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誰もが気軽にSNSに写真を投稿して発信できる時代、愛犬専用にアカウントを作って、日々写真を投稿している方も少なくないと思います。SNSを閲覧中、他のアカウントの投稿やアイコンに、愛犬とよく似ている写真を見つけたと思ったら、愛犬の写真が勝手に使われていた!ということも決して起こらないとは言えません。今回は、そんな愛犬の画像に関するトラブルについて紹介します。
目次
- SNS時代の愛犬トラブル
- 【パターン1】無断で愛犬を撮影された!
- 【パターン2】SNSの投稿画像を無断で転載された!
- 【パターン3】画像を無断で商業利用されている!
SNS時代の愛犬トラブル
今回のテーマは、愛犬の写真の無断転載に関するトラブルです。
お話を伺ったのは・・・⽯井⼀旭 先⽣ [弁護士/あさひ法律事務所 代表]
事案
全く知らない人があなたの愛犬を勝手に撮影した画像、もしくはSNSの画像を勝手に自分の飼い犬であるかのように掲載しているのを発見しました。この場合、勝手に撮影した人に対して、法的になにか言えるでしょうか。
【パターン1】無断で愛犬を撮影された!
無断で撮影された!
まず1つめのパターンとして、無断撮影された画像を利用された場合はどうでしょうか。人間には『肖像権』があります。 『肖像権』とは、自分の姿形を第三者に勝手に利用されない権利で、基本的人権としてのプライバシー権の一種です。
無断撮影されたら、人間の場合、被撮影者の肖像権侵害を理由として、無断掲載した人物に掲載の差止請求や損害賠償請求をすることができます。
犬に肖像権はあるの?
では、犬に『肖像権』はあるのでしょうか? 結論から言うと犬に肖像権は認められていません。人ではない”犬”には、”人権”が認められていません。したがってプライバシー権や肖像権も同様に認められず、肖像権侵害を理由に差止請求や損害賠償請求はできないのです。
勝手に撮られても泣き寝入り?
残念ながら、 愛犬の写真を無断撮影・無断掲載されても、転載者のマナー違反の問題にとどまり、賠償請求や差止など、相手にペナルティを課す法的な責任を追及することはできません。
ただし、犬の写真の中に飼い主の個人情報が写り込んでいるような場合であれば、(犬のの権利侵害ではなく)飼い主のプライバシー権侵害を理由に差止請求・損害賠償請求をすることができます。例えば、犬と一緒に飼主の顔まで無断撮影されてしまったような場合です。
あたかも自分の飼い犬かのように投稿
また、画像を”自分の飼い犬であるかのように”投稿しているケースがあります。ただこの場合も、その犬が著名な「芸能犬」で、その飼い主であることに特別なステータスや金銭的価値が生じるような場合でない限り、損害は生じていないと判断されます。
【パターン2】SNSの投稿画像を無断で転載された!
SNSに投稿した写真が無断転載されてる!
次に、自分がSNSに投稿した愛犬の写真を無断転載された場合はどうでしょうか。 この場合の愛犬の写真は、飼い主(撮影者)の著作物となり、飼い主に著作権が認められます。したがって、飼い主(撮影者)の著作権侵害を理由に、差止請求や損害賠償請求をすることができます。
【パターン3】画像を無断で商業利用されている!
無断で商業利用されている
最後に、愛犬を第三者が勝手に撮影してTシャツなどにプリントして販売するなど、愛犬の姿形を無断で商業利用していた場合はどうでしょうか。
このパターンには、過去に参考となる判決があります。
動物に対する所有権は、動物の顧客吸引力を排他的に支配する権能にまで及ぶものではなく、したがって第三者が動物の顧客吸引力を利用したとしても、その利用行為は動物の所有権を侵害するものではない
<最高裁判所 平成16年2月13日判決>
つまり、第三者が愛犬の画像を”えさ”にしてお客さんを集めたとしても、それは飼い主の権利を侵害はしないということです。
例外的に、飼い主のプライバシー侵害に該当する場合や、飼い主が愛犬のグッズ販売などを既にしていて、第三者の無断使用がその販売の妨げになるような場合は、差止や賠償を訴えることができる可能性もあります。