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作家、獣医師。15歳の時に書いた第44回講談社児童文学新人賞佳作を受賞し、作家デビュー。一方、麻布大学大学院獣医学研究科で博士号を取得、獣医師としても活躍。
夏の暑さも落ち着き、過ごしやすくなる秋。散歩ができる時間帯も増え、愛犬とのお出かけも楽しくなる季節ではないでしょうか。
お子さんがいらっしゃる家庭では、夏休みで家にいた家族が、急にいなくなって、犬も普段の生活リズムを取り戻し始める頃かもしれません。
今回はそんな秋に気をつけたい愛犬の体調管理についてお伝えしていきます。
目次
- 夏から秋への気温の変化で、愛犬の消化器・泌尿器に影響
- 秋に多い台風。騒音・気圧の変化で愛犬が体調を崩すことも
- 秋の乾燥や換毛期による 、愛犬の皮膚トラブル対策
- 秋の食べ物、ぶどうや野生きのこは愛犬に危険!
- 秋は行楽の季節。アウトドアで気を付けたい愛犬の誤飲・ノミ&マダニトラブル
夏から秋への気温の変化で、愛犬の消化器・泌尿器に影響
朝晩は少し涼しくなり始める秋。1日の気温の変化により、消化器のトラブルが起こることもあります。また、だんだんと涼しくなり、飲水量が減ることで、泌尿器トラブルになる可能性もあります。
季節の変わり目は、特に注意して見てあげましょう。
胃腸炎
嘔吐や下痢などの消化器症状が出ることを胃腸炎といいます。消化器症状が出ていないか、いつも通り食欲があるかをチェックしてあげましょう。この2つの項目は、愛犬の体調を知るためのいい材料です。
少し調子が悪くても、犬はそれを私たちに言葉で伝えることはできません。
例えば頭痛や関節痛、喉が痛い、ちょっとめまいがするなどは、汲み取ってあげるのも難しいです。一方、嘔吐や下痢などの消化器症状は、犬が出してくれるわかりやすいサインだと言えます。
本当はほかにも体調が悪いところがあるかもしれませんが、少なくとも、愛犬の消化器トラブルには気付いてあげられるとよいですね。
泌尿器系のトラブル
水分摂取量が足りず、おしっこの量が減ったり、古いおしっこをいつまでも膀胱に溜めてしまうと、膀胱炎につながります。
夏場は熱中症対策として特に気をつけて水を飲ませていたかもしれませんが、秋以降もしっかりと水分摂取をさせましょう。特にシニアは、脱水してしまいがちですので注意が必要です。
あまり自分からお水を飲んでくれない場合は、ドライフードで与えていたエサを数割程度ウェットフードに変更したり、水におやつを浮かせて飲水を促すのもよいでしょう。
当院では、飲水量が少ない犬には、K9ナチュラルの『グリーントライプ』いうトリーツを1〜2粒水に浮かせることをお勧めしています。
新鮮な水をいつでも飲めるような環境作りは、季節を問わず大切です。普段から心がけましょう。
秋に多い台風。騒音・気圧の変化で愛犬が体調を崩すことも
秋は本格的な台風シーズンでもあります。強風や雷など、ふだんと違う物音にストレスを感じ、具合が悪くなる犬もいます。
また、台風による気圧の変化により、人間では偏頭痛が起きたり、関節リウマチによる痛みが悪化するという報告もあります。犬に対しては、こういった症状を確認することは困難なので、どこまで気圧の影響があるかわかりませんが、台風後に体調をくずす犬が多いのは確かです。
てんかん発作の既往歴がある犬も、気圧の変化で発作が起こりやすくなるので注意が必要です。台風の時期だけ抗てんかん薬を増量する、といった対応をする場合もあります。疑わしい場合は、天気と発作を記録しておき、かかりつけに相談してみるとよいでしょう。
風や雷など、大きい音を怖がる犬には、テレビを少し大きな音でつけっぱなしにして外の音が気にならないようにしてあげるとよいでしょう。知育トイなどを使って室内でいっぱい遊んであげるのもおすすめです。頭も体もたくさん使って疲れた状態で、早めに寝かせてあげられると安心ですね。
台風が怖い飼い主さんもいらっしゃるかと思いますが、なるべく普段通りに振る舞って犬を安心させてあげてください。飼い主の不安を、愛犬は敏感に感じとります。
ゲリラ豪雨や急な雷などに対応することは難しいですが、近年では台風は数日前から来るのがわかります。愛犬が「台風が苦手」だと分かっている場合は、数日前から気持ちを穏やかにさせるサプリメントを飲ませてあげるのもよいでしょう。
日本全薬工業株式会社の犬猫用サプリメント『ジルケーン』は不安や恐怖を緩和する効果が期待できるので、おすすめです。ネットでも購入は可能ですが、特に不安傾向が強い場合は、獣医師の指示のもとで増量することもありますので、使用する際は必ずかかりつけの獣医師に相談してみてください。
また、腸内細菌を整えることで、ストレスケアをするというコンセプトで開発されたピュリナの犬用サプリメント『カーミングケア』もあります。台風に伴って、お腹の調子が悪くなってしまう子に、おすすめしています。
ただ、このサプリメントは、飲み始めて2ヶ月後に効果が最大になり継続する、という研究結果があります。即効性はないので、胃腸に不安がある犬には日頃から飲ませてみるのもよいですね。
秋の乾燥や換毛期による 、愛犬の皮膚トラブル対策
秋から冬にかけて、空気が乾燥してくると、犬の皮膚にトラブルが起こることもあります。
犬は毛に覆われていて、なんとなく皮膚が強いような気がしますが、犬の皮膚は人の皮膚の1/3ほどの厚さしかありません。特に毛が薄かったりバリカンで刈ったりする下腹部は、乾燥により痒みや赤みが出たり、掻くことにより皮膚バリアが傷ついて細菌が増えてしまったりすることがあります。
下腹部などの毛が薄い部分の皮膚を見て、縦に白い筋が入っている時は、皮膚が乾燥しているサインです。
毛がなかったり薄かったりする部分の保湿には、犬用の保湿剤を使ってあげてください。
以下の2つがおすすめの製品です。
片川先生おすすめの犬用保湿剤
- N’s driveの『スキンバリア・ヴィア』。人の高級化粧品にも使われているナールスゲン・セラミドを配合。高保湿なため、トラブルのある肌の改善に使われています。
- デルモセントの『エッセンシャル6』。毛がある部分もカバーしたいときにスポット式で使えます。週に1回首に垂らすだけで、皮膚の脂性や乾性バランスを整える効果を期待できます。
また、一部の犬種では、夏毛から冬毛に変わります。春ほどではありませんが、毛が抜け代わる際に毛玉ができてしまうこともあります。こまめにブラッシングやシャンプーなどのお手入れをしてあげるとよいでしょう。
ご自宅でシャンプーをする際は、毛のもつれがあると、タオルドライのときに毛玉になってしまいます。かならずシャンプー前にブラッシングを行い、もつれを解いておくとよいでしょう。
秋の食べ物、ぶどうや野生きのこは愛犬に危険!
お店に行くと美味しそうなぶどうがたくさん並んでいますが、ぶどうは犬にとっては危険な毒物です。
中毒の原因物質は特定されてはいませんが、ぶどうを犬が食べてしまうと腎臓が障害され、最悪の場合死んでしまいます。感受性には個体差があると言われており、大量に食べても大丈夫な場合から、数粒で腎障害が発生するケースまであり、「少しだから大丈夫」と安心することはできません。
また、レーズンや、皮だけ、実だけでも危険性は変わりません。むしろ乾燥して成分が濃縮しているレーズンの方が危険だという説もあります。
もしも愛犬がぶどうをあやまって食べてしまったら、すぐに動物病院に行きましょう。食べてすぐであれば、吐かせることができるかもしれません。
時間が経ってしまっている場合も、腎臓に異常が起きている場合もあるので、しっかり検査をしてもらいましょう。嘔吐などの消化器症状が出ることが多いですが、無症状でも腎障害が進行していることもあるので油断は禁物です。入院が必要になることも多いです。
たまに「美味しそうに食べるから」「ほしがるから」といって、ぶどうを犬にあげてしまう人がいますが、絶対にやめましょうね。
秋は行楽の季節。アウトドアで気を付けたい愛犬の誤飲・ノミ&マダニトラブル
外でも過ごしやすい季節になると、犬を連れて外出する機会が増えると思います。キャンプなどを楽しむのにもいいシーズンですね。
野生きのこに限らず、山には種なども落ちているかもしれません。大きい種を噛まずに飲み込むと、消化管に詰まる可能性もあるので合わせて注意しましょう。
季節は関係ありませんが、タバコの吸い殻や腐った食品などを食べてしまうのも心配です。普段から、拾い食いをさせないようにトレーニングを行っておくと、出かけた先でも安心ですね。
また、口にくわえたものをとりあげるのも意外と難しく、大声で叱ると「とられる!」と思って慌てて飲んでしまう、というのもよくある話です。普段から、口に入れたものを渡してもらうトレーニングも合わせて行っておくとよいでしょう。
お出かけする際には、愛犬のノミ・マダニ予防を忘れずに行いましょう。特にマダニは、猫や人に感染すると死亡率の高いSFTSという病気を運んでいることがあります。
最近では、ペットショップなどで売っているスポット剤に耐性のあるノミの出現も報告されています。定期的に動物病院で、ノミ・マダニの駆虫薬を処方してもらいましょう。
犬をアウトドアに連れて行かなかったとしても、知らず知らずのうちに服やカバンにくっついたノミやマダニを連れ帰ってしまうこともあります。
飼い主さんがノミやマダニ噛まれないためにも、山やハイキング、キャンプなどに行く際は、長袖長ズボンを着る、サンダルでは行かない、など基本的な対策を徹底しましょう。