公開
博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。

夏が近づくと、散歩中に気になるのが地面の熱さ。手で触って確かめたり、できるだけ日陰を選んで歩いたりと、工夫している方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、実際にどれくらい地面の温度が上がっているのか、数値でわからないと少し不安になりますよね。
そこで今回は、最高気温が32℃の真夏日にカインズの「赤外線放射温度計」を使って、さまざまな地面の温度を測定。
さらに、犬の肉球が熱から受ける影響について、獣医師の茂木先生に詳しくお話を伺いました。
目次
- カインズの赤外線放射温度計で、愛犬の歩く地面の温度を測ってみた!
- 朝の愛犬の散歩で地面を測ってみた…予想以上の温度に驚き!
- 地面の温度は何度以上が愛犬に危険? 獣医師に聞いてみた!
- 真夏日、午後の散歩は危険! 55℃を超える地面の温度
- 「熱伝導率」って? 同じ温度であっても愛犬の危険度は違う?
- 夜や雨上がりでも、温度が下がらないことも…油断は禁物!
- 夏の愛犬のお散歩は、「時間」と「場所」の選び方がカギ!
カインズの赤外線放射温度計で、愛犬の歩く地面の温度を測ってみた!

使用したのは、カインズの『赤外線放射温度計』。
非接触タイプで、地面に触れずボタンひとつで温度を測れるすぐれものです。小型で軽く、ストラップ付きなので、散歩中の持ち運びにも便利。
さっそく、愛犬との散歩コースで地面の温度を実際に測ってみました。
朝の愛犬の散歩で地面を測ってみた…予想以上の温度に驚き!
午前7時、気温は26℃。すでに暑さは感じますが、まだ温度が上がりきっていない時間帯です。
<日向のアスファルトの温度>
まずは日向のアスファルト道路を測定してみると、なんと43.8℃という表示が!
手で触れてみると、じんわりとした温かさ。一瞬なら平気でも、長く触れていると熱がしっかり伝わってきます。
これだけ熱い地面の上を歩いていたら、私たち以上に地面の熱の影響を受けていた可能性がありますよね。
<日陰のアスファルトの温度>
続いて、日陰のアスファルトを測ってみると25.4℃。日向と日陰とで、約18℃の差があることに驚かされました。
次に、土の地面をチェック。手で触れた感触は、アスファルトよりやや低めに感じます。
<土の温度>
実際に測定してみると、日向が40.8℃、日陰が32.8℃という結果に。アスファルトよりは低いものの、日向はやはり高温になっていました。
<芝生の温度>
一方、芝生では、日向が38.4℃、日陰が22.6℃でした。他の場所と比べて低く、日陰は手で触るとひんやりとして、心地よく感じます。
最後に測ったのは、マンホールの金属部分。直射日光下の日向では、触れた瞬間に熱さを感じました。
<マンホールの温度>
測定すると、日向のアスファルトよりも高い53. 0℃という驚きの数値が。
まだ本格的な暑さになる前の「快適な朝散歩」のつもりでしたが、犬にとっては思いのほか過酷な環境だった可能性があります。
地面の温度は何度以上が愛犬に危険? 獣医師に聞いてみた!

実際に地面の温度を測ってみると、飼い主が思っているよりもはるかに高温になっていることがわかりました。
とくに、日向のアスファルトやマンホールの表面温度はかなり高め。私たちが裸足で歩けないような場所を、犬は肉球で歩いているのです。
飼い主が散歩中に「ちょっと暑いな」と感じる頃には、すでに犬にとっては危険な温度になっているのかもしれません。
では、犬にとって「どれくらいの温度」が危険なのでしょうか?
地面の熱が肉球に与える影響について、獣医師の茂木先生に伺いました。

実は、犬の肉球は私たち人間の皮膚よりも熱に弱いんです。というのも、細かい血管があまり発達しておらず、熱がこもりやすい構造になっているんですね。
たとえば、地面の温度が50℃になると、赤くなったり、炎症が起きることがあります。さらに55℃を超えると、わずか1分以内の接触でも火傷のリスクがあるので、本当に注意が必要です
真夏日、午後の散歩は危険! 55℃を超える地面の温度
午後の外出時に、朝と同じコースで地面の温度を測定してみました。時間は13時、気温は32℃まで上昇しています。

測定してみると、朝よりもさらに温度が上がり、日向のアスファルトではなんと火傷リスクのある55℃を超える地点もありました。さらにマンホールでは、55℃を大きく上回る62℃という数値が!
こうして見ると、同じ気温の日でも、素材によって地面の表面温度には大きな差があるのがわかります。
とくに印象的だったのは、駐車場の地面の温度です。
車のボディが太陽の熱をためこんで、まわりにも熱を放っているせいか、周辺の地面まで高温になっていて、驚くような温度が出ていました。
<駐車場の地面の温度>

長時間のドライブのあと、車内でじっとしていたぶん、「早く歩かせてあげたい」と思ってすぐ地面に降ろしてしまうこともあります。けれども、肉球を守るためには、降車時の地面の温度にも注意が必要だと実感しました。
また、公園の遊具もかなりの高温になっていました。
<公園の遊具の温度>

最近は、簡易アジリティが設置されたドッグランが多くありますが、愛犬を遊ばせる際には、こうした設備の温度にも気をつけたいところです。
実際に測ってみると、同じ気温でも歩く場所の素材によって、地面の温度は驚くほど変わります。この違いについても、茂木先生に詳しく教えていただきました。

同じ気温でも、地面の素材によって熱の吸収や保持のしやすさが異なるため、実際の表面温度には大きな差が出てきます。
たとえば、ある日の気温が30℃・晴天時に測定した結果は以下の通りです。
- 土や天然芝生:40℃前後
- 人工芝:50〜60℃
- 黒いアスファルト:55〜65℃
- コンクリート:〜60℃
- 金属製マンホール:65℃以上に達することも
気温がそこまで高くなくても、地面は想像以上に高温になっていることがあるので、注意してあげてくださいね
「熱伝導率」って? 同じ温度であっても愛犬の危険度は違う?

素材によって地面の表面温度が大きく異なることは、実際に測定してよくわかりました。
けれども実は、犬にとっての危険度は、温度の高さだけではなく「どのような素材を歩いているか」によっても変わってきます。
実は、同じ温度でも素材によって犬への負担は大きく変わります。たとえば、同じ温度でも、触れた瞬間に熱が一気に伝わる素材もあれば、ゆっくり伝わる素材もあります。
つまり、「熱の伝わりやすさ」の違いに注意が必要なのです。

これは「熱伝導率(ねつでんどうりつ)」と呼ばれる性質によるものです。熱の伝わりやすさを示す指標で、熱伝導率が高いほど、熱が早く・強く伝わります。
つまり、同じ温度であっても、熱伝導率が高い素材では、触れた瞬間に感じる熱さや、火傷のリスクが大きくなるんです。
たとえば金属の上では、熱が一瞬で伝わるため、触れた瞬間に火傷してしまう危険性があります。
逆に、芝生や土などは熱伝導率が低いため、同じ温度でもじわじわと熱が伝わり、犬の肉球には比較的やさしい素材と言えます
夜や雨上がりでも、温度が下がらないことも…油断は禁物!
夕方や夜に散歩をする場合でも、日中の強い日差しで熱をため込んだアスファルトは、思っている以上に温度が下がっていないことがあります。
環境省の資料(※1)によると、舗装された地面は日中に60℃程度まで上昇することがあり、夜間になっても高温を保ちやすいとされています。

一方で、日中に日陰になっている時間が長い場所では、地面が高温になりにくく、夜にはしっかり冷える傾向があります。
夕方や夜に散歩をするときは、そうした場所を選ぶのもひとつの工夫です。
また、雨が降ったあとの地面も、一見ひんやりしているように感じますが、必ずしも安心とは限りません。
打ち水効果で一時的に冷えたようにみえても、その後晴天となり日射が強くなると、地面は再び加熱されます。とくに、アスファルトや金属製のマンホールなど、熱伝導率の高い素材は、短時間で一気に高温になる可能性があるため注意が必要です。(※2)
「日が落ちたから」「雨で冷えたはず」と油断せず、散歩の前には手のひらで地面を数秒触って確認するなどを、習慣にすると安心です。
(※1)https://www.env.go.jp/air/life/heat_island/manual_01/02_chpt1-2.pdf?utm_source=chatgpt.com
(※2)https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/2020tokyo/pdf03/3.pdf?utm_source=chatgpt.com
夏の愛犬のお散歩は、「時間」と「場所」の選び方がカギ!
地面の温度は気温以上に上がりやすく、犬の肉球には想像以上の負担になります。とくにアスファルトやマンホールは高温になりやすいため、注意が必要です。
夏の散歩コースは、芝生や土など熱をためにくい場所を選ぶのがおすすめ。また、夜のお散歩では、日中に長時間日陰になっていた場所を選んで歩かせると、肉球への負担も軽くなります。
この夏は、時間と場所を工夫して、愛犬と気持ちのよいお散歩時間を楽しみましょう!
※商品が売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により商品の取り扱い状況が異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。