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酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業後、動物病院勤務。小動物臨床に従事。現在は獣医鍼灸師の資格を得るために鍼灸や漢方を用いた中医学による治療を勉強中
愛犬が脱走して迷子になると、保健所や警察に連絡したあとも、心配で気が休まらずあてもなく捜してしまうこともあるでしょう。犬が迷子になったあとの行動には個体差があるものの、体のサイズや、性別、年齢、性格、そのときの気候によってある程度パターン化することも可能です。
この記事では、飼い主が迷子になった愛犬を捜すための手がかりになる情報をまとめました。一般的な犬の移動距離や行動パターンについて解説しますので、周囲を頼りながら捜索活動に役立ててください。
目次
- 迷子になった犬はどこにいる?
- 迷子犬の行動パターン
- 保護された犬はどこに行く?
- 迷子犬が見つかる確率は?
- 迷子犬を見つけたらどうしたらいい?
- 愛犬の迷子を防ぐためにできること
- まとめ
迷子になった犬はどこにいる?
迷子になった犬の手がかりを掴む方法はあるのでしょうか。保健所の保護実績や、犬が1日に移動できる距離から、迷子犬の居場所のヒントを探っていきます。
迷子犬は自宅周辺で保護されることが多い
島根県出雲保健所の調査によると、無事に飼い主のもとへ返還された迷子犬のうち41%が自宅から100〜500m圏内で保護されたそうです。さらに迷子犬の95%が、自宅から半径3km圏内で保護されています。
つまり、迷子犬は自宅からそれほど遠くない距離にいる可能性が高くなっています。この調査データは2006〜2007年ごろのものではあるものの、現在も迷子犬の行動傾向はあまり変化していないでしょう。なお、犬が進む方角については、特徴は見られなかったようです。
※参考:迷子の犬をなくすために|島根県
迷子犬の移動距離
迷子になってから日が経つほど、犬の移動範囲は広がる可能性があります。犬が1日に移動できる距離の目安は、次の通りです。
・小型犬の移動距離目安:300m~1km程度
・中・大型犬の移動距離目安:1~5km程度
たとえば中型犬で迷子から3日経った場合、移動距離が半径3〜15km圏内ほどと広がります。15kmは箱根駅伝で例えると出発地点の大手町から蒲田駅までの距離ですので、かなりの広範囲に及びます。
ただし、迷子になった場所からぐんぐん遠ざかるように、決まった方角へまっすぐ移動するとは限りません。同じ道を何度もまわったり、来た道を戻ったりしている可能性もあります。「とてもじゃないけど捜しきれない」と気を落としてしまう前に、愛犬の特徴から迷子になったあとの行動パターンを想像して、居場所の目星をつけてみましょう。
迷子犬の行動パターン
犬の行動パターンは個体や迷子になった状況によって異なるものの、性別や年齢、性格、気候に左右されることもあります。ここでは、ケース別の迷子犬の行動パターンを紹介します。
性別
去勢していないオスの場合、発情したメスのフェロモンを嗅ぎ取って追いかけていったかもしれません。迷子になる前に落ち着きがなくなったり、食欲が減ったりといった変化があれば、生理現象で脱走した可能性があります。オスは数キロ先にいるメスのフェロモンも察知できると言われており、去勢したオスでもマーキングの臭いを嗅ぎ回って転々としていることがあります。
こうした理由によりオスは移動距離が広範囲に及ぶ可能性があるものの、住宅街や散歩ルートにいることが多いようです。飼い主仲間を頼りつつ、掲示板にポスターを貼るなどして、目撃証言を集めて居場所の目星をつけるのがおすすめです。
一方でメスの場合は、オスと比べると移動スピードがゆっくりで、行動範囲も狭い傾向にあります。自宅からそこまで離れていない場所にいる可能性が高いので、いつもの散歩ルートを中心に捜してみてください。
年齢別
子犬は体力があり、好奇心旺盛でいろんなものに興味を示します。そのため、移動距離自体は長くなりやすいものの、行動範囲は広がりづらくなっています。物めずらしさから普段の散歩と違う道を探検している可能性もありますので、自宅中心にいろいろなルートを捜してみてください。
7歳以上のシニア犬は、興味のあるものに集中しやすい傾向にあります。追いかける対象が変わりづらいため、行動範囲も広がりやすくなっています。また、年齢を重ねるにつれて疲れやすくなるので、体力を消耗してどこかで休んでいるかもしれません。普段の運動量や散歩の様子を振り返り、「うちの愛犬ならどうするか」を考えて、行動範囲を考えるヒントにしてみてください。
性格別
人懐っこい犬の場合、人と一緒にいないことを不安に感じて、通りがかった人に寄っていくことがあります。そのまま知らない人に保護されているかもしれません。飼い主の情報が分からないままだと、保護してくれた人がそのまま飼ってしまうケースもありますので、「迷子犬を捜しています」とポスターやSNSなどでしっかり情報発信しておくことが大切です。
人見知りする犬の場合、マイペースに移動する傾向にあり、行動パターンが読みづらくなっています。慣れ親しんだ公園や散歩ルートにいることもあれば、パニックになって駆け回っていることもあるでしょう。パニックを起こしている場合は、車道に飛び出して事故に遭うリスクも高くなっていますので、できるかぎり早く見つかるように関係機関や飼い主仲間を頼りながら捜索しましょう。
気候別
春や秋などの過ごしやすい季節は、時間帯を問わず移動しやすくなっています。夜中にもトコトコと歩き回っている可能性があるため、移動距離も広がりやすいでしょう。
暑い夏は、日中は日陰で休んで、夜に行動する傾向にあります。反対に冬は、日中に行動して、夜は雨風をしのげる場所で過ごすことが多くなります。休んでいる時間帯を中心に捜すことで、見つかる可能性が高まるかもしれません。
また、悪天候で雷が鳴ったときや、花火・お祭りなど季節のイベントで大きな音が出ているときは、恐怖を感じてその場から逃げようとする習性があります。真夏の昼や真冬の夜であっても、長距離を移動してしまう可能性もあるので注意してください。
保護された犬はどこに行く?
迷子犬を知らない人が保護してくれた場合、基本的には自治体や病院などに連絡が届きます。ここでは、迷子犬が保護されている可能性がある機関や施設を紹介します。
自治体(保健所や動物愛護センターなど)
迷子犬は、ペットを保護する保健所や動物愛護センターなどで引き取られている可能性が考えられます。保護された犬が所有者不明のままだと、譲渡されてしまうかもしれません。愛犬と再会するためにも、迷子になったらすぐに住んでいる自治体や近隣エリアの保健所に届け出るようにしましょう。
警察
警察に迷子犬がいたという通報が入ると、保護できるようパトロール中に捜してもらえます。また、パトロール中に迷子犬が見つかった場合に、交番や警察署で一時的に保護されている可能性が考えられます。警察では犬も財布やカバンと同じく遺失物として扱われますので、愛犬が迷子になったら近隣の交番に行って遺失物届を出しておきましょう。
動物病院
保護してくれた人が、動物病院に連れて行っている可能性も考えられます。動物病院では迷子犬を預かったら健康状態やマイクロチップの有無を確認したあと、警察や自治体に届け出るのが一般的です。少しでも早く迷子犬の居場所を把握して安心するためにも、近隣の動物病院に連絡を入れておくのがおすすめです。無事に見つかったあとは、問い合わせた動物病院にお礼の連絡も入れるようにしましょう。
迷子犬が見つかる確率は?
迷子犬や迷子猫の捜索を専門で行うペット探偵会社では、発見率80%と記載しているケースが多くなっています。また、環境省の統計によると、所有者不明の犬の引き取り数が21,238匹、返還数が8,402匹で、たった39%ほどとなっています。
ただし、迷子犬を保護してくれた人がどうしていいか分からず、自治体や警察に連絡していない可能性も考えられます。「懐いてしまったから」とそのまま飼ってしまうかもしれません。迷子犬ポスターを貼ったり、SNSで迷子犬情報を投稿したりするなどして、保護してくれた人に情報が届くように情報発信しましょう。
また、自分だけの力では探せる範囲に限りがあります。お散歩中によく会う他の犬の飼い主さんに聞いてみたり、ペット探偵を利用してみたりと、他の人の力も借りながら捜すのもおすすめです。
迷子犬を見つけたらどうしたらいい?
迷子になった愛犬を見つけると、感極まって思わず大声で名前を呼んでしまいそうになるでしょう。しかし、迷子犬が急に名前を呼ばれると、交通量の多い道路を渡って飼い主のもとに駆け寄ろうとしたり、「飼い主さんに怒られる!」と誤解してさらに逃げたりしてしまうリスクがあがります。周囲の状況を確認しながら冷静に対応しましょう。
迷子犬を見つけても一旦落ち着いて、近くから優しく呼びかけて誘導するようにします。迷子になっているうちに怪我している可能性もあるので、無事に保護できたらケガがないか確認するのを忘れないようにしてください。
愛犬の迷子を防ぐためにできること
愛犬の居場所がわからなくなるのを防ぐために、飼い主にできることを3つ紹介します。
室内をペットゲートや柵でゾーニングする
犬が室内から脱走するのを防ぐためには、窓や玄関に近づけないようにすることが大切です。窓や廊下などにペットゲートや柵を設置すると、室内での愛犬の運動スペースは確保しつつも、脱走のリスクを抑えられます。
迷子札を首輪につける
迷子札とは、飼い主の名前や連絡先を記載したプレートのことです。首輪に迷子札をつけておくことで、万が一迷子になって知らない人に保護されても、愛犬の無事をすぐに知らせてもらえるでしょう。また、飼い主はお住まいの市区町村に飼い犬の登録を行い、鑑札の交付を受ける義務があります。この鑑札には登録番号が記載され、飼い犬に装着することになっています。登録番号から飼い主の情報が分かるため、鑑札は迷子札の役割も果たします。首輪などに必ず装着するようにしましょう。
リードや首輪に不具合がないかチェックする
散歩中に強い力で引っ張られると首輪が外れてしまい、脱走するリスクがあります。リードの替え時は半年〜1年ほどと短いので、散歩前には留め具や素材に劣化がないかチェックする習慣をつけるのがおすすめです。
まとめ
迷子犬は自宅周辺で見つかる傾向にある一方で、犬の移動距離は1日300m~5kmと広範囲にわたるケースもあります。迷子になった原因によっては遠く離れた場所にいる可能性もあるため、行動パターンを想像しながら、自治体や警察、顔なじみの他の犬の飼い主さん、近所の人々などを頼りながら捜すことが大切です。
無事に愛犬を見つけた場合、思わず名前を呼んだり駆け寄ったりしたくなりますが、事故を防ぐためにも近くまで移動してから優しく声をかけましょう。大事な愛犬と再会するために、今回紹介した迷子犬の行動パターンや保護施設先の情報を役立てみてください。