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東大農学部獣医学専修卒後、ウガンダ国立遺伝資源研究所でのリサーチフェローや動物病院での臨床業務に従事。2020年に保護犬たちを新しい形でサポートする事業を開始。
長い脚と細長い顔、垂れた耳が特徴的なサルーキですが、サルーキを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、獣医師の寺田かなえ先生に教えていただいた、サルーキの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- サルーキの歴史やルーツ、英語名は?
- サルーキのオスとメスの体高や体重は?
- サルーキの平均寿命は?
- サルーキの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- サルーキはどんな性格、習性?
- サルーキを迎える際にかかる費用は?
- サルーキのしつけと社会化トレーニングのポイント
- サルーキに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- サルーキを飼うのに向いている人は?
- サルーキがかかりやすい病気と予防法は?
- サルーキの日常のお手入れ方法
- サルーキとの生活で注意すべきことは?
サルーキの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | サルーキ |
英語名 | Saluki |
原産国 | 中東 |
分類 | 大型犬 |
グループ | 10G:視覚ハウンド |
サルーキ【英語:Saluki】は、中東が原産の大型犬です。
ジャパンケネルクラブの犬種分類では、優れた視覚と走力で獲物を追跡捕獲する犬「10G:視覚ハウンド」に属します。
サルーキの起源は紀元前のシュメール文化にまでさかのぼるとされ、最も古い歴史を持つ犬種の一つだといわれています。名前の由来としては古代アラビアの首都「サルク」に由来するなど諸説ありますが、はっきりしたことはわかっていません。
足が速く動きも俊敏なため、中東の広大な大地でガゼルやキツネ狩りの猟犬として活躍してきました。
サルーキは分類上、「ハウンド」という猟犬の分類に属しており、「ハウンド」のなかには優れた視覚と走力を持つ「視覚ハウンド」と優れた嗅覚と大きな吠え声を持つ「嗅覚ハウンド」がいます。サルーキは視覚ハウンドに分類されます。
サルーキのオスとメスの体高や体重は?
体高:オス約58〜71cm、メスはオスより小柄
体重:オス約25〜35kg、メス約20〜30kg
サルーキは大型犬に分類されますが、無駄のないスリムな体型をしており、瞬発力と持久力にたけています。
サルーキの平均寿命は?
サルーキの平均寿命は12~14歳とされています。サルーキは大型犬に分類されますが、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、大型犬の平均寿命は11.5歳のため、平均的か、やや長生きといえるでしょう。
犬を迎える際は、最後のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
サルーキの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
サルーキの被毛はいくつかのタイプに分かれ、全身の毛が短いタイプ、耳やしっぽの毛が部分的に長いタイプに分かれます。
毛色はさまざまで、ホワイト、クリーム、ゴールド、赤茶、トライカラー(3色構成)などがあります。
犬の被毛はシングルコートとダブルコートに分類されますが、サルーキの被毛はシングルコートです。紫外線などから皮膚を守るため太くしっかりとした毛が生えており、抜け毛が少ないという特徴があります。
サルーキはどんな性格、習性?
サルーキは、飼い主に対しての忠誠心が強く従順な犬種です。知的で落ち着いた雰囲気がありますが、警戒心が強く人見知りの面があるため、家族以外の知らない人にはクールな印象を与えるかもしれません。
普段は穏やかなサルーキですが、遊びの際は活発になります。運動量を十分に確保できる環境を整えてあげられるといいでしょう。
サルーキを迎える際にかかる費用は?
サルーキを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約30~65万円 |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000~10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000~10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
サルーキのブリーダーは非常に少なく、ペットショップにいるケースはほとんどありません。迎える際の価格は、血統や月齢などによりますが30~65万円が目安となり、価格は変動することがあります。また、常に子犬が産まれているとは限らないため、サルーキのブリーダーにあらかじめ相談したり、問い合わせたりしておくと良いでしょう。
他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。また、サルーキは自治体によって飼育に規制がある場合もあるため、事前に確認しましょう。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
飼い続けるために必要な費用
犬を養育する上での生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。体の大きい犬種だとグッズ代やトリミング代などが高額になるなど犬種によって大きく異なるため、目安としてサルーキの場合は平均より高額になると考えておきましょう。
なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
サルーキを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。サルーキは多くの運動を必要とするため、思い切り走り回って遊べるようにボールを準備しておくとよいでしょう。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。サルーキは体が大きくなるため、クレートやケージ、サークル費用は平均より少し高くなる傾向にあります。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどですが、サルーキは体が大きいので食事量は多く、トイレシーツも大型タイプを選ぶ必要があるので平均よりかかると見込みましょう。
2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主の元へ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、サルーキを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策を取るのもおすすめです。
サルーキのしつけと社会化トレーニングのポイント
成犬になると体も大きくなり力も強くなります。また、猟犬だったルーツもあり、かみ癖や動く物を夢中になって追いかけてしまう習性があります。サルーキを迎えたらすぐにトレーニングを行っていきましょう。
かみ癖対策としては、子犬の時期からかんでいい物とかんではいけない物をしっかり教えてください。最初はできなくても、根気よく続けることが大切です。
また、散歩などの際にリードを離してしまったときの呼び戻し対策として、「おいで」「待て」のしつけを行っておくことも重要です。サルーキは足も早く、力も強いため、散歩中に引っ張られて思わずリードを離してしまう事態にならないとも限りません。サルーキが走り出したら、追いかけて捕まえるのは難しく、飼い主の指示がしっかり伝わるしつけができていれば、予想外の事態も防げます。
サルーキに限らず、犬は初めて見るものや知らない人と出会ったとき、恐怖心と警戒心から吠えたりおびえたりすることがあります。恐怖心や警戒心が強く現れる前の子犬の時期にトレーニングすることで、社会性を身に付けられます。
サルーキに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:30分以上を1日2回
✓運動量:多い
✓おすすめの遊び:ボール遊び、おもちゃ遊び、フライングディスク
サルーキは猟犬だったため、必要な運動量は多めです。活発で運動能力が高いため、広めの庭などで十分な運動時間を確保できる環境を整えてあげてください。
サルーキを飼うのに向いている人は?
✓十分な運動をさせてあげられる環境
サルーキは活動的で瞬発力が高く、体も大きめです。散歩では速く歩くなどして運動量を確保したいため、体力に自信がある人に向いているでしょう。
✓しつけをきちんとできる人
必要以上に警戒し攻撃的にならないよう、小さいうちから社会化トレーニングや、基本的なコマンドをマスターする必要があります。落ち着いて毅然とした態度を取れる人が向いているでしょう。
✓力持ちで体力のある人
体重が30kg以上になる大きな体と力を制御できるくらい力持ちで、一緒に運動できる体力のある人が向いているでしょう。
サルーキがかかりやすい病気と予防法は?
サルーキがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓肥大型心筋症
心筋が厚くなって心臓の内腔が狭くなることで血液の循環不全を起こす病気です。原因は不明で、初期症状は元気消失や食欲低下など。治療は症状に合わせた対症療法となります。
✓胃捻転
体の大きな犬にリスクの多い病気です。胃がねじれてしまい、短時間で急激に全身状態が悪化する危険な病気です。緊急手術が必要になるケースもあります。原因となる早食い、ドカ食いをさせないようにしたり、食後の運動を控えたりするなどの予防策を意識しましょう。
✓外耳炎
湿気が耳道にこもりやすい垂れ耳の犬種に多い病気です。原因はアレルギーや細菌性の炎症など。強いかゆみを引き起こし、頭を激しく振ったり、耳を足で激しく掻きむしったりしますが、点耳薬などで治療できます。定期的な耳掃除で予防しましょう。
そのほか、脂肪が少ないため皮膚が硬くなる「タコ」やアレルギー性皮膚炎など皮膚疾患にも気を付けましょう。
サルーキの日常のお手入れ方法
✓ブラッシング:1週間に1、2回
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:必要なし
耳の毛が伸びてくるため、汚れ防止にスヌード(耳カバー)などを利用するのもおすすめです。カットしてもいいでしょう。
ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯磨きは毎日~3日に1回、耳掃除は1カ月に1、2回、外耳炎治療の場合は1週間に1、2回となることもあります。爪切りは1カ月に1回程度の頻度で行います。肛門腺絞りは必要のないことが多いですが、自分で出しづらい犬の場合、1カ月に1回程度がよいでしょう。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床で滑りやすくなるためカットしてください。
サルーキとの生活で注意すべきことは?
サルーキと生活する上で注意すべきポイントを紹介します。
✓事故予防にトレーニングはしっかりと!
サルーキは大型犬のため、ちょっとしたことが事故につながってしまうことも考えておきましょう。頑丈なケージを用意したり、入ってほしくない場所には入れないように仕切りを設置したりするなどして事故を予防します。また力が強いので、人や動物に飛びついたりしないよう、日頃からのトレーニングも大切です。
✓湿気の多い季節は、耳のお手入れをいつもより念入りに!
垂れ耳の犬種は、梅雨時期から夏にかけて耳や皮膚のトラブルが増えます。耳の色やにおい、耳垢の様子をこまめにチェックしましょう。ただし、過度な耳掃除は耳を傷つける恐れがあります。かかりつけの動物病院でケアしてもらうと安心です。
✓飼育スペースは十分な広さを確保!飼育費も準備して
サルーキを含む大型犬は、トイレも寝る場所も大きな体の分広さが必要になります。犬がゆっくりとくつろげる大きさのケージが必要です。さらに、食費やペットシーツ代などの消耗品や、医療費、ペットホテル費なども、小型犬、中型犬より高額になります。住居スペースや金銭的な負荷を考慮した上で迎え入れるようにしましょう。
✓小動物との同居に注意
サルーキはキツネなどを追いかけて捕まえていた狩猟本能があるため、ハムスターや小鳥などの小動物との同居には注意が必要です。