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あおば動物クリニック所属
子犬を探す方法はペットショップや飼い主募集などさまざまですが、ブリーダーから直接子犬を迎える人も増えています。では、ブリーダーから子犬を迎えると、どのようなメリットがあるのでしょうか。今回はブリーダーの仕事内容やペットショップとの違い、ブリーダーから子犬を迎えるメリットを解説します。優良なブリーダーを見分けるコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 「ブリーダー」とはどのような仕事?
- ブリーダーとペットショップの違い
- ブリーダーから子犬を迎えるメリットと注意点
- ペットショップから子犬を迎えるメリット・デメリット
- 優良なブリーダーの見分け方
- 犬のブリーダーになるには?
- まとめ
「ブリーダー」とはどのような仕事?
そもそもブリーダーとは、植物の栽培や生き物の繁殖によって生計を立てる人のことです。つまり、犬に限らず、「動植物を育てること」を生業とする人をブリーダーと呼びます。ブリーダーの仕事内容は多岐に渡りますが、大きく分けると以下の3つです。
- 交配による繁殖
- 動植物のケアやお世話
- 飼い主探し
ブリーダーによっては、育てた動植物を展覧会やコンテストに参加させる場合もあります。また、ブリーダーの仕事内容は、対象とする動植物によっても大きく異なります。
たとえば、犬のブリーダーの場合は、上記に加えて親犬や子犬の体調管理や食事の管理、犬舎の手入れや、出産のフォローなどをおこなう必要があるでしょう。ほかにも、依頼を受けて犬のトレーニングを請け負ったり、ペットホテル業を営んだりしているブリーダーもいます。
ブリーダーとペットショップの違い
子犬をお迎えする際、ブリーダーとペットショップのどちらを利用するか迷う方も多いでしょう。そもそも、ブリーダーとペットショップにはどのような違いがあるのでしょうか。
ブリーダーとペットショップの主な違いは、「お世話の内容」と「犬種の幅広さ」です。ブリーダーは、親犬の管理や出産のフォローなど、親犬・子犬両方のケアをおこないます。柴犬、ポメラニアンなど特定の犬種に特化しているブリーダーが多いのも特徴です。
一方、ペットショップの場合は、ある程度大きくなった子犬をブリーダーから迎え入れ、店内で飼育しているケースが大半です。また、小型犬から大型犬まで幅広い犬種を扱っているところが多く、犬だけではなく猫や観賞魚、ハムスターやうさぎなどの小動物、爬虫類などを扱っているお店もあります。
ブリーダーから子犬を迎えるメリットと注意点
子犬をブリーダーから迎えるべきか、ペットショップから迎えるべきか判断するためには、それぞれのメリットと注意点をきちんと把握することが大切です。ここからは、ブリーダーから子犬を迎えるメリットと注意点を詳しく解説します。
ブリーダーから子犬を迎えるメリット
ブリーダーから子犬を迎えるメリットは、主に以下の5つです。
- 犬の飼育環境や育てた人(ブリーダー)を確認できる
- 親犬や兄弟犬を確認できる
- 基本的なトレーニングをしてくれる場合がある
- 特定の犬種に対する知識が豊富
- ある程度の社会性を身につけている子犬が多い
多くのブリーダーは、飼育施設の見学に対応しています。実際に子犬が育った環境や育てた人(ブリーダー)を確認できるので、安心してお迎えできるでしょう。また、ブリーダーから直接話を聞けるため、親犬、子犬の健康状態や性格など、犬に関する詳細な情報を得られます。
ブリーダーによっては、「おすわり」「おて」といった簡単なコマンドやトイレのトレーニングをしてくれる場合もあります。人間とのトレーニングにある程度慣れている子犬なら、家庭に迎え入れてからもスムーズにトレーニングをおこなえる可能性が高いでしょう。
ブリーダーは柴犬やポメラニアンなど、特定の犬種に特化している場合が多いため、豊富な知識に基づくアドバイスも期待できます。その犬種ならではの特性やお手入れ方法、気をつけたい病気など、子犬を迎え入れる際に知っておきたいポイントを確認できるのもメリットです。
ブリーダーのもとで暮らしている子犬は、両親や兄弟と一緒に育っているので、ある程度の社会性を身につけている場合が多い傾向にあります。またほかの動物への警戒心が低く、順応性が高い可能性が見込めるでしょう。
ブリーダーから子犬を迎える時の注意点
- 近くにブリーダーがいるとは限らない
- 引き取りを断られる場合もある
ブリーダーはひとつの飼育施設を拠点としている場合が多いため、繁華街やショッピングモールにも多数出店しているペットショップと比べると、アクセスしづらい可能性があります。また、特定の犬種に特化していることが多いため、自宅近くに希望する犬種のブリーダーがいるとは限りません。場合によっては、遠方の施設まで子犬を引き取りにいかなくてはならないケースもあるでしょう。
また、ブリーダーはペットショップと比べて、飼い主に求める基準が厳しい傾向があります。「日中誰も家にいないことが多い」「高齢で体力的な余裕がない」といった場合は、引き取りを断られてしまう場合もあるでしょう。しかし、犬を飼うということは一つの命に最期まで責任を持つことでもあります。自身の飼育環境もよく検討の上、ライフスタイルに合った犬を迎えるようにしましょう。
ペットショップから子犬を迎えるメリット・デメリット
ここからは、ペットショップから子犬を迎えるメリット・デメリットを解説します。
ペットショップから子犬を迎えるメリット
ペットショップから子犬を迎えるメリットは、主に以下の3つです。
- 犬種が幅広い
- 子犬を迎える際の条件はそれほど厳しくない
- グッズやフードなど、必要なものも購入できる
ペットショップは、誰でも気軽に入れる雰囲気のお店が多いものです。多くの人が出入りするため、人間に慣れている子が多いのも特徴です。また、ペットショップは扱っている犬種も幅広いため、希望する犬種が見つかりやすいというメリットもあります。さまざまな犬種に会いにいけるので、どの犬種を迎えるか迷っている方にも向いています。
ほかにも、子犬を迎える際の条件もそれほど厳しくなく、フードやケージなどの必要なものをその場で購入できるのもポイントです。
ペットショップから子犬を迎えるデメリット
ペットショップから子犬を迎えるデメリットは、主に以下の3つです。
- 親犬の状態は確認できないことが多い
- スタッフに動物の専門知識があるとは限らない
- 子犬が社会化される前に母犬や兄弟犬と離れている可能性が高い
ペットショップは親犬のお世話はおこなっていないため、子犬の両親の状態は確認できない場合がほとんどです。ペットショップで迎える場合は、遺伝子病検査に取り組んでいて、健康状態がきちんと確認できるショップでお迎えしましょう。また、ペットショップのスタッフは犬の専門知識が豊富だとは限りません。犬種ごとの性格やお世話のポイントについて、明確なアドバイスを受けられない可能性もあります。
また、子犬は社会化といって、生後8週齢~12週齢(2~3ヶ月)の時に母犬や兄弟犬と触れあうことで、外の世界のさまざまな刺激に対して嫌悪感や恐怖心を持たずに受け入れやすくなると言われています。この時期はとても大切で、適正な社会化を受けられないと、後に問題行動を引き起こす確率も高くなります。
ペットショップでは、この社会化期をケージ内かつ一頭で過ごしてしまう場合があります。ショップによっては、兄弟犬や他の子犬と触れ合いの時間を作っていることもあるので、確認してみましょう。
もしも、気になった犬種がいた場合は、かならずその犬の特徴や飼育方法を調べて、自分のライフスタイルとマッチするか、トレーニングの時間を確保できるかをよく検討してください。必ずしも「飼いたい犬」と「飼える犬」が一致するとは限りません。
犬によっては、毎日たくさんの運動量が必要であったり、広い飼育場所が必要であったりする場合もあります。吠えやすい・毛が抜けやすい・定期的なトリミングが必要など、犬種によって飼育費用やライフスタイルは大きく異なります。
優良なブリーダーの見分け方
優良なブリーダーを見つけるためには、以下の6つのポイントをチェックすることが大切です。
動物取扱業の登録番号が提示されている
ブリーダーとして子犬を販売するためには、動物取扱業の登録が必要です。登録番号がわかりやすく掲示されているか、質問すればすぐに教えてもらえる場合は、安心してよいでしょう。
飼育環境を見学できる
子犬たちが普段生活している場所を見学できるかどうかも重要なポイントです。子犬の飼育環境を見れば、そのブリーダーが犬に対してどのくらい真摯に、愛情を持って向き合っているか判断できます。見学する際は、「犬舎が不衛生な状態になっていないか」「犬たちの生活スペースが狭すぎないか」といったポイントを確認するのがおすすめです。
ただし、ブリーダーのなかには、外部からの病原菌の持ち込みを防ぐために見学を断っている場合もあり、必ずしも「見学できない=悪質ブリーダー」とは言い切れません。ブリーダーから見学を断られた場合は、まず理由を尋ねてみましょう。
親犬の健康状態を確認できる
優良なブリーダーのもとで育てられた犬たちは、子犬はもちろん親犬も健康状態が優れているでしょう。ブリーダーから子犬を迎えるときは、事前に親犬の健康状態を確認すると安心です。親犬の健康状態を確認できなかったり、健康状態に問題があったりする場合は、そのブリーダーは避けたほうが無難でしょう。
アフターフォローが充実している
優良なブリーダーは、子犬を迎えたあとのアフターフォローが充実しているケースが多い傾向にあります。アフターフォローの有無について直接ブリーダーに尋ねたり、利用者の口コミをチェックしたりするとよいでしょう。
動物愛護法を遵守している
動物愛護法では、親犬に遺伝性疾患がある場合、ブリーダーはその説明責任を負います。また、同法では生後56日以下の子犬の受け渡しを禁止しています。万が一、生後56日未満の子犬を紹介された場合は、そのブリーダーは避けるようにしましょう。
遺伝学的な知見を持っている
ブリーダーは動物の繁殖を行うため、遺伝学的な知識が不可欠です。十分な知識を持たないブリーダーにより問題のある交配がおこなわれると、先天的な障害や病気を持った子犬が生まれる恐れがあります。とくに、子犬の両親が血統的に近すぎる場合は、このリスクが高まるとされています。優良なブリーダーであれば当然把握しているので、子犬の両親について確認してみるとよいでしょう。
犬のブリーダーになるには?
ブリーダーとして元気な子犬を送り出すためには、獣医学や予防学、遺伝学などの幅広い知識が求められます。ブリーダーとして真剣に犬と向き合うには専門知識は欠かせません。そのため、講座を受講したり資格取得を目指したりするケースも多いでしょう。たとえば、JKC愛犬飼育管理士や愛玩動物飼養管理士などの資格を目指す人が多いようです。
開業して生体販売をおこなう際は、動物愛護法に基づいた第一種動物取扱業の登録が必須です。加えて、各事業所に動物取扱専任者を設置する必要があります。動物取扱専任者として選任されるためには、以下のいずれかの条件を満たさなければなりません。
- 獣医師資格保有者
- 愛玩動物看護師資格保有者
- 社会法人等の専門性を有する資格保有者かつ第一種動物取扱業者で6カ月以上の実務経験者
- 獣医学、動物看護学、畜産学等の教育機関卒業者かつ第一種動物取扱業者で6カ月以上の実務経者
ブリーダーとして自分で開業するためには、飼育施設の準備、豊富な知識とともに「資格」や「実務経験」が求められます。
まとめ
犬との暮らしを実現するなら、ブリーダーから子犬を迎えるのも選択肢のひとつです。飼育環境や親犬の健康状態を直接確認できたり、知識豊富なプロによるアドバイスを受けられたりと、さまざまなメリットが期待できます。しかし、なかには悪質なブリーダーもいるため、十分注意が必要です。悪質なブリーダーを避けるためにも、まずは見学を申し込んでみることをおすすめします。
ブリーダーから子犬を迎える場合、ペットショップとは異なるメリットやデメリットがあります。どちらからお迎えするにしても、飼いたいと思う犬種の特性や必要な生活環境について、事前に調べて知識を付けておくことが大切です。犬種や個性を理解して各家庭にふさわしい子犬を迎えることが、飼い主と犬、双方の幸せにつながるでしょう。