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明石むかい動物病院院長。獣医麻酔外科学会、獣医がん学会。
イヌ科の動物と言うと犬だけだと思っている方も多いかもしれません。しかし、イヌ科の動物には意外なあの動物も属しているのを知っていますか?
今回はイヌ科の動物の特徴やイヌ科に属する動物を紹介します。また、ネコ科の動物との違いも解説しているので、ぜひ犬のルーツや犬に似ている動物を知って犬の魅力を再発見してみましょう。
目次
- 犬だけとは限らない? イヌ科の動物とは
- イヌ科の動物にはどんな特徴がある?
- 代表的なイヌ科の動物とは
- 意外な動物もイヌ科に属している!
- まとめ
犬だけとは限らない? イヌ科の動物とは
犬の祖先はオオカミと言われていますが、犬が家畜化されたことによってより身近な存在になったこともあり、親しみやすい「イヌ科」という名称で括られるようになったと言われています。
そのため、犬やオオカミをはじめとするさまざまな動物が該当するのがイヌ科です。ではイヌ科の動物とはどんな種類なのか、祖先についても解説します。
イヌ科の動物とは
イヌ科の動物の祖先であるオオカミは1万5000年ほど前に家畜化されたと考えられていて、もともとはユーラシア大陸や北米に広く自然分布していました。イヌ科は大きな括りのなかのグループで、正式には哺乳網、食肉目(ネコ目)のイヌ科です。
哺乳網とは生んだ子どもを乳で育てる生き物の総称で、食肉目は「肉を食べる生き物」という意味があります。食肉目はイヌ科のほかにネコ科やイタチ科、クマ科などに分かれています。
犬と猫の祖先は同じ生き物だった?
犬と猫は同じ食肉目(ネコ目)に属するため、「犬の祖先は猫だった?」と考える方もいるかもしれません(そもそもこのネコ目の由来は、食肉目という言葉をカタカナでわかりやすく表記するために、代表的な動物の名前を使うことにしたものです)。
犬の祖先は猫ではありませんが、犬と猫の祖先はどちらも「ミアキス」という動物だったと言われています。
ミアキスは約4500万~6500万年前に生息していたとされる動物で、ラテン語で「動物の母」という意味を持つこともあり、さまざまな動物の祖先にあたる生き物と考えられています。
ミアキスはヨーロッパ大陸などの森に分布していた体長およそ30cmの動物です。見た目はすらっとしており、長いしっぽと短い足が特徴的でイタチに近い動物だそうです。
祖先が同じ犬と猫ですが、生活や狩りの仕方が変わっていくにつれ、特徴が違うそれぞれの動物になったと言われています。
イヌ科の動物にはどんな特徴がある?
同じ食肉目(ネコ目)の動物であるネコと比べると、イヌ科の動物は狩りのやり方が特徴的です。犬と猫の祖先であるミアキスはもともと森林の木の上で生活していましたが、環境の変化によって住処を追いやられ、森林から草原に出たミアキスが犬に進化したと言われています。
草原は広く1匹で狩りをするのは難しいため、犬は集団で狩りをするようになりました。一方で森林に残ったミアキスは一匹で獲物を待ち伏せして狩りをする方法を続け、猫に進化したと言われています。
また、犬は人間が身を守るために家畜化されたという歴史があることから、猫と比べて人間とコミュニケーションが取りやすい性格に変化したそうです。
代表的なイヌ科の動物とは
犬はもちろんイヌ科に属しますが、犬に似ている見た目の動物もイヌ科に属しています。
ここからは代表的なイヌ科の動物を6種類紹介します。
オオカミ
オオカミはイヌ科のなかでも最大と言われる肉食動物です。もともと北半球で広範囲に生息していたと言われていて、近年では駆除や環境破壊などが原因で分布する範囲が狭まってきています。
狩りをして大型のシカなども捕食するワイルドな一面があるオオカミですが、7〜8頭ほどの群れをなして生活しています。オオカミと犬は見た目もよく似ており、犬の中にはシベリアン・ハスキーやシェパードをルーツに持つ「ウルフドッグ」と呼ばれる犬種も。
また、オオカミも犬と同様に仲間同士のコミュニケーションを大事にする一面があり、見つめ合ったときに目を見つめ続けるか、逸らすかによって上下関係を決めているそうです。
コヨーテ
コヨーテはアラスカ、カナダ、アメリカ本土など幅広い地域で分布している動物で、「自然界の掃除係」と言われるほど雑食な動物です。狩りをしてシカやウサギを食べるほか、動物の死肉も食べると言われているため、このような呼び名がついたと言われています。
コヨーテは一見するとオオカミのような見た目をしていますが、オオカミより体が小さく、キツネに似た顔立ちをしています。
オオカミと犬の共通点は群れで生活する点です。基本的に家族で生活しており、子どもは9ヶ月ほどで独立すると言われています。また、コヨーテは遠吠えをして仲間と位置やテリトリーを共有するという特徴があります。
ジャッカル
ジャッカルは北アフリカから東アフリカ、南アジア、南東ヨーロッパなど、広い地域で分布している動物です。コヨーテと同様に狩りをして草食動物やウサギを食べるほか、動物の死肉を食べることもあると言われています。
オオカミや犬、キツネなど、イヌ科に属するさまざまな動物の見た目をかけ合わせたような外見のジャッカルの大きさは、60〜106cmほどとオオカミよりも小さいのが特徴です
。一夫一妻制で基本的につがいとその子どもたちで群れを作って生活するのが一般的で、縄張り意識が強い習性があります。
リカオン
独特な縞模様が特徴のリカオンは、犬と違って耳が丸く大きいのが特徴ですが、顔立ちは犬に似ています。犬のように群れをなす習性があり、家族だけでなく複数のオス、メス、子どもを含む10頭前後の群れを作って生活する動物です。
時速50kmほどのスピードで狩りを行うこともあるため、狩りの成功率が高く「アフリカの猟銃犬」と呼ばれることも。ワイルドな一面があるリカオンですが、子育ても狩りもオスとメスが共同で行うなど、協調性が高い面もあります。
ディンゴ
ディンゴはオーストラリア大陸やその周辺に分布している動物で、「野犬」と呼ばれることもあるほど犬にそっくりです。その見た目から犬の原種と言われることもあるようで、顔立ちは秋田犬や柴犬に似ています。
カンガルーやウォンバット、鳥などを捕食すると言われています。ディンゴはイヌ科の動物のなかでも生活の幅が広い動物で、狩りをする必要があるような大型の獲物が多いところでは群れをなして生活し、鳥など小型の獲物が多いところでは1匹で生活することもあるそうです。
フェネック
大きな耳とキュートな顔立ちが特徴のフェネックはキツネの仲間とも言われるイヌ科の動物です。北アフリカやアラビア半島などの砂漠に多く分布していることから、水がなくても長時間生きられるという特徴を持っています。
キツネは群れを作って生活しないという習性がありますが、フェネックは群れを作って生活します。また、犬のように仲間同士のコミュニケーションを大切にしており、鳴き声を使い分けて意思疎通を図ると言われています。
意外な動物もイヌ科に属している!
これまで紹介したイヌ科の動物は犬と見た目や習性が似ている動物が多かったですが、実は一見するとまったく共通点がなさそうな動物もイヌ科に属しています。
ここからは意外なイヌ科の動物を2種類紹介します。
タヌキ
タヌキは一見まったく犬とは違う見た目をしていますが、イヌ科に属する生き物のなかでも原始的な存在と言われています。
犬というよりはアライグマやアナグマ、ハクビシンと見た目が似ていますが、アライグマはアライグマ科、アナグマはイタチ科、ハクビシンはジャコウネコ科に属しており、タヌキのみイヌ科に属しています。
タヌキと犬の共通点は雑食なところです。ミミズや昆虫、木の実をはじめ、人の食べ残しなど、犬と同様にさまざまなものを食べて生活しています。犬のように群れで生活することはありませんが、つがいで生活し、年に1回は子どもを作り、子どもは1年ほどで独立するのが一般的と言われています。
キツネ
キツネは分布域が広く平原や森、砂漠などにも分布しており、日本でも見かけることが多い動物です。柴犬やコーギーなどキツネのように耳がピンと立った犬種も多く、犬に近い見た目の動物と言えるでしょう。
キツネは野ネズミや昆虫を食べますが、人の食べ残しも食べるなど、雑食な一面があります。犬との大きな違いは群れを作って生活しない点です。
子育ての時期は家族で一緒に過ごしますが、子どもは5〜6ヶ月ほどで親元を去るため、家族で生活している場面を見かける機会もなかなかないでしょう。
まとめ
イヌ科には犬とオオカミだけでなく、タヌキやキツネなどの身近な動物も含まれます。
イヌ科のなかでも見た目が似ている動物もいれば、まったく異なる動物もいますし、祖先は猫と同じで、進化していく上で現在の犬のような見た目や習性になった動物もいます。
今回紹介したイヌ科の動物と愛犬を比べてみると、意外な共通点が見つかるかもしれません。