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日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。
冬の時期に大活躍してくれる湯たんぽ。最近では犬も安心して使える、ペット用の湯たんぽが市販されていて、愛犬の寒さ対策にも最適です。しかし、正しい使い方をしないと低温やけどや怪我の原因にもなりえます。そこで今回は、動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生に教えていただいた、ペット用湯たんぽの種類や使い方などを解説していきます。
目次
- 犬に寒さ対策は必要なの?
- 犬用湯たんぽを使うメリットとは?
- 犬用湯たんぽの種類は?
- 犬用湯たんぽの選び方は?
- 犬用湯たんぽの正しい使い方とは?
- 犬用湯たんぽを使う際の注意点は?
- 犬に人用の湯たんぽを使わせても大丈夫?
- 湯たんぽを使わない方がいい犬は?
- ペットボトルの手作り湯たんぽはNG
犬に寒さ対策は必要なの?
そもそも愛犬に寒さ対策が必要なのか、犬の性質や体質から理解していきましょう。あわせて効果的な対策についても解説していきます。
寒さに弱い犬種も
犬は人に比べ体温が高い生き物です。汗腺が少ない分、汗によって熱が発散しづらいため、寒さに強いと言われています。その反面、暑さには弱い性質があります。
ただし、生まれた地域やそのルーツの違いにより、寒さに対する適応力は個体差があると考えられます。例えば、寒い地域で生まれ、外での仕事を与えられてきた犬種は寒さに強い傾向があるでしょう。一方で、温かい地域で育った犬種や愛玩動物として生まれた犬種、日本で人気の小型犬などは寒がりな個体が多いと言われています。体温調節機能が低い子犬やシニア犬、体調を崩している犬も寒さに弱いと考えられるでしょう。
毛の長さや原産国も関係
被毛の長さによっても、寒さへの適応力が異なってきます。毛の短めの犬種や単層構造になっているシングルコートの犬種が寒さに弱いと言われるのは、熱が放出されやすいためです。
また、生まれ育った環境も重要でしょう。原産国が暑い地域の犬種は寒がりと言われ、遺伝的な要因が絡んでいると考えられます。小型犬も熱を発散しやすいうえに、室内で飼われるケースが多い分、寒さに弱い個体が多いです。気温がコントロールされた環境下で育つことで、寒さに適応しづらい一面があると考えられます。
室内犬の寒さ対策
寒がりな犬にとっては、冬は外出時だけでなく、室内でも寒さ対策が必要な場合もあります。愛犬の体を効果的にかつ安全に暖める方法を紹介していきます。
- 犬が過ごす部屋全体を暖める
天井近くにあるエアコンは犬が届かない場所にあるため、悪戯をしてしまう子犬や、よろめいてぶつかったり引っかかったりしてしまうシニア犬には安全です。ただし、人と犬とでは快適だと感じる温度が違う他、動いた後や吠えた後など犬が暑いと感じたときに逃げ場所がないのが欠点です。快適さを保てる、低めの温度に設定しましょう。
- ケージの周りを毛布で囲う、ベッドやケージに毛布を入れる
夏の間はフローリングの上で寝るのを好む犬も、冬になると自然に絨毯や毛布の上で寝るようになるものです。犬用の寝床を複数用意し、その中にふかふかな場所、毛布を入れる場所、周りを毛布などで覆う場所を作ってみてください。愛犬の好む場所づくりが分かってきます。
- 犬が過ごす部屋の床を暖める
犬は人よりも床との距離が近いため、床からの冷えに強く影響を受けます。床に断熱効果のあるカーペットを敷いたり、ホットカーペットを活用するのもいいでしょう。その際、床全面を暖めるのではなく、犬が暑がったときに避難できるように冷たい床も残しておくようにしてください。
- ケージの中を暖める
犬が寒さを感じたときに自分で暖を取れるよう、ケージの中を暖めてもいいかもしれません。ケージの中の床に毛布を敷いたり、犬用のベッドを置いてあげると床冷えからも守れます。ただし、眠っている間に低温やけどや脱水を引き起こしてしまう可能性があるので、夜間に犬がケージの中で眠る場合はケージ全体をヒーターなど発熱するグッズで覆うのはやめましょう。
- 犬用湯たんぽを使う
犬の体を低温で自然に温められる湯たんぽは、犬の寒さ対策に役立ちます。お湯を入れて使うタイプや、電子レンジで温められるタイプなど種類があるので、愛犬に合ったタイプとサイズを選びましょう。
犬用湯たんぽを使うメリットとは?
愛犬の寒さ対策にはさまざまな方法がありますが、なかでもおすすめなのは犬用湯たんぽです。愛犬が快適に過ごせるだけでなく、飼い主にとってもメリットの多い湯たんぽの魅力をお伝えします。
犬が自分で近づいたり離れたりできる
ヒーターやストーブなどの暖房器具と違って火傷の心配が少なく、犬が必要に応じて近づいたり離れたりしやすい点もメリットのひとつです。個々の体質や体調、好みによって温度をそれぞれ調節することができるので、多頭飼いしているご家庭でも重宝します。
安全性が高い
湯たんぽは熱いお湯を入れるか、事前に電子レンジ温めて使う製品が多いです。電気や火を使用しないので、犬にとって比較的安全性の高いグッズと言えるでしょう。
使い勝手の良さ
湯たんぽは一度温めるだけで、数時間保温効果が持続します。エアコンやこたつのように電気をずっと使用しないので、省エネにも役立ってくれるでしょう。さらにコードレスで外出時にも便利です。
犬用湯たんぽの種類は?
一口に犬用湯たんぽと言っても、その特徴はさまざまです。一般的な湯たんぽの種類について解説します。
お湯タイプ
温めたお湯を入れて使うタイプの湯たんぽです。お湯を沸かす手間がかかりますが、頑丈な素材でできている分、噛み癖のある犬にも対応できます。特におすすめの素材は金属製・プラスチック製・陶器製のものです。また、ゴム製の湯たんぽなら夏場に氷を入れて保冷剤代わりとしても活用できます。
電子レンジタイプ
電子レンジで数分温めるだけで使える、手軽なタイプ。短時間で準備できるので、忙しいときにも重宝してくれるでしょう。ただし、保温材はジェル素材が多いので、噛み癖のある愛犬への使用は注意が必要です。噛んで破いてしまった場合、誤飲の危険があります。
電気湯たんぽ
蓄電して使うタイプの湯たんぽです。1回充電すると数時間同じ温度が保てるので、利便性が高いと言えます。
犬用湯たんぽの選び方は?
犬用湯たんぽはさまざまなタイプがありますが、大切なのは愛犬の生活に合うものを選ぶことです。ここでは湯たんぽを選ぶ際のポイントをお伝えします。
壊れにくく、安全なもの
愛犬の安全を第一に、踏んだりかじったりした際に壊れにくい素材を選びましょう。年齢や体格、性格などをよく考慮して選ぶと、湯たんぽ選びに失敗しにくいはずです。子犬や、活発で元気な子の場合は、より頑丈なものを選んでみてください。
サイズ
使う場所に応じたサイズ感も大切です。例えば、ケージやキャリーに入れて使うと想定した際に、湯たんぽだけでスペースが埋まってしまわないようにしましょう。愛犬が暑がったときに、涼めるスペースを確保できる大きさがベストです。
カバーが付いているもの
お湯タイプや電子レンジタイプの湯たんぽは使いはじめが高温で、徐々に温度が下がっていきます。カバー付きのものを選ぶと保温効果を高めることができますし、さらに高温の湯たんぽが愛犬の体に直接触れるのを防げます。
使用時間
商品によって保温時間が異なるので、使いたいシチュエーションに合わせて選びましょう。車内で使う場合は移動時間、外出時なら留守番させたい時間などを考慮して、保温時間の長さを確認してください。
犬用湯たんぽの正しい使い方とは?
湯たんぽの理想的な温度はカバーをつけた状態で、人が触っても熱すぎない温度です。お湯タイプや電子レンジタイプなどは高温になりやすいので、特に気をつけてください。熱すぎる場合は少し時間を置いて冷ましてから使いましょう。
犬用湯たんぽを使う際の注意点は?
比較的安全性の高い湯たんぽと言えど、ケガや誤飲などのリスクは少なからずあります。安全に使うためにも、以下のポイントを押さえましょう。
使い始めの火傷に注意
湯たんぽを使うときは温度管理に気をつけてください。特に使い始めが高温になる製品もあるので、カバーを使って火傷を防ぎましょう。カバーした状態で温度を確認する作業も大切です。カバーが剝がれたり破れたりしていないかもチェックするとより安心でしょう。
低温やけど
シニア犬や体調が悪い犬など、自分で体を動かしにくい犬の場合、湯たんぽに長時間触れ続けてしまう危険性があります。低温やけどにつながる恐れがあるため、頻繁に皮膚の熱さを確認し、当たる場所を変えてあげるようにしましょう。また、愛犬の過ごすエリアが湯たんぽで占領されてしまうと、暑いときに体を離しにくくなります。置き場所に合わせたサイズの湯たんぽを選ぶことも大切です。
誤飲やけがのリスク
経年劣化で湯たんぽが破損してしまうことももちろんですが、体の大きな犬や活発な犬が使用したときに壊れてしまうケースも考えられます。破損した部分でけがをしてしまったり、欠片を誤って飲み込んでしまったりしないように、使う前はもちろん、使用中や使用後にもこまめに湯たんぽの状態をチェックしましょう。
犬に人用の湯たんぽを使わせても大丈夫?
人間用の湯たんぽは、犬が使う想定で造られていないものが多いので注意が必要です。例えば、愛犬がかじったり、大きさや素材が愛犬に適していなかったりすると、思わぬ事故につながってしまう場合も考えられます。特に温度に関しては、愛犬に合わせて低めに設定する必要があります。選ぶときは耐久性・温度・大きさなどを十分考慮して選んでください。
湯たんぽを使わない方がいい犬は?
寒がりな犬にとっては重宝する湯たんぽですが、使用に注意しなければいけないケースもあります。その一例を以下で紹介します。
噛み癖のある犬
物を激しくかじってしまいがちな子犬や、噛み癖のある犬には湯たんぽの使用は控えたほうがよさそうです。湯たんぽが破損することによる誤飲や、中身が漏れた際の火傷のリスクがあります。
自力で体を動かしづらい犬
体を自力で動かすことが困難な犬は、湯たんぽから離れられず火傷のリスクが高まります。シニア犬や持病がある犬などは注意しましょう。もし使うときは温度を低めに設定したり、こまめに愛犬の状態を確認したりするなど工夫してみてください。持病の薬を飲んでいたり、愛犬の体質に不安があったりする場合は、かかりつけ医に相談すると安心です。
ペットボトルの手作り湯たんぽはNG
最近、ペットボトルで自作する簡易的な手作り湯たんぽがありますが、火傷やケガなどの危険性を考えると使用は控えたほうがよさそうです。
そもそも、ペットボトルは熱いものを入れることが想定されていないので、高温のお湯で変形したり、蓋からお湯が噴き出したりする可能性があります。耐熱性だけでなく耐久性にも不安があり、愛犬がかじって破損するリスクも考えられるでしょう。破損した欠片や、キャップを誤飲する危険性もあります。
もし使用するなら、噛み癖のない犬や落ち着いた性格の犬に対して使いましょう。ペットボトルは必ずホットドリンク用のものを選んでください。耐熱温度は80度ですが、耐久性や安全面を考慮して60度より低い温度のお湯を入れたほうが安心です。使用中はこまめにペットボトルの状態を確認して、事故を防ぎましょう。
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