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川村動物クリニック院長/いばらきどうぶつ看護センター管理獣医師
ごぼうは秋〜冬に旬を迎える根菜で、人間にとってだけでなく犬の体にとってもいい栄養素がたくさん含まれています。ごぼうは犬が食べられる食材ですが、与え方や量によっては体調不良になるリスクがあります。犬が食べやすいよう加工したうえで、適量を与えましょう。今回は、犬にごぼうを食べさせるメリット・デメリットや調理方法、生のごぼうを誤食した場合の対応などについて解説します。
目次
- ごぼうは少量なら犬に与えてOK
- ごぼうに含まれる犬の体にいい栄養素
- 犬がごぼうを過剰摂取した場合のリスク
- 犬にごぼうを与える方法
- 犬がごぼうを誤食したら?
- 犬が食べても安全な根菜類
- まとめ
ごぼうは少量なら犬に与えてOK
ごぼうは量や与え方に気をつければ、犬に与えても問題ない食材です。犬の体にいい栄養素がたくさん含まれていますので、安心して与えられます。ただし、犬は総合栄養食中心の食生活をしていれば、1日に必要な栄養を十分補えています。そのため、ごぼうを与えないからといって、犬が栄養不足になることは基本的にありません。ごぼうはあくまでおやつの1つとして扱い、主食は総合栄養食を与えてください。
ごぼうに含まれる犬の体にいい栄養素
ごぼうには、犬の健康にもいい影響を与える栄養素がたくさん含まれています。ここでは、ごぼうに含まれる主な栄養素とその効果を紹介します。
食物繊維(イヌリン、リグニン)
ごぼうには、100gあたり6.1gもの食物繊維が含まれています。食物繊維が豊富な食材として代表的なキャベツも、100gあたりの含有量は1.8gとごぼうの1/3以下です。そのことからも、ごぼうがいかに食物繊維を効果的に摂取できる食材か分かるでしょう。
食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類に分類でき、双方をバランス良く取ることが腸内環境改善に良いとされています。ごぼうには水溶性植物繊維の「イヌリン」と不溶性食物繊維の「リグニン」が含まれているため、腸内で効果的に働いてくれるでしょう。
アミノ酸(アルギニン、アスパラギン酸)
ごぼうには必須アミノ酸の1つであるアルギニンが260mg、アスパラギン酸が推定170mg含まれています。アルギニンもアスパラギン酸も、アンモニアを解毒して尿として排出する役割をもつ栄養素です。アンモニアがたまると体が疲れやすくなりますので、アルギニン摂取することで疲労回復に役立ちます。いつもよりたくさん運動した日には、犬にごぼうを食べさせるのもよいでしょう。
ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム)
ミネラルとは体を形成するのに欠かせない栄養素の総称で、1日の摂取推奨量が多いミネラルが「多量ミネラル」と呼ばれています。ゴボウは多量ミネラルに分類されるカリウムが210mg、カルシウムが48mg、マグネシウムが40mg含まれている食材です。カリウムは血圧を正常に保つ働きを、カルシウムとマグネシウムは骨や歯を形作る働きをします。そのため、丈夫な体を作るために役立つでしょう。
葉酸
葉酸はビタミンB郡の一種で、赤血球の生産をサポートする栄養素です。赤血球が豊富に生み出されることで、貧血や口内炎の予防に役立ちます。ごぼうは葉酸が100gあたり61μg含まれている食材です。葉酸は妊娠中の母犬や、ぐんぐん成長する子犬期にはとくに大事な栄養素ですので、フードと一緒にごぼうを与えるのもいいでしょう。
犬がごぼうを過剰摂取した場合のリスク
ごぼうに含まれる栄養素は、少量のみ摂取するのであれば犬の体に良い影響を及ぼします。しかし、過剰摂取すると体調不良につながるリスクもあるため要注意です。ここでは、犬がごぼうを過剰摂取した場合の健康リスクについて解説します。
便秘
犬は食物繊維を消化する能力が低い生き物です。そのため、食物繊維が豊富なごぼうを与えすぎると、消化不良や便秘などの症状が起きるリスクがあるため要注意です。もし犬が便秘になった場合は、水をたくさん飲むよう促すと改善できる可能性があります。
高カリウム血症
シニア犬や、腎疾患、心疾患を持つ犬は、腎臓がカリウムを上手くろ過できず血中のカリウム濃度が高くなる「高カリウム血症」を発症するリスクがあります。高カリウム血症は、しびれ、嘔吐、筋力低下、不整脈などの症状が起こる病気です。犬の体に負担がかかりますので、ごぼうを含むカリウムが豊富な食材は与える量に注意しましょう。
食物アレルギー
犬はさまざまな食品に食物アレルギーを引き起こすリスクがあり、皮膚のかゆみや下痢、嘔吐などの症状が起きます。また、ごぼうはキク科に分類される食物ですが、なかにはキク科アレルギーの犬もいます。春菊やレタス、ふきなど他のキク科の食品を与えたときにアレルギー症状が見られた場合は、同様の症状が出る恐れがあるため与えないようにしましょう。
犬にごぼうを与える方法
犬にごぼうを与える際は、必ず調理してから食べさせるようにしてください。ここでは、犬に与えるごぼうの調理方法や与える量について紹介します。
皮をしっかり取る
ごぼうは皮にも栄養がたくさん含まれていますが、土で汚れているためキレイに取るのがおすすめです。包丁の背でこそげ取ったり、新ごぼうであればたわしで擦ったりと、普段調理しているのと同じ方法で問題ありません。
アクを抜きながら柔らかく調理する
犬に与えるごぼうは、消化不良を防ぐためにもかならず加熱してください。犬が喉に詰まらせないよう、加熱後にフードプロセッサーでペースト状にしたり、包丁で細かく刻んだりするのもポイントです。
犬にとっての適量を計って与える
ごぼうは他のおやつとあわせて、1日の摂取カロリーの5%以内におさまるように計算してください。茹でたごぼうのカロリーは、100gあたり50kcalが目安です。ただし、はじめて犬がごぼうを食べるときは、食物アレルギーを発症する可能性があります。アレルギー症状が出るかチェックするためにも、まずは少量を与え、回数を増すごとに少しずつ適量近くに増やしていくようにしてください。
ごぼうの加工品は要注意
ごぼうを使った犬用おやつであれば、与えても問題ありません。ただし、人間用のごぼう茶や、ごぼうチップスなどは基本的にNGです。人間用の加工食品は砂糖や塩、油など、犬が過剰摂取すると体調不良になる添加物を加えてあるものがほとんどです。くわえて犬にとっては糖質が高く、肥満の原因にもなります。きんぴらごぼうやごぼうの炊き込みごはんなども含め、人間用の食べ物を犬に与えるのは避けてください。
犬がごぼうを誤食したら?
もし犬が生のごぼうを食べたり、過剰摂取してしまったりした場合は、体調が急変するおそれがあります。すみやかに動物病院へ連れて行って、獣医師の診察を受けてください。また、人間用のごぼうの加工食品や、きんぴらごぼうのような料理を食べてしまった場合も、動物病院に相談してみてください。肥満を防ぐための食事の調整方法など、適切な対処法をアドバイスしてもらえます。
犬が食べても安全な根菜類
にんじん、大根、カブは、犬に与えても問題ありません。にんじんはかならず加熱して、大根とカブは生もしくは加熱した状態で、食べやすいよう細かく刻んで与えましょう。犬が食べても安全な食材は以下のページでも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
ごぼうは加熱して犬が食べやすい大きさに加工すれば、与えても大丈夫な食材です。食物繊維やアミノ酸、ミネラルなど犬の健康にいい影響をもたらす栄養素がたくさん含まれていますので、ドライフードのトッピングやおやつとして与えるといいでしょう。ただし、健康にいいからといって、与えすぎると体調を崩すリスクがあります。ごぼう以外にも犬が食べられる根菜はありますので、与え方に注意しながら、一緒に旬の味覚を味わってみてください。