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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
リモートワークが増えた昨今、勤務地に縛られなくなったため、より快適な住まいを見つけて転居をする人が増えています。犬と一緒に暮らす飼い主が引っ越しをする場合、住まいをどのように選べばよいでしょうか。ヤマザキ動物看護大学で動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に、そのポイントを解説していただきます。
目次
- ポイント1:ペット可物件かペット共生物件であること
- ポイント2:快適な室温を管理できる
- ポイント3:室内の空気環境がよい
- ポイント4:滑らない床材が使われている
- ポイント5:安全な散歩ができる立地にある
- ポイント6:作り付けの収納が多い
- ポイント7:犬がイタズラできない位置にコンセントがある
ポイント1:ペット可物件かペット共生物件であること
転居先を探すとき、どんな住まいなら犬と暮らすのに適するのか、見極めのポイントを順に見ていきましょう。
まず、賃貸物件ではペット可物件やペット共生物件など、管理規約でペットの飼育が認められている物件を選ぶことが大前提になります。
ただし、ペット可物件であっても、どんな動物を何匹でも飼っていい、というわけではありません。「犬はOKだけど猫はNG」「大型犬はNG」「犬猫どちらか1匹までならOK」などの規定があり、その許容範囲が物件によって異なります。ペット可物件での暮らしを検討するときは、飼育可能なペットの種類や制限頭数などを、管理会社や大家さんに確認しておくとよいでしょう。
ポイント2:快適な室温を管理できる
次に大事なポイントは、犬が暮らす部屋の環境です。これには室温、空気環境、床材など、必ずチェックしておきたい要素があります。
まず、室温について考えていきましょう。例えば、犬を留守番させることがあるなら、夏場の空調管理は必須です。備え付けのエアコンは、使用年数などについて入居前に確認を。古いエアコンは冷房能力や節電機能が低いので、管理会社や大家さんに相談して新しいものに取り換えてもらうとよいでしょう。
壁は断熱性が高いと光熱費を低く抑えられるので、高断熱の壁は好ましいです。一方、気密性が高い部屋はおすすめできません。なぜなら夏場に停電したとき、閉じられた高気密な空間はすぐに高温になり、犬が熱中症で危険な状況に陥ってしまう心配があるからです。
ポイント3:室内の空気環境がよい
室内の空気環境を整えられる(換気がよい)かどうかも、犬との住まい選びでは大切なポイントです。築年数が浅い物件なら、24時間換気ができる換気口が標準装備されていることが多いので、窓を閉めたままでも換気ができて快適です。
築年数が古い物件では、換気口が備わっておらず、窓を開けて換気を行う仕組みになっていることも。この場合は、窓を少し開けておいても侵入防止ができるようなストッパーがあれば、換気中の防犯については安心できます。ただし、大通り沿いなど交通量の多い立地では、窓を開けると騒音がしたり、異臭が入り込んできたりすることが懸念されます。
入居前の下見は、日程や時間帯を変えて複数回行うのがおすすめです。留守番中に犬を不安にさせる状況が起こらないかどうか、下見で必ず確認しておきましょう。
ポイント4:滑らない床材が使われている
犬が暮らす部屋の床材は、コルクやタイル、無垢材などの滑りにくい素材のものがおすすめです。一般的なフローリングは滑りやすく、犬の足腰に負担がかかるので、できれば避けたほうがよいでしょう。
賃貸物件の場合は、退去時に破損箇所があると、修繕費などの支払いが追加で必要になることがよくあります。犬が汚したり壊したり、爪痕が残ってしまったりしても、敷金の範囲内で原状復帰できる品質の床材かどうかは、事前に確認しておくとよいでしょう。
ポイント5:安全な散歩ができる立地にある
室内環境の次に確認したいのは、立地です。ポイントは「犬のお散歩がしやすい立地かどうか」です。
まず、玄関や門を出てすぐの道路の交通量をチェックしてみましょう。隣接する道路の交通量が多いと、犬は散歩を好まなくなる傾向があります。屋外の第一印象がよくないためです。そのため、できるだけ周囲が静かな環境にある家を選ぶとよいでしょう。小型犬なら、安全な場所まではいつも抱っこで移動することにするのもいいですね。
さらに好ましいのは、公園や動物病院へ日常的に立ち寄りやすい立地にあることです。公園は、お散歩途中などに寄ることで、ほかの犬や飼い主と出会い、コミュニケーションが育まれやすい場所です。転居先でご近所の犬や飼い主、動物病院に温かく受け入れてもらうことは、新生活を安心して始めるために重要。飼い主にとっても犬にとっても、大きな意味があります。
ポイント6:作り付けの収納が多い
犬と一緒に暮らす住まいをより快適にするのが、作り付けの収納の多さです。
床などに置くタイプの一般的な収納家具は、犬が引き出したりして、イタズラするきっかけとなってしまいがちです。それに比べ、作り付けのクローゼットなどの収納スペースは、ドアを閉めると壁とフラットに収まるため、犬のイタズラを誘引しづらく、暮らしがより快適になります。
賃貸物件では、作り付けの収納スペースがあることが多いでしょう。ただし、その容量はさまざまなので、よく確認しておくのがおすすめです。所有品の量は個人差が大きいので一概には言えませんが、転居前より収納スペースが狭くなるような物件は選ばないほうがよいでしょう。
ポイント7:犬がイタズラできない位置にコンセントがある
見逃しがちですが、できれば注意したいポイントが、コンセントの位置です。コンセントがリビングなどで犬の動線上にある場合、そのコンセントで配線をすると犬がイタズラをする恐れがあります。
犬と一緒に暮らす住まいでは、コンセントは犬の動線から外れた場所にあるのが望ましいです。住まい選びの際には、コンセントを家具などで隠す配線にできるかどうか、確認してみましょう。ペット共生物件では、コンセントが人の腰の高さ以上のところに配線されていて、感電防止に配慮した物件などがありますので、チェックしてみるとよいでしょう。