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ますだ動物クリニック院長、国際中医師
犬は人間と比較すると短命ではあるものの、毎日楽しく健康に暮らせていれば平均寿命を超えて長生きできるでしょう。そのためには、犬にあった適切なケアを行うことが大切です。今回は、長生きする犬の共通点や、飼い主にできること、年齢別のケアについて紹介します。愛犬が寿命を迎えるまでしあわせに暮らしてもらうための参考にしてください。
目次
- 犬の平均寿命は何歳?
- 長生きする犬の共通
- 犬が長生きするために理想的な飼育環境
- 犬の老化を示すサイン
- 犬の年齢別のお世話
- まとめ
犬の平均寿命は何歳?
ペットフード協会の調査によると、犬全体の平均寿命は14.62歳です。
2010年からの推移を見ると、犬の平均寿命はゆるやかに増加傾向にあります。これは、外飼いから室内飼いに移行したこと、ペットフードが充実したこと、病気の予防が行き届いたことなどが要因だと言われています。
また、体の大きさが小さい犬種ほど寿命が長い傾向にあります。大きさ別の犬の平均寿命は、次のとおりです。
- 超小型犬 :15.07歳
- 小型犬 :14.29歳
- 中・大型犬:13.86歳
出典:令和4年 全国犬猫飼育実態調査|全国犬猫飼育実態調査|一般社団法人ペットフード協会
犬種別の平均寿命
犬種ごとの寿命目安を紹介します。
平均寿命 |
犬種 |
15歳 |
シー・ズー |
14歳 |
チワワ |
13歳 |
ヨークシャー・テリア、マルチーズ、ポメラニアン、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンド、フレンチ・ブルドッグ |
12歳 |
スピッツ |
11歳 |
ビーグル、シェットランド・シープドッグ |
10歳 |
柴犬、ボーダー・コリー、ワイマナラー |
9歳 |
ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー |
7歳 |
グレート・デーン |
世界で一番長生きした犬は?
記録的な長寿の犬として有名なのは、ポルトガルに住むラフェイロ・ド・アレンティジョという犬種のオス「ボビ」です。2023年に31歳165日で亡くなりました。生前からギネス記録になっていたほど、規格外に長命です。飼い主のコスタさんによると長生きの秘訣は、農地や森に囲まれた穏やかな環境でリードを付けられることもなく暮らしたことや、人間と同じ食べ物を水に浸して調味料を除いた上で与えていたことだそうです。
長生きする犬の共通
寿命には個体差があるものの、いつも楽しそうにしていて、健康的な犬ほど平均寿命を超えて長生きしやすい傾向にあります。ここでは、長生きしやすい犬の共通点を紹介します。
室内で飼育している
犬を屋外で飼うと、暑さや寒さの影響を受けやすくなります。かつて日本では外飼いが一般的でしたが、近年人気のヨーロッパやアメリカ原産の国や小型犬は、寒さや暑さに弱い傾向にあります。さらに、当時よりも1年の寒暖差が激しくなっているため、健康に影響を与えているでしょう。また、ノミやダニによる感染症や、脱走による事故のリスクもあるため、基本的には室内で過ごすようにしましょう。
去勢、避妊手術を受けている
アメリカの研究によると、去勢手術を受けた犬はオスで13.8%、メスで26.3%寿命が長くなると言われています。まだ研究段階にあるため真偽は不明ではあるものの、去勢しないとオスはフェロモンによってイライラしたり、メスは発情によって体調を崩しやすくなったりする可能性があります。そうしたリスクを避けられるメリットがあるため、ぜひ手術を検討してみてください。
体重管理が適切にできている
犬は肥満になると、さまざまな病気につながりやすくなります。たとえば、循環器や呼吸器に負担がかかったり、糖尿病のリスクが増したり、免疫が低下したりなどのリスクがあります。病気によって寿命が縮まるおそれがあるため、体重管理をすることで犬の命を守れるでしょう。
また、寿命が伸びた要因の1つは、ドッグフードが発達したことだとも言われています。そのため、犬にあった種類の総合栄養食を主食として適切な量を与えることで、犬の健康を守る効果が期待できるでしょう。
毎日十分な運動量を確保している
犬は運動によって、肥満防止だけでなく、ストレスを発散する効果もあります。運動量の目安は、小型犬の場合20〜30分の散歩を1日2回ほど、中型犬・大型犬の場合は30〜60分ほどの散歩を1日2〜3回ほどです。とくに大型犬は運動量が多いので、ドッグランのように広々と遊べる場所へ定期的に連れて行くのが理想です。個体差もあるため犬種やサイズに限らず、愛犬が毎日満足しているか、しっかり観察して時間を調整しましょう。
定期検診やこまめなメンテナンスを欠かさない
動物病院での定期検診や、歯磨き、耳掃除、ブラッシングといった健康面のメンテナンスをこまめに行うことで、異変に気づきやすくなります。とくに歯周病と外耳炎、皮膚炎は犬がなりやすい病気なので、歯磨きや耳掃除の習慣が予防にもつながります。また、自宅でのメンテナンスは、愛犬とのコミュニケーションを重ねて、信頼関係を深めるためにも効果的です。
飼い主とのスキンシップが十分できている
犬は飼い主とのスキンシップが不足すると、ストレスを感じてしまい、体調に影響するおそれがあります。ブラッシングやボール遊びなど、犬と触れあう時間をしっかり確保することで、犬は心身ともに安定しやすくなるでしょう。
犬が長生きするために理想的な飼育環境
犬が長生きしやすい快適な室内環境や住環境について紹介します。
広々とした運動スペース
梅雨や真夏、真冬など、散歩に行きにくい日でも屋内に十分体を動かせるスペースがあれば、悪気候による体調不良を防ぎつつ、運動不足を解消しやすくなります。環境省が定める基準では、小型犬は1.62㎡、中型犬は3.65㎡、大型犬は7.84㎡が最低でも必要だと定められている面積です。とはいえ、広ければ広いほど犬にとって快適なため、小型犬であっても自由に動ける運動スペースを用意してあげるのがおすすめです。
清潔に保たれた床やベッド
室内飼いをしていても、犬が健康に暮らすために必要な衛生面が保てていないかもしれません。たとえば、犬の抜け毛がそのままになっていたり、排泄物や使用済みのトイレシートが放置されたりしている状態は、犬にとっても人間にとっても不衛生です。日頃から掃除をしっかり行い、誤飲誤食されそうなものは犬が届かない場所に遠ざけられるよう工夫しましょう。
鳴き声が近隣に聞こえにくい住宅構造
犬をのびのびと飼うには、近隣の理解が必要です。警戒心が強く車や来客に吠えやすい犬もいますが、そうではない犬であってもまったく吠えないケースは基本的にありません。断熱性の高い住宅構造であれば防音性も高いため、犬の鳴き声も外に漏れにくいでしょう。
犬の老化を示すサイン
犬の老化が進むと、次のような症状が見られます。
- 毛の色が薄くなってきた、白っぽくなってきた
- 鼻が乾きやすい
- 目やにが多い
- 目が白っぽくなってきた
- 聴覚や視覚が弱ってきた
- 食欲が落ちついてきた
犬の年齢別のお世話
犬は年齢によって、お世話のポイントが変わってきます。ここでは子犬期・成犬期・シニア期の3つに分けて、犬のお世話の仕方を紹介します。
子犬期(1歳未満)
子犬期は病気にかかりやすいため、動物病院の定期検診は必ず行くようにしましょう。病院への恐怖もまだ身についていない状態のため、診察に慣れさせる効果もあります。去勢や避妊も早めに検討してください。
食事は1度に食べられる量が少ないため、高栄養価で柔らかい子犬用ドッグフードを、3〜5回に分けて与えましょう。成長に応じて、少しずつドライフードに切り替えていってください。
ワクチン接種後にはお散歩デビューし、まずは外やリードに慣れるところから少しずつトレーニングしていくと、お散歩が好きな子に育つでしょう。
成犬期(1〜7歳)
成犬になったあとも、健康診断と狂犬病やフィラリアの予防接種も兼ねて、最低でも年に一度はかならず動物病院を受診しましょう。
ドッグフードは基本的には成犬用の総合栄養食を、体重によっては肥満ケア用のものを選びます。食事回数は2回にするのが一般的です。
成犬期の犬は非常に体力があるので、散歩にくわえてボール遊びや知育玩具など、体を動かす時間を多めに設けるといいでしょう。ドッグランのように、ノーリードで自由に遊べる場所に連れて行くのもおすすめです。
シニア期(8歳〜)
シニア期を迎えると、身体の調子を崩しやすくなります。日頃のケアで体調の変化に注意し、少しでも異変があれば動物病院に連れて行きましょう。
散歩でも、歳を重ねるほどペースが落ちてきます。そのため、ムリをさせないよう犬のペースに合わせて、段差や坂など足腰に負担が大きいコースは避けましょう。
また、シニア期に入ると、成犬期よりも食欲が落ちることもあります。あまりにも食いつきが悪い場合は、獣医師に相談してみてください。獣医師から、ウェットフードの総合栄養食を部分的に取り入れるようアドバイスされることもあります。
まとめ
犬の平均寿命は14.62歳で、体が大きい犬ほど寿命が短い傾向にあります。限られた時間しか一緒に過ごせない犬に長生きしてもらうためには、食事や運動を通して健康を維持することが大切です。犬がストレスを抱えずのびのびと暮らせるように、快適な住環境を用意してあげるといいでしょう。また、犬のお世話の仕方は年齢によって変わってきますので、その子にあった食事や遊びを取り入れながら、健康寿命の延長を目指してみてください。