川村動物クリニック院長/いばらきどうぶつ看護センター管理獣医師

※商品などの紹介は、本記事の獣医師の監修外であり、編集部による情報提供です。
犬には得意な記憶と苦手な記憶があります。犬はどれくらいの記憶力を持っているのか、「うちの子は忘れっぽい?」「意外とよく覚えている?」と気になる方も多いのではないでしょうか。犬の記憶の仕組みを知れば、愛犬への接し方やトレーニングの参考になるはずです。この記事では、犬の記憶力について獣医師の川村康浩先生に詳しく解説していただきます。
目次
- 犬は本当にすぐ忘れる? 何年残る? 犬の「短期記憶」と「長期記憶」
- 犬は飼い主や過去のことをどれくらい覚えている?
- 犬の記憶はどうやってよみがえる? 嗅覚と感情がカギ
- 犬の記憶力を踏まえた接し方・しつけのポイント
- 犬が年をとると記憶力はどうなる?
- 【Q&A】犬の記憶力や認知機能に関わるよくある疑問
- 犬の記憶力をサポートするアイテムを紹介
- まとめ
犬は本当にすぐ忘れる? 何年残る? 犬の「短期記憶」と「長期記憶」

人間と同じように、犬の記憶にも「短期記憶」と「長期記憶」があります。
短期記憶とは、一時的に情報を保持する能力のこと。犬の短期記憶の保持時間には幅があり、実験条件や個体差によって異なります。一般的には「数秒〜数十秒程度」と示す研究があります。例えば、少し前にいたずらをして叱られたのに、すぐにケロッとしているのはこのため。犬は「今」起きたことに強く反応しますが、時間が経つとその理由を関連づけて理解することが難しいのです。
一方、長期記憶は短期記憶よりも長い期間保持される記憶で、行動や経験に基づき長期間残ることがあるとされています。何度も繰り返したことや、強く印象に残った出来事は犬の中に長く残ります。10年以上前の体験を保持していたと報告されている犬もいますが、これはあくまで一例であり、すべての犬に当てはまるわけではありません。
犬は飼い主や過去のことをどれくらい覚えている?

「久しぶりに実家に帰るけど、うちの犬は覚えているかな?」そんな不安を抱く方もいるかもしれません。
でも大丈夫。犬は大好きな家族との絆を、長期記憶に刻み込む傾向があります。有名なハチ公のエピソードのように、歴史的な事例からも「飼い主との結び付きが行動に影響する可能性」が語られてきました。犬にとって飼い主は特別な存在です。長い時間が経っても、顔や声、匂いを通じて飼い主を思い出すことができます。実際、何年ぶりかに帰省したとき、愛犬が喜んで飛びついてきてくれた経験がある方は少なくないでしょう。
また、犬は「経験」と「場所」を結び付けて覚えることもできます。以前遊んだ公園へ行くとテンションが上がるのは、「ここ知ってる!」「また遊べる!」と思い出している証拠。反対に、怖い思いをした動物病院に入りたがらないのも、過去の経験と場所が強く結び付いていることの現れです。
さらに、犬は匂いや見た目で人や犬を識別できるため、よく会う近所の友達犬や人間のこともちゃんと覚えています。
犬も「いつ」「どこで起きた」かを覚えている?
人の記憶に近い「エピソード様記憶」という仕組みを、犬も持つ可能性が示唆されています。エピソード様記憶とは、特定の出来事に関する記憶で「いつ」「どこで」「何を」「誰と」「どのように」経験したかという文脈や感情を伴った記憶のこと。「昨日、イタリアンレストランでパスタを家族と一緒に楽しく食べた」などの記憶がその例です。
犬は「何を」「どこで」「いつ」という記憶を用いて課題を遂行する能力を示したという研究※は、犬もエピソード様記憶を持つことを示唆しています。
一方で、「いつ」という時間の正確な認識までは確認されていないという研究結果※もあります。
犬種・個体差で変わる記憶力の傾向
犬の記憶力には個体差があります。ボーダー・コリーの「チェイサー」は1,000個以上のおもちゃの名前を覚えたことで有名です。チェイサーの飼い主は行動心理学者で、研究プロジェクトの下でチェイサーが生後8週間のときから訓練を行いました。これは特殊な例ですが、犬の記憶力には大きな可能性があることが分かります。
こうした能力は訓練環境や年齢、モチベーションによって大きく左右されます。健康状態や気分などさまざまな条件によっても記憶力に波が生じるため、覚えるスピードに違いがあっても個性のひとつです。「うちの子は覚えられないのかな」と心配しすぎる必要はありません。
犬の記憶はどうやってよみがえる? 嗅覚と感情がカギ

犬が過去の記憶を思い出すとき、人間とは少し違うアンテナを使っています。犬は人間ほど視覚に頼らず、嗅覚や聴覚といった優れた感覚を手がかりに記憶を形成・想起していると考えられています。犬の嗅覚や感情と記憶の関係について、具体例を交えて見ていきましょう。
犬にとって「匂い」はタイムカプセル!? 犬の記憶を呼び戻す鍵
人間には、特定の香りからその香りに結び付いた過去の記憶が呼び起こされる「プルースト現象」があります。犬にとっても匂いが、過去の出来事を思い出すきっかけになる場合があり、人でいう「プルースト現象」のようなしくみが、犬にも働いている可能性を示唆する研究もあります。
久々に会って、初めはよそよそしかった犬が匂いを確認して「あ、○○だ!」と思い出し、途端に甘えてくることがありますが、これは匂いが記憶を呼び起こす手がかりになった可能性が考えられます。
「感情」が動くと記憶に残る
犬の記憶は感情と結び付いています。嬉しかった、楽しかったというポジティブな感情や、怖かった、嫌だったというネガティブな感情とともに記憶しているのです。一度の経験でも、気持ちが大きく動くと記憶に刻まれます。これが前述の「エピソード記憶」です。
散歩で会う別の犬の飼い主から、おいしいおやつをもらったことを覚えていて、別の日にその人を見かけると喜んで駆け寄るといった例があります。
視覚や触覚など他の感覚も記憶を補助
物体を思い出すとき、犬は見た目や匂い、触覚など複数の感覚的特徴を使っているという研究※があります。さまざまな感覚的手がかりがあると、匂いでの想起を補強する働きがあると考えられています。
犬の記憶力を踏まえた接し方・しつけのポイント

犬の記憶の特徴を知ると、日々のトレーニングにも活かすことができます。ここでは記憶力を味方につける接し方を解説します。
注意するのは「行動の直後」
犬がイタズラをしてしまった場合、その場ですぐに注意することが重要です。犬の短期記憶は保持時間が比較的短いとされており、「今注意されている理由」を明確に関連付ける必要があります。時間が経ってから注意しても、叱っている理由が犬に正しく伝わりません。
よいことをした瞬間に「即ほめる」
同様に、「今ほめられている理由」を明確に関連付けるために、その場でほめることが大切です。行動から2~3秒以内に、優しい声やおやつでほめてあげましょう。高いトーンの声や笑顔は、犬にとってポジティブな記憶を強めるサインになります。
何度も繰り返し教えて「長期記憶」に刻む
新しいコマンドやルールを教えるときは、繰り返し練習して定着させることが重要です。一度できてもそこで終わりではなく、日を変えて何度も成功体験を積ませましょう。
犬は「成功→ほめられて嬉しい」という感情を繰り返すうちに、長期記憶として保持できるようになります。
嫌な記憶は楽しい記憶で「上書き」してあげる
嫌な経験も上書きによって薄められたり、新しい印象に置き換えられたりする可能性があります。病院嫌いな犬には、病院で注射を頑張った後に大好きなおやつをあげるようにするなど、嫌な経験の後にポジティブな経験をさせることが有効です。
そうすることで、犬にとって「病院=嫌な場所」から「病院=いいこともある場所」へ記憶が塗り替わっていく可能性があります。
犬が年をとると記憶力はどうなる?
年齢を重ねると、犬の記憶力や学習スピードは少しずつ低下します。10歳を超えたころから「イヌ認知機能不全症候群(CCDS:canine cognitive dysfunction syndrome)」を発症するケースもあります。
記憶力の低下の緩和や予防は、毎日の生活習慣から。食事は栄養バランスのよい総合栄養食をベースにしましょう。散歩は時々ルートを変更するといい刺激になります。知育おもちゃを使った遊びは、適度な刺激となり、認知機能の維持に役立つ可能性があります。
【Q&A】犬の記憶力や認知機能に関わるよくある疑問

Q:犬は久しぶりの人を覚えている?
A:多くの場合、犬は久しぶりでもその人のことを覚えています。
犬はその人を重要な存在だと認識すれば、匂いや声、姿など複数の手がかりと結び付けて、長期記憶に残す可能性があります。
例えば、久しぶりに会った人に尻尾を振ったり、気付く様子を見せたりする犬も多いようです。ただし、相手との関わりが浅かったり、記憶として十分強く定着していなかったりすれば、最初は「この人は誰だっけ?」と迷うような反応をすることもあります。
Q:犬は飼い主をいつまで覚えている?
A:数か月~数年、あるいは一生覚えている可能性があるという見方が多いようです。
ただし「全ての犬が必ず○年間覚えている」というわけではなく、関係性や記憶の定着のしかた、個体差などによって異なります。
Q:犬は過去の記憶を持っている?
A:はい。ただし、全ての過去の記憶を保持しているわけではなく、特に感情や経験、何らかの意味と結び付いたものが記憶されやすいと考えられています。
犬は過去の体験や場所などを結び付けて記憶する「連想記憶」が得意という見方もあります。また、嫌な経験を上書きして記憶を変える可能性のある例も報じられています。
Q:犬は何分で忘れる?
A:短期記憶に限れば、「数秒~10秒程度」という実験結果があります。
ただし状況や個体により異なります。
記憶の“忘却”には段階があり、「中期記憶」「長期記憶」など、反復や意味付け、感情との結び付きがあれば、数分や数時間、数年にわたって残る可能性があるようです。
Q:うちの子はもうシニア犬。記憶力を維持させることはできる?
A:はい、可能性があります。
認知機能低下を完全に止めることは難しいものの、知育遊びや運動、適切な栄養、環境刺激などで進行を遅くできることが研究でも示唆されています。
Q:この症状は老化? それとも別の病気?
A:認知機能障害以外にも、甲状腺機能低下や腎不全、痛み、関節疾患などが行動変化の原因になることがあります。
異変を感じたらまず動物病院で総合診察を受けることをおすすめします。
犬の記憶力をサポートするアイテムを紹介
カインズオンラインショップでは、犬の記憶力をサポートするためのアイテムを取り扱っています。
知育おもちゃは、犬が自分で考えて動く機会を増やし、日常生活に良い刺激を与えることができます。遊びや課題への挑戦が増えることで、学習意欲や探索行動をサポートし、認知機能の維持に役立つ可能性があります。

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遊びながら“考える力”を育てる知育トイ。おやつを取り出す仕掛けで犬が自分で考えて動くことで、集中力や思考力、記憶の刺激につながります。雨の日の室内遊びや留守番時にも最適です。

おやつ探しとロープ遊びが一度に楽しめるトリーツトイ。嗅覚・触覚・体の動きを使って遊ぶことで、認知機能の維持や気分転換に役立ちます。毎日の遊びに気軽に取り入れられます。
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※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合がございます。
※商品などの紹介は、本記事の獣医師の監修外であり、編集部による情報提供です。
まとめ
犬は人間より忘れっぽい部分もあるものの、大好きな人や楽しい思い出はいつまでも心に刻んでいます。一緒に暮らす中で、愛犬には嬉しい体験をたくさんさせてあげたいものですね。そうすれば、あなたと愛犬は宝物のような記憶を共有して生きていくことができるはずです。







