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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
愛犬の日々の様子を見て、触れていて気づく、ちょっとした変化やトラブル。その原因はさまざまに考えられますが、何か病気が原因の症状かもしれません。オーナーが犬のお腹を触ると嫌がるときに考えられる原因や病気についてご説明します。
目次
- 犬はお腹のトラブルを抱えがち
- お腹の皮膚に傷ややけどを負った可能性も
- 犬が腹痛を起こしている時に考えられる病気は?
- 考えられる主な原因
- 犬の体型と年齢別に考えられる主な原因
犬はお腹のトラブルを抱えがち
お腹を触られるのを犬が嫌がるときは、ケガまたは腹痛を起こしている可能性が高く、いろいろな病気が考えられます。元気がなく動こうとせず、背中を丸めてじっとしているときは、お腹の痛みを抑えようとしている姿勢であることが多いです。他にも、痛みをごまかそうとしてウロウロ歩いたり、冷えた場所に行きうずくまるという行動とることもあります。
お腹の痛みを感じているときの犬は、しっぽが垂れ下がりながら歩くのが特徴です。また、犬は食欲旺盛な子が多いもの。あまりごはんを食べようとしない、食事の際も嬉しそうでないというときは腹痛の可能性を疑ってみてください。
お腹の皮膚に傷ややけどを負った可能性も
下痢などは腹痛のわかりやすいサインですが、腹痛は突然引き起こされることが多く、外見だけではなかなか判別ができないこともあります。また、触られるのを嫌がるといったケースで、このような不調が発覚することもあるため、普段からしっかりと犬を見るだけでなく触って、様子をチェックしてあげるようにしましょう。
犬が体に痛みを感じていそうなときは、まず外見からチェックするようにし、被毛や皮膚にトラブルはないかを確認しましょう。被毛自体が痛みを引き起こすことはありませんが、皮膚に傷や炎症はないか、やけどをしていないかなどを確認します。もしも外傷が見つかった場合は、病院で相談してください。
犬が腹痛を起こしている時に考えられる病気は?
腹痛を抱える犬に老若男女・体の大小を問わず、どんな子でも可能性がある病気は急性胃腸炎です。症状としては嘔吐や下痢、食欲不振などが挙げられます。時には血便が出たり、吐血したりするケースもあるでしょう。さらに、小型犬かつ成犬によく見られる急性出血性胃腸炎というパターンも考えられます。こちらは腹痛以外に赤い液状の便、ジャム状の下痢などが特徴です。
中毒症状なども犬種を問わずよくある病気です。体質に合わないものや中毒を起こす食べ物を口にした際に、嘔吐や腹痛、下痢の他、けいれんなどが起こります。最悪の場合、死につながる危険性も。
小型犬に多いのは急性膵炎、幼犬に多いのはパルボウイルス感染症、犬コロナウイルス、犬ヘルペス感染症、犬鉤虫症などです。大型犬は胃捻転に注意するようにしましょう。ただし、これらは症状が出やすい犬の傾向にすぎません。「大型犬だから急性膵炎にかからない」などということはないので、おかしいと思ったらすぐに病院で相談するようにしてください。
考えられる主な原因
犬がお腹を触れるのを嫌がる場合に考えられる主な病気や原因をご紹介します。あくまでも主要なものなので、他にも気になることがあればかかりつけの病院でご相談ください。
【考えられる主な外傷】
・怪我、やけど、内臓にダメージを受けたことによるもの
散歩中にお腹を切った、やけどをした(夏場のアスファルトなど)、ジャンプした際に着地を失敗し内臓が破裂した、階段から落ち、お腹に衝撃を受けたことなどが原因となることが多い。
【考えられる主な病気】
・急性胃腸炎
腹痛、嘔吐、下痢など。
・急性出血性胃腸炎
腹痛、赤い液状の便、ジャム状の下痢など。
・中毒症状
腹痛、嘔吐、下痢、けいれんなど。
・急性膵炎
腹痛・嘔吐・下痢など。小型犬に多いとされる。
・胃捻転
腹痛、食後3時間以内に苦しそうにする、嘔吐しようとするも吐けない。大型犬に多く見られる。
・パルボウイルス感染症
嘔吐や下痢など。犬種にかかわらず免疫のない幼犬が重症化しやすい。1~2日で死に至るケースもある。定期的なワクチン接種が必須。
・犬コロナウイルス
腹痛、下痢、嘔吐など。幼犬・成犬ともにかかる可能性はあるが、成犬は無症状または軽症で終わることがほとんど。パルボウイルスと同時にかかると死につながりかねない。
・犬ヘルペス感染症
腹痛、下痢など。主に生後4週間以内の幼犬が発症。
・犬鉤虫症
腹痛・下痢など。犬種に関係なく幼犬・成犬ともに発症する可能性はあるが成犬は幼犬ほど重症化せず、貧血になったり毛艶が悪くなったり体重が減ったりするものの、腹痛はない。
【他にも考えられる病気】
心筋症、腹水、肝臓病、胃拡張、尿石症、膀胱麻痺、嚢胞腎、水腎症、腫瘍性の疾患(肝臓腫瘍、膵臓腫瘍)、腹腔内腫瘍、リンパ管拡張症、腹膜炎、先天性心疾患、鎖肛など。
犬の体型と年齢別に考えられる主な原因
犬がお腹を触れるのを嫌がる場合、体型や年齢別に考えられる主な原因をご紹介します。これ以外の病気にはかからないということはないので、少しでも気になることがあれば病院で相談してください。
●小型犬 ・ 幼犬
急性胃腸炎、中毒症状、急性膵炎、パルボウイルス感染症、犬ヘルペス感染症、犬鉤虫症(甚急性型、急性型)、犬コロナウイルスなど。
●中型犬 ・ 幼犬
急性胃腸炎、中毒症状、パルボウイルス感染症、犬ヘルペス感染症、犬鉤虫症(甚急性型、急性型)、犬コロナウイルスなど。
●大型犬 ・ 幼犬
急性胃腸炎、中毒症状、パルボウイルス感染症、犬ヘルペス感染症、犬鉤虫症(甚急性型、急性型)、犬コロナウイルスなど。
●小型犬 ・ 成犬
急性胃腸炎、中毒症状、急性膵炎、犬鉤虫症(慢性型)、急性出血性胃腸炎など。
●中型犬 ・ 成犬
急性胃腸炎、中毒症状、犬鉤虫症(慢性型)など。
●大型犬 ・ 成犬
急性胃腸炎、中毒症状、犬鉤虫症(慢性型)、胃捻転など。
●小型犬 ・ シニア犬
急性胃腸炎、中毒症状、急性膵炎など。
●中型犬 ・ シニア犬
急性胃腸炎、中毒症状など。
●大型犬 ・ シニア犬
急性胃腸炎、中毒症状など。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。