春の花30選|3月・4月・5月に咲く種類や育て方を一覧で解説
リンクをコピーしました
目次/ INDEX
様々な場所を清掃できる「和歌山生まれの手袋たわし」
ありそうでなかったお掃除アイテム。
和歌山県海南市にあるサンベルム株式会社が2018年にリリースした「和歌山生まれの手袋たわし」はまさにそう言いたくなる、実にシンプルな形をしている。ぱっと見だとただの手袋のようにしか見えないが、3本指になっているのが大きな特長だ。
中指から小指までがひとまとまりになっており、これが面積を生み出すことで大きな面を洗いやすくなっている。サンベルム株式会社の角谷昌哉代表取締役社長に、この手袋たわしのポイントをたずねた。
「指先感覚で細かいところや隙間、そして平面までも自由自在に洗うことができるアイテムです。三角形の断面を持つ“異形断面繊維”と呼んでいる特別な糸を使用しているため、汚れがかき出されるように取れます。水だけでもしっかり汚れを落としてくれるスグレモノです」
洗剤をあまり使いたくないところや、細かくてこれまで洗うのが面倒だった場所で特に威力を発揮するこの手袋たわし。軍手が掃除グッズとして使われていることが開発の大きなヒントになったという。
和歌山県に本社を構えるサンベルム株式会社
これまでもお掃除アイテムを多数開発してきたサンベルムのもとには、「細かい部分に届くものが欲しい」という意見が寄せられていたという。一方で、細かい部分にしか使えないお掃除アイテムもまた使い勝手が悪い。頭を悩ませているとき、ふと眺めたテレビで軍手を雑巾のように使う映像が流れてきた。角谷社長はこう話す。
「安価な軍手は汚れてしまったら捨てることができます。番組ではこれがメリットとして挙げられていましたが、使い捨てではなくさらに汚れを落としやすい素材で作れないか?と思い付いたんです」
早速、開発チームで日夜話し合いが行われた。そのなかで、汚れを落とす際に自然に使われる親指、人差し指、中指以外は不必要ではないかという意見が台頭。3本指のアイディアがこうしてまとまった。試作に取り掛かったものの3本指の手袋は製作不可能であると工場側から通達されてしまう。
「原因は素材のポリエステルが伸びず、手袋がきつくなってしまうなど色々ありましたが、機械の仕様を根本から変えないといけないという結論が一番高い壁として立ちはだかりました。そのため、一時サンプル製作は頓挫しています」
親友の工場で製造されているという手袋たわし
せっかく思い付いたアイディアを具現化できない困難に直面した開発チームだったが、「以前、3本指用の機械で製品を作ったことがある」という工場の情報が入る。角谷社長はその工場を訪れて仰天したという。
「そこが実は、私の高校時代の親友が営む工場だったんです。かつては介護手袋を作っていたのですが、売れ行きが悪くて製造中止となり、機械も何十年にわたって眠っている状態でした。その間、世代交代で親友が会社を継いでいました。彼とは卒業後もたびたび会う間柄でしたが、そんな機械を所有しているなんて聞いたことがなくてとにかく驚きましたね」
ただし、特殊な糸を使うため当初から「試作してみないとわからない」と言われ、予断を許さない状況は続いた。実際、初めのうちは指の形が曲がったり、手の形状になりづらかったりと思うような形に仕上がらなかった。角谷社長はこのときのことを振り返る。
「思うようなサンプルが上がらず、工場の社長である私の友人も頭を抱えていました。でも、決して諦めずに糸の太さやテンションを変えたり、縫製内容を工夫したりといった微調整を粘り強く繰り返した結果、ついに完成にこぎ着けました。着手から8カ月の月日が流れていたので、感慨深いものがありましたね」