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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
大豆を原料とした豆乳は、人間にとって美容や若返りを促進する効果があるといわれています。そんな豆乳を犬にも与えてもいいのか悩んでいる方もいるでしょう。犬に豆乳を与えても問題ありませんが、豆乳の選び方や与え方に注意する必要があります。今回は犬に与えてもOKな豆乳の選び方や与え方、注意点などを解説します。
目次
- 犬に豆乳を与えていい?
- 豆乳に含まれる犬の健康にいい栄養素
- 犬に与える豆乳の選び方
- 豆乳を使ったお菓子は与えていい?
- 犬に与える豆乳の適量・頻度
- 犬に豆乳を与える際の注意点
- まとめ
犬に豆乳を与えていい?
植物性の豆乳はヘルシーかつたんぱく質が摂取できる食品として、日常的に口にする人も多いでしょう。実は豆乳には愛犬の栄養サポートとして役立つ場合があります。ここでは、豆乳や牛乳などの食品は愛犬に与えても問題がないのかを解説します。
基本的には大丈夫!豆乳の原料である大豆はドッグフードにも含まれる
結論、犬に豆乳を与えることは、とくに問題ないといわれています。というのも、豆乳の原料である大豆は人間と同様に犬にとっても重要なたんぱく源となるからです。そのため、大豆が含まれたドッグフードも販売されています。
また、豆乳入りのドッグフードだけでなく、豆乳を直接愛犬に与えても、一般的には問題ないといわれています。たとえば愛犬の老化や病気による食欲不振などが見られた場合、ドッグフードに豆乳をかけて風味を変えたり、食べやすくしたりするケースもあります。
しかし、犬は雑食であるものの、基本的には肉食に限りなく近いとされる生き物です。そうした背景により、犬は豆乳に含まれる植物性たんぱく質よりも、肉などの動物性たんぱく質のほうがスムーズに消化でき、利用できるアミノ酸も多いといわれています。そのため、毎日の食事で主なたんぱく源として豆乳を与えるのはあまりおすすめできません。
牛乳を飲むと下痢を起こしてしまうケースも
犬に豆乳を与えてもOKなのであれば、牛乳もOKと思うかもしれません。しかし、犬は人間と比較すると牛乳に含まれる乳糖を分解する消化酵素がかなり少なく、乳糖不耐症であるといわれています。そのため、牛乳を飲んでしまうと下痢になる可能性があるので注意が必要です。
もし、愛犬に牛乳を与えたときに乳製品アレルギーなどの症状が見られなかった場合でも、完全に安心できるとは限りません。というのも、乳糖を分解する消化酵素「ラクターゼ」は成長とともにさらに減退するといわれています。年齢を重ねるにつれてアレルギー症状が出る可能性があるからです。愛犬に牛乳を与える場合は、乳糖が含まれていない犬用のミルクを選ぶことをおすすめします。
豆乳に含まれる犬の健康にいい栄養素
豆乳にはたんぱく質のほかにも、以下のようなさまざまな栄養素が含まれています。
- たんぱく質
- カリウム
- カルシウム
- マグネシウム・鉄分
- イソフラボン
ここでは、各成分が愛犬の健康にどのように役立つのかを解説します。
たんぱく質
豆乳に含まれる植物性たんぱく質は、体内で分解されてアミノ酸となり、皮膚や筋肉などを作るのに役立ち、体の成分となります。摂取したたんぱく質をアミノ酸に分解・吸収して利用するため、食品などから積極的に摂取する必要がある栄養素です。しかし、たんぱく質はドッグフードにも十分な量が含まれているため、わざわざ豆乳でたんぱく質を補う必要はありません。
カリウム
ミネラルの一種であるカリウムは、余分な塩分を尿と一緒に体の外に排出してくれる栄養素です。余分な塩分を排出して血圧を下げることは、心臓の働きを正常に保つために重要な役割であるといわれています。
カルシウム
ミネラルの一種であるカルシウムは、強い歯や骨を作るだけでなく、筋肉を動かすためにも重要な栄養素です。そのため、カルシウムを摂取することで、筋肉の収縮や神経を安定させる効果が期待できます。カルシウムは不足しても過剰に摂取しすぎても問題が起こるといわれている栄養素のため、愛犬の年齢にあった、バランスの良い食事を与えることが大切といわれています。
マグネシウム・鉄分
マグネシウムや鉄分は、骨や筋肉の強化に役立つ栄養素です。マグネシウムが不足すると筋肉の痙攣(けいれん)や食欲不振、骨の石灰化減少などの症状が起こる可能性があるため、犬にとって重要な栄養素の一つです。
イソフラボン
豆乳に含まれるイソフラボンは活性酸素を除去し、毛細血管の末端まで血流を促すことでアンチエイジング効果が期待できる栄養素です。イソフラボンは女性ホルモンに似た性質を持ち、人間の場合は骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する作用があるといわれています。カルシウムが溶け出して不足すると骨粗鬆症や骨折などのリスクが高まるため、イソフラボンとカルシウムをあわせて摂取することで健康的な骨を維持するのに役立ちます。
犬に与える豆乳の選び方
犬に与える豆乳を選ぶときは、調製豆乳ではなく無調整豆乳を選びましょう。その理由は、調整豆乳は飲みやすいように豆乳だけでなく砂糖、塩、油脂、香料などが含まれていて、それらは犬に与えるのに向いていないからです。一方、無調整豆乳は水と大豆だけで作られているため、愛犬の健康に影響を及ぼす可能性がほとんどありません。食料品売り場で購入する場合は、「成分無調整」と記載されているものを選ぶようにしましょう。
豆乳を使ったお菓子は与えていい?
人間用の豆乳を使ったお菓子にも、選ぶものによっては犬に与えても問題がないものもあります。たとえば、豆乳クッキーなどの加工品であれば砂糖やバターの入っていないものを選びましょう。市販の豆乳ヨーグルトであれば、砂糖なしのプレーンタイプを選ぶことをおすすめします。
また、犬専用の豆乳のお菓子であれば犬が食べても問題ないように作られているため、犬用のお菓子を探している方には安心でおすすめです。ほかにも、粉末豆乳や無調整豆乳を使用して豆乳のお菓子を手作りするのも一つの方法です。
犬に与える豆乳の適量・頻度
愛犬に豆乳を与えても問題ないとはいえ、与えすぎると健康に影響を及ぼす可能性があります。そのため、愛犬に豆乳を与えるときは量や頻度に気をつけましょう。ここでは、豆乳の与え方や適切な量について解説します。
最初は少しずつ与えるのがベスト
豆乳は牛乳とは違い乳糖が含まれていないとはいえ、一度にたくさん与えすぎると下痢になる可能性があるので注意が必要です。はじめて愛犬に豆乳を与える場合は、スプーン1杯程度を与えて、食物アレルギーの症状が出ないか様子を見るのがおすすめです。飲んでから愛犬の様子に問題がないようなら少しずつ与える量を増やしていくと、愛犬の体に負担がかかりにくいでしょう。
また、豆乳を与える量は、1日に摂取するカロリーの10%以内が目安です。豆乳は90%が水分で作られているため、適量を与えることで栄養素の吸収だけでなく、消化や吸収をサポートする効果も期待できます。
子犬やシニア犬は成犬よりも少量で与える
子犬の時期は、消化器官が成犬と比べて未発達であることから、安全性を考慮して離乳するまでは豆乳を与えないほうがいいでしょう。離乳した後は無調整豆乳をそのまま与えるのではなく、2倍程度に薄めて少しずつ飲ませるのがおすすめです。
また、年齢を重ねてシニア犬になると腎臓が弱ってくるため、豆乳に含まれるたんぱく質が腎臓に負担を与える恐れがあります。もともと習慣的に愛犬へ豆乳を与えていた場合でも、シニア犬になったら与える豆乳の量は少量にとどめておいたほうがいいでしょう。
犬に豆乳を与える際の注意点
量や頻度に注意していれば犬に豆乳を与えることは基本的に問題ありません。しかし、なかには豆乳が原因で健康に悪影響が出る犬もいるため、次の2つの点に注意しましょう。
食物アレルギーを引き起こす可能性がある
食物アレルギーを発症する原因のほとんどは、たんぱく質であるといわれています。豆乳は大豆と水からできていることから、大豆の成分であるたんぱく質が含まれる食品です。これが原因で食物アレルギーを発症する可能性があります。
また、愛犬が大豆そのものにアレルギーを持つ「大豆アレルギー」である場合、嘔吐や下痢などの症状が出たり、皮膚がかゆくなったりするかもしれません。なかには、長期間に渡って同じ食品を摂取したことが原因で発症する、後天的なアレルギーにかかるケースもあります。愛犬の変化を注意深く確認し、体調を崩しているときはかかりつけの獣医師に相談してみてください。
はじめて犬が豆乳を飲んだり食べたりする際は、食物アレルギーがあるか様子を見るためにも少量を与え、体調に異変がなければ少しずつ量を増やすようにしましょう。
腎臓病、肝臓病、尿路結石症の場合は注意
豆乳に含まれるたんぱく質は、過剰に摂取すると肝臓や腎臓に負担をかける可能性があります。とくに腎臓や肝臓の持病があったり、弱ったりしている犬に与えると負担がかかりやすいため、無理して豆乳を与えないようにしましょう。
また、豆乳にはたんぱく質のほかにもミネラルが含まれています。ミネラルの過剰摂取は結石の原因になるといわれているため、愛犬が結石を起こしやすい場合は与えるのを控えたほうがいいでしょう。
まとめ
豆乳には犬の健康を保つために役立つ栄養素がたくさん含まれています。しかし、食物アレルギーを起こす可能性もゼロではないため、愛犬に与える際、最初は少しずつ様子を見ながら無調整の豆乳を与えてみてください。また、犬のなかでも子犬やシニア犬は成犬の消化器官とは状態が違うため、与える量や頻度には注意が十分に必要です。愛犬の様子を見ながら、豆乳を上手に取り入れてみましょう。