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オールペットクリニック所属。日本獣医皮膚科学会認定医。 アメリカChi University Veterynary Food Therapyコース修了。
日本ではまだ珍しい犬種ながら、欧米では人気の高いハバニーズですが、ハバニーズを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、オールペットクリニックの五十嵐里菜先生に教えていただいた、ハバニーズの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- ハバニーズの歴史やルーツ、英語名は?
- ハバニーズの体高や体重は?
- ハバニーズの平均寿命は?
- ハバニーズの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- ハバニーズはどんな性格、習性?
- ハバニーズを迎える際にかかる費用は?
- ハバニーズのしつけと社会化トレーニングのポイント
- ハバニーズに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- ハバニーズを飼うのに向いている人は?
- ハバニーズがかかりやすい病気と予防法は?
- ハバニーズの日常のお手入れ方法
- ハバニーズとの生活で注意すべきことは?
ハバニーズの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | ハバニーズ |
英語名 | Havanese |
原産国 | キューバ |
分類 | 小型犬 |
グループ | 9G:愛玩犬 |
ハバニーズは地中海西端地域で産出され、スペインやイタリアの沿岸地域に広がっていきました。しかし、それ以前にイタリア人船長によってキューバに輸入されたともいわれています。ハバニーズに最も多い毛色がブラウン(タバコ)であることから、キューバの首都・ハバナが原産という説もあります。
政治的な動きからハバナ元来の血統は完全に消滅したと思われていましたが、実際は生き残った数頭がキューバから国外へひそかに持ち出され、その子孫犬がアメリカで存続していったと考えられています。このような経緯から、現在はアメリカでの飼育数が多くなっているようです。
ハバニーズの体高や体重は?
体高:23~27cm
体重:3.2~5.9kg
ハバニーズは小型犬に分類され、体は小さいながら骨格は丈夫で頑丈です。足が短いため体高は低めの体つきをしています。
ハバニーズの平均寿命は?
ハバニーズの平均寿命は13~15歳とされています。ハバニーズは小型犬に分類されますが、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、小型犬の平均寿命は14.4歳のため、平均とほぼ変わらないといえるでしょう。
犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
ハバニーズの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
ハバニーズの毛色にはたくさんの種類があります。さまざまなシェードのフォーン、ブラック、ハバナ・ブラウン、タバコ、レディッシュ・ブラウンなどの班が入るなど、2色以上が組み合わさった個体もいます。わずかにブラックが入っている個体もおり、あらゆるカラーが認められているようです。全身ピュア・ホワイトの個体もいますが、単色の個体はまれです。ハバニーズの毛色は子犬の頃と成犬になった後で色の出方が大きく変わる場合があります。
ハバニーズの毛色は子犬の頃と成犬になった後で色の出方が大きく変わる場合があります。
ハバニーズの被毛は長毛のダブルコートで、長くて柔らかいのが特徴です。柔らかくウェーブのかかった、長く美しい被毛が望ましいとされています。
ハバニーズはどんな性格、習性?
ハバニーズは、温厚でマイペースな性格です。知的で好奇心旺盛なので、一度遊び始めると、時間を忘れていつまでも遊ぶ子もいます。愛情深く、朗らかで愛想もよく、人を楽しませる陽気な性格は、まるでピエロのようだといわれることもあります。
体を横に揺らしながらヨチヨチ歩く姿はとても愛らしく、吠えたり唸ったりすることも少ない犬種ですから、集合住宅でも飼いやすいでしょう。かわいらしい外見とは対照的に、頑丈な骨格をしており、高い運動能力を持ちます。また、大変賢い犬種で、番犬としてのトレーニングもさほど難しくはありません。
その一方で、寂しがりで臆病な一面もあり、留守番をさせる際は配慮が必要です。子犬の頃から少しずつ一人で過ごせるトレーニングをしておきましょう。
ハバニーズを迎える際にかかる費用は?
ハバニーズを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
犬の生体代 |
約30万円 |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000~10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000~10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
ハバニーズのブリーダーは非常に少なく、ペットショップにいるケースはほとんどありません。迎える費用は一般的に30万円ほどといわれていますが、ブリーダーや月齢などで異なります。他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30 日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
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飼い続けるために必要な費用
犬を養育する上での生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
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ハバニーズを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。ハバニーズは人と遊ぶのが好きな性格のため、ボール遊びやゲームを取り入れた運動や知育おもちゃなどがおすすめです。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどです。ハバニーズはダブルコートのため、ブラッシングや自宅でのシャンプーといったケア用品を揃えておくのが安心です。
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2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主の元へ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、ハバニーズを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策を取るのもおすすめです。
ハバニーズのしつけと社会化トレーニングのポイント
人懐こく、愛情深い性格のハバニーズは常に飼い主のそばにいたがります。家族の姿が見えないと寂しがるので、子犬の頃からトレーニングをして、飼い主や家族と離れることに慣れさせていきましょう。
臆病な一面があるため、子犬の頃からほかの犬や家族以外の人間と触れ合い、社会化を促すことも大切です。さまざまな体験をさせることで、本来の活発で陽気な性格を引き出すことができます。飼い主から褒められることが大好きなハバニーズは、叱るよりも褒めて伸ばす方が効果的です。
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ハバニーズに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:30分を1日1回
✓運動量:少ない~普通
✓おすすめの遊び:ボール遊び、少し頭を使うおもちゃ遊び
ハバニーズはそれほど多くの運動量が必要な犬種ではありませんが、ストレス解消のためにも、1日30分程度の散歩を日課にしましょう。主に室内犬として飼われるため、散歩をして外の世界に触れさせてあげることで、社会性が身に付きます。
散歩に行けない日は、室内でおもちゃやボールで遊ぶなど、運動できる時間を作ってあげましょう。ハバニーズは遊ぶことが大好きですから、庭などがあれば一緒に走ったり、ボールを追いかけて遊んだりすると喜びます。とても賢い犬種なので、たまにはいつもと違う、少し頭を使う遊びをするのもよいでしょう。
ハバニーズを飼うのに向いている人は?
✓子どものいる家庭でも大丈夫
ハバニーズは子どもが好きな犬として知られているため、小さなお子さまがいるご家庭でも犬がストレスを感じにくいでしょう。友好的でおっとりした性格のため、初めて犬を飼う人やシニア世代にも向いています。
✓自宅で過ごす時間が長い人
飼い主に対する愛情が深いがゆえに、姿が見えないと寂しくなったり、不安になったりする犬もいます。留守が多い人よりは、自宅で過ごす時間が比較的長い人に向いているといえるでしょう。
ハバニーズがかかりやすい病気と予防法は?
ハバニーズがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓膝蓋骨脱臼
膝蓋骨が脱臼してしまうハバニーズなどの小型犬に多い疾患です。先天的に膝関節に異常がある場合や、外傷などで起こります。症状は4段階に分けられ、重症の場合外科手術による治療が行われます。
✓外耳炎
湿気が耳道にこもりやすい垂れ耳の犬種に多い病気です。原因はアレルギーや細菌性の炎症など。強いかゆみを引き起こし、頭を激しく振ったり、耳を足で激しく掻きむしったりしますが、点耳薬などで治療できます。定期的な耳掃除で予防しましょう。
✓涙流症
目の涙感管が詰まることで涙があふれる病気です。アレルギー性結膜炎や逆さまつ毛が主な原因といわれています。目の周辺の被毛が刺激となって発症することが多く、再発にも注意が必要です。目の周りの被毛を定期的にカットするなど、目に毛が入らないようにして予防しましょう。
かかりやすい病気や予防法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
>愛犬の歩き方がおかしい!?膝蓋骨脱臼(パテラ)の原因と予防法について解説【獣医師監修】
ハバニーズの日常のお手入れ方法
✓ブラッシング:毎日もしくは2日に1回は必須
✓シャンプー:数週間に1回程度
✓トリミング:月に1回程度
ハバニーズはウェーブのかかったふわふわの長い毛が魅力の一つです。毛を美しく保つには日々のブラッシングが欠かせません。耳や脇の下、内股、尻尾は特に毛玉ができやすい箇所です。毛玉ができてしまったらピンブラシで毛玉をほぐし、その後コームで優しく整えます。
このほかにも定期的なカットやシャンプーも必要です。これらのケアを怠ると目の中に毛が入り、眼球を傷つけたり、目の病気を引き起こしたりします。
目や耳の病気にかかりやすいハバニーズは、涙やけのケアと耳掃除も必須です。涙やけを確認したら、コットンやガーゼを濡らしてきれいに拭き取ります。耳の周りも日頃からよく観察し、濡らしたガーゼやペーパータオルなどで耳掃除をしてあげましょう。
ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯磨きは毎日~2日に1回、耳掃除は1〜2週に1回、肛門腺絞り、爪切りは1カ月に1回の頻度で行います。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床で滑りやすくなるためカットしてください。
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ハバニーズとの生活で注意すべきことは?
ハバニーズと生活する上で注意すべきポイントを紹介します。
✓定期的にブラッシングをしよう!
ハバニーズのようなダブルコートの犬は毛が密生しているため、むだ毛が絡まったり、毛玉になったりすることを防ぐためにも定期的なブラッシングを心がけましょう。その他、最低でも月に1度はシャンプーすることもおすすめです。肌のバリア機能が低下する原因にもなるため、洗い過ぎは禁物です。
✓皮膚炎
豊富な被毛を持つ犬種に多い病気です。ブラッシングやシャンプーなどのお手入れで皮膚を清潔に保って予防しましょう。湿度が高い時期には膿皮症やマラセチア性皮膚炎などの感染性の皮膚炎が増加します。
✓湿気の多い季節は、耳のお手入れをいつもより念入りに!
垂れ耳の犬種は、梅雨時期から夏にかけて耳や皮膚のトラブルが増えます。耳の色やにおい、耳垢の様子をこまめにチェックしましょう。ただし、過度な耳掃除は耳を傷つける恐れがあります。かかりつけの動物病院でケアしてもらうと安心です。
✓関節に負担の少ない床材を選ぼう!
床で足が滑ると足首などの関節に負担がかかります。普段過ごす部屋の床は滑りにくい素材を選ぶか、マットなどを敷くとよいでしょう。
✓夏は暑さ対策、冬は寒さ対策を!
毛がふわふわしていて、毛量も多いハバニーズですが、体温調節の役割を果たすアンダーコートがほとんどありません。そのため、気温の変化に敏感で、暑さ・寒さに弱く、室外での飼育には不向きです。夏は暑さで熱中症になりやすく、冬は寒さで体温が奪われます。エアコンや暖房器具などで温度調節できる室内に迎え入れてあげましょう。