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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
動物が好きな人にとって「動物愛護団体」は興味深い存在ではないでしょうか。しかし「動物愛護団体って実際にはどんな活動をしているの?」「保健所や動物愛護センターとはどう違うの?」などの疑問を抱いている人も多いはずです。
そこで、今回は動物愛護団体の活動内容や、保健所や動物愛護センターとの違いなどを詳しく解説します。動物愛護団体の活動にかかわる方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 動物愛護団体とは
- 動物愛護団体と動物愛護センター、保健所の違い
- 動物愛護団体の活動内容
- 動物愛護団体の活動にかかわる方法
- まとめ
動物愛護団体とは
動物愛護団体とは、動物愛護にかかわる民間組織や民間団体の総称です。動物愛護団体には、全国的なものからローカルな団体まで、さまざまな規模の組織・団体があり、おもに寄付や会費、支援金などで運営されています。動物愛護団体について理解するためには、まずは「動物愛護」の定義を知ることが重要です。
そもそも「動物愛護」とは
動物愛護とは、動物の命の尊厳を守り、動物を不必要に殺したり苦しめたりすることのないように接し、その生態や習性を理解して適切な管理を行うことです。
日本では、動物の命を大切にして心豊かな社会を築くことを目的に「動物愛護管理法 」という法律が制定されています。動物愛護管理法に基づく「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(動物愛護管理基本指針)」では、動物愛護の基本について「人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守るということにあり、動物をみだりに殺し、傷つけ又は苦しめることのないよう取り扱うことや、その生理、生態、習性等を考慮して適正に取り扱うことである 」と記されています。
動物愛護団体の目的
動物愛護団体は、動物愛護管理基本指針で定義されている動物愛護の基本に基づき、次のような目的のために活動しています。
- 動物の虐待や遺棄の防止
- 動物の殺処分の削減
- 動物の福祉の向上
- 動物の適切な飼育の啓蒙
- 社会における動物との適切なかかわり方の啓蒙
動物愛護団体と動物愛護センター、保健所の違い
動物の保護を目的とした団体には、動物愛護団体のほかに「動物愛護センター」や「保健所」などが存在しています。しかし、動物愛護団体と動物愛護センター、保健所は、それぞれ運営主体や活動内容が異なります。
|
運営主体 |
活動内容 |
動物愛護団体 |
民間 |
動物愛護を中心とした活動 |
動物愛護センター |
自治体 |
動物に関するさまざまな活動(殺処分を含む) |
保健所 |
自治体 |
地域の健康・衛生対策(その1つとして動物の保護を実施) |
それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
動物愛護センターとの違い
寄付金や支援金によって運営されている民間団体である動物愛護団体に対して、動物愛護センターは都道府県や市区町村などの自治体が運営している公的機関です。動物愛護センターでは、動物の保護や捕獲、引き取りだけではなく、動物取扱業の登録や指導、動物にかかわる感染症対策など、幅広い活動を行っています。
動物愛護センターでは、保護された動物の飼い主や引き取り先が一定期間見つからない場合、動物の殺処分が行われます。しかし、近年は譲渡会や飼い主探しの積極的な取り組みも増えてきています。
保健所との違い
保健所も動物愛護センターと同じく、各都道府県や市区町村に存在する公的機関です。動物愛護団体や動物愛護センターが、動物に関する活動を行う組織・団体であるのに対して、保健所は「地域の保健・衛生対策」にかかわるさまざまな事業を行う機関です。その事業の1つとして、引き取り先のない動物の保護・収容、ペットの引き取りなどの「動物保護」を行っています。
保健所で保護された動物は、一定期間引き取り先が見つからない場合、動物愛護センターに引き渡されるのが一般的です。ただし、動物愛護センターがない自治体では、保健所が譲渡会や飼い主募集を行うケースもあります。自治体によって、動物愛護センターと保健所の役割が異なる場合があります。各自治体で確認してください。
動物愛護団体の活動内容
動物愛護団体の具体的な活動は、それぞれの団体によって異なりますが、おもな活動内容は以下のとおりです。
行き場を失った動物の保護、引き取り
日本では、迷子犬や迷子猫、飼い主が飼育できなくなった動物などは、動物愛護センターや保健所で保護されます。動物愛護団体は、こうした飼い主のいない動物を、動物愛護センターや保健所から引き取り、新たな飼い主が見つかるまでの保護や飼育、適切なトレーニングなどを行っています。
保護された動物の譲渡会や飼い主探し
動物愛護団体は、保護した動物の新たな飼い主を探すために、譲渡会などのイベントを開催しています。こうしたイベントでは、実際に保護された動物と触れ合い、新しい飼い主として応募することが可能です。また、譲渡会では、保護犬の飼い主希望者に対して、動物愛護団体が飼育のための講習などのサポートも行っています。
災害時のサポート
災害時には、飼い主とはぐれてしまうペットや飼い主とともに避難所生活を送るペットも少なくありません。こうした災害時に、国や自治体と連携して動物の保護や物資の調達、情報収集などを行い、被災した動物と飼い主のサポートを行っている動物愛護団体もあります。また、災害発生時の人とペットの危機管理にかかわる講習会などの啓蒙活動も実施している団体も見られます。
動物愛護に関する法律や行政への提言
日本では「動物愛護管理法」によって、動物の愛護や適切な飼育が定められています。しかし、保護犬や保護猫の増加、多頭飼いの飼育崩壊など、まだまだ課題が多いのも事実です。動物愛護団体では、こうした法律や法律に基づく行政の活動に対して、さまざまな提言書の提出などを行い、より良い動物愛護の実現に努めています。
ここで紹介した活動事例は、一般的なものであり、実際には各団体の理念に基づき、多岐にわたる活動が行われています。
動物愛護団体の活動にかかわる方法
動物愛護団体の活動にかかわるためには、ボランティアとして活動に参加したり、団体に寄付をしたりする方法があります。また、自身が保護犬の飼い主になることも、動物愛護団体の活動にかかわる方法の1つです。ここからは、動物愛護団体の活動にかかわる方法について、詳しく見ていきましょう。
ボランティア活動に参加する
動物愛護団体の多くは、非営利組織(NPOやNGO)であり、その活動はボランティアによって支えられているのが一般的です。動物愛護団体の活動にかかわりたい場合は、まずは、保護動物の一時預かりボランティアや譲渡会のイベントスタッフの募集などを探すのがおすすめです。
保護動物の一時預かりボランティアとは、動物愛護団体のシェルターで保護しきれない動物を、新しい飼い主が見つかるまでの間、一時的に預かるボランティアスタッフのことです。各団体のホームページなどで、ボランティアスタッフの募集が出ていないかを確認してみましょう。
寄付をする
動物愛護団体の活動資金は、寄付金や支援金が主体となります。そのため、自身がボランティアスタッフとして、積極的に活動に参加するのが難しい場合でも、寄付というかたちで活動を応援することも可能です。動物愛護団体への寄付は、団体のホームページで受け付けているのが一般的です。
また、譲渡会や飼い主募集イベントの会場に募金箱が設置されていることもあるため、身近でこうしたイベントが開催される場合は、足を運んでみるのもいいでしょう。寄付先を検討する際は、寄付金の使い道などの収支報告が公開されている透明性の高い団体を選ぶと安心です。
セミナーや講習会に参加する
動物愛護団体が主催するセミナーや講習会に参加して、団体の活動内容の理解を深めることもサポートにつながります。動物愛護団体の理念や活動の主軸は、団体ごとに異なります。自分が共感できる団体と出会うためにも、まずはセミナーや講習会に参加してみる方法がおすすめです。セミナーや講習会のお知らせは、各団体のホームページやSNSで発信されています。
譲渡会や飼い主募集イベントに参加する
動物愛護団体のおもな活動の1つである譲渡会や飼い主募集イベントに参加して、ご自身が保護犬の新しい飼い主に名乗り出ることも、サポートの1つです。ただし、飼い主となるためには、保護犬と暮らすための環境を整える必要があり、さらに、犬を飼育するための経済力や心構えも求められます。
動物愛護団体のスタッフとして働く
動物愛護団体の運営に深くかかわりたい場合は、団体のスタッフや職員として働くことも視野に入れてみましょう。ただし、動物愛護団体は、常に求人を行っているわけではありません。ご自身が理念に共感できる団体があれば、定期的にホームページなどを確認して、求人募集の有無をチェックしてみてください。
求人が見つかった場合は、必ず見学やインターンシップで1週間程度は仕事を体験してください。やはり、動物愛護団体ごとに考えや方向性が異なり、体験しないとわからないこともあります。ミスマッチ防止のためにも体験後に面接に進むことをお勧めします。
まとめ
動物愛護団体とは、動物の虐待や遺棄の防止、動物の察処分の削減、動物の福祉の向上などを目的に活動する民間団体です。動物愛護団体には、さまざまな規模の組織・団体があり、活動の軸も団体ごとに異なります。一般的には「動物の保護、引き取り」「保護動物の飼い主探し」「災害時のサポート」「行政への提言」などが具体的な活動内容です。
動物愛護団体の活動にかかわる方法としては、ボランティア活動に参加する、寄付をする、セミナーや講習会、イベントに参加するといった方法があります。また、自身が動物愛護団体の保護する動物の飼い主になるという選択肢もあります。私たちが動物愛護団体の活動を理解し、活動をサポートすることが、より良い動物愛護の実現につながるでしょう。