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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
病気の治療や定期健診、予防接種など、わんちゃんを飼っていれば訪れる機会のある動物病院ですが、愛犬が病院嫌いで、連れて行くのに一苦労するというオーナーさんもいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、chicoどうぶつ診療所所長の林美彩先生に教えてもらったわんちゃんが病院を嫌がる理由やその対処法についてご紹介します。
目次
- なぜわんちゃんは病院を嫌がるの?
- わんちゃんが病院を嫌がる時の反応は?
- わんちゃんが病院を嫌がる時はどんな対策をすればいい?
- わんちゃんが病院を嫌がらないようにするためのしつけ方は?
なぜわんちゃんは病院を嫌がるの?
動物病院を嫌がる理由は、わんちゃんによりさまざまです。その主な例をご紹介します。
過去にトラウマがある
わんちゃんが動物病院を嫌がる理由の多くは、診察や治療のために無理やり押さえられた、注射などで痛い思いをした、といった過去の嫌な体験にあります。また、避妊手術などで病院やペットホテルに入院したことがある場合は、オーナーさんと離れ離れになったという記憶がトラウマとして残ってしまい、病院嫌いになっていることも考えられます。
病院の環境がストレスになる
動物病院は消毒液や薬品の独特なにおい、見知らぬ人や他の動物のにおいで満ちた場所です。普段とは異なる慣れない環境は、わんちゃんをとても不安な気持ちにさせます。さらに、待合室ではオーナーさん以外の人や他の動物と近い距離に置かれたり、同じように不安を抱えるわんちゃんの吠える声が聞こえたりすることもストレスにつながり、病院嫌いになっているのかもしれません。
わんちゃんが病院を嫌がる時の反応は?
わんちゃんが病院を嫌がるときにはどんな行動をするのでしょうか。嫌がっている時の主な行動についてご紹介します。わんちゃんが病院を嫌がっているときにいち早く気付いてあげるようにしましょう。
ケージを見ただけで逃げたり隠れたりする
わんちゃんにとって、「ケージに入れられること=病院に連れて行かれること」と結びついていると、オーナーさんがケージを持ち出してきたのを目にするだけで怯え、逃げ出したり、隠れたりします。
急に攻撃的になる
普段は滅多に吠えないわんちゃんがすごく吠えたり、獣医師さんが体に触ろうとすると噛みついたり、威嚇するといった攻撃的な態度を示すこともあります。
恐怖で動かなくなる
病院や診察室に入るのを拒んで出入口付近で動かなくなったり、診察室に入っても、診察台に乗せると獣医師さんにお尻を向けてそのまま固まってしまうといった行動をとるわんちゃんもいます。
粗相をする
強いストレスや恐怖に襲われた場合は、おしっこを漏らすなど粗相をしてしまうことがあります。高い場所が苦手なわんちゃんも多く、診察台に乗せられたタイミングで震えが止まらなくなり、粗相してしまうといったケースも見られます。
わんちゃんが病院を嫌がる時はどんな対策をすればいい?
わんちゃんを病院に連れて行かなければならないのに嫌がられるとオーナーさんは困ってしまいますよね。そんな時にとるべき対処法をご紹介します。
病院に行くことを悟られないよう、いつも通りの生活をする
嫌がるわんちゃんを病院に連れて行くとなると、オーナーさんもつい身構えてしまいがちです。慌ただしく病院に行く準備をしたり、ケージをわんちゃんが見えるところに出しておいたりすると、わんちゃんは普段と違う様子を敏感に察知します。動物病院に出かけることが悟られないよう、できるだけ普段通りの生活を心がけましょう。オーナーさんの緊張感がわんちゃんに伝わってしまうこともあるので、オーナーさんがリラックスした気持ちでいることも大切です。
ご褒美としてわんちゃんにおやつをあげる
病院は嫌なことがある場所と思わせないために、ご褒美としておやつを用意しておくとよいでしょう。ケージに入ったらおやつ、待合室に入ったらおやつ、診察室に入ったらおやつ、診察が終わったらおやつ……というように、何か一つ行動ができた場面でおやつを与え、「正の条件付け」をすることがポイントです。
人見知りをするわんちゃんの場合は、獣医師さんや看護師さんからおやつを与えてもらうのも効果的です。病院に行くことに前向きな印象を持ってもらえれば、病院に行くことに対する抵抗感やストレスを低減することができます。
「怖い」「痛い」などのマイナスの言葉は口にしない
もちろんわんちゃんは人間の言葉を理解できませんが、「怖い」「痛い」といった言葉を発するときのオーナーさんの表情や声の調子などから、不安な感情を読み取ってしまうことがあります。わんちゃんを落ち着かない気持ちにさせるような、口調や態度は控えましょう。
嫌がっているときに怒らない
動物病院に連れて行くときや動物病院に着いたあとに、わんちゃんが怖がって吠えたり、威嚇行動をとったりした場合、強く叱りつけると逆効果になる恐れがあります。余計にわんちゃんを刺激してしまうことや、オーナーさんが反応を示すことでさらに行動をエスカレートさせてしまうことになりかねません。わんちゃんが落ち着くまでそっとしておくか、いったん外に連れ出して気持ちをリフレッシュさせてあげるとよいでしょう。
わんちゃんが病院を嫌がらないようにするためのしつけ方は?
わんちゃんを動物病院に連れて行く際の対策法はわかったけれど、そもそも病院嫌いにさせない方法はあるのでしょうか? ここでは普段からできる対策法や子犬の時からできる対策法をご紹介します。
お散歩コースに病院の前などを組み込んで、日常の風景として慣れてもらう
動物病院を体の具合が悪いときに行く特別な場所ではなく、日常の風景の一部として認識してもらうことが効果的です。病院が近くにある場合は、お散歩コースに組み込み、毎日その前を通ることでその存在に慣れてもらいましょう。また、健康診断や爪切りなどの日頃のケアのために、定期的に病院に連れて行くのも環境に慣れさせるためにおすすめです。
病院で行われているパピークラスなどを受ける
動物病院では、生後2~4か月頃の子犬とそのオーナーさんを対象としたしつけ教室(パピークラス)を実施しているところがあります。健康管理や日頃のケアを抵抗なく受け入れられるように慣らしたり、人間社会で生活を送るための社会性を育むためのプログラムなどが用意されているので、受講してみるのも良いでしょう。
子犬の頃にしっかりと家以外の社会との関わりをもち、社会性を身に付けることで、成犬になってからの病院嫌いを防ぐことが可能です。また、パピークラスを通して、獣医師さんや看護師さんと触れ合うことで、良好な関係性を築くことにもつながります。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。