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オールペットクリニック所属。日本獣医皮膚科学会認定医。 アメリカChi University Veterynary Food Therapyコース修了。
長く垂れた耳とたるみのある皮膚、短い脚が特徴的なバセット・ハウンドですが、バセット・ハウンドを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、オールペットクリニック所属で獣医師の五十嵐里菜先生に教えていただいた、バセット・ハウンドの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- バセット・ハウンドの歴史やルーツ、英語名は?
- バセット・ハウンドの体高や体重は?
- バセット・ハウンドの平均寿命は?
- バセット・ハウンドの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- バセット・ハウンドはどんな性格、習性?
- バセット・ハウンドを迎える際にかかる費用は?
- バセット・ハウンドのしつけと社会化トレーニングのポイント
- バセット・ハウンドに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- バセット・ハウンドを飼うのに向いている人は?
- バセット・ハウンドがかかりやすい病気と予防法は?
- バセット・ハウンドの日常のお手入れ方法
- バセット・ハウンドとの生活で注意すべきことは?
バセット・ハウンドの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | バセット・ハウンド |
英語名 | Basset Hound |
原産国 | イギリス |
分類 | 中型犬 |
グループ | 6G:嗅覚ハウンド |
バセット・ハウンドは獣を追いかけ、捕まえるのが得意な犬種です。名前に「ハウンド」が付く犬たちは猟犬を意味していて、優れた視覚と走力を持つ「視覚ハウンド」と優れた嗅覚と大きな吠え声を持つ「嗅覚ハウンド」に分かれますが、バセット・ハウンドは嗅覚ハウンドに分類されます。
バセット・ハウンドの祖先はフランスで鹿狩り用の猟犬として活躍していました。その祖先犬の中で脚の短い犬を掛け合わせるうちに生まれたのが、バセットタイプのハウンド犬だとされています。バセット・ハウンドは【英語名:Basset Hound】と書きますが、バセットは、フランス語で「低い」「低位置の」という意味の「bas」に由来しています。今から150年ほど前にイギリスに渡り、どっしりとした大型のブラッド・ハウンドと掛け合わせたことにより、今の外観を持つようになったとされています。
バセット・ハウンドの体高や体重は?
体高:約33~38cm
体重:約18~27kg
バセット・ハウンドは中型犬に分類されます。短い脚と長い胴体といった愛らしい外見ですが、体型は筋肉質でがっしりしています。
バセット・ハウンドの平均寿命は?
バセット・ハウンドの平均寿命は10~12歳とされています。バセット・ハウンドは中型犬に分類されますが、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、中型犬の平均寿命は13.4歳のため、平均から少し短いといえるでしょう。
犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
バセット・ハウンドの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
一般的な毛色は、「ブラック&ホワイト&タン」のトライカラー、あるいは「レモン&ホワイト」のバイカラーです。
トライカラーとは犬の毛色の一種で3色構成の模様を指し、バイカラーは2色で構成される模様を指します。
また、トライカラーのうちの「タン」は、渋色、黄褐色、淡い茶色など深みのある茶系の毛色をいいます。
犬の被毛はシングルコートとダブルコートに分類されますが、バセット・ハウンドの被毛はシングルコートです。紫外線などから皮膚を守るため太くしっかりとした毛が生えており、抜け毛が少ないという特徴があります。
バセット・ハウンドはどんな性格、習性?
人に懐きやすく温和な性格なので、子どもとも仲良くでき優秀な家庭犬になります。忍耐強く、やや頑固な一面があるところには、狩猟犬としてのルーツがうかがえます。嗅覚が鋭いためニオイには敏感で、気になるニオイがあると追いかけて行ってしまう一面もあります。
オスはどちらかというと甘えん坊、メスは愛想がいいといった面はありますが、特に大きな違いはありません。オスの攻撃性も相手を威嚇する程度のため、飼い主にとっては飼いやすい犬種だといえるでしょう。
バセット・ハウンドを迎える際にかかる費用は?
バセット・ハウンドを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約30~45万円 |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000~10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000~10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
バセット・ハウンドをペットショップやブリーダーから迎える際の価格の目安は、約30~45万円です。月齢や血統などにより、値段が上がることもあります。他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
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飼い続けるために必要な費用
犬を養育する上での生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。
そのほか、僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
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バセット・ハウンドを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。バセット・ハウンドはたくさんの運動量は必要ありませんが、太りやすく、関節を痛めやすい体質のため、ボール遊びなどをさせて体重管理に努めましょう。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどです。
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2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主の元へ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000~5,000円程度で、このほかに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料がかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、バセット・ハウンドを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策を取るのもおすすめです。
バセット・ハウンドのしつけと社会化トレーニングのポイント
もともと猟犬のため吠えやすく、吠え声も大きいため、集合住宅などでの飼育には配慮が必要な場合もあります。子犬の頃からいろいろな音を聞かせ周囲の刺激に慣らしておくようにしてください。
また、人懐っこく温和な性格ですが、熱中しやすく頑固な一面もあります。トレーニングはそれほど難しくありませんが、何かに熱中すると飼い主の声も耳に入らなくなることもあるので、根気よく行いましょう。
そのほか、散歩中に気になるニオイや興味がある物を追いかけることがあります。中型犬ですが体重もあって力も強いため、飼い主が引っ張られてしまうことがあります。犬が人の左側を歩き、飼い主の動きに合わせて歩く「リーダーウォーク」ができるように、子犬の時期から練習するのがおすすめです。
バセット・ハウンドに限らず、犬は初めて見るものや知らない人と出会ったとき、恐怖心と警戒心から吠えたりおびえたりすることがあります。恐怖心や警戒心が強く現れる前の子犬の時期にトレーニングすることで、社会性を身に付けられます。
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バセット・ハウンドに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:1回30分程度を1日2回
✓運動量:普通
✓おすすめの遊び:ドッグラン、ボール遊び、おもちゃ遊び、食べ物やニオイを探すノーズワーク
バセット・ハウンドのルーツは猟犬ですが、脚が短いため脚力を使って早く走るタイプの犬種ではありません。家庭犬として過ごす現代では、運動量もそれほど多くは必要ないといえるでしょう。ただし、太りやすく、関節を痛めやすい体質のため1回に30分程度の散歩を1日に2回、体重管理のためにもしっかり行ってください。また、胴長でヘルニアになりやすい傾向があるため、筋肉をつけることも大切です。
バセット・ハウンドを飼うのに向いている人は?
✓子どものいる家庭でも大丈夫
バセット・ハウンドは穏やかな性格の犬として知られているため、小さなお子さまがいるご家庭でも犬がストレスを感じにくいでしょう。また、子犬期からしっかりとトレーニングをすれば、優れた家庭犬になります。
✓しつけをきちんとできる人
バセット・ハウンドは何かに集中すると飼い主の声も耳に入らない場合があるため、トレーニングには根気が必要な場面があります。小さいうちから社会化トレーニングや、基本的なコマンドをマスターするには、飼い主の側にも忍耐強さが求められます。
バセット・ハウンドがかかりやすい病気と予防法は?
バセット・ハウンドがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓椎間板ヘルニア
胴が長く脚が短い犬種に多い病気です。背骨の椎間板が変性して神経を圧迫することで、痛みや麻痺を起こす疾患です。肥満になると背骨に負担がかかりやすくなるため、適切な食生活と運動で体重管理に気を付けましょう。
✓股関節形成不全
体の大きな犬にリスクの多い病気です。成長過程で、股関節に異常が出て痛みや歩行障害が起こります。若齢期だけでなく中〜高齢でも発症します。急激な肥満により誘発されることがあるので、体重管理を心がけましょう。
✓外耳炎
湿気が耳道にこもりやすい垂れ耳の犬種に多い病気です。原因はアレルギーや細菌性の炎症など。強いかゆみを引き起こし、頭を激しく振ったり、耳を足で激しく掻きむしったりしますが、点耳薬などで治療できます。定期的な耳掃除で予防しましょう。
✓眼の疾患
白内障や緑内障、進行性網膜萎縮症など、病気が進行すると失明する場合もあるので、定期的に眼のチェックをするようにしましょう。
そのほか、「バセットハウンド血小板障害」という血液の病気にも注意しましょう。この犬種に特有の病気で、発症すると傷口や粘膜からの血液が止まらなくなり、治療は輸血で対応することになります。場合により薬で対応することもあります。手術などに備え、あらかじめ血液凝固検査をしておくと安心です。
バセット・ハウンドの日常のお手入れ方法
✓ブラッシング:1週間に2、3回
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:必要なし
バセット・ハウンドは顔や体のしわ、垂れた耳の部分に汚れがたまりやすくなります。しわのあいだの汚れは布でこまめに拭き取って、炎症を予防してあげましょう。
ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯磨きは毎日~2日に1回、耳掃除や肛門腺絞り、爪切りは2週~1カ月に1回の頻度で行います。
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バセット・ハウンドとの生活で注意すべきことは?
バセット・ハウンドと生活する上で注意すべきポイントを紹介します。
✓マメな皮膚のチェックをしよう!
バセット・ハウンドは皮膚炎にかかりやすいため、皮膚に赤みや脱毛がないか、痒がったりしていないか、日頃から様子をチェックしておきましょう。特に顔や体のしわの間や垂れた耳の部分は炎症を起こしやすいので、気をつけてお手入れしてください。
✓湿気の多い季節は、耳のお手入れをいつもより念入りに!
垂れ耳の犬種は、梅雨時期から夏にかけて耳や皮膚のトラブルが増えます。耳の色やニオイ、耳垢の様子をこまめにチェックしましょう。ただし、過度な耳掃除は耳を傷つける恐れがあります。かかりつけの動物病院でケアしてもらうと安心です。
✓暑さに注意!
バセット・ハウンドは暑さに弱い犬種です。夏の暑さで熱中症のリスクが高くなります。散歩は朝夕の涼しい時間に行うようにし、地面が熱くなる時間帯は避けてください。エアコンなどで温度調整できる室内で飼いましょう。