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こころ鳳ペットクリニック、大阪どうぶつ夜間急病センター所属。小動物臨床に従事。犬猫をはじめ、鳥類、爬虫類、両生類、霊長類など様々な小動物の診療・手術執刀を行う
飼い犬が脱走して行方が分からなくなってしまうと不安や恐怖、後悔が募って、「事故に遭っていたらどうしよう」などと悪い想像ばかりしてしまうでしょう。そうした中でも可能なかぎり早急に緊急相談先へ連絡することが、早期発見に繋がります。今回の記事では、犬が脱走したときに飼い主が取るべき行動や、脱走した原因の見分け方、犬を見つけた場合の対処方法を紹介します。脱走を予防するためにできることも解説しますので、愛犬と再会し、二度と手放さないために参考にしてください。
目次
- 犬が脱走したときの緊急相談先
- 犬が脱走したときに飼い主が出来ること
- 犬が脱走した原因と見分ける方法
- 脱走した犬を見つけたら
- 犬の脱走を防ぐためにできること
- まとめ
犬が脱走したときの緊急相談先
犬の脱走に気づいたら、まずはすみやかに以下の窓口に相談してください。
保健所、動物愛護センター
犬を見かけた近隣住人が保健所や自治体の動物愛護センターに通報して、保護されている可能性が考えられます。環境省の調査によると、2021年度に所有者不明の犬が引き取られた数は21,238頭です。そのうち8,402頭は飼い主に返還されていて、所有者が分からないままの犬は基本的に譲渡されています。
迷子犬を保護する期間は自治体によって異なりますが、原則1週間程度です。保護期間が過ぎると保護犬として譲渡されたり、場合によっては殺処分されたりする可能性もあります。愛犬と再会するためにも、住んでいる市町村と近隣エリアの保健所や動物愛護センターに問い合わせましょう。保護されている迷子犬の情報は、以下のページで確認することもできます。
警察署、交番
巡回中の警官が発見して、警察署や交番で一時的に保護されている可能性があります。警察ではペットも遺失物として扱われますので、遺失物届けを出すことも可能です。届け出で脱走した犬の情報と連絡先を詳細に伝えると、巡回時に似た犬がいないか探してもらうことができます。見かけた際はたとえ捕まえられなかったとしても、犬がいた場所や様子を教えてもらえるので、家族だけで探すよりも多くの情報を得られるでしょう。
動物病院
脱走中にケガや事故に遭って、治療を受けるために動物病院が一時的に預かっている可能性もあります。動物病院に連絡して、愛犬が保護されているかどうか確認しましょう。犬は日を重ねるごとに遠くに行く可能性が高まるので、脱走に気づいた時点ではまず近隣エリアの動物病院に連絡してみると良いでしょう。動物病院で保護された場合は、治療後に保健所や動物愛護センターへ保護収容されます。
犬が脱走したときに飼い主が出来ること
犬が脱走したときは、自治体や警察、動物病院を頼るのが一番ではあるものの、連絡を待つ間に「何か自分でも出来ることはあるのかな」とやきもきする方も多いでしょう。ここでは、飼い主が迷子になった愛犬を探すために出来る取り組みを紹介します。
犬が脱走した方向を認識する
犬がどの方面に逃げたのかしっかり覚えておきましょう。脱走時は、逃げる姿に気づいていたのに捕まえられなかったことで気が動転してしまい、前後の記憶が曖昧になってしまうこともあると思います。ですが、相談先の選定や捜索に役立ちますので、一度冷静になって当時の状況を思い返してみましょう。
SNS、掲示板で迷子犬の情報を収集する
犬を見かけた人が、TwitterやFacebookなどに書き込んでいる可能性があります。また、迷子犬専門の掲示板もあり、捜索中の迷子犬や、保護した迷子犬の情報が集まっています。住所や犬種などで検索して、掲載されている写真や特徴などから愛犬かどうか判断してください。
ポスターやSNSなどで情報発信する
運動能力の高い犬は、1日に何十kmも移動してしまうことがあります。日を追うごとに愛犬の移動範囲が広がるため、家族や知人だけの力で探すのには限界があるでしょう。そこで、ポスターを作って近隣に貼ったり、SNSで呼びかけたりして、目撃証言を集めましょう。
証言を受け取るためには住所や連絡先を載せる必要がありますが、個人情報の範囲には注意してください。掲載するのは、以下のような最低限の情報に留めましょう。
・愛犬の写真
・犬種、性別、年齢、サイズ、毛色
・脱走当時に身に付けていた首輪や服など
・名前や普段の呼び名
・脱走した場所
ペットの迷子捜索サービスを利用する
迷子のペット捜索を専門に行う探偵サービスがあります。ポスターの作成や捜索活動を代わりに行ってくれるので、家族だけで探すよりも早期の発見を期待できます。料金はサービスによって異なりますが1日あたり数万円で、捜索を延長する場合は追加で料金が発生する仕組みです。
・犬を見つけた際の連絡先・氏名(仮名でもOK)
犬が脱走した原因と見分ける方法
大切な愛犬を捜索するために、まずは脱走した原因を把握しましょう。代表的な原因は以下の5つです。
首輪やリード類
散歩中に首輪やリードが外れてしまった場合はすぐに気づけますが、外飼いの犬の場合は気づくのが遅れる上に、脱走した方向を判別するのが難しいでしょう。外れてしまうのは、サイズの合わない首輪や劣化しているリードを使ったり、きちんと装着できていなかったりしたことが原因です。
好奇心旺盛な性格
好奇心旺盛な性格をした犬は、散歩中や窓から外を見た時に興味を惹かれると、追いかけてしまうことがあります。散歩中に犬が突然駆け出すと、飼い主の手からリードが離れてしまい、そのまま迷子になってしまいます。室内の場合は来客や宅配便などで玄関を開けた時や、車に犬を乗せた状態で扉の開閉をする時などにも脱走する可能性があるでしょう。
運動不足によるストレス
犬は運動不足になるとストレスが溜まります。その場合、体を動かしてストレスを発散するために脱走を図る可能性があります。悪天候がつづいていて散歩ができなかったり、長時間ハウスやケージの中で過ごしていたりする場合は、運動不足が原因の可能性が考えられるでしょう。
大きな音、光への恐怖心
犬は花火、雷、暴風雨などの大きな音や強い光に恐怖を感じて、吠えたり、震えたり、身を固くしたり、逃走したりといった反応を見せる習性があります。愛犬が日頃から大きな音や光にこうした反応を見せていて、逃走時にも花火や悪天候が発生していた場合は、恐怖心が原因の可能性が高いでしょう。
犬の本能
愛犬がオスで去勢手術を行っていなかった場合、発情したメス犬のフェロモンの匂いを嗅ぎつけて脱走した可能性が考えられます。発情期のフェロモン臭を嗅ぎ取ったオスは、食欲不振や苛立ちなど普段とは違った行動を起こします。そうした変化が見られた場合は、犬の本能による脱走である可能性が濃厚です。トレーニングを行っていても犬の本能を抑えることは難しいため、愛犬と再会できた後は去勢を検討してください。
脱走した犬を見つけたら
捜索中に愛犬の姿を見つけたら、どう対処したら良いのでしょうか。犬が飼い主を認識しているケースと、認識できていないケースに分けて解説します。
犬が飼い主を認識している場合
飼い主のことをチラチラ見る素振りを見せているときは、犬は飼い主の存在をしっかり認識しています。名前を呼びかけたり、「おやつ」「待て」など愛犬が反応しやすい言葉を発したりすることで、犬の方から近づいてもらいましょう。追いかけるとさらに逃げる可能性もあるので、冷静に対応することが大切です。
犬が飼い主を認識していない場合
犬がおぼろげな目をしていて、視界に飼い主がいることに気づいていない場合は、興奮状態にあって飼い主の呼び声にも気づかない可能性が高いでしょう。その場合はお気に入りのおやつやおもちゃを近づけて、犬の興味を引けるか試してみてください。さらに逃走した場合は進んだ方向をしっかりと覚えておいて、今後の捜索に活かしましょう。
犬の脱走を防ぐためにできること
愛犬が無事に帰ってきたら、二度と離れ離れにならないようにしっかりと対策しましょう。
首輪、リードの痛み具合を点検
毎日の散歩で使う首輪やリードは、劣化が進むスピードも早いため、定期的に買い換える必要があります。合皮素材や留め具がプラスチックのものは、とくに壊れやすいため注意してください。新品の首輪やリードでも購入時点で破損している可能性も考えられるので、犬に装着する前によく点検しましょう。
飼育環境の見直し
室内飼いの犬が外へ脱走するのを防ぐために、飼育環境を見直すことも大切です。室内犬の脱走対策として、玄関や窓の前に柵やゲートを設置する方法があります。ホームセンターで数千円〜1万円台で販売されていますので、自宅の広さや犬の体長に合った製品を購入してみてください。
愛犬への接し方を改善
愛犬と信頼関係を再構築することも、脱走を防ぐために効果的です。「おいで」「待て」といったトレーニングを行って、目の届く範囲から離れてしまうのを防ぎましょう。
去勢手術
オス犬の場合、去勢手術を行うことも脱走対策の1つです。メス犬を妊娠させてしまったり、他のオス犬との喧嘩を抑えたりする効果もあるので、ぜひ検討してください。
迷子対策アイテムの着用
首輪に名前や連絡先が書かれた鑑札や迷子札を着用したり、マイクロチップを入れたりしておくことで、保健所や動物愛護センターなどに保護されると同時に身元が分かります。譲渡や殺処分も防げるため、ぜひ取り入れてみてください。
まとめ
犬が脱走したときは自力で探そうとすると、飼い主自身まで心身の健康を害してしまいます。大切な愛犬を心配する気持ちは痛いほど理解できますが、保健所や警察、動物病院などの力を頼りながら、近隣住人に向けて情報発信して、無理のない範囲で捜索することが大切です。無事に愛犬と再会できたら、二度目の脱走を防ぐために対策しましょう。そのためにも、まずは一刻でも早く愛犬が見つかることを心から祈っています。