転勤族の夫とともに、全国を転々としている。現在は東京の片隅で書店員として勤務。今年、『書店員は見た 本屋さんで起こる小さなドラマ』を上梓した。

※今回から3話にわたり、散歩中に起きたトラブルについてお伝えします。
相手のいる出来事のため、記事にするか迷いましたが、すでに解決していること、そして犬と暮らすなかで誰にでも起こりうることを踏まえ、当時の対応や反省点を振り返ることにしました。
なお、プライバシーに配慮し、実体験をもとに一部の設定や表現を再構成しています。
トラブルを未然に防ぐために、また万が一起きてしまった際に、今回の経験が少しでも参考になれば幸いです。
ウォンカの散歩は、朝晩1時間。
お天気にもよるが、運動のため、基本的に毎日真面目に歩いている。
晩年のレイルは散歩を禁じられていたので、私たち家族にとっては久しぶりに運動する日々だ。
しかも、犬同士の関係性がうまく構築出来なかったレイルと違い、ウォンカは犬付き合いが上手。レイルの時は散歩のゴールデンタイムを避け、ひっそりと散歩していたが、今は気にせず散歩に出られるとあって、ウォンカにはあっという間にたくさんの友だちが出来た。
毎日となると、散歩コースもルーティン化してくる。
平日、無理なく歩けるコースをいくつかと、休日に長く楽しめるコース。何パターンかのコースを、その日の天気や体調を考慮して歩く。
ウォンカは、とりわけ休日のコースがお気に入りで、平日でもそのルートに向かって行きたがるのだが、平日の私の時間は限られていて、残念ながら、朝晩2時間コースを歩くことは出来ぬ。ごめんよ、ウォンカ。
我が家は、歩いて数分のところに比較的大きめの公園があるのだが、休日はまずその公園を一周し、それから一駅先にある、さらに大きな公園へと向かう。
片道およそ30分。週末、そこの公園にはたくさんの犬が集っていて、大型犬の友だちもたくさんいる。
1時間ほどウォンカを遊ばせて、また30分の道のりを帰るのだ。
目次
- いつもの公園で起きた、まさかの出来事
- 「軽傷だから大丈夫」ではなかった
いつもの公園で起きた、まさかの出来事

その日、夫とふたりでウォンカを連れ、大きな公園に着くと、すでに20頭近くの先客が集まっていた。
ウォンカと一緒に近づいていくと、仲の良い子たちがわらわらと集まって来る。
ゴールデンレトリバー、ラブラドール、柴犬やミックスの和犬、ウォンカと同じ野犬出身の子も。
普段から仲良くしている子たちとワンプロをしたり、おやつをあげあったり、飼い主同士で悩みを相談し合ったり出来て、犬と暮らす者には非常にありがたいコミュニティだ。
いつものようにゴールデンレトリバーの女の子のご家族と談笑していたその時だ。
離れていた夫が近寄ってきて、「タオルか何か持ってない?」と聞く。
汗を拭きたいのだろうかと思い、大判のタオルハンカチを差し出すと、受け取る夫の手からボタボタと血が垂れていて、私は仰天した。
聞けば、同じ場にいたよその犬に噛まれたたのだと言う。
その子は、家族以外に攻撃的になってしまうタイプで、練習のためにコミュニティに加わっていたのだそうだ。
夫は、普段からするように、かがんでから犬の鼻先に手の甲を差し出したところ、思いきり噛まれたらしく、手渡したハンドタオルが瞬く間に血で染まる。
「これは……すぐ帰って消毒した方が良くない?」
夫は無言で頷き、挨拶もそこそこに私たちは急いで帰路に着いた。
「軽傷だから大丈夫」ではなかった

ここで、私たちは致命的なミスを犯したのだが、気づくのは帰宅後のこと。
帰宅して、怪我したところを洗って消毒。私は、一息ついて冷静になり、犬に噛まれた時の対処法をスマホで調べ始めたのだが……、私たち、全然きちんと対応出来ていないじゃん!
犬に噛まれたら、まずは清潔な水道水と石けんで5分以上洗うこと。すぐ病院を受診すること。
そして、相手の飼い主の連絡先を聞くこと!
犬の咬傷については、自治体の保健所などへの連絡が義務づけられていて、当事者の連絡先は必須項目なのだ。
私も夫も全く相手の連絡先のことなど気にしていなかった。動転していたこともあるし、夫は「軽傷だからいいか」と考えていたそうだ。
しかし、時間が経つにつれ増す痛みと、思ったより深そうな傷口に、不安になってきたと言う。
とにかく、とりあえず病院だ。あいにく日曜日だったため、休日診療の病院を探し連絡すると、「すぐに来るように」とのこと。
私は、夫を助手席に乗せ、車を走らせた。
あぁ、なぜ連絡先を聞かなかったのだろう。
同じ公園で散歩しているのだから、おそらく近隣に住んでいるのは間違いないはず。
明日、散歩で会った人に聞いてみたら、誰かわかるかしら……。
休日の病院の待合室は意外なほどに混み合っていて、私は診察待ちの夫を残して、駐車場へ戻った。
車の中で、ああでもないこうでもないと、スマホで調べものをしながら考えを巡らせていると、夫からメッセージ。
「注射して、これから点滴。あと、本来は縫わないほうがいいらしいんだけど、傷口が深いから縫うことになった」
何が軽傷だ!!
大ごとじゃんか!!
もーー!!
早朝の散歩から始まり、まだ午前10時。
普段の日曜日なら、これからランチにでも行こうかと話している頃なのに。
私は停車した車の中で、大きくため息をついた。











