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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
ペットベッドって、どう選べばいいの? 獣医動物行動学の専門家に質問したら、意外な選び方や活用術を教えてくれました。
目次
- ペットベッドって必要? 使うメリットは?
- ペットベッドの選び方とは? 犬にとって快適な寝床
- 意外と知らない? ペットベッドを複数使いするメリット
- 手洗いできて包容感のある、茂木先生監修のペットベッド
ペットベッドって必要? 使うメリットは?
ーー先生、犬って野生時代は外で暮らしていた動物ですよね? ペットベッドなんて、本当は必要ないんじゃないですか?
茂木千恵先生(以下、茂木):いえいえ、そんなことありません。現代の室内犬たちが生活している場所は、硬いフローリングの上ですよね。柔らかい土や草の上よりも、寝ている時の犬の体に負担がかかります。
成犬の1日の睡眠時間は約12〜14時間、子犬期であれば16〜19時間です。1日のほとんどを眠って過ごすので、お家に快適な寝床や休息スペースがあるかどうかは、愛犬のQOL(生活の質)を考える上で、とても重要なことなんです。
ーーなるほど……。
茂木:犬は「自分の匂いがする場所」にいると安心できる動物です。ペットベッドには自分の匂いが染み込むので、犬がリラックスできる場所になるんですよ。
初めて出かける宿泊施設や、移動中の車内に、いつも使っているペットベッドを持参すると、ワンちゃんの旅行時の不安を和らげてくれます。
ーーペットベッドを持っていると、愛犬の「いつもの安心できる場所」を手軽に持ち運びできるというメリットもあるんですね。
茂木:はい。それから、犬も高齢になると、関節炎や変形性脊椎症になりやすくなります。また、筋力が衰えて、思うように体勢を変えられなくなってしまうと、同じ姿勢が続いて、体が痛くなってしまうんです。こうした体の痛みを和らげるためにも、高齢犬には、体重を分散してくれるペットベッドを、ぜひ活用してほしいです。
ペットベッドの選び方とは? 犬にとって快適な寝床
ーーペットベッドの必要性はよくわかりました。では、犬用ベッドは、どんなポイントで選べばいいのでしょうか?
茂木:犬はもともと、洞窟や岩場の影を巣穴にして暮らしていた動物です。その名残から、「狭い空間で体が包み込まれる感覚」を好む習性があります。そういう場所にいることは、犬にとって不安を落ち着ける効果があるんです。
選ぶなら、犬の体を包み込んでくれる形状のペットベッドが良いです。それから、体が痛くならないようにしっかり底の厚みや安定感があるかも確認しましょう。
ーー身を潜められるような形で、安定感があるペットベッドがいいということですね。
茂木:はい。クレートに入れて使うなど、平らな形が重宝する場面もありますが、室内使いのベッドでしたら、縁の高いものを選ぶと良いですよ。大きな縁にもたれかかると、優しく包み込まれてワンちゃんがリラックスできます。
ーー確かに犬って、ベッドの縁にあごを乗せるのが好きですよね。
茂木:犬にとっては、重い頭を支えられる楽な姿勢なんです。それにワンちゃんたちは、常に周りの状況が気になっていて、見ていたいんですよ。
犬の睡眠のほとんどは、レム睡眠なので、常に眠りが浅いんです。これは、野生時代に外敵から身を守ったり、狩りの成功率を高めるために、周囲に注意を払っていた習性が残っているためです。家の中でも人の気配に敏感で、飼い主さんの動向をよくチェックしています。
ーーなるほど。ちなみに、よく犬がベッドの縁にでろ〜んと首をもたれかけているのを見ます。頭に血がのぼりそうで心配になるのですが、あの体勢は大丈夫なのでしょうか……?
茂木:はい、大丈夫です。その体勢で、犬は首と肩のストレッチをしているんですよ。
ーーストレッチですか!?
茂木:はい(笑)。人は、重い頭を全身の骨格で支えていますよね。でも、犬は頭の重みをほとんど肩だけで支えています。ですから、時々ベッドの縁などを利用して、肩と首のストレッチをしているんです。可愛らしいですよね。
意外と知らない? ペットベッドを複数使いするメリット
ーーペットベッドは、どのタイミングで買い換えたら良いのでしょうか?
茂木:底や縁がへたって安定感が無くなってきたり、汚れが落ちなくなってきたら買い換え時ですね。夏には冷感素材、冬には保温性素材など、いろいろな素材のものがあるので、シーズンごとに買い換えるのもいいでしょう。
ちなみに私は、普段からいくつかの素材のベッドを併用することをおすすめしています。
ーー何個も使って、なにか良いことがあるんですか?
茂木:犬にとって本当に快適な空間を作るためには、「犬が自由に快適な居場所を選べる」ようにすることが、とても大切です。
例えば、夏に冷房が効いたお部屋で、長い時間過ごしていたら、犬も肌寒く感じることがあるかもしれません。そんな時、少し離れた場所に冬素材のベッドがあれば、自分でそちらにいって、ぬくもりを求めることができますよね。
ーーその発想はなかった……! 家の中に犬が快適な居場所を、いくつも用意してあげるってことですね!
茂木:はい。リビングでは、リラックスできるお部屋の隅と、テーブルの下やソファーの足元に。そのほかに、寝室のベッドの脇や、廊下にも置いてみるなど。犬が入っても良いスペースに、自由な発想でペットベッドを活用してみてはいかがでしょうか?
ーー愛犬との生活シーンを想像しながら、ペットベッドを選ぶのが楽しみになりそうですね。
手洗いできて包容感のある、茂木先生監修のペットベッド
茂木:犬には包容感のあるベッドがいいとお伝えしましたが、一方で足の短い犬種や老犬、小型犬にとっては、その高さが負担になってしまう場合があります。なので、実際には縁が高い商品ってあまり見ないですよね。そこで、私の理想系のベッドをつくってみたんです。
茂木:たとえばこの『縁付きスクエアマット』は、ホームセンターのカインズさんと開発しました。カインズにも縁付きのペットベッド商品がありましたが、包容感の高いものをご提案して、縁の高さを従来品の2倍にボリュームアップしたんです。
ーー縁が分厚くてフカフカそう。たしかに「包まれている感」がありそうですね。
こうすることで、360度縁が立って、どの向きでも犬が快適な姿勢でいられます。その上、どんなワンちゃんでも負担なく出入りできるように、一部分だけくぼみを設置しました。
茂木:ほかにも、こちらの『犬用ドームベッド』は、小型犬の体によりフィットするよう、天井を低く設計しました。とはいえ、同じ小型犬でも体の大きさには個体差がありますので、中敷のマットを取り外して、空間を調整できるようになっています。
ーーほんとうに、洞窟の中に入っているみたいですね。
茂木:中型犬〜大型犬用のペットベッド『縁付きジャンボマット』も、同じく従来のカインズ商品から縁の高さを倍にグレードアップして、コーナーの包容感を高めたものをつくりました。
ーーこちらも底に厚みがありますね!
茂木:このベッドは、底の素材にウレタンフォームとわたを組み合わせているんです。ワンちゃんの体にあたる上の部分はフカフカのわたで気持ちよく、その下にウレタンが敷いてあることで、しっかり安定感を出しています。体が沈んでも、床にあたって痛くならないように工夫しているんです。
カバーを取り外して洗うことができるので、とっても衛生的に使うことができるのもポイントです。介護中のワンちゃんにも、ぜひ活用して欲しいですね。
ーーどのベッドにも、先生から伺ったペットベッド選びのポイントが盛り込まれていますね。ありがとうございました。
茂木:ありがとうございました。
カインズペットベッドコレクション
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