノーリッチ・テリアを迎える際にかかる費用は?
ノーリッチ・テリアを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約20~65万円 |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5〜7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000〜10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000〜10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
ノーリッチ・テリアをペットショップから迎える際の価格の目安は、約20~65万円です。月齢や血統などにより、値段が上がることもあります。他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
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飼い続けるために必要な費用
犬を養育する上での生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。
なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
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ノーリッチ・テリアを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意すると良いでしょう。ノーリッチ・テリアはルーツが狩猟犬なこともありアクティブです、それゆえボール遊びなどをさせて、思い切り走り回れるようにするのがおすすめです。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどです。ノーリッチ・テリアはダブルコートのため、ブラッシングや自宅でのシャンプーといったケア用品をそろえておくのが安心です。
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2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主の元へ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000〜5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、ノーリッチ・テリアを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策を取るのもおすすめです。
ノーリッチ・テリアのしつけと社会化トレーニングのポイント
ノーリッチ・テリアは特性として警戒心の強さもあるため、飼い主とその家族以外の人や、他の犬に対して攻撃的になる場合があります。こういった性質をコントロールできなければ不慮の事故にもつながるため、トレーニングを行いましょう。
まず、人に対しての警戒心を和らげることから始めます。飼い主や家族との遊びを通じ、人との触れ合いの楽しさを認識させましょう。他の犬に対して過剰に反応しないように慣らすことも必要です。犬同士で落ち着いてあいさつできるようになるまでの間は、相手の犬の飼い主にも社会化の途中であることを伝えて必ずリードをつないだ上で犬同士を近づけてください。
個体差はありますが、ドライヤーや車などの生活音にストレスを感じる犬もいます。生活音に反応せずにいたら、褒めることで少しずつ恐怖心を和らげるトレーニングをしましょう。
これらの方法には根気が必要です。短期間で無理強いするのではなく、時間をかけて取り組みましょう。自力の対処が難しいと判断した場合は、ドッグトレーナーなどの専門家に頼ることもひとつの方法です。専門家からのアドバイスには愛犬はもちろん、飼い主にとっても新しい発見があるかもしれません。
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ノーリッチ・テリアに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:30分程度を1日2回
✓運動量:多い
✓おすすめの遊び:ドッグラン、ボール遊び、おもちゃ遊び
1日30分程度の散歩を2回程度、毎日行うことが推奨されています。ルーツが狩猟犬で活発な犬種であることから、体格に反して運動量が必要です。定期的にドッグランや広い公園で思い切り運動させることもおすすめです。散歩に行くのが難しい日は室内遊びを行うと、ストレスを解消でき、問題行動の予防にも役立ちます。
ノーリッチ・テリアを飼うのに向いている人は?
✓十分な運動をさせてあげられる環境
ノーリッチ・テリアは小さな体ですが、猟犬だったこともありパワフルでスタミナ豊富な犬種です。小走りを交えた散歩や、ボール遊びで走らせるなどして、毎日十分な運動をさせてあげられる人がよいでしょう。
✓しつけをきちんとできる人
必要以上に警戒し攻撃的にならないよう、小さいうちから社会化トレーニングや、基本的なコマンドをマスターする必要があります。落ち着いて毅然とした態度を取れる人が向いているでしょう。
✓テリア犬種の特性を理解し、しつけができる人
テリア犬種には、頑固で自己主張が強い性質があります。そんな特性を理解して、辛抱強く付き合える人が良いでしょう。
ノーリッチ・テリアがかかりやすい病気と予防法は?
ノーリッチ・テリアがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓眼の疾患
ノーリッチ・テリアは遺伝的に眼の疾患が多いといわれています。白内障や緑内障、進行性網膜萎縮症など、病気が進行すると失明する場合もあるので、定期的に眼のチェックをするようにしましょう。
✓膝蓋骨脱臼
膝蓋骨が脱臼してしまうノーリッチ・テリアなどの小型犬に多い疾患です。先天的に膝関節に異常がある場合や、外傷などで起こります。症状は4段階に分けられ、重症の場合外科手術による治療が行われます。
そのほか、アレルギー性皮膚炎にも注意が必要です。主な症状は、かゆみや発疹、脱毛などであり、命にかかわるような症状はありません。しかし、細菌による二次感染で症状悪化が起こると、大きなストレスになります。発症した場合は動物病院でアレルギーの原因物質の特定をし、可能な範囲で生活環境から取り除きましょう。
ノーリッチ・テリアの日常のお手入れ方法
✓ブラッシング:1週間に2、3回程度
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:1カ月に1回程度
被毛は針金のように硬い剛毛のため、週に2〜3回程度のブラッシングでむだ毛を取り除きましょう。使用する道具は、目の細かいブラシとコームがおすすめです。むだ毛を放置すると、毛玉が発生して皮膚の通気性が悪くなります。そこから雑菌が繁殖して、皮膚病になるリスクもあります。シャンプーをする際も、むだ毛に水分が含まれると毛玉になるため、事前にブラッシングが必要です。
また、ノーリッチ・テリア独特の剛毛を良好な状態に保つために「プラッキング」と呼ばれるケアを行うこともおすすめです。プラッキングとは全体の3割程度の毛を取り除く施術で、毛並みや毛色をきれいな状態に保てます。しかし、プラッキングに関する知識と道具を備えたトリマーは限られており、時間も費用もかかるため、受けさせたい場合には事前リサーチが必要です。
お手入れの際はスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしましょう。日々触れ合う時間を作ることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯磨きは毎日~3日に1回、爪切りは1カ月に1~2回の頻度で行います。肛門腺絞りのタイミングはかかりつけの獣医師に相談して実施してください。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床で滑りやすくなるためカットしてください。
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ノーリッチ・テリアとの生活で注意すべきことは?
ノーリッチ・テリアと生活する上で注意すべきポイントを紹介します。
✓定期的にブラッシングをしよう!
ノーリッチ・テリアのようなダブルコートの犬は毛が密生しているため、むだ毛が絡まったり、毛玉になったりすることを防ぐためにも定期的なブラッシングを心がけましょう。その他、月に1度の頻度でシャンプーすることもおすすめです。肌のバリア機能が低下する原因にもなるため、洗い過ぎは禁物です。
✓小動物との同居に注意
ノーリッチ・テリアはウサギやネズミを追いかけて捕まえていた狩猟本能があるため、ハムスターや小鳥などの小動物との同居には注意が必要です。
✓いたずらに注意
ノーリッチ・テリアは非常に活動的で、好奇心も旺盛です。ちょっと目を離した隙に大切なものにいたずらされるといった可能性があります。犬の届く場所には壊されそうなものは置かず片付けておく、留守番させるときはケージに入れる、など未然にいたずらを防ぐようにしましょう。また運動不足も問題行動の原因になります。十分に運動欲求を満たすようにしましょう。