公開
ますだ動物クリニック院長、国際中医師

犬がピーナッツを食べても大丈夫ですが愛犬に与えることはあまり推奨されていません。おつまみやお菓子として飼い主にとっては身近な存在であるピーナッツ(落花生)ですが、愛犬に与えてもいいのか疑問を感じている飼い主も多いでしょう。
今回の記事では、犬にピーナッツを与える際の注意点や与えるのは避けたほうがいい理由について、獣医師の増田国充先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- 犬はピーナッツを食べても大丈夫だが与えないほうがいい!
- 犬がピーナッツを誤って食べたら?何粒なら大丈夫?
- 犬がピーナッツを食べてアレルギーになることはある?
- ピーナッツアレルギーが疑われる犬の症状とは?
- 犬にピーナッツを与えるのは避けたほうがいい理由
- 犬にピーナッツを食べさせたい場合は茹でてつぶすなど注意を
- ピーナッツに含まれる栄養素と犬への健康面でのデメリット
- ピーナッツ以外のナッツ類は犬にあげても大丈夫?
- ピーナッツバターやピーナッツチョコ、ミックスナッツなどの加工食品はNG
- 適量を守ってトリーツにピーナッツ味を取り入れてみても
- まとめ
犬はピーナッツを食べても大丈夫だが与えないほうがいい!
ピーナッツは犬が摂取しても直ちに健康に悪影響を及ぼすわけではありませんが、栄養バランスや消化機能への負担を考えると、飼い主としては避けるのが賢明です。どのような理由でピーナッツが犬に適していないのかを解説します。
大粒種や小粒種など、どの品種もおすすめしない
味付けのされていないピーナッツであれば、犬が少量食べても重大な健康被害を引き起こす可能性は低いといえます。しかし、ピーナッツには脂肪分が豊富に含まれており、特にオレイン酸という不飽和脂肪酸がその大部分を占めています。オレイン酸自体は健康に悪影響を及ぼす成分ではありませんが、犬にとっては過剰摂取が問題となります。脂肪分が多すぎると、膵臓への負担が増し、最悪の場合、膵炎を引き起こす恐れがあるからです。
また、ピーナッツには大粒種や小粒種などさまざまな品種がありますが、どの品種も脂肪分の含有量が多いため、いずれも愛犬に積極的に与えるべきではありません。
ご家庭で注意していただきたいのは、そもそも犬は嗅覚が鋭く、特にタンパク質や脂肪分の多い食品に引き寄せられる傾向がある点です。ピーナッツの香ばしい香りに興味を示す犬も多く、これが原因で誤飲のリスクも高まります。飼い主は、ピーナッツを犬の手の届かない場所に保管するなどの工夫が必要です。
子犬やシニア犬、持病のある犬は特に注意を
成犬であってもピーナッツの摂取は推奨されませんが、特に子犬や老犬には与えるべきではありません。これらの犬は成犬に比べて消化機能が未発達、または弱っていることが多く、ピーナッツに含まれる脂肪分を適切に処理できない可能性があります。さらに、過去に膵炎を起こしたことがある犬や消化機能が弱い犬にとって、ピーナッツは大きなリスクを伴います。
膵炎は膵臓に炎症が生じる疾患で、症状が進行すると食欲不振や嘔吐、下痢などを引き起こします。膵臓は脂肪分を分解する重要な役割を担う臓器であるため、脂肪分が多い食品を摂取すると、さらに負担をかけてしまいます。ピーナッツのような高脂肪食品を摂取することで、膵臓に過剰な負担がかかり、膵炎が再発するリスクが高まる可能性があるのです。
子犬や老犬、あるいは持病を抱える犬には、ピーナッツを避け、適切な栄養バランスを考えた食事を与えることが、健康を守るためには大切です。
犬がピーナッツを誤って食べたら?何粒なら大丈夫?
犬が誤ってピーナッツを食べてしまった場合、まず食べた量を確認してください。少量かつ成犬で特に健康問題がない犬であれば、深刻な影響を及ぼすことはほとんどありません。ピーナッツには犬にとって即座に有害となる毒性成分は含まれていませんが、高脂肪であるため健康リスクを伴う可能性があり、犬の健康状態によっては注意が必要です。
大量に食べた場合は膵炎や消化不良のリスクがあるため、獣医師に相談しましょう。また、添加物が含まれるピーナッツやピーナッツ加工食品を食べてしまった場合は、迅速に動物病院で診てもらうことをおすすめします。
ピーナッツは高脂質・高カロリーの食品であるため、食べ過ぎると肥満の原因となるだけでなく、膵炎などの健康リスクを引き起こす可能性があります。そのため、継続して与えることは避けるべきです。犬にごくたまにピーナッツを与える場合、基本的には「数粒程度」にとどめることが推奨されます。例えば、体重5kgの犬であれば、4~5粒を最大の目安とし、それ以上は控えるようにしましょう。
犬がピーナッツを食べてアレルギーになることはある?
豆類・ヨモギなどに対してアレルギーを持っている犬の場合、ピーナッツにもアレルギー反応を示すことがあります。これは交差反応といい、アレルギー物質と分子構造が似ている物質を摂取すると、別の食材であってもアレルギー反応が出てしまう現象です。
犬にピーナッツを食べさせることは推奨されていませんが、もしそれでも与えたい場合、最初はごく少量にとどめ、他に新しい食べ物を与えないようにすることが重要です。なぜなら、万が一アレルギーを起こしたときの重症化を抑え、その原因を特定しやすくなるからです。
ピーナッツアレルギーが疑われる犬の症状とは?
犬のピーナッツアレルギーが疑われる症状は以下の通りです。症状が何日も継続する場合は、なるべく早めに動物病院を受診してください。
かゆがる
ピーナッツを食べてから犬が体をかゆがる素振りを見せたら、アレルギー反応が出ている可能性が高いといえます。他にも皮膚や耳を気にする、体をこすり付ける、体を舐めるなどの仕草が増えていないかよく観察しましょう。
皮膚の一部が赤くなる
皮膚に赤みが見られる場合もアレルギー反応が疑われます。特にアレルギーによって赤みが見られる部位は、目や耳の周りなどです。
下痢や嘔吐
犬がピーナッツにアレルギー反応を示した場合、体の中の異物を排出するために下痢や嘔吐をする場合があります。1日1回程度の嘔吐や下痢であれば、ピーナッツを与えるのをやめて様子を見ましょう。症状が継続する場合には必ず動物病院へ行き、ピーナッツを食べた旨を伝えてください。
犬にピーナッツを与えるのは避けたほうがいい理由
犬にピーナッツを与えることは、栄養面や健康面でいくつかのリスクを伴います。肥満や消化不良、さらには深刻な疾患のリスクを考慮すると、避けるのが最善です。以下では、その具体的な理由を解説します。
高脂肪・高カロリーなので肥満のリスクがある
ピーナッツは脂質や炭水化物を多く含んでおり、非常にカロリーが高い食品です。犬に高カロリーの食品を与え続けると、エネルギーの過剰摂取により肥満につながる可能性があります。肥満は糖尿病や関節炎、心臓病などのさまざまな健康問題を引き起こす原因となるため注意が必要です。
ピーナッツをどうしても与える場合は、数粒程度に抑えることが推奨されます。しかし、ピーナッツのような高脂肪食品は他の健康的なおやつと比べて栄養バランスが偏っているため、基本的には避けたほうがいいといえるでしょう。
腹痛や消化不良のリスクがある
ピーナッツには豊富な脂質や不溶性食物繊維が含まれていますが、これらは犬の消化器官に負担をかけやすい成分です。特に不溶性食物繊維は犬が消化しにくいため、腹痛や消化不良を引き起こしやすくなります。消化されなかったピーナッツがそのまま便に混じって排出されたり、ピーナッツの過剰摂取で便が大きくなり排便が困難になったりすることもあります。もともと犬は食物繊維の消化が得意ではないため、過剰な食物繊維の摂取は控えましょう。
膵炎や腎疾患などのリスクがある
前述したとおり、犬は脂質を過剰に摂取すると膵臓に負担がかかり、膵炎を発症するリスクがあります。膵臓は脂質の消化吸収を担う重要な臓器であり、脂質の過剰摂取が炎症を引き起こす原因になることがあります。特に、過去に膵炎を経験した犬や脂肪制限が必要な犬では、ピーナッツは避けるべき食品です。
また、腎臓が弱っているシニア犬や腎臓病を抱える犬にとってもピーナッツは危険です。ピーナッツにはカリウムやリンが含まれていますが、腎臓機能が低下している犬はこれらのミネラルを適切に排出できません。結果として腎臓にさらなる負担がかかり、症状が悪化する可能性があります。
犬にピーナッツを食べさせたい場合は茹でてつぶすなど注意を
もし、どうしても犬にピーナッツを与えたい場合は、以下の点に注意しましょう。
茹でてから与える
加熱していないピーナッツは硬いので、喉に引っかかる可能性があります。与える前に必ず茹でて柔らかくしてください。口の中をやけどさせないよう、人肌に冷ましてから与えることも大切です。
皮と薄皮は取り除く
ピーナッツの殻や薄皮は必ず取り除いてから与えましょう。消化不良を引き起こし、下痢の原因となります。
みじん切り、またはつぶしてから与える
ピーナッツ自体が消化しづらい食品なので、必ずみじん切りにするかつぶしてから与えてください。特に体の小さな小型犬の場合、丸飲みしてしまうと腸に詰まる恐れがあります。
添加物・調味料に気を付ける
与える際には、必ず生のピーナッツ(落花生)を調理してください。あらかじめ塩味が付いているものやピーナッツの加工食品は塩分や油分が多いため与えないでください。
ピーナッツに含まれる栄養素と犬への健康面でのデメリット
ピーナッツにはどのような栄養素が含まれているのか、また、犬に食べさせるメリットはあるのでしょうか。
ピーナッツは人間にとっては栄養価が高い
人間にとってピーナッツは非常に栄養価の高い食品として知られていますが、一体どんな栄養素が含まれているのか見ていきましょう。
ビタミンE
抗酸化作用を持っており、体内で発生する活性酸素による細胞の障害を抑えてくれる働きがあります。また、ビタミンEはアンチエイジングにも期待ができる栄養素です。
レシチン
リン脂質といわれる脂質の一つです。細胞膜の主成分でもあり、組織の機能を高める働きがあります。
ナイアシン(ビタミンB3)
ビタミンB群の一種で、細胞代謝の補酵素となる成分です。皮膚や粘膜の健康維持に役立ちます。
犬にとって健康面でのメリットはほぼない
人間にとっては栄養価の高いピーナッツですが、犬にとっては健康面でのメリットはほぼないといえます。むしろ、脂肪分の多さによる疾患リスクがあるため、必要がなければ食べさせないほうがよいでしょう。
どうしても食べさせたい場合は生のピーナッツを茹でて、小さくつぶしてから与えるようにしてください。
ピーナッツ以外のナッツ類は犬にあげても大丈夫?
ピーナッツ以外のナッツ類は犬にあげても大丈夫でしょうか? 知っておくべき基礎知識を解説していきます。
実はピーナッツはナッツ類ではない
そもそも、ピーナッツは名前に「ナッツ」と入っているため勘違いされることが多いのですが、ナッツ類ではなく豆類に分類されます。とはいえ、ピーナッツのおおよそ半分は脂肪分で構成されていて、脂質の含有量はナッツ類に匹敵するほどです。
中毒を引き起こすマカダミアナッツはNG
脂質を多く含むという点から、やはりクルミやアーモンドなどのナッツ類はピーナッツと同様に膵炎や消化不良を起こす可能性が高いといえます。与える必要がなければ避けたほうが無難でしょう。
マカデミアナッツは中毒を引き起こす恐れがあるので、与えないでください。
ピーナッツバターやピーナッツチョコ、ミックスナッツなどの加工食品はNG
人間用のピーナッツバターやピーナッツクリームには砂糖や塩、添加物が含まれており健康を害すリスクが高いため与えないほうがいいでしょう。特に、人工甘味料としてキシリトールが含まれた食品を食べてしまった、与えてしまった場合は速やかに動物病院を受診してください。犬がキシリトール製品を食べると血糖値が急激に下がるなどの中毒症状を引き起こす可能性があるため、絶対に与えないでください。
また、ピーナッツチョコレートも、チョコレートによる中毒のリスクがあるので絶対に与えてはいけません。そのほか、味付きピーナッツやおせんべいが入ったおつまみピーナッツ、味付きのミックスナッツなどの加工食品も、犬には与えないでください。塩分過多などで犬の健康に害を与える危険性があります。
上記以外にも、ピーナッツを主原料としたジーマーミ豆腐も調味料が含まれる場合が多いため、犬に食べさせるのはおすすめできません。
適量を守ってトリーツにピーナッツ味を取り入れてみても
犬は香りに敏感で、特にピーナッツのような香ばしい匂いを好む場合があります。そのため、ピーナッツの風味をトレーニングの際に活用するのも一つの方法です。
もし愛犬がピーナッツ風味を好むのなら、トレーニング用のコングに犬用に加工されたピーナッツ味のトリーツを詰めることで、犬の集中力を高めることができます。
エアゾールタイプのピーナッツバターフレーバーは使いやすく、天然ゴム製のコング専用ペーストとして活用できます。
ただし、ピーナッツを与え過ぎると健康に悪影響を及ぼすため、適量を守ることが大切です。ピーナッツ風味の粉が含まれた犬用おやつも選択肢としておすすめです。
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
ピーナッツは犬が少量摂取しても大きな健康被害を及ぼす食品ではありませんが、高脂肪・高カロリーのため、与える際には注意が必要です。
特に子犬や老犬、持病を抱える犬には適さず、誤って摂取してしまった場合も量を把握し、必要に応じて獣医師に相談することが重要です。
膵炎や腎疾患などのリスクを考慮すると、日常的に与えるのは避けましょう。