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あおば動物クリニック所属
犬が草を食べる理由にはさまざまな説があるものの、興味や身体的、精神的な健康上の問題が関わっているといわれています。いずれにしても草を食べることには健康リスクが潜むため、適切に対処することが大切です。今回は、犬が草を食べる理由やそのリスク、適切な対処法などについて詳しく解説します。
目次
- 犬が草を食べる理由
- 犬が草を食べることによるリスク
- 犬が食べると危険な草の種類
- 犬が草を食べる場合の対処法
- まとめ
犬が草を食べる理由
犬が草を食べる様子から草を食べる大体の理由を予想できます。その理由について、詳しく見ていきましょう。
ストレスが溜まっている
犬はストレス解消を目的に、草を食べることがあります。ストレスが溜まる状況として、散歩中や運動不足、寂しさを感じたときが挙げられます。たとえば、長時間の屋内生活や飼い主の不在による寂しさなどが原因として考えられるでしょう。このような状況下では、犬は自らのストレスを軽減するために草を食べる行動に出ることもあります。
栄養を補給しようとしている
犬は栄養補給のために、草を食べることもあります。総合栄養食中心の食事をしていれば、基本的に栄養が不足することはありませんが、犬が偏った食事を摂取している場合は注意が必要です。草には植物性の食物繊維やビタミンが含まれています。これらの成分が不足している状況では、犬は自然の本能に従って草を摂取して、不足している栄養素を補給しようとする習性があります。
消化不良や空腹を解消するため
犬が胃腸に不調を抱えていることも、草を食べる原因の一つです。犬は草を摂取することで、胃腸の働きが促進され、消化不良の症状が改善されます。また、草に含まれる食物繊維は胃腸の動きを刺激するため、便通の改善にも役立ちます。そのため、犬は消化不良を感じると、草を食べて腸のはたらきを助けようとするのです。
ほかにも、犬は空腹なときに草を食べて、一時的に空腹を満たそうとする場合があります。草を摂取することで胃の中が満たされ、一時的な満腹感を得ることができます。しかし、草は犬の主食ではありません。空腹感を解消するために草を大量に食べてしまうと、1日の栄養バランスが崩れてしまうリスクがあります。
単に楽しんでいる
犬は興味本位で草を食べ、その食感や香りを楽しむこともあります。また、草を噛む行為自体がストレス発散やリラックスに効果的です。そのため、草を食べることが犬にとっての一種の娯楽であると考えられます。
このようにさまざまな理由がありますが、愛犬が草を食べる行動が異常な頻度である場合や健康上の問題が見られる場合は、獣医師に相談することをおすすします。
犬が草を食べる理由はさまざまですが、愛犬が異常な頻度で草を食べる場合、健康上の問題が見られるリスクがあります。犬の健康のためにも、念のため獣医師に相談してみましょう。
犬が草を食べることによるリスク
草を食べることは、犬にとっていいことばかりではありません。食べた草によっては、最悪の場合死に至る可能性もあります。散歩中道端の草を食べることは、安全や衛生面から避け、対策を行っておきましょう。ここでは犬が草を食べるリスクについて、詳しく解説します。
除草剤がついた草を食べるおそれがある
草が除草剤で処理された場合、それを食べた犬は健康リスクにさらされる可能性があります。除草剤には、犬にとって有害な成分が含まれています。中毒症状には嘔吐、下痢、けいれん、意識障害などがあり、重篤な場合には死に至ることもあります。
病原菌が含まれた草を食べるおそれがある
野外で生育する草には、犬に有害な病原菌が含まれている可能性があります。とくに、感染症にかかった犬の便がついている草などが挙げられます。これらの病原菌にさらされることで、犬は消化器系のトラブルや感染症のリスクにさらされます。
有毒植物による中毒症状を引き起こす可能性がある
庭や公園などで見かける植物の中には、犬にとって有毒な成分を含んでいるものがあります。有毒植物を誤って摂取すると、犬は中毒症状を引き起こします。有毒植物による中毒症状は、犬の健康に深刻な影響を与えることもあるため、自宅や散歩ルートにないかチェックしておきましょう。
犬が食べると危険な草の種類
犬に毒性がある植物とその影響について解説します。基本的に球根系の植物は危険です。次のような植物があるところには、近寄らないようにしましょう。
ツツジ科全般(葉・花)
犬が食べると危険な草の種類の1つに、ツツジ科全般(葉・花)が挙げられます。ツツジ科の植物はツツジをはじめ、ブルーベリー、クランベリー、コケモモ、シャクナゲなどが代表例です。これらの植物に含まれる成分は犬にとって有害であり、中毒症状が現れるかもしれません。多量摂取すると死亡するリスクが高まります。とくに葉と花の両方に毒が含まれているツツジは、他のものと比べて誤って食べてしまいやすいため、注意が必要です。
ユリ科全般
ユリ科の植物には、ユリやチューリップ、ムスカリ、ホトトギスなどが挙げられます。犬がユリ科の植物を摂取すると、嘔吐、けいれん、狂乱、昏睡などの症状が現れる可能性もあります。犬が口にすることを防ぐために、ユリ科の植物が庭や周囲にある場合は、立ち入れないようにしましょう。
アサガオの種子
アサガオの種子は、犬にとって有害な物質を含んでいて、嘔吐、下痢、血圧低下などの症状が現れる可能性もあります。アサガオは、小学校の授業の一環で子供が育てることもあるため、ファミリー世帯の家の前に置かれていることもあるでしょう。アサガオの花に毒はないものの、アサガオを育てている鉢の周りに種が置きっぱなしになっていることも考えられます。事故を防ぐためにも、アサガオには近づけないようにしましょう。
アジサイの葉
アジサイの葉を摂取した犬は、嘔吐、めまい、意識障害などの症状が現れる可能性もあります。犬が庭や公園でアジサイの葉を誤って口にしないよう、十分に注意しましょう。アジサイの花に毒はないものの、犬が葉と花を区別して食べることは基本的にできません。うっかり食べてしまわないためにも、アジサイに近づけさせないようにしましょう。
スイセンの球根
スイセンの球根は犬にとって有害です。摂取すると下痢、嘔吐、中枢神経麻痺、血圧低下などの症状が現れる可能性があります。スイセンはニラと似ていることから、人間でも食中毒になる事故が起きています。犬が立ち入る場所にニラのようなものが生えている場合は、スイセンではないか確認しましょう。
アロエの内部の乳液
アロエの内部の乳液は犬にとって有害であり、摂取すると下痢、嘔吐、胃腸障害などの症状が現れる可能性もあります。アロエを家庭で栽培している人も多いでしょう。また、アロエは傷薬にもなるとのことから民間療法に用いられています。そのため、犬が食べても問題ないと思い込む人もいるかもしれませんが、体に悪影響を及ぼします。飼い主がアロエヨーグルトを食べる際も、犬が口にしないよう注意してください。
犬が草を食べる場合の対処法
犬が草を食べる原因に応じて適切に対処することが大切です。具体的な方法について詳しく見ていきましょう。
体調不良の可能性を踏まえて獣医師に相談する
犬が草を食べる行動が頻繁に見られる場合は、体調不良の可能性も考えられます。食欲減退や元気がない、吐き気や下痢などの症状が見られる場合は、早めに獣医師に相談し、健康状態を確認することが重要です。
また、犬のおしりから、食べた草の一部が出てくることもあります。無理に引っ張り出すと内臓を傷つけるおそれがあるため、自然に出てくるのを待つか、出ている部分を優しく取り除くのが理想的です。草がおしりから長く伸びていて犬が気にしているときは、出ている部分を切ってしまっても構いません。切った場合は、そのことを獣医師に相談する際に伝えるとよいでしょう。
草を食べたことによる体調不良が起きるタイミングは、摂取した植物によって異なります。そのため、2~3日後に体調に変化が現れた場合でも、草を食べたことが原因の可能性があります。獣医師に相談する際は、どのような草を食べたのかを伝えましょう。
ストレスを解消させる
ストレスにより草を食べてしまう場合は、その原因を取り除くことが重要です。たとえば、運動不足でストレスが溜まっている場合は運動を習慣づけたり、スキンシップ不足が原因の場合は十分な愛情を与えたりすることで、犬のストレスを軽減できるでしょう。
また、犬が安心できる飼育環境を整えることも効果的です。他のペットや家族との関係にも配慮し、犬が孤立感を感じさせないようにしてみてください。さらに、新しい犬を迎える場合は、徐々に慣れさせる工夫やトレーニングを行いましょう。
栄養バランスを見直す
栄養不足が原因で犬が草を食べる場合は、食事の栄養バランスを見直すことが大切です。基本的には総合栄養食中心の食事をつづければ栄養不足は解消されますが、獣医師と相談して栄養価の高いフードや栄養補助食品に少しずつ切り替える方法もあります。また、肉や野菜、穀物などの食材をバランスよく組み合わせた自家製の食事を与えることも有効です。栄養バランスの整った食事を継続的に与えることで、犬の草を食べる行動を減らすことができるでしょう。
飼い主が自分でどの栄養が足りていないのかを把握することは難しいため、食事を切り替える際は獣医師に相談してください。犬用のサプリメントは栄養が高濃度で含まれており、結果的に栄養過多になる可能性があるため、安易に与えないようにしましょう。
まとめ
犬が草を食べる理由はさまざまですが、ストレス解消や栄養補給、消化不良の解消などがおもな要因です。また、楽しみや好奇心から草を食べる場合もあります。草を食べる犬に対する対処法としては、ストレスの原因を取り除くことや栄養バランスを見直すことが重要です。草をなるべく食べさせないようにして、愛犬の健康を守りましょう。