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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
中国原産の犬種は、個性的なタイプが多く、日本でもペットとして人気があります。しかし、家族の一員としてお迎えしたいと考えていても「たくさんの犬種がいて悩んでしまう」という人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、中国原産の犬種10選を詳しく紹介します。それぞれの特徴や性格、飼育のポイント、お迎えの方法などを詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 中国原産の犬種と歴史
- 中国が原産の小型犬
- 中国が原産の中型・大型犬
- 中国が原産の犬種を飼うためには
- まとめ
中国原産の犬種と歴史
中国原産の犬種とは、中国に起源をもつ犬種のことです。シー・ズーやパグ、チャウ・チャウといった日本でもペットとして人気が高い犬種も含まれます。中国原産の犬種は、チベットにルーツを持つものが多いことも特徴のひとつです。チベットから中国にわたり、皇宮で愛玩犬として飼育されていた犬種もいるため、どこか気品のある印象が魅力的です。
中国が原産の小型犬
小型犬は、中型・大型犬に比べると体が小さいため、運動量も少なく、室内でも飼育しやすいことが特徴です。特に中国原産の小型犬は、見た目の愛らしさやユニークさが魅力で、日本でもペットとして人気があります。ここからは、中国原産の小型犬6種について、詳しく紹介します。
シー・ズー
シー・ズーは、チベットにルーツを持ち、中国の宮廷でも愛されていた小型犬です。大きな目とつぶれた鼻が特徴的で、愛くるしい表情と豊かな長毛が魅力です。
友好的な性格で理解力も高く、神経質なタイプは少ないため、ペットとしても飼育しやすいといわれています。小型犬なので運動量は少なめですが、活発な犬種のため、室内でもおもちゃなどで積極的に遊んであげましょう。乾燥地帯が原産の長毛種であるシー・ズーは、高温多湿の日本では蒸れによる皮膚トラブルを起こしやすいこともあります。適切なグルーミングで、皮膚トラブルを予防しましょう。
パグ
パグの原産国には諸説がありますが、現在は中国が主流と考えられています。鼻がぺちゃっとした愛嬌のある表情と、小型ながら筋肉質で引き締まった体躯が特徴です。
性格はやさしく陽気で、飼い主と遊ぶのが大好きな犬種です。ただし、自立心が強い一面もあるため、じっくりとトレーニングを行い飼い主との身体関係を深めましょう。また、短頭種のパグは、興奮しすぎると「呼吸がしにくくなる」などのトラブルに陥る可能性もあります。日ごろから興奮しすぎないように、気持ちのムラを抑えるトレーニングを行うことも重要です。さらに、暑さや寒さといった気温変化にも弱いため、飼育の際は室内の温度管理にも注意しましょう。
ラサ・アプソ
ラサ・アプソは、チベットにルーツを持つ非常に古い犬種で、同じく中国原産の犬種であるシー・ズーやペキニーズの先祖犬です。ラサ・アプソの歴史は約2000年前にさかのぼるといわれており、神聖な犬として、チベット仏教ゲルグ派の法王であるダライ・ラマから歴代の中国の皇帝に献上されてきました。
豊かな毛量と小型犬のなかでもがっちりとした体躯が特徴的です。性格は明るさと落ち着きを兼ね備えており、飼い主に懐きやすいといえます。ただし、用心深さもあるため、知らない人に対しては警戒して吠えてしまうこともあります。活発に動くタイプなので、毎日の運動を欠かさず、ストレスを溜めないように注意しましょう。全身を覆う美しい被毛も、ラサ・アプソの魅力です。被毛を長く伸ばす場合は、毎日のブラッシングで丁寧にお手入れをして、汚れによる皮膚や目のトラブルを予防しましょう。
ペキニーズ
ペキニーズは、ラサ・アプソを祖先犬にもつ中国原産の犬種です。中国の宮廷では、ペキニーズを門外不出の神聖な存在として愛育してきたといわれています。
全身を覆うボリューム感のある長毛と、小型犬ながらがっしりとした体躯で、貫禄のある風貌が特徴的です。性格は独立心が強く頑固な一面もあり、忠実ですが飼い主に依存しないタイプです。「猫のような犬」といわれることもあり、家族以外には懐かない場合もあります。飼育のポイントは、ペキニーズの性格を理解して、きちんとしたトレーニングを行うことです。毛量が多い犬種のため、適切なブラッシングで皮膚トラブルを予防しましょう。
チベタン・スパニエル
チベタン・スパニエルは、チベット地方に古くからいた犬種とされていますが、その歴史については十分に解明されていません。ペキニーズとは似ている点が多く、同じ祖先から派生したとされており、チベタン・スパニエルは自然の状態のまま現在まで至った犬種だと考えられています。
小さくバランスの良い体躯と、羽毛のようにフワフワとした尾が魅力です。性格は陽気で明るく、室内でも一緒に遊びやすいでしょう。活発なタイプなので、散歩や室内遊びで体を動かし、ストレスを溜めないように注意してください。また、美しい飾り毛が魅力のひとつでもあるため、毎日のブラッシングで整えてあげましょう。
チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
チャイニーズ・クレステッド・ドッグのルーツは明確にはなっていませんが、中国の漢時代に、家庭で番犬や狩猟犬として飼育されていたといわれています。頭部と足先、尾以外には被毛がない「ヘアレス」と、全身が細い長毛に覆われた「パウダーパフ」の2タイプがいます。
チャイニーズ・クレステッド・ドッグは、活発さと優雅さを兼ね備えており、社交的で飼い主と仲良くなりやすい犬種です。被毛がない「ヘアレス」は紫外線や寒さに弱いという特徴があります。飼育環境の温度管理に注意し、季節によっては散歩や外遊びの際に、紫外線・防寒対策として洋服を着せるなどしましょう。
中国が原産の中型・大型犬
中型・大型犬は、忠実で頼もしい存在です。中国原産の中型・大型犬の中には、希少価値が高く、日本では珍しい犬種もいます。ここからは、中国原産の中型・大型犬4種について、詳しく紹介します。
チベタン・テリア
チベタン・テリアは、チベット原産の中型犬です。チベットの寺院では「幸福を招く守護犬」として神格化されてきました。名前に「テリア」とついていますが、犬種分類のひとつであるテリアとは風貌が似ているだけで無関係です。
豊かな長毛が美しく、性格は穏やかで優しいところが特徴です。しかし、警戒心が強い一面もあり、家族以外には吠えてしまうこともあるため、適切なトレーニングが必要になります。また、全身を覆う美しい長毛を保つために、毎日のブラッシングで丁寧にお手入れしてあげることが大切です。
シャー・ペイ
シャー・ペイの原産地は、中国南部の広東省といわれており、古くから番犬や闘犬、猟犬として活躍してきました。
短毛の犬種で皮膚にシワが多く、特徴的な見た目をしています。筋肉質でコンパクトな体躯であり、中型犬に分けられるのが一般的です。シャー・ペイは自尊心が強く頑固な一面があります。子犬のころから飼い主がリーダーシップを取り、適切なトレーニングで信頼関係を築くことが大切です。また、皮膚のシワに汚れが溜まりやすいので、日々のグルーミングで清潔を保ってあげましょう。
チャウ・チャウ
チャウ・チャウは、中国では2000年以上の歴史がある犬種で、番犬や狩猟犬として飼育されてきました。たくましい体躯で大型犬に分類されます。
ユニークな表情とたっぷりとした毛量が特徴的で、まるでフワフワのぬいぐるみのような印象が魅力的です。しかし、性格は狩猟犬らしく警戒心と独立心が強く、飼い主に対しては誠実といえます。やや頑固な一面があるため、根気強くトレーニングを行うことが大切です。チャウ・チャウは、全身が豊かな被毛に覆われているため、暑さに弱い犬種です。夏場は飼育環境の温度管理に注意しましょう。
チベタン・マスティフ
チベタン・マスティフは、ヒマラヤに住む遊牧民の牧畜犬として、またチベットの僧院の護衛犬として飼われていた犬種です。骨太で筋肉質、どっしりと重厚感のある体躯が特徴で、超大型犬に分類されます。
飼い主には忠実ですが、物おじせず防衛本能が高い性格をしており、番犬としても優秀です。近年は希少な犬として、中国の富裕層からの人気も高まっています。ただし、超大型犬であるチベタン・マスティフは、体が大きく力も強いため、子犬時代から適切なトレーニングを行い、飼い主との信頼関係を築くことが重要なポイントです。また、必要な運動量も多いため、散歩やドッグランで毎日体を動かすようにしましょう。
中国が原産の犬種を飼うためには
今回ご紹介した中国原産の犬種の中でも、シー・ズーやパグ、ペキニーズ、チャイニーズ・クレステッド・ドッグ、チャウ・チャウは、日本でもペットとして人気が高く、ペットショップでお迎えすることができます。
ただし、ラサ・アプソやチベタン・スパニエル、チベタン・テリア、シャー・ペイ、チベタン・マスティフなど、日本ではまだなじみの少ない犬種は、専門のブリーダーや里親制度でのお迎え、または中国からの輸入を検討するのがいいでしょう。
中国からペットとして犬を輸入する場合は、日本の検疫制度に従った手続きや輸入検査が必要になります。マイクロチップの埋め込みや予防接種などの手続きを行った上で、輸入条件を満たしている場合は、輸入検査も短時間で終了します。しかし、輸入条件を満たしていないと、長期間の係留検査が必要になるため、あらかじめ手続きの準備をしておくことが大切です。
まとめ
中国を原産とする犬種は、小型犬から中型・大型犬まで幅広く、日本でもペットとして人気です。愛嬌のある表情や明るい性格など、それぞれに異なる魅力があります。中国原産の犬の飼育をお考えの方は、犬種の特徴や性格を理解して、それぞれに合った方法で向き合いましょう。