公開
博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
インターホンが鳴る度に犬が激しく吠えて、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。どのような行動にも理由があるため、犬の気持ちや習性を理解したうえで適切に対処することが大切です。この記事では、犬がインターホンに吠えるのをやめさせる方法をテーマに、吠える理由や放置するリスク、トレーニングの方法などについて詳しく解説します。
目次
- 犬がインターホンに吠える理由
- 犬がインターホンに吠えるのを放置するリスク
- 犬が吠えたときに叱ったり罰を与えたりはNG
- 犬がインターホンに吠えはじめる時期
- インターホンに吠える犬をしつける方法
- インターホンに吠える犬への接し方
- まとめ
犬がインターホンに吠える理由
犬がインターホンに繰り返し吠えるのには理由があるため、吠えないように注意しても止めるのは難しいでしょう。まずは、インターホンに吠える理由を知ったうえで、正しい方法でトレーニングすることが大切です。
犬がインターホンに吠える理由について詳しくみていきましょう。
追い払えた経験があるから
犬は自分の縄張りを持っていて、縄張りに近づく人や動物に対して警戒心や恐怖を抱いて吠える習性があります。過去にインターホンが鳴った際、吠え続けたことで訪問者を追い払えたと感じた犬は、その出来事を成功体験として学習するため、インターホンが鳴るたびに吠えるようになります。宅配便や郵便などはインターホンを鳴らして荷物を渡したらすぐに帰るため、犬は「自分が吠えたから追い払えた」と思い違いをすることが少なくありません。
そうなると、人が来る度に吠える状況が悪化する恐れもあります。次第に、インターホンが鳴ったら吠えることが犬にとって当たり前の行為となるでしょう。時間が経てば経つほどにトレーニングが難しくなるため、なるべく早く対処しましょう。
飼い主の注目を集められるから
インターホンが鳴ったときに犬が吠えると、飼い主は犬をなだめたり、「静かにして!」と注意したりしてしまいがちです。このような行為を犬は「飼い主に遊んでもらえた!」と勘違いしてしまい、飼い主の注目を集めるために次からもインターホンが鳴ったときに吠えるようになります。また、注意されていることを理解していても、飼い主に注目してもらいたい一心で吠え続ける場合もあるでしょう。
犬がインターホンに吠えるのを放置するリスク
何をしても吠えるのをやめないからといって犬がインターホンに吠えるのを放置すると、飼い主にとっても犬にとっても悪い事態を招く恐れがあります。犬の吠え癖を放置するリスクについて確認していきましょう。
来客者を噛む可能性がある
インターホンに吠える理由が警戒心や恐怖によるものの場合、放置すると来客者を噛むようになる恐れがあります。とくに怖がりな犬は、警戒対象が近づくとまずは威嚇します。それでも近づくと自分の身を守るために噛むことがあるのです。
インターホンに吠えるのは好奇心によるものと思い込み、犬と誤ったふれあい方をしてしまうと、飼い主であっても噛まれてしまうかもしれません。恐怖を感じているときの仕草は次のとおりです。
- 頭を低くする
- 耳を後ろにひく
- 物陰に隠れる
- 尾を下げる
- 逃げる など
このような仕草がみられたときは、安易に近づかないようにしましょう。
近所から苦情が来る
インターホンに犬が吠えるのをやめさせない場合、あまりにも長時間続くと近所から苦情が来る可能性があります。頻繁に犬が吠えることで近所の人の生活に影響が及ぶかもしれません。たまに鳴く程度であれば許容されていても、あまりにも吠え続けるのであれば、温厚な人であっても苦情を入れることもあるでしょう。
近所の人との関係が悪くなったり、その家にいづらくなったりといった悪影響が及ぶこともあるため、なるべく早く対処したいところです。
来客者が家に来るのを遠慮する
犬にあまりにも吠えられると、来客者が家に来るのを遠慮する可能性があります。また、犬が来客者に恐怖を感じている場合は、接し方次第では噛まれる恐れがあるため、来客者としても来訪しづらくなるでしょう。人間関係に影響を及ぼすことになりかねないため、人を家に招くことがある場合はなるべく吠えないようにトレーニングしたいところです。
犬が吠えたときに叱ったり罰を与えたりはNG
犬が吠えたときは、注意したり罰を与えたりしてはいけません。これはインターホンが鳴ったときに吠えた場合だけではなく、他のどのようなケースにも共通しています。犬にとって飼い主が恐怖の対象になり、信頼関係を築いたり適切にトレーニングしたりすることが難しくなるでしょう。
インターホンが鳴る度に「また吠えるのだろうな」と思い、ストレスを感じることもあるかもしれませんが、そこで怖がらせるような対応をしてしまうと一時的に吠えるのをやめたとしても次に鳴ったときにまた吠えることになります。犬は理由なく吠えているわけではないため、吠える犬が悪いと思うのではなく、どうすれば吠えるのをやめるのかを考えることが大切です。
犬がインターホンに吠えはじめる時期
犬がインターホンに吠えはじめる時期には個体差があります。また、いつからトレーニングを始めるべきか悩む方も多いのではないでしょうか。そこで、犬がインターホンに吠えはじめる時期と、トレーニングを始めるタイミングについて解説します。
犬が成長して吠えるようになる時期
犬は、生後7ヶ月~3歳未満で新しい環境に慣れてくるとともに、危険を遠ざけるための警戒心が強くなります。その結果、インターホンが鳴る度に外敵を警戒して吠えるようになるのです。さらに、体験したことを覚えて行動に反映しはじめる時期でもあるため、誤った方法で対処すると吠えが悪化してしまいます。
吠え防止のためのしつけに適した時期
犬の吠え防止のトレーニングは、なるべく早く始めることが大切です。トレーニングを始めるのが遅いと、インターホンに対する警戒心が強くなっていたり、吠えるのが当たり前になってしまったりする恐れがあります。ただし、始めるのが遅くても正しいトレーニングを続けることで少しずつ改善していくことが期待できます。
インターホンに吠える犬をしつける方法
インターホンに吠えないようにトレーニングする際は、大きな声で「やめなさい!」と注意すると逆効果です。ここで解説するトレーニング方法を参考に、正しく取り組みましょう。
飼い主が騒がないようにする
インターホンが鳴ったときに飼い主が慌てたり走ったりすると、犬もつられて興奮してしまいます。また、「人が来たから静かにしなさい!」と大きな声で叫ぶような行為も同様です。インターホンや来客ではなく、飼い主の注意に対して恐怖を感じる可能性も否定できません。
インターホンが鳴った際、来訪者の対応よりも先に、犬を静かにさせましょう。少しでも静かになったらすかさずしっかり褒めてあげてください。これを繰り返すことで、インターホンが鳴ったときに静かにしたら褒めてもらえると学習し、吠えを減らせる効果があります。
おやつや知育玩具を使い、興奮を鎮める
インターホンが鳴ったとき、最初はどうしても興奮してしまうものでしょう。まずは、犬の興奮を鎮めるためにおやつを与えましょう。食べるのに時間がかかる犬用ガムや、おやつを中に入れられる知育玩具を与えてから来客者に対応し、戻るまで静かにできていたらしっかりと褒めてあげます。これにより、インターホンが怖いものではないことを理解できます。
この時、インターホンが鳴って犬が吠えた直後にあげると、「インターホンが鳴っても静かにしていればおやつをもらえる」ではなく「吠えるとおやつがもらえる」と思ってしまいます。
吠える前に「マテ」などの号令を出して、号令に従って吠えないでいるときにおやつを与えます。吠えてしまっていても、号令を出すことによって吠えを中断してから、吠えていないことに対して褒めることで誤解が生じにくくなります。そのときはしっかり褒めて、静かにしたご褒美であることを理解させることがポイントです。
ハウスに入るようしつける
愛犬が怖がりな性格の場合、インターホンが鳴ったらケージやサークル、クレートなどのハウスに入るようにトレーニングしてみましょう。ただし、インターホンが鳴ったらすぐにハウスに入れるのではなく、まずはハウスが快適な場所だと感じてもらえるように好きなおもちゃを入れたりおやつで誘導したりします。ハウスの中で眠るようになったら、インターホンが鳴ったときに「ハウス」といって誘導します。
ハウスが快適な場所であれば、インターホンが鳴っても吠えることなく静かに過ごしてくれるでしょう。
インターホンに吠える犬への接し方
インターホンに吠える犬のトレーニングの際は、次のように接しましょう。
犬の気持ちに寄り添う
インターホンに吠えることには理由があるため、犬の気持ちに寄り添って少しずつトレーニングを進めることが大切です。犬と飼い主の信頼関係の構築につながり、他のトレーニングもうまく進みやすくなることが期待できます。
屋内の行動スペースを制限する
来客者と対面することでますます強く吠える場合があります。犬が玄関までついてこられないように、柵を設けるとよいでしょう。この対策により、吠えがエスカレートするのを抑えられる可能性があります。
遊びや散歩の時間を増やす
遊びや散歩の時間を増やすとストレスを発散でき、吠えが減る可能性があります。加えて、飼い主が犬と関わる時間が長くなることで信頼感が生じやすく、号令への反応性も高くなるでしょう。インターホンだけではなく、ご飯のときや散歩の前なども吠えが減ることが期待できます。
まとめ
インターホンが鳴る度に吠えるのに悩んでいるときは、吠える理由を確認したうえで正しくトレーニングを行うことが大切です。吠えるのには理由があるため、強く注意したり無視したりする行為は避けましょう。犬の気持ちに寄り添ってトレーニングすることで、比較的早くにインターホンへの吠えの改善を期待できます。今回、解説した内容を参考に、正しいトレーニングを行いましょう。