転勤族の夫とともに、全国を転々としている。現在は東京の片隅で書店員として勤務。今年、『書店員は見た 本屋さんで起こる小さなドラマ』を上梓した。

プニプニのトライアルが決まり、我が家はにわかに活気づいた。
仕舞い込んでいた、フードや水用のボウルを棚の奥から引っ張り出し、トイレシートやフード、掃除用品を買いに走る。そして、ハーネス、リード、GPS、迷子札。
お留守番の時はケージに入っていると、預かりボランティアさんから聞いていたので、大型犬用のケージも注文した。
レイルも、そしてレイルの先代のニコリも、室内でフリーにしていたのだけれど、出来るだけ今までの状態に近い方が安心するのではないかと思ってのこと。しかし、事前にシュミレーションすると、どう設置したところで場所を取ることは間違いなかった。
目次
- さようなら、理想のインテリア
- 名前が決まる夜
さようなら、理想のインテリア

レイルはふかふかした場所が嫌いで、床やラグで寝ていたけれど、プニプニはどうだろう。やはりベッドは必要かしら。大型犬用のベッドもネットでポチッ。
2026年の流通は、とんでもないスピードだ。そんなに急がなくてもいいですよ…と遠慮したくなるレベル。某通販サイトで購入したものが、翌日には(物によっては当日のうちに!)届き、リビングを占拠した。
特にケージ! 組み立てると部屋の半分がケージで、家族4人がリビングに揃ったら満員御礼という状態だ。
致し方ないとは言え、お二人のボランティアさんがプニプニを送って来てくださることを考えると、一旦畳んでおく方が良さそう。ひとりで簡単に畳める仕様になっていたため、サッと畳んで、一旦、目につかない場所に片づける。
ここで、私は閃いた。
ソファ代わりに使っている、簡易ベッド。
レイルの介護で添い寝する時用に作ったのだが、もう要らなくない?
これを解体して、1人がけソファをふたつ並べた方が場所を取らないのでは?
元々、気に入ったソファが見つかったら、ベッドは解体する予定だった。また犬と暮らす日が来ると思っていなかったので、とびきり素敵なのを迎えるつもりでいたのだ。
が、また犬が来る。
ということは、どうせまたすぐに汚れるということである。
私は、ネットで検討中だった素敵なソファたちのブックマークを即座に外し、新たに『撥水 猫引っ掻き防止 ソファーベッド 分割』で検索をかけた。
ふたつ繋げればベッドとして使えるものなら、プニプニが体調不良の時に安心だ。
撥水は必須、猫の爪とぎに耐えうる素材ならなお良し。
検索画面で目についたもののサイズを確認して、すぐにカートに放り込む。
さようなら、素敵なソファのある未来。
長年インテリアをSNSで発信してきたけれど、どうやっても素敵なソファとはご縁がなさそうです。
サイトには、「倉庫から発送されるため、最短納期ではお届けできません」と書かれていたソファだが、それでも翌々日には我が家にやって来た。素晴らしすぎるぞ、日本の物流!
ソファの到着に合わせて解体した、手作りの簡易ベッドに使っていた木材は、犬用マットレスに合わせてカットして組み直し、犬用ベッドに生まれ変わった。長年ⅮIYで家づくりをしてきたことが、ここで活きてくる。
よし、これでプニプニがやって来るのを待つだけだ!

名前が決まる夜

準備万端で、その日を待っていると、ボランティアさんから連絡が入った。
「名前はもう決めましたか?」
名前、何にも考えてなかった。
来てから決めればいいか、ぐらいに思っていた。
ところが、ボランティアさんは「もし決まっていたら、慣れさせるために今からその名前で呼びます」とおっしゃる。
そりゃそうか。名前だって、少しでも慣れてた方がいいよね。
早速その晩、名づけ会議を開く。
ところが、これが意外と難航したのだ。
今までも動物がやって来た時は、例え仮名であれ必ず名前はつけているから、すぐ決まることだろうと思っていたのだが、プニプニという、特徴的な名前に引っ張られ、最適な名前が思いつかない。
はじめは、娘が大好きな、おでこにイナズマの傷を持つ魔法使いの物語の登場人物や、物語に登場する呪文から名づけようとしていたのだが、なぜだろうか、しっくりこないのだ。
名前の候補もあらかた出尽くして、みんな無言になった時、娘が言った。
「“ウォンカ“は?」
ウォンカ! かの有名な天才ショコラティエ。
その名前を聞いて、私と息子は顔を見合わせた。
息子が「君、チョコレート工場、好きだねぇ!」と言うと、娘は何のことかわからないという風に首を傾げる。
11年前、突然やって来たレイルに名前を付けようという時、娘はチョコレート工場の物語に出てくる小さなおじさん、“ウンパルンパ“にしようとゴネた。
あえなく却下されたが、彼女があまりにも強く推していた名前だったので、私と息子にとって忘れられない思い出なのだ。当時、娘は幼かったので、そんなことは全く記憶になく、それなのにまたチョコレート工場から名前が飛び出したことが面白く、私は力強く頷いた。
「いいでしょう。彼の名前は“ウォンカ“とします」











