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酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業後、動物病院勤務。小動物臨床に従事。現在は獣医鍼灸師の資格を得るために鍼灸や漢方を用いた中医学による治療を勉強中
犬の味覚はどのようになっているのか、犬の好きな味、苦手な味に興味をお持ちの方もいると思います。今回は犬の味覚について紹介します。
犬が味を感じる仕組みや、フードの食いつきが悪いときの改善方法なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- 犬の味覚は人間と同じ5種類! おいしいと感じる味覚は?
- 犬が味を感じる仕組み
- 犬も人間のように味覚が変化する?
- 犬のフードへの食いつきが悪いときの改善方法
- まとめ
犬の味覚は人間と同じ5種類! おいしいと感じる味覚は?
犬は人間と同様に、次の5種類の味覚を感じ取ることができます。
・甘味
・旨味
・酸味
・塩味
・苦味
ただし味を感じる味蕾の数が少ないため、感じ方は人間と違います。それぞれの概要について紹介します。
甘味
犬は甘味の感度が高く、好んで食べる味です。ただし人間とは違い、犬は砂糖のように強い甘味を好むわけではありません。犬が好むのは、肉・魚・野菜などに含まれている自然でほのかな甘味です。
喜ぶからといって、砂糖やお菓子などを与えてしまうと肥満や糖尿病の原因になりますのでやめましょう。なお、甘味があって喜ぶとしても、次のような食べ物は絶対に犬に与えてはいけません。
・チョコレート
・ぶどう
・たまねぎ
どれも犬に有害な食べ物です。重篤な中毒症状を引き起こす可能性がありますので、犬の手の届かない場所、扉付きやロックのかかるケースで保管する、調理時に犬を近づけない、調理後はよく手を洗うなど対策が必要です。
旨味
犬の味覚には旨味もあります。かつて「犬には旨味がわからない」といわれていました。しかし実際には旨味の感受性もあり好んで食べることがわかっています。特に好むのは、肉や魚などに含まれているアミノ酸系の旨味です。
酸味
酸味も、犬が感じ取ることができる味覚のひとつです。かつて、犬は獲物の肉を土中に埋めて保存して食べていたとされています。軽い酸味がある程度の腐敗であれば犬は気にしません。
チーズやヨーグルトのように酸味があるものを好んで食べる犬もいます。ただし、レモンのように強い酸味を持つ食べ物は好みません。レモン自体には中毒やアレルギーの原因になる成分は含まれていませんが、刺激が強く下痢の原因になる可能性があります。体調を崩さないよう、酸味が強い食べ物は与えないようにしましょう。
塩味
犬の味覚には塩味もあります。ただし、塩味に対する感度は低いのが特徴です。犬にも適度な塩分は必要ですが、量は人間と同じではありません。
かつて犬の祖先は、食事である獲物の肉から体に必要な塩分を摂取してきました。犬が塩分不足になると、次のような症状が出ることがあります。
・嘔吐
・ふらつき
・腹部の膨らみ
ただし、塩分をとりすぎても体調不良の原因になるため注意が必要です。肉や市販のドッグフードなどには適量の塩分が含まれています。わざわざ塩味をつける必要はありません。
おやつにも塩分が含まれていますので、フードと合わせると塩分過多になる可能性もあります。健康のためにも、塩分量が多いものは与えないよう気をつけましょう。
苦味
味覚としては感じるものの、犬は苦味を好みません。基本的には苦いものは好んで食べない犬が多い傾向にあります。なぜなら自然界にある、犬にとって危険な食べ物には、苦味が含まれているものが多いためです。
ただし「苦味があるなら絶対に食べない」というわけではないため、注意しなくてはなりません。苦味があるものでも興味本位で誤飲・誤食してしまう可能性も考えられます。犬に危険なものは、苦味があったとしても遠ざけておきましょう。
犬が味を感じる仕組み
犬はどのようにして味を感じているのでしょうか。味覚の種類自体は同じでも、犬が味を感じる仕組みは人間とは違います。
違いがある理由のひとつとして考えられるのが「味蕾」の数です。また味覚には嗅覚も影響しています。そこで犬が味覚を感じる仕組みについても見ていきましょう。
犬の味蕾の数
味を感じ取る細胞の集まりが、舌にある感覚器官の「味蕾(みらい)」です。味蕾は食べ物の味を受容して「どういう味の食べ物・飲み物なのか」を判断します。人間・犬・猫の味蕾の数は以下のとおりです。
・人間:1万個以上
・犬 :約2,000個
・猫 :500~700個
犬の味蕾の数は猫よりは多いものの、人間の5分の1ほどです。犬は人間と比較すると味蕾の数が大幅に少ないため、繊細な味の違いまでを判別できるわけではありません。
犬の味覚に対する嗅覚の影響
犬の味覚には、嗅覚が大きな影響をおよぼしています。犬の嗜好性は「匂い>食感>味>見た目」の順で決まる仕組みです。食べられそうなものを見ると、犬はまず匂いを嗅ぎ、その食べ物が安全かどうかを判断します。そして口に入れて食感を確かめたあとで味を感じるという流れです。
味の良い食べ物だったとしても、匂いがしなければ食いつきが悪くなるかもしれません。そこで犬に食事を与えるときは「匂いの良さ」を重視してあげましょう。犬が特に好むのは、肉や魚などに含まれている脂肪臭です。
犬も人間のように味覚が変化する?
人間は、何らかのきっかけで味覚が変化する人もいます。出産・加齢などによって「前とは食べ物の好みが変わった」という話も珍しくはありません。苦手だったものが好物になることもあるでしょう。
しかし人間より味蕾が少ない影響もあって、犬はあまり味覚に変化が出ない生き物です。フードへの食いつきが変わったのなら、味覚の変化よりも、以下のような理由が考えられます。
・歯周病
・病気
・ストレス
・筋力の低下
・嗅覚の衰え
・加齢
歯周病や病気が原因なら治療が必要になる可能性がありますので、まずは動物病院で相談してみましょう。ストレスや筋力の低下が原因だと考えられる場合は、散歩や運動の時間を増やしてみてください。嗅覚の衰えや加齢なども、フードへの食いつきが悪くなる原因です。
ただし、人間と同じように、濃い味に慣れてしまうと薄い味のものを食べなくなる場合があります。犬のフードやおやつは基本的に薄味で、人間のように味が濃いものを食べる必要はありません。食いつきが悪くならないよう、濃い味の食べ物は与えないようにしましょう。
犬のフードへの食いつきが悪いときの改善方法
愛犬がいきなりフードへの食いつきが悪くなり、焦った経験を持つ飼い主も多いのではないでしょうか。食いつきが悪くなったときは、次のような改善方法を試してみましょう。
・フードを温めたりおやつをトッピングしたりしてみる
・ドッグフードを変えてみる
・動物病院で相談してみる
食いつきが悪いときの改善方法について、次でそれぞれ具体的に解説します。
フードを温めたりおやつをトッピングしたりする
フードへの食いつきが悪いときは、温めたり、おやつをトッピングしたりしてみましょう。犬の嗜好性は「匂い>食感>味>見た目」の順番です。たとえ味や品質が優れていたとしても、匂いがしないと食いつきが悪くなってしまうかもしれません。フードの匂いを強くするためには、温めたり、おやつをトッピングしたりすると効果的です。
歯周病や筋力の低下も、食いつきが悪くなる原因につながります。そのような場合はフードを温めると柔らかくなり、食いつきが良くなる可能性があるでしょう。「食いつきが悪い」と感じたら、まずはフードを温めたりおやつをトッピングしたりして様子を見てください。特に子犬や老犬には、粒が小さくて柔らかいフードを与えるのがおすすめです。食いつきが良いか様子を見ながら、フードの硬さを調整してあげましょう。
ドッグフードを変えてみる
食いつきが悪いときは、ドッグフードを変えてみるのも方法のひとつです。次のようなドッグフードも試してみてください。
・嗜好性が高いドッグフード
・ウェットタイプのドッグフード
フードを選ぶうえで大切なポイントは、1日に摂取する脂質やたんぱく質の量を考えることです。食いつきがいいからといっておやつやトッピングをたくさん与えてしまうと、栄養バランスが偏ってしまうリスクがあります。そのため、犬には基本的に総合栄養食中心の食事を与えるよう心がけましょう。
また、フードは開封後の酸化にも注意が必要です。酸化防止剤が含まれているとしても、開封後のフードは酸化が進んで、どんどん味が落ちていきます。特に注意したいのは、湿気の多い梅雨時や、暑い夏場などです。
ドライフードでも開封後は傷んでしまう可能性がありますので、使い切れる分を購入するなど気をつけてあげましょう。新鮮な状態をキープできるよう、少量のフードや、小分けパックになっているフードを購入するのがおすすめです。
量が多いフードの場合は小分けにし、袋の開け締めを最低限に保つよう心がけます。また、犬のフードは風通しの良い冷暗所で保存しましょう。
動物病院で相談してみる
突然ドッグフードを食べなくなったら、ストレスや病気が原因になっているかもしれません。ストレスが原因だと思われる場合は、散歩量やコミュニケーション方法などを見直してみましょう。フードや生活習慣を工夫しても改善しない・下痢や嘔吐などの症状が出ているといったときは、病気の可能性を考えて動物病院を受診してください。
また、普段から食べムラがある犬は、次のような原因が考えられます。
・フードの量が多すぎる
・おやつを与えすぎている
・運動不足である
・水分不足である
・生活が不規則である
フードやおやつの量が多すぎると、食いつきが悪くなってしまう可能性があります。適正な量を与えているのか、フードやおやつのパッケージにある分量をチェックしてみてください。
運動不足・水分不足なども食べムラにつながる原因です。不規則な生活も、犬の食べムラに影響する要素となっています。食べムラがあるのなら、食事や生活習慣が原因となっていないか、ぜひ見直してみましょう。
まとめ
犬の味覚は人間と大きく違っています。犬は人間ほど細かく味を判別することはできません。食いつきが悪いようならフードに工夫を施してみましょう。
ただし、突然犬がフードを食べなくなったなら、体調不良の可能性もありますので動物病院に相談してみてください。犬それぞれの個体差もありますので、ぜひ愛犬が好む味は何か、チェックしてみてください。