更新 ( 公開)
2009年に犬服型紙サイト『milla milla』を立ち上げ、簡単に自宅で手作りできる犬服型紙と作り方を開発。2014年に『日本ペット服手作り協会®』を設立。
誰もが簡単に犬服を作れる犬服型紙販売サイト『milla milla』を立ち上げた武田斗環(たけだとわ)さんに聞く、愛犬の服作りの魅力とは?
目次
- 最初は犬に服なんてありえないと思っていた、犬服デザイナーの武田斗環さん
- ただオシャレなだけじゃない。ペット用品メーカーで学んだ犬服の必要性
- 初心者でも作れる 犬服型紙販売サイト『milla milla』を創業
- 女性の自立支援のため『日本ペット服手作り協会®』も設立
- 手作りの犬服を通して、人々が尊重し合える社会を目指す
- 犬服事業を始めて約15年。ゴールのない商品開発「一生挑戦」
最初は犬に服なんてありえないと思っていた、犬服デザイナーの武田斗環さん
「犬に服なんてありえへん」
今から20年近く前、ニュージーランドの大学でファッション・デザインを学んだ武田斗環さんは、心の中でこうつぶやきながら、ペット用品メーカーで毎日犬用の服を作っていました。
今でこそ犬も服を着ている姿は日常的になりましたが、当時はまだ珍しいものでした。
「本当は人の服作りがしたかったんです。それで就職選考の時につい、『アパレル』の文字に飛びついてに応募してしまい……入社後に、ペット用のアパレルということを知ったんです(笑)」
入社当初は犬に服を着せることの意義を理解できなかったという武田さんでしたが、仕事を通して少しずつ犬服の大切さを学んでいきました。
その後、武田さんはさらなる犬服の普及を目指して、犬服の型紙を販売する会社を設立します。さらに、2014年には『一般社団法人日本ペット服手作り協会®』を立ち上げ、犬服作りの講師の育成や、講師同士が協力し合える場所の提供も積極的に行ってきました。
こうした武田さんの取り組みによって、現在では日本全国に犬服作りの教室が広がっています。
現在、武田さんの製作した型紙を使って立ち上がったブランドは100以上。協会に所属する認定講師も約100人にまで登ります。
武田さんにとって犬服とは? 武田さんの活動と目指す社会について伺いました。
ただオシャレなだけじゃない。ペット用品メーカーで学んだ犬服の必要性
子どもの頃からもの作りが大好きだった武田さんは、洋裁や編み物が得意で、よく洋服やバッグ、あみぐるみなどを夢中になって作っていました。
留学先のニュージーランドでも服作りを学ぶため、大学でファッション・デザインを専攻します。しかし卒業後、日本に帰国し、思いがけずペット用グッズメーカーに入社。そこで犬用の服を作る部署に配属され、デザイン企画やマーケティングなどを担当しました。
はじめ、犬を飼ったことのなかった武田さんは、「犬に服? どうして?」と疑問を持ちながら仕事をこなしていました。しかし必死に犬の服作りに向き合っていくうちに、仕事に面白さを感じ始めます。
「純粋に新しい製品を作るのが楽しいな、と思うようになりました。毎シーズン、帽子やズボンなど新しいグッズが出てきて、『こんなの犬用で作れるんや!』って。好奇心もありましたし、帽子みたいに形が難しいものを犬用で作るって、普通そんな機会ないですよね。『それならやってやろう』という気持ちになりました」
最初は、犬服をつくる工程に魅力を感じ仕事に夢中にのめり込んでいった武田さんでしたが、やがて犬の服にはファッション以外にも、マナーや健康維持など、様々な役割があることを知ります。
「犬服は、マンションのエレベーター内やカフェのような室内では、愛犬の毛の飛散をかなり防ぐことができて、衛生面で役に立ちます。また、夏は直射日光から皮膚を守ったり、服を少し濡らしてから着せれば暑さを和らげたりもしてくれますし、冬は防寒としての機能も果たします。毛をまとっているとはいえ、寒さに弱い犬種もいます。真冬の寒い時期には、暖かい服を着せてあげれば安心なんです」
ふだんの生活以外でも、手術後に患部をカバーするための病後服や、足腰が弱くなった老犬の歩行をサポートする介護服など、犬の服の役割は多岐に渡ります。
武田さんは仕事を通して犬の身体のことや、犬服作りの基本、デザインする上で配慮することなど、たくさんのことを学びました。
そして入社から2年後、会社を退職。同僚4人で犬服ブランドを立ち上げ、会社を設立しました。
「当時、犬に服を着せている方はまだ多くはありませんでしたが、服の必要性を知り、業界としての伸びしろを感じたんです。この先、必ずニーズが増える、そんな発展途上のものに挑戦していきたい気持ちになりました」