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2014年に起業後、ペットフード・用品の二次流通事業に参画。2017年よりペットフードのフードロス問題への取り組み「社会貢献型ペット用品店cocoro」を開始。
日本初の「社会貢献型ペット用品店cocoro」とは?
目次
- 1年で推定6,000トン超のペットフードが廃棄処分になっている現状
- ペットフードロスの問題解決に取り組む寄付型ECサイト『cocoro』
- 「捨てている商品はありませんか?」ペット業界のタブーに斬り込む
- “訳あり品”でも安心安全。大切なペットのために確かな品質の商品だけを厳選販売
- 「捨てるを考える」ペットフードロス問題の認知拡大が『cocoro』の役割
- 「愛犬の最期にあのフードを食べさせてあげたい」予想外のニーズも
- 削減したペットフードロスの総量は「1,000トン以上」事業拡大にジレンマ
- 「頑張らない社会貢献を提唱」社会貢献型ビジネスのロールモデルを目指す
1年で推定6,000トン超のペットフードが廃棄処分になっている現状
近年、社会問題として取り上げられることの多いフードロス。テレビなどで美味しそうな食品が「ごみ」として廃棄される映像を見て、心を痛めている方も多いのではないでしょうか。
実はペットフードについても、人間の食べ物と同様に、賞味期限やパッケージの変更などを理由に、大量のフードが廃棄される状況が起きています。
「正確な廃棄量はわかっていませんが、日本で年間に出荷されるペットフードの約60万トン(一般社団法人 ペットフード協会「令和3年全国犬猫飼育実態調査」)のうち1~3%が廃棄されていると言われています。つまり、少なく見積もっても、年間約6,000トンのペットフードが廃棄されていると考えられます」
人間の食べ物の場合は、賞味期限間近であることを明記した上でセール品として販売されたり、フードバンクを通じて必要な人のところに届けられる仕組みが整いつつあります。しかし、ペットフードのフードロス問題については、問題の存在自体があまり知られていない状況が続いていました。
この状況に一石を投じたのが、株式会社こころが運営する、日本初のペットフードロス削減ショッピングサイト「社会貢献型ペット用品店cocoro」です。
同店を運営する株式会社こころ・代表取締役の菅沼 圭さんと、マネージャー兼広報の鵜飼 剛さんにペットフードロス削減にかける想いを聞きました。
ペットフードロスの問題解決に取り組む寄付型ECサイト『cocoro』
株式会社こころは、もともと栃木県特産の鹿沼土を始めとする園芸用品やエクステリアを扱うECサイトを運営していました。ある時、知り合いの業者から勧められたことをきっかけにペットフードを扱ってみることになりました。
同社の創業者で代表取締役の菅沼さんは、「そのとき託されたペットフードはたまたま賞味期限が切迫した商品だったので、通常価格よりも安価で販売することになったのですが、ペットフード自体を販売するのが初めてでしたし、当時は園芸用品メインのECだったので、正直、あまり売れるとは思っていませんでした」と振り返ります。
しかし、菅沼さんの予想は良い意味で裏切られました。
「驚くほどのスピードで、どんどん売れていったんですね。1回の注文で大量の商品を買われる方も珍しくありませんでした」
購買状況を見ていて、一体どんな人が、どんな目的で購入しているのかを知りたくなった菅沼さん。一部のお客様に連絡をとって見たところ、一般の飼い主さんだけでなく、多数の犬や猫を保護・飼育している動物愛護団体の方、そして愛護団体に寄付するために購入してくださっている方がいることがわかりました。
「お客様とのお話の中で、経済的な理由でペットフードが買えなくなり、ペット飼育を放棄する飼い主さんがいることを知りました。廃棄するほどフードが余っているのに、その一方では十分なフードがもらえない犬や猫がいる。なぜ、こんなことが起こっているのか、その理由を知りたいと強く思うようになりました」
菅沼さんは、その疑問を解くべく、ペットフード業界について少しずつ情報収集をし、業界の構図や流通の仕組みを調べました。
「予想以上に大量のペットフードが廃棄されていることを知って驚きました。賞味期限だけでなく、パッケージや商品コードの変更、過剰在庫が理由で廃棄されるケースもすごく多いんです。賞味期限がまだ残っている商品が、売れ残りなどを理由に、大量廃棄されてしまうことも珍しくありません。実にもったいないですよね。なんとかして、廃棄されるペットフードを必要なペットたちのところに届けるための仕組みを作りたいと思いました。これが、『cocoro』の原点です」