転勤族の夫とともに、全国を転々としている。現在は東京の片隅で書店員として勤務。今年、『書店員は見た 本屋さんで起こる小さなドラマ』を上梓した。

東京へ向かう道路は、思ったよりも空いていた。
コンビニのコーヒーを片手に、夫と、今日会った犬たちについて話し合う。
私たちの保護犬探しは始まったばかり、初回で決める必要などないのだけれど、なんとなくプニプニのことが気になる。猫と暮らす適性があるかわからないのが、どうにもネックではあるが、あれだけ動じないタイプならいけそうな気もする。
あまりプニプニに肩入れするのもどうかと思い、他の犬の話などしていたら、夫が言った。
「プニプニが気になるんでしょ?」
「そう見える?」私が聞くと、夫は「もうプニプニで決めるのかと思ってたのに、申し込みしないで帰ったから意外だった」
目次
- 「この子でいいのか」じゃなく、「この子と生きられるか」
- 決断は、静かに、でも一気に動き出す
「この子でいいのか」じゃなく、「この子と生きられるか」
私は普段からフィーリング重視で即決するタイプだ。
一緒に暮らす様子を想像出来るかを、密かにポイントのひとつにしているのだが、今回会った犬の中で唯一想像出来たのがプニプニだった。
ただ、それは今回に限ってのことで、次、その次と、いろんな犬と会ううちに「この子しかいない!」と思える子と会えるかもしれなくない?
私がそう伝えると、夫は「今までの犬はみんな急にうちにやって来て、でも最後は『誰よりも大切なうちの子』になるじゃん。大丈夫だよ」と笑う。
プニプニと家族になりたい?
自分の胸に問いかけてみるが、はっきりとした答えは出ない。
「なりたいって言うか、なれるよ」
運転席から前方を見つめながら、夫は言う。
「帰ったら、正式に申し込みをしてみたら?」
「初回で決めてしまっていいのかな」
「縁があったってことでしょ」
歩道を、家族が犬を連れて歩いている。
私と夫より10歳は若いだろう、お母さんとお父さん。小学生くらいの姉弟。ミックス犬だろうか、一般的な柴犬よりは少し大きめの茶色い子の首元には赤い蝶ネクタイ。
楽しげな家族を見て、私は心が決まった。
決断は、静かに、でも一気に動き出す

家に帰ると、娘がドタドタと階段を降りて来て「どうだった⁈」と聞く。
「ちょっと気になる子がいて、申し込みをしようかと思うんだけど」
私が言うと、「おぉ! しなよ!」と写真も見ずに言うので、笑ってしまった。
「まずは写真を見てみてよ」
私のスマホには泥だらけで転がるのプニプニの写真しかないため、保護団体のホームページを開いてみると、おすまし顔のプニプニの写真が見つかった。
こんなに綺麗な犬なのか……。
さっきは汚れていたからよくわからなかったが、写真で見ると胸元の白い毛がピカピカ光っている。
娘が「いいね! この子で決まり! さぁ連絡して!」と急かす。
私は問い合わせフォームから、家族に迎えることを検討させてほしい旨、そして”譲渡会でも伝えたが”と前置きし、猫との相性が懸念事項であることを書き加え、送信した。
「どうか、ご縁がありますように!」画面に向かって拝む。
返事は、びっくりするほどの速さで届いた。
「連絡くださるといいなと思っていたので嬉しいです! 正式にお申込みいただいた後、ご自宅でお見合い、その後問題なければ1ヶ月のトライアルへと進みますーーー」
私は、プニプニと猫との相性を含め、ひとまずお見合いで見極めることとした。
お見合いは10日後。
急に加速度が変わる。また、犬がいる暮らしが始まるのだ。











