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ますだ動物クリニック院長、国際中医師
ペットショップやブリーダーなどから犬を迎えようと思ったとき、「血統書付き」という言葉をよく耳にします。しかし、血統書はどんな犬に発行されるのか、何に役立つのか疑問に思っている方もいるでしょう。そこで今回は、犬の血統書(血統証明書)の見方や内容、記載内容などを解説します。
目次
- 犬の血統書とは
- 血統書(血統証明書)に記載されている内容
- 犬の血統書はどんなときに必要?
- 血統書付きの犬をお迎えするメリット
- 血統書付きの犬をお迎えする方法
- 血統書付きの犬をお迎えする際の注意点
- まとめ
犬の血統書とは
ペットショップやブリーダーから犬をお迎えするとき、血統書(血統証明書)が渡されることもあります。では、血統書(血統証明書)とはどのようなものなのか、発行している団体について詳しくみていきましょう。
血統書とは人間の戸籍のようなもの
犬の血統書(血統証明書)とは、犬の品種認定などを行っている犬種団体により、血統登録されている同じ犬種同士の父母から生まれた子犬に対して発行される証明書です。人間にたとえると「戸籍」のようなものと考えるとイメージしやすいかもしれません。血統書(血統証明書)は父母などの祖先となる犬と生まれた子犬が、すべて純血種であることを確認でき、また証明する役割を持っています。しかし、血統書はあくまで犬種などを証明するものであり、血統書がある犬が優れているということはありません。
血統書(血統証明書)を発行している団体
血統書を発行するためには、犬種団体への登録申請が必要です。犬種団体は世界各地に複数存在し、団体によって登録されている犬種が違うため、生まれた子犬の犬種にあわせて申請先を決めます。日本で血統書を発行する公的機関はなく、任意の団体が独自に血統書を発行しているのが現状です。代表的な団体として、犬の場合は「社団法人日本警察犬協会(PD)」、「一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)」、「社団法人日本社会福祉愛犬協会」などが挙げられます。なかでもジャパンケネルクラブは80の加盟国と地域を統括する「国際畜犬連盟(FCI)」に正式加盟していることから、日本ではもっとも大きな団体といえるでしょう。
血統書(血統証明書)に記載されている内容
ジャパンケネルクラブの血統書を例に挙げると、血統証明書には表面と裏面があり、次のような項目が記載されています。
- 犬名:繁殖者がつけた正式な犬名(飼い主がつけた名前ではない)
- 本犬のデータ:犬種名、登録番号、性別、生年月日、毛色、DNA登録番号など
- 父親の血統図:父犬から祖父母犬・曽祖父母犬までの詳細情報
- 母親の血統図:母犬から祖父母犬・曽祖父母犬までの詳細情報
- 登緑日、出産頭数、登録頭数、一胎子登録番号:子犬が犬種団体に登録された日と、一緒に生まれた兄弟(一胎子)数を牡牝ごとに記載
- チャンピオン賞歴:取得したチャンピオンの種別とチャンピオン登録日
- 血統証明書の発行日
- コールネーム(呼び名)
- 4代祖血統証明書発行申込書
犬の血統書はどんなときに必要?
犬の血統書は犬を飼うのに必須なものではありません。実際に血統書のない犬を飼っている方はたくさんいます。ここでは、犬の血統書はどんなときに必要になるのかについて紹介していきます。
飼いたい犬種が決まっている場合
血統書(血統証明書)付きの犬は犬種団体の審査を通過しているので、確実に純血種であることが証明できます。そのため、飼いたい犬種が決まっている場合は、血統書(血統証明書)があることで判断しやすくなるでしょう。たとえば、知人や保護団体などから犬を譲り受ける場合、父母の情報や犬種がわからないケースも多く、子犬の状態と成長した状態では見た目が大きく変化することも少なくありません。その点、血統書(血統証明書)付きの犬は父母まで純血種でなければ血統書(血統証明書)を発行できないため、別の犬種の血が混ざっていないことが一目でわかります。
ドッグショーに参加したい場合
犬の品評会であるドッグショーでは、犬種ごとに出場部門がわかれている場合など、血統書(血統証明書)がなければ参加できないことがあります。また、ドッグショーは犬の美しさだけでなく、どれだけ純血種に近いかも競う場です。これは、交配によってその犬種ならではの特徴が薄れるのを防ぎ、犬種を保存することが目的だといわれています。雑種でも参加可能なドッグショーは存在しますが、犬種ごとの条件があるドッグショーに参加したい場合は血統書(血統証明書)が必要となるでしょう。
純血種の犬を繁殖させる場合
犬を繁殖させて育てる仕事であるブリーダーは、一般的に純血種だと証明できる血統書付きの犬を繁殖させるケースがほとんどです。というのも、ブリーダーは一般の方やペットショップに犬を販売することが多いため、犬種の証明ができることが重要視されるからです。また、犬の健康状態や遺伝的な病気のリスクも考慮して交配を行うため、祖先の情報まで詳細に記載されている血統書(血統証明書)が必要となるケースが多いといえます。
血統書付きの犬をお迎えするメリット
血統書の有無によって犬の優劣が決まるわけではありません。しかし、血統書には犬のさまざまな情報が記載されているため、血統書があることによって、これから迎え入れる愛犬について詳しく知ることができるのは事実です。ここでは、血統書付きの犬をお迎えするメリットを紹介します。
純血種であることが証明できる
血統書にはその犬の犬種だけでなく、両親や祖先までさかのぼって情報が記載されているため、祖先からその犬まで確実に純血種であることが証明できます。また、犬が受け継いだ遺伝的な資質も把握可能です。そのため、血統書(血統証明書)の情報をもとに、お迎えする犬の飼育環境を整えたり、子犬の頃から病気の対策ができたりなど、飼育するうえでもメリットがあるといえるでしょう。
賞歴が確認できる
犬種団体であるジャパンケネルクラブの血統書(血統証明書)には、チャンピオンタイトルといってドッグショーなどの賞歴が記載されています。チャンピオンタイトルは略号で記載され、「CH」と記載されている場合は、そのドッグショーにおいてチャンピオンになったことを示しています。「CH」の後ろに()で記載された国名がある場合は、その国でチャンピオンになったということです。
また、数字が記載されている場合は、チャンピオン登録された日付を示しています。ブリーダーが犬の繁殖をするときは、犬の資質や賞歴を把握したうえで交配相手を見定めることがあるため、ブリーダーにとっては重要な情報といわれています。
血統書付きの犬をお迎えする方法
犬を繁殖させるブリーダーは、一般的には血統書付きの犬を販売します。そのため、ブリーダーやペットショップから犬を購入する場合は、血統書(血統証明書)が付いていることがほとんどです。
純血種同士の交配によって生まれたミックス犬の場合も、血統書(血統証明書)が付いているケースが見受けられます。しかし、基本的にはミックス犬や雑種を含め、純血種以外で血統書(血統証明書)が付くケースはほとんどありません。
一方で、血統書が付いていないから純血種ではないとはかぎりません。両親などの情報をもとに純血種であることを証明できる場合は、個人で犬種団体に血統書(血統証明書)の発行を申請することもできます。
血統書付きの犬をお迎えする際の注意点
目的があって血統書付きの犬をお迎えする場合は問題ありませんが、血統書(血統証明書)が付いているからという理由だけでお迎えする犬を決めるのはおすすめできません。血統書(血統証明書)付きの犬をお迎えするときの注意点を理解し、しっかりと検討してからお迎えする犬を決めてみてください。
血統書は優秀な犬であることを証明するものではない
血統書はあくまでも純血種であることを証明するものであり、優れていることを証明するものではありません。
純血種だからといって優秀な血を受け継ぎ、健康状態が良好であるとも限りません。純血種のなかには、遺伝的にかかりやすい病気を持つケースも少なくないでしょう。反対に、雑種犬はさまざまな血が混ざっているため、環境に適応しやすかったり、さまざまな病気の免疫を持って生まれたりすることがあるともいわれています。
犬種団体も純血種が優れていることを証明するために血統書(血統証明書)を発行しているわけではなく、あくまでも純血種の保存を目的としています。純血種をはじめ、ミックス犬や雑種犬など、犬にはそれぞれの良さや魅力があるということを理解しておきましょう。
変更事項がある場合は費用がかかる
ブリーダーから血統書付きの犬を購入した場合、血統書の所有者欄にブリーダーの名前が記載されていることもあります。所有者名を変更する場合、申請とあわせて名義変更手数料が発生するので覚えておきましょう。また、名義変更手数料のほかにも団体への入会金、年会費が発生する可能性もあるため、事前に確認が必要です。所有者欄はブリーダーの名前のままでも問題はありませんが、ドッグショーなどの大会に参加する場合は、所有者欄の名前をブリーダーから飼い主に変更しなければなりません。必要に応じて手続きを検討してみてください。
まとめ
飼いたい犬種が決まっている人にとって、犬に純血種であることを証明する血統書が付いていると、安心してお迎えできるでしょう。ただし純血種以外の犬は血統書が発行できないため、血統書付きの犬をお迎えしたい場合は、純血種に限られてしまいます。犬のなかにはミックス犬や雑種など、個性豊かな犬種がたくさんいます。血統書は犬が優秀であることを証明するものではないため、あまりこだわらずにお迎えする家族を検討してみてはいかがでしょうか。