2024年01月18日 更新 (2024年01月15日 公開)
岩手県北上市のトリミングサロン『OLLIE MAGIC』、『PAPA de GIGI』オーナー兼トリマー。国内で数多くのトリミングコンテストで受賞歴を持つ。
![異業種から国際チャンピオントリマーに! 藤原直英さんの極意「犬と呼吸を合わせる」](https://img.wanqol.com/2023/11/3453c9dc-naohidefujiwara_interview_top-min.jpg?auto=format)
世界に評価される技術を持つカリスマトリマー、藤原直英さんの異色のキャリアとトリミングへの想いとは?
目次
- ラスベガスのコンテストで優勝! 世界から評価される技術を持つトリマー・藤原直英さん
- 愛犬の存在がきっかけで24歳で工場員からトリマーに
- 念願のサロン開業。犬から信頼関係の築き方を学んだ
- コミュニケーションも技術のうち。犬、飼い主に寄り添う施術
- トリマーの技術格差をなくし、業界全体を盛り上げるのが使命
- 「犬がいない人生は考えられない」藤原さんの夢
ラスベガスのコンテストで優勝! 世界から評価される技術を持つトリマー・藤原直英さん
世界から評価される技術を持つ、カリスマトリマーが日本にいることをご存知でしょうか。
今回紹介するのは、地元・岩手を拠点に活動するトリマーの藤原直英さん。県内にトリミングサロンを2店舗経営するほか、定期的なセミナー講師業や外部サロンの技術指導など、次世代を担うトリマーの育成にも精を注ぎます。
![トリマー、トリミング講師の藤原直英さん トリマー、トリミング講師の藤原直英さん](https://img.wanqol.com/2023/11/d0a741e8-naohidefujiwara_interview_01-min.jpg?auto=format)
藤原さんは、国内の数々のトリミングコンテストでの優勝経験だけでなく、2023年にラスベガスで開催されたコンテストで1位を獲得した、いわば国際チャンピオンのトリマーなのです。
そんな藤原さんですが、なんと工場員から24歳でトリマーへ転身した、ちょっと異色なキャリアの持ち主。
「トリマーは天職」と話す藤原さんはなぜ、異業種からトリマーを志したのでしょうか? 背景には、藤原さんと愛犬たちとの深い絆がありました。
愛犬の存在がきっかけで24歳で工場員からトリマーに
自営業の両親の影響で、小さい頃から漠然と「いつか独立したい」という思いがあった藤原さん。
しかし、人と関わるのが得意ではなかったことから、専門学校卒業後は工場勤務の仕事に就きました。仕事にも慣れてきた頃、ある“違和感”を覚え始めたといいます。
「工場の仕事にもやりがいを感じていましたが、これが本当にやりたいことなのかな……と思い始めました」
そんな違和感から、自分が「本当にやりたいこと」をあらためて考え直した藤原さんは、「犬に携わる職業にしよう」と決心します。
この思い切った決断には、物心ついた頃から一緒に暮らしていたシェットランド・シープドッグの愛犬・コロちゃんの存在も影響を与えました。
「犬だけでなく、動物全般が好きでした。人より動物とコミュニケーションをとる方が性に合っていたというのもあるかもしれません(笑)」
電話帳で偶然見つけた地元のトリマー養成塾の広告がきっかけで、トリマーへの道を志します。
当時「トリマー」という言葉すら知らなかったという藤原さん。トリマーになるには、美容だけでなく犬の健康管理や飼育など幅広い技術・知識を身につける必要があります。
一からの勉強でしたが、「やるからにはとことん!」妥協知らずの性格だったという藤原さんは、学校で必死に知識と技術を学び、JKC公認A級ライセンストリマーの資格を取得。24歳でトリマーとしてのキャリアをスタートさせます。
![トリマーを始めたばかりの頃の藤原さん トリマーを始めたばかりの頃の藤原さん](https://img.wanqol.com/2023/11/336e22b9-naohidefujiwara_interview_02-min.jpg?auto=format)
念願のサロン開業。犬から信頼関係の築き方を学んだ
地元のサロンで実務経験を積んでさらに腕を磨いた藤原さん。ついに「自分の店を持ちたい」という幼い頃からの夢が叶う瞬間がやってきます。
「自分の技術を世に広めたい、その一心でした。不思議と、異業種からの独立でも大変だと感じたことはあまりなかったですね」
30歳で地元の岩手県北上市に念願のトリミングサロンを開業。店名の『OLLIE MAGIC』は、2匹の愛犬・ミニチュアシュナウザーのオーリーちゃんとトイプードルのマジックくんから名付けました。
![『OLLIE MAGIC』1店舗目 『OLLIE MAGIC』1店舗目](https://img.wanqol.com/2023/11/2df68e3a-naohidefujiwara_interview_03-min.jpg?auto=format)
「いつか自分のお店を開いたら、愛犬の名を店名にしようと思っていました」
![愛犬のトイプードル、マジックくん 愛犬のトイプードル、マジックくん](https://img.wanqol.com/2023/11/c3f661d5-naohidefujiwara_interview_04-min.jpg?auto=format)
順調にトリマーのキャリアを歩んでいるように見える藤原さんですが、実は何度も壁にぶつかった経験もあると振り返ります。
「技術が身についても、マインドがついてこない時がありました。飼い主さんや犬たちにも自信のなさや焦り、プレッシャーを見せないよう必死で、一杯いっぱいになっていた。今思えば、一番大切な飼い主さんや犬たちへの目線より、自分本位になってしまっていたのかもしれません」
そんな藤原さんですが、国内外のトリミングコンテストに出場したり、スタッフを雇い始めたりしたことで次第に自身を客観視できるようになり、安定して施術できるようになったと話します。
またもう一つ、藤原さんのマインドを大きく変えたのが、犬たちの存在です。
「犬の前では嘘をつけません。隠そうとしていた自信のなさや不安な気持ちも、支える手やハサミを通してすぐに感じ取られてしまいます。反対に、きちんと気持ちを整えて犬と向き合うと、次第に心が通じ合い、安心して身を委ねてくれるようになるんです」
犬たちが教えてくれたコミュニケーションの大切さを意識するうち、少しずつお客様とも信頼関係を築けるようになってきたそうです。
「トリマーとして活動し、犬たちやお客様との関わり合いの中で、人に対する苦手意識もすっかり克服されました」
コミュニケーションも技術のうち。犬、飼い主に寄り添う施術
自身のサロンも2店舗に増え、地元の方々に愛されるサロンとなった今でも、「さらに自分の技術力を高めたい」と飽くなき追求心で国内外のトリミングコンテストへの出場を続けます。
2023年には、ラスベガスで開催されたトリミングコンテストで1位を獲得。“世界一のトリマー”の称号を得てもなお、妥協することなく日々技術を磨き続けています。
そんな藤原さんがトリマーの仕事でもっとも大切にしているのが「相手の目線に立つこと」、そして「コミュニケーション」です。
「トリマー目線だとつい技術的なこだわりが先行してしまいますが、お客様がトリミングに求めているのは愛犬がより美しく、可愛くなることですよね。なので、お客様が愛犬のお手入れについてどんな悩みをお持ちなのか、愛犬のどんな姿が理想なのか、丁寧にヒアリングしてワンちゃんに合った施術を行い、悩みを解消していきます」
藤原さんが大切にするのは、お客様とのコミュニケーションだけではありません。
![トリミング施術中の藤原さん トリミング施術中の藤原さん](https://img.wanqol.com/2023/11/6bd8eaae-naohidefujiwara_interview_05-min.jpg?auto=format)
「犬ともコミュニケーションが不可欠です。目の色や息づかい、仕草を見れば、緊張しているのか、喜んでいるのか、犬の感情が手にとるようにわかります。だから、まずは犬と呼吸を合わせ、安心してもらえる“オーラ”を出すんです」
犬のストレスや負担を最小限に減らせるよう、スピーディに施術を行うのも、藤原さんの腕の見せどころです。
最初は体を触られるのを嫌がっていても、呼吸や目線を合わせ、声を掛けていくうち、少しずつ犬の方から寄り添ってくれるようになるといいます。
藤原さんのサロンでは、ほとんどのお客様がリピーターだそう。細部までこだわったカット技術の高さだけでなく、犬や飼い主と心を通わせる「犬想い」なトリミングも、藤原さんのサロンにファンが絶えない理由です。
「ワンちゃんや飼い主さんが笑顔で帰っていくことが一番の幸せ」と藤原さんは微笑みます。
トリマーの技術格差をなくし、業界全体を盛り上げるのが使命
近年、慢性的な人手不足ともいわれるトリマー業界を盛り上げるため、藤原さんが尽力するのは「次世代を担うトリマーの育成」です。
自身のサロン経営とスタッフ育成のほか、全国のサロン経営者やトリマーに向けたセミナーや勉強会を開催しています。
![全国のサロン経営者やトリマーに向けたセミナーや勉強会を開催する藤原さん 全国のサロン経営者やトリマーに向けたセミナーや勉強会を開催する藤原さん](https://img.wanqol.com/2023/11/691a7557-naohidefujiwara_interview_07-min.jpg?auto=format)
藤原さんがトリマーを始めたばかりの頃は、業界の育成システムがまだ十分に構築されておらず、技術やノウハウを感覚的に教えるのが主流だったそう。そのため、トリマーによって技術格差が出やすかったり、スキルを伸ばせず辞めていく若手トリマーが多いなどの課題がありました。
そこで、誰にでも同じクオリティでわかりやすくカット技術を伝えられるよう「サロンスキル統一トリミング」を考案。藤原さんが長年の経験で磨いた熟練のカット技術やノウハウを細かく数値化し、再現性を高めることで、トリマーによる技術のばらつきを減らせるよう工夫しています。
こうした熱心な活動の裏には、藤原さんのある思いが隠されていました。
「良いトリマーが育てば、お店にも、トリマー業界にも良い循環が生まれ、トリミングに来てくださるお客様やワンちゃんたちの笑顔につながる。そう思っています。トリマーという職業の魅力を自分より下の世代にも伝え、業界全体を盛り上げていくことが自分の使命だと感じています」
![全国のサロン経営者やトリマーに向けたセミナーや勉強会を開催する藤原さん 全国のサロン経営者やトリマーに向けたセミナーや勉強会を開催する藤原さん](https://img.wanqol.com/2023/11/61d27459-naohidefujiwara_interview_08-min.jpg?auto=format)
「犬がいない人生は考えられない」藤原さんの夢
現在は、マジックくんのほかにミニチュアシュナウザーのアンジーくんなど計6匹の「看板犬」と共に暮らし、まさに“犬まみれ”な生活を送る藤原さん。
![現在藤原さんがキャプテントリマー兼オーナーを務める店舗『Dogsalon OLLIMAGIC』 現在藤原さんがキャプテントリマー兼オーナーを務める店舗『Dogsalon OLLIMAGIC』](https://img.wanqol.com/2023/11/c542c114-naohidefujiwara_interview_09-min.jpg?auto=format)
![藤原さんの愛犬たち お店の看板犬も務める 藤原さんの愛犬たち お店の看板犬も務める](https://img.wanqol.com/2023/11/5650a021-naohidefujiwara_interview_11-min.jpg?auto=format)
サロン開業時から藤原さんのこれまでを一番近くで見守る“相棒”のような存在のマジックくんも、今や15歳。ほかのワンちゃんもシニアの年齢になりました。
そんな愛犬たちとの暮らしを通して、藤原さんの人生は大きく変わりました。
「愛犬たちとの暮らしを通して、トリマーという天職に出会いました。生涯トリマーを続けていきたいです。人生が変わる大きなきっかけをもらって、愛犬たちには感謝しかないですね」
![藤原さんの相棒、マジックくん 藤原さんの相棒、マジックくん](https://img.wanqol.com/2023/11/675a7b18-naohidefujiwara_interview_10-min.jpg?auto=format)
そんな藤原さんの夢は、店舗を全国に広げること。そして、地元・岩手にトリミングサロンやドッグラン、ドッグカフェが併設された施設をつくることだと話します。
「犬は自分だけでは気づけなかったことを教えてくれる、かけがえない存在です。犬がいない人生は考えられません。シニアになった愛犬たちとも、一分一秒でも長く、同じ時間を共有したいですね」