更新 ( 公開)
漫画家(元トリマー/JKCB級ライセンス取得)2018年よりドッグトレーナーの漫画「DOG SIGNAL」をKADOKAWAコミックブリッジにてWEB連載中。
私は今年で漫画家歴33年目のアラフィフ世代で、昭和後半くらいから現在まで犬を取り巻くいろんな『常識』が大きく変動していくのをリアルタイムで見てきました。
そして、たった数十年で同じ生き物に対する『常識』がこうも変わるものかとしみじみ驚いています。今回はその辺を書いてみようかと思います。
目次
- 【昭和】犬はただのペット。今では犬の考えられない“犬”に対する『普通』
- ひたすら犬への想いを募らせていた学生時代
- 【平成】あの時もっと知っていれば…!今でも後悔が残る変な『犬の常識』
【昭和】犬はただのペット。今では犬の考えられない“犬”に対する『普通』
初めて飼った犬、雑種のペロ
私の記憶の中の一番はじめの愛犬は幼稚園の頃です。 狭い実家の額ほどの小さな庭の犬小屋で飼っていました。名前は『ペロ』。現在では、犬も家の中で家族と一緒に暮らすことが常識になってきていますよね。しかし、私が生まれた昭和40年代は家の中で犬を飼っている家などほとんどなく、犬を飼うといえば庭や玄関先に犬小屋を置いてそこにつないで飼うというのが普通でした。
ペロはその前に両親が飼っていた犬が産んだ子でした。名前は私がつけたらしいのですが、ペロが子犬の頃の記憶は私にはありません。記憶があるのは幼稚園の頃だけです。帰宅して家に誰も家にいない時、庭でペロと一緒にいて寂しさを紛らわせたり、塗装業だった父親と一緒に犬小屋を塗ったりした記憶があります。 今の私が見たら「犬も家族なんやから家に入れてあげて!!」とブチ切れそうですが、その時代はそれが『普通』だったのです。だから、当時から今と変わらず犬が大好きだった私ですが、何の疑問も持たずにその環境を受け入れていました。
幼いなりに可愛がり「うちの子が幸せ」と信じていた
一歩外に出れば野良犬も普通にいて、飼い犬でも放し飼いでひとりで近所でウロウロしてる犬も結構いたあの頃。そんな中で、赤い首輪と赤いリードに可愛い犬小屋もあるペロの方が幸せだと思っていました。動物病院など見たこともなく、近所の公民館に集まって狂犬病注射をするくらいの世界です。そのため、当然不妊手術などもしておらず、 外に繋いだ犬は野良犬や放し飼いの犬と交尾して子犬を産んでいました。そして生まれた子犬にもらい手がなければ飼い主が捨てに行くという、現在では犯罪行為となることも、当時は『一般的』なシステムだったのです。 ペロも床下で子犬を産み、もらい手のない子犬達は捨てられました。母親の自転車の後ろに乗せられて子犬を捨てに行き、ものすごく悲しかったことを鮮明に覚えています。
どんなに好きでも犬はあくまで“犬”
そして、当時の私なりに大事に可愛がっていたペロもある日いなくなりました。
5~6歳くらいのことなので記憶は飛び飛びですが、ペロがいなくなって母親を問い詰めたら「山に捨てた」と言われました。そこから大人になるまで、『ペロは親に捨てられた』と思い込んでいましたが、実際は当時ペロが亡くなって山に埋めに行ったのだそうです。 こんな話も今書くと酷い話ですが、当時は飼い犬や飼い猫が死んだら山や公園など土のある場所に埋葬するのが『普通』だったと思います。動物病院に連れて行くことすらなかった時代、当然ペット霊園などもありませんでした。飼っている動物にそんなにお金をかける時代ではなかったです。
そういえばペロの時代は犬のごはんも残飯が当たり前。白飯に味噌汁をかけたものや、おかずの残りや魚の煮汁と骨をトッピングしたもの、が多かったです。人のおかずには玉ねぎなど犬が絶対に食べてはいけないものも平気で入ってたはず。そう言った原因で亡くなる子も多かったのかもしれないですね。 犬の寿命も長くありませんでした。
昭和58年の犬の平均寿命が『8歳にも満たなかった』という調査結果も出ているそうです。
ひたすら犬への想いを募らせていた学生時代
ペロの死後、図鑑の犬の部分だけひたすらに読んで暗記したり、近所の犬の写真を撮らせてもらってアルバムを作たりと、私がどんなに犬が好きか伝えても親は犬を飼ってくれませんでした。 理由は『死んだら可哀想だから』。 それでも私は、犬のしつけ方の本や当時すでに創刊していた「愛犬の友」という分厚くて重い犬専門誌をお年玉やお小遣いを貯めては買っては、ぼろぼろになるまで読んでいました。いつかまた犬と暮らす時のために。雑誌に掲載されている9割がモノクロの犬の写真でした。しかし、それを見ながら一生懸命に鉛筆でスケッチブックに犬の絵を描いてました。
【平成】あの時もっと知っていれば…!今でも後悔が残る変な『犬の常識』
今は消えつつある、力で教えこむ犬へのしつけ法
『愛犬がおしっこを失敗したら、犬をその場に連れて行き、鼻先を床に押し付けて、『ダメ!』といいながら新聞紙を丸めた棒で鼻のそばの床を叩く』
当時、購入した犬のしつけ本に白黒のイラスト付きで、書いてあった叱り方です。その内容がとても衝撃的で、今でも強く印象に残っています。
『あとからその場に連れて行って叱っても意味がない』『体罰はダメ』『褒めてしつける』が主流になった現在とは真逆の手法。でも、専門の本に「これが正解ですよ」と書いて あれば、読んだ人は信じますよね。 私はその頃犬を飼ってはいなかったけど、当時は犬の頭を手で叩いたり、棒を持って犬散歩してる人もよく見かけました。犬 のしつけは『体罰式』でした。
ようやく叶った念願の愛犬との暮らし
そうして犬を飼えない間も犬のことばっかり考えていた私が、とうとう愛犬を迎えたのは高校3年生、17歳の頃です。アルバイトして貯めたお金で高校卒業後はトリミング専門学校に行くことが決まった高3の夏でした。当時シェルティーのブリーダーをしていた叔父から、生まれたオスの子犬をプレゼントしてもらったのです。名前はマーシーとつけました。
やっと迎えた愛犬は可愛くて可愛くて、愛情を持ってきちんとしつけもしようと意気込んでいました。
しかし、やはり当時もまだ犬のしつけの『常識』は今と比べると随分ずれていて、悪い事をしたら鼻先を指で弾く、などの体罰が『正しい叱り方』として語られていたのです…。
そんな『常識』を通ってきた私が考える、愛犬と仲良く楽しく暮らしていくために必要なことを紹介しています!
是非、以下から後編の
【犬常識の遍歴】続・人気犬マンガ家の実体験から学ぶ!様々なしつけ法に惑わされず、愛犬と仲良くなる方法♡もご覧ください!