転勤族の夫とともに、全国を転々としている。現在は東京の片隅で書店員として勤務。今年、『書店員は見た 本屋さんで起こる小さなドラマ』を上梓した。

目次
- ウォンカと初めての帰省旅行へ
- 家族になれたと感じた特別な一泊二日
ウォンカと初めての帰省旅行へ
なぜかはよくわからないが、お利口に留守番出来るようになったウォンカ。
一番は、積み重ねた練習の成果だと思うのだが、きっかけとしてひとつ思い当たるのが、ウォンカが来て2ヶ月ほど経った頃のこと。
年末年始、家族で帰省したのである。
私と夫の出身は茨城県。ウォンカは? そう、彼も茨城県生まれなのだ。
しかし、帰省に当たって問題が発生した。
それぞれの実家にいる、猫の存在。
私の実家にいる、ヤンチャなのに臆病者のブチ猫(私が拾った)。
夫の実家にいる、おっとりしていて臆病者の茶トラ(私が拾った)。
私が拾ったのだから文句も言えないのだが、どちらの猫も来客で隠れてしまう気の小ささで、突然家に元気な大型犬がやって来たらどうなるのか、考えただけでもめまいがする。
双方の両親と話し合い、決めたスケジュールは一泊二日。
まずは夫の実家近くの犬連れOKのレストランで食事をして、私たちは海沿いにある犬歓迎のホテルに宿泊。ホテルに向かう途中、ウォンカ生誕の地に立ち寄ることとする。
ホテルライフを目一杯楽しんだ翌日は、海辺を散歩したりしてから私の実家へ向かい、お茶を飲んで帰る。
ウォンカと離れる瞬間が全くない、完璧なスケジュールだ。
ところが帰省当日、車に乗ってしばらく走っていると、ウォンカがブルブル震え出した。
ウォンカと一緒に後部座席に座っている娘が、「もしかして捨てられると思ってるんじゃない?」と言う。
「うちに来た時も1時間以上車に乗って来たから、それを覚えてるとか……?」
壊れたおもちゃのようにブルブル震えるウォンカを、みんなでなだめながら茨城県へ向かう。
途中のパーキングエリアでドッグランに立ち寄り、おやつも食べ、「元気になったね!」と、車に乗り込み、走り出してしばらくするとまた震え出す。
夫の実家近くのレストランに着いた時には、娘は励まし疲れて、ぐったりしていた。
予約したイタリアンレストランは、犬連れOKとあって、お隣りのテーブルではシュナウザーが、ペットカートにお利口さんに座っていた。
ウォンカは大丈夫だろうか。ふせをしてテーブルの下でおとなしく出来るかな?
実は、この日のために何度か自宅近くのレストランやカフェにウォンカと出かけて練習したのだ。お願いだから、いい子にしててよ!
私の心配をよそに、ウォンカは夫の両親に甘えたあとはテーブルの下でじっとしている。おやつを食べ、お水を飲み、満足したようだ。
「大変って聞いてたけど、いい子じゃないの」
義母が撫でると、ウォンカは満足気な表情。
もしかして、外面がめっちゃいいのか……?
食事を終え義両親と別れ、次に向かったのは、ウォンカ生誕の地。かつて夫が住んでいた町でもある。
夫が住んでいた家(当時すでに相当オンボロだった)は、綺麗に建て替えられていたが、元々何にもない田舎町。ウォンカが捕獲された地区の辺りも、当時とそう変わりはなく、ウォンカに「どう? 懐かしい?」と聞くと、彼は首をかしげた。
そして、とうとう今日のメインイベント!
ドッグフレンドリーなホテルへGO!
予約したのは、海沿いの町のホテル。フロントやラウンジ、レストラン、全ての場所に犬を帯同出来る上、大きなドッグランもあり、ラウンジではアルコール含めてドリンクが飲み放題。犬用のフードバーもあるし、夕食はホテル内のフレンチレストラン。部屋の窓からは太平洋が臨める。
贅沢すぎるぜ。
もちろんお値段だって贅沢なので、目一杯楽しまなければ損なのだ。
家族になれたと感じた特別な一泊二日
ホテルに到着し、ドッグランで遊び、ラウンジでおやつを食べ(私と夫は酒を飲み)、部屋に戻った時、ウォンカの顔つきが少し変わった気がした。
具体的にどう変わったかと言うと、同じ顔なのでアレなのだが、何というか幼児のような表情なのだ。
想像なのだが、このあたりでウォンカは気づいたのではないだろうか。
自分は捨てられるわけじゃなくて、ただ、ここに一緒に遊びに来たのだ、ということに。
あれが、私たちのことを家族だと認めてくれた瞬間のような気がしている。

ウォンカは、ホテルの部屋の大きなソファで存分に甘え、ドッグランでいろんな犬たちと触れ合い、フレンチレストランの犬用手作りフード(馬肉と野菜で美味しそうだった)をすごい勢いで平らげ、翌朝は太平洋の日の出を拝み、海辺を散歩し、はしゃいで過ごした。

最後に立ち寄った私の実家では、小さな甥っ子とひたすらボール遊びをして、自宅に戻る車のなかでは、ぐうぐういびきをかいて眠り、もちろんもう震えていなかった。
ウォンカが私たちを家族と認めてくれたこと、私たちが用事で家を出ても帰って来るのだと理解したことで彼は変わったのだと思う。
多大な犠牲を払ったわが家だが(リビングの壁とドア2枚が消失)、ようやく私たちは家族として一歩踏み出した。

ちなみに、あの素敵なホテルに今年も行くと、私は密かに心に決めている。
私も、たった二日の旅行が、めちゃくちゃ楽しかったのだ。











