転勤族の夫とともに、全国を転々としている。現在は東京の片隅で書店員として勤務。今年、『書店員は見た 本屋さんで起こる小さなドラマ』を上梓した。

目次
- ウォンカ、我が家へやって来た日
- 甘えん坊すぎる新入り犬の大パニック
- 「急いで行って、急いで帰る」譲渡初日の大奮闘
ウォンカ、我が家へやって来た日
ようやく秋が深まってきた11月の初旬、プニプニ改めウォンカが我が家にやって来た。
前回のお見合いの時にいらっしゃったボランティアのおふたりが一緒だ。
お見合いの時は、元気に我が家に入って来たウォンカだったが、今日は何かを察してか、警戒するような素振りを見せている。譲渡が決定してからの間に、預かりボランティアさんが心の準備を促してくれていたのかもしれない。
保護犬を迎えてからの暮らしについて、また、ウォンカの性格、普段の運動量などの説明を受け、預かりボランティアさんが帰る時間に。
ウォンカのことを夫と娘が見ている間に、私と一緒にそっと玄関を出た。ウォンカはおやつに気を取られている。
家から少し離れた場所で、ボランティアさんが「預かっていたなかでは一番の甘えん坊なので、そこが心配ですが、どうぞ末永くよろしくお願いします」と頭を下げてくださる。
「最後まで大切にします。ありがとうございました」
私も、彼女と同じように深く頭を下げた。
甘えん坊すぎる新入り犬の大パニック
ウォンカの変化は、すぐに訪れた。
夜になり、娘がテスト勉強のため自室に引き上げ、夫が単身赴任先に戻ると、リビングには私とウォンカだけになった。
猫たちは、新人の存在を警戒し、遠巻きに見ている。
ウォンカはまだ緊張しているよう。私の側にピッタリついて横になっているが、時々生あくびをする。
音にも敏感に反応するので、生活しているなかで普段から流しているラジオや音楽はかけず、静かに過ごしていたのだが、トイレに行こうと、私が席を立った途端、ウォンカはキュンキュンと鳴き声をあげ始めた。
そして、トイレのドアを閉めると、今度はオオカミのような遠吠えをくり返す。
あわわわわわわ。こりゃ落ち着いて便座に座っていることなど不可能!
あわててトイレから飛び出し、ウォンカを宥める。
「大丈夫、トイレに行っただけだよ、すぐに戻るんだよ!」
家族の誰かが視界に入っていればおとなしいのに、ひとたび視界から外れるとパニックを起こす。
隣りの部屋との間にはガラス窓があるので問題ないと思い、隣りの部屋で猫トイレの掃除をすると、気づけば、真後ろでハァハァという息遣い。あろうことか、ウォンカは猫用
ドアを破壊し、無理矢理その穴から隣りの部屋へやって来たのだ。

一時が万事その調子で、家が違う不安からか普段から入っていたというケージにも入らず、片時も私の側を離れない。
翌日は、打合せで数時間だけ家を空けることになっていたが、これでは到底出掛けられまい。と言うか、このままでは一生トイレにもお風呂にも安心して入れないよ!
私は、ひとまず私の実家に遊びに出掛けている息子を呼び戻すことにした。ブーブー言っているが、どうにもならん。
「君が帰ってこなければ、犬により家が破壊され倒壊する」と伝え、帰宅を促すも、「人と約束があるから、今日中に帰るのは無理」と言う。
「急いで行って、急いで帰る」譲渡初日の大奮闘
渋る息子に、どうにか明日の朝イチの帰宅の約束を取り付け、息子と入れ替わりで家を出ることに。頼むよ、マジで帰って来てよ! お願いだから!
ウォンカは寝る時も結局、ケージに入ることはなく、買ったばかりのソファーベッドで私と一緒に寝た。
寝ている時だけ、とてもおとなしいわね……。
さて翌朝です。
はい、そうです、その通り。
皆さまのお察し通り、息子が帰宅しません。
えぇぇぇ……どうすんの。私、出かけられるの?
あの手この手で誘導しても、やっぱりケージには入らない。「ほーら怖くないよ!」と私がケージに入り、それを外から犬が眺めるという逆転現象。
私はケージの中で大きなため息をひとつつき、決意しました。
急いで出掛けて、急いで帰ってくる。
もうそれしか方法はない!
急いで準備をして玄関から出ると、途端に聞こえ出す野太い遠吠え。
ちょうど外にいたご近所さんたちに事情を話して謝罪する。
新たに犬を迎えたことを喜んでくれたうえで「気にしないでー」「慌てないで行くのよー」「気をつけてね!」と見送ってくれるご近所さんたち。
しばらく騒がしくするだろうから、あとで、ご近所に説明に回らねば。タイミングを見てお詫びの品も買って来よう。
ひとまず今日は打合せだけして帰る!!
私は駅に向かって駆け出した。











