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酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業後、動物病院勤務。小動物臨床に従事。現在は獣医鍼灸師の資格を得るために鍼灸や漢方を用いた中医学による治療を勉強中
犬には飼い主が構わなくても一人で遊ぶ子もいれば、せっかく買った一人遊び用おもちゃに興味を示さない子もいます。犬が一人遊びに集中できるようになれば、留守番が得意になったり、運動不足を解消できたりとメリットがたくさんあります。
そもそも、犬はどんな理由から一人で遊ぶのでしょうか。この記事では、犬の一人遊びの種類や行動の理由や、一人遊びが得意な子と苦手な子の違いについて解説します。また、一人遊びが得意になることのメリットや、トレーニングのコツ、一人遊び用おもちゃの選び方についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 犬の一人遊びの種類と行動の理由
- 犬が一人遊びをするメリット
- 一人遊びが得意な犬と苦手な犬の違いは?
- 一人遊びをトレーニングするコツ
- 犬の一人遊び用おもちゃ選びの注意点
- まとめ
犬の一人遊びの種類と行動の理由
犬が一人で楽しむ遊びは、次の5種類が代表的です。
・走り回る
・ソファやクッションを掘る
・仰向けになってゴロゴロする
・噛む
・ボールを追いかける
普段の愛犬の様子を思い出して、「あの仕草って犬にとって遊びだったんだ!」と意外に感じた方もいるでしょう。ここでは、それぞれの特徴や、行動の理由について解説していきます。
走り回る
犬は一人で走るだけでもストレスを解消できます。とくにコーギーや柴犬のように狩猟犬・牧羊犬などのルーツを持つ犬種は、走ることが大好きです。また、自分の運動量を把握できていない子犬も、体力が尽きるまで走り回ることがあります。
中には、愛犬が広い部屋や廊下を全力で走っている姿を見たことがある方もいるでしょう。屋内に十分なスペースがない場合は、庭やドッグランなど、ノーリードでも安全に過ごせる場所に連れて行くと、自由に走って回って遊べます。
ソファやクッションを掘る
ソファやクッション、布団などを掘る仕草も、犬にとっては楽しい遊びです。犬の祖先は家畜として人と暮らすようになる前に、穴を掘って獲物を狩ったり、寝床を作ったり、食べ物を隠したりしていました。その名残で現在も、柔らかいものを掘る習性があります。
犬は掘る仕草によって、安心感を得たり、ストレスを解消したりするなどの効果があると言われています。愛犬がソファを掘る癖がある場合、素材によってはボロボロになってしまいますので、厚手のカバーをかけておくといいでしょう。寝る前に掘る癖がある場合は、本来の自分の寝床を気に入っていない可能性もありますので、犬が居心地良く眠れるベッドを用意するのもおすすめです。
仰向けになってゴロゴロする
犬は仰向けになって、床や地面に体を擦りつけるようにゴロゴロして遊ぶこともあります。これは、犬の祖先が狩りをする際に地面へ体を擦りつけることで、自分のニオイを消していた習性からきているものです。また、母犬に毛づくろいしてもらう姿勢の名残だとも言われています。
人間も横になってゴロゴロしながらくつろぎますが、犬にとっても同じなようです。飼い主やまわりの環境に気持ちを許してリラックスできているサインですので、温かく見守りましょう。
噛む
犬がおもちゃだけでなく壁、家具などを噛むのも、野生動物として生きていた時代の狩猟本能からくる習性です。また、子犬期は乳歯の生え変わりで口の中がかゆくなるため、違和感を解消するために噛むこともあります。
噛んでモノを壊すことを「楽しい!」と覚えてしまうと、噛み癖や壊し癖として成犬になった後も根付いてしまうので、いたずらを防止するためにも早めのトレーニングが大切です。犬の習性を利用した噛むおもちゃを使いながら、噛んでOKなものとNGなものを覚えてもらいましょう。
ボールを追いかける
犬は本能的に動くものを追いかける動物で、この習性を利用して狩猟犬としても活躍してきました。犬同士で追いかけっこをしたり、散歩中にランニングする人とすれ違うと追いかけていったりするのも、犬にとっては楽しい遊びです。
それだけでなく、自分でボールを投げて追いかけたり、窓の外に見える動物、光などを追いかけたりして遊ぶこともあります。犬は人間とは比較にならないほど動体視力が優れていますので、人間が気づかない音に気づいて追いかけっこをしていることもあるかもしれません。
犬が一人遊びをするメリット
犬が一人で遊びを楽しめるようになることで、犬にとっても飼い主にとってもメリットがあります。
運動不足を解消できる
犬はたくさん運動する生き物です。1日あたりの運動量は、超小型犬のチワワでも20〜30分の散歩を2回、ゴールデン・レトリバーのような大型犬は30〜1時間の散歩を2回が目安とされています。しかし、暑い時期や雨天時などは散歩に行くことでかえって体調を崩してしまうリスクがありますので、十分に運動量を確保できません。
犬が運動不足になると、ストレスが溜まってしまいます。ストレスはさまざまな病気につながるリスクもあるため、できるかぎり毎日運動で発散させてあげることが大切です。一人遊びが上手になることで、犬の好きなタイミングで運動できるので、ストレスが溜まりづらくなるでしょう。
留守番が上手になる
犬には留守番が上手な子と、あまり得意ではない子がいます。留守番が苦手な理由の1つが、飼い主の姿が見えなくなることで「分離不安」を感じることです。分離不安を強く感じる犬は、吠えつづけたり、ものを破壊したりするなどの問題行動を起こすケースもあります。
そうしたトラブルを防ぐために、留守番トレーニングの一環として犬に一人遊びのトレーニングをする方法があります。遊びに熱中することで、飼い主から注意をそらせるので、留守番が上手になってくれるでしょう。
飼い主が仕事や家事などに集中できる
飼い主が家にいても、常に犬を見守れるわけではありません。リモートワーク中や料理中、入浴中などに「遊ぼう!」と寄ってこられても、応えてあげることは難しいでしょう。また、小さい子どもがいる家庭では、寝かしつけ中に犬がやってきて子どもが起きてしまうこともあります。可愛いはずの愛犬が、睡眠不足や育児ノイローゼの原因になってしまうかもしれません。
愛犬とずっと楽しく暮らすためにも、飼い主が構えないときも一人で遊べるようになっておくことは大切です。
一人遊びが得意な犬と苦手な犬の違いは?
一人遊びが得意かどうかは、犬種や性別よりも、その犬ごとの性格が大きく影響しているようです。トレーニングしなくても一人遊びに打ち込む犬もいれば、飼い主と一緒に遊びたがる犬、遊び自体にあまり興味を示さない犬もいます。犬が好まないものを無理に強制する必要はありませんが、留守番トレーニングや分離不安の解消のためにも、一人遊びの楽しさを覚えてもらうといいでしょう。
一人遊びをトレーニングするコツ
一人遊びが苦手な犬のトレーニング方法を紹介します。犬自身に一人遊びを「楽しい!」と思ってもらうためにも、次のような手順で進めていきましょう。
まずは飼い主と同じ空間で遊ばせる
最初から犬を一人きりにして遊びに集中させるのではなく、まずは飼い主と同じ空間で遊ばせるようにしましょう。犬が一人遊びに集中できるようになったら、少しずつ離れる時間を増やしていくと、きっとトレーニングが順調に進みます。
まだ一人遊びに慣れていない状態で一人きりにしてしまうと「飼い主がいつまでも帰ってこない」という不安から、一人遊びが苦手になってしまうリスクがありますので注意してください。
知育玩具は遊び方を教える
犬の一人遊び用おもちゃとして、おもちゃの中にフードやおやつを入れる知育玩具が販売されています。知育玩具は犬が遊びに集中しやすいよう複雑な構造になっているため、いきなり与えても遊び方が分からないケースが多いようです。
まずは飼い主が一緒に遊んで、フードやおやつの出し方を見せてあげましょう。それによって「どこかからごはんが出てくるんだ!」と学習します。犬が使い方を覚えたあとに、一人遊びのおもちゃとして取り入れていくのがおすすめです。
犬の一人遊び用おもちゃ選びの注意点
犬用のおもちゃを選ぶ際は記載してある注意書きをよく読み、愛犬が誤飲、誤食をしないよう、おもちゃの大きさや硬さを確認して選ぶようにしましょう。安全かどうかは犬のサイズや噛む力によって変わってきますので、愛犬にあったおもちゃを選ぶことが大切です。次のポイントに注意して、安全性の高い一人遊び用おもちゃを選びましょう。
簡単に壊れない素材を選ぶ
プラスチック製のおもちゃや、人間用のぬいぐるみなど、犬が噛んで壊してしまう素材は誤飲の危険性があります。そうしたリスクが高いおもちゃは、一人遊びで使うのは避けるようにしましょう。また、硬すぎる素材も、犬の歯が折れてしまう可能性があるため注意が必要です。
小さすぎるおもちゃは避ける
犬の体にとって小さすぎるおもちゃは、飲み込んで喉に詰まり窒息してしまうリスクがあります。また、おもちゃ自体は大きくても、小さい穴が1つだけ空いているボールにも注意が必要です。舌を入れて遊んでいるうちに、抜けなくなってしまう可能性がありますので避けるようにしましょう。
まとめ
犬の一人遊びの多くは、犬の祖先や狩猟犬として活躍していた時代に身についた習性が引き継がれたものです。あまり一人遊びを好まない子もいるものの、性格による違いですので心配はいりません。
しかし、飼い主と離れるのを極端に嫌がる場合は、一緒に一人遊びのトレーニングをすることで、留守番が得意な子になってくれるでしょう。トレーニングに用いる一人遊び用のおもちゃは、犬の身体のサイズにあった安全性の高いものを選んでください。