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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
とにかく何でもかじって確認しようとする犬の行動。飼い主さんはよく見る光景ではないでしょうか。かじり癖の理由や気持ち、オススメのかじりおもちゃの選び方や注意点などを獣医師の茂木千恵先生に解説してもらいました!
目次
- カジリーヌの生態《変な犬図鑑018》
- カジリーヌの生態について獣医師・茂木千恵先生にインタビュー!
カジリーヌの生態《変な犬図鑑018》
カジリーヌはすぐかじろうとする。
実は今もコップをかじれないか、
飼い主の隙をねらっているのだ。
お次は一升瓶。ん?…一升瓶⁈
もうすでにかじろうとしていた。
ダメー!飼い主は息もつけない。
仕方なくペットボトルをあげる。
数分後、ペコペコかじる音が
リビングに響きわたるのであった。
カジリーヌの生態について獣医師・茂木千恵先生にインタビュー!
-かじり癖は子犬時期で収まると聞いたことがあったのですが、成犬になってもこの行動が止みません。やめさせた方がいいですか?
茂木先生「犬が物を口に入れたり噛んだりすることは、至って普通です。中身を確かめるためであり、犬によく見られる行動です。子犬の成長に伴ってかじる行動が一時的に増えて生後約18か月で収まっていくものですが、犬によっては、生涯にわたってある程度継続します。かじる、舐める、噛むことは、犬が探索して学習したり、物を運んだりするための通常の行動なので問題ありません。
子犬が生後6か月の頃に永久歯に生え替わる時期があり、口の中が不快に感じられることがあります。不快感を紛らわすために物をかじる行動が一時的に増えることが知られています。なお、歯や歯茎がかゆい時、犬は口を前肢で掻いたり、鼻先(マズル)をこすったりします。口腔内に炎症が起きている場合がありますので、獣医師の診察を受けましょう。」
-犬が物をかじるのは確かめるためなのですね!
茂木先生「噛むことでその物を確認する以外にも、おもちゃに見立てて遊んだりする意味もあります。獲物を噛み締めているような満足感が得られるようです。かじるほどに味やにおいが出てくる素材、犬歯や臼歯でかみしめたときにしっかりとした弾力が感じられる素材だと、なお犬の本能がかき立てられるようです。」
-犬が物をかじることのメリットはありますか?
茂木先生「かじることは犬にとって楽しいものであり、脳のリフレッシュ効果を高めることができます。また強い顎と健康な歯の成長と維持を促進します。」
-では、犬が物をかじっている最中はどのような気持ちなのでしょうか?
茂木先生「犬が食べられない物をかじるのは、ほとんどの場合、犬が退屈に感じたり、軽度の不安や欲求不満を感じたときです。噛む行為によって、本能が満たされて欲求不満が解消され心地よくなっていると思われます。
もしくは、かじったら美味しい味やにおいが感じられるものの場合、単純に食欲が刺激されて興奮していることもあります。」
-犬がかじりたくなる物の傾向はありますか?
茂木先生「狩りの疑似体験ができるような、かじった時に獲物を咥えている感覚に類似しているものが本能的に好きなはずです。
破壊することでストレス発散になるので、すぐに壊れてしまうものを好みます。一方で、弾力はあるのにすぐに引きちぎれないもの、かじると味やにおいが良いもの、小動物が立てるような甲高い音がするものであると、長時間興味を保ち続けられやすいです。天然素材でできたもの、家畜のアキレス腱や内臓などを乾燥させたものもオススメです。」
-かじりおもちゃを選ぶ際のポイントはありますか?
茂木先生「飲み込んだ場合に詰まらないサイズ、あるいは飲み込めない大きさかどうかを見てあげてください。」
-犬がこれをかじったら危険!すぐにやめさせて!というものを教えてください。
茂木先生「間違った物をかじると犬にとって危険なことが多くなります。以下の6つは意外にも危険なので監督できないときに与えるのは避けてください。歯の骨折、歯茎の裂傷、便秘、腸管の閉塞を引き起こす可能性が高まります。
・氷→小型犬の細い歯にとっては硬すぎて歯が折れる可能性があります。
・ 棒と木→噛むと木の破片が簡単に砕け、破片が犬の口に詰まって呼吸ができなくなることがあります。破片が口の中を傷付けることもあります。また、木片を飲み込むと腸閉塞を引き起こす可能性があります。
・石→アウトドアなどで犬が退屈したときに石を遊びの対象としてかむことがよくあります。さらに、石に食べ物の匂いや汁が付いている場合(たとえば、BBQグリルの近くの石)、犬はそれが食べ物だと思ってそれを飲み込もうとすることがあります。飲み込んでしまった場合、呼吸困難や腸閉塞など命に関わることもありますので近づけないように注意が必要です。
・骨→犬が骨を噛み砕いてしまうと、その破片を誤って飲み込む可能性があります。骨の破片は腸にとどまります。骨の破片は口、喉、腸に刺さってしまうことも有り、除去するために緊急の手術を必要とする場合があります。骨は歯のエナメル質をすり減らしたり歯を折ってしまったりすることも有ります。
・ ペットボトル→ボトルのキャップが外れ、犬が飲み込んでのどに詰まる可能性があります。また、破片は鋭い断面となり歯茎を切ってしまう場合があります。
また、破片が生じて飲み込めるサイズになったらすぐに捨ててください。飼い主が良かれと思っても、噛むおもちゃを小さく切ってから与えてしまうのは絶対にNGです!」