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紫派藤間流の初代家元を祖母に持ち、幼少期から日本舞踊の稽古に励む。弱冠9歳にして初舞台を踏み、2021年3月に初代・藤間翔を襲名。
ワンちゃんと一緒に訪れられる“愛犬家の行きつけ”を巡りながら、愛犬と飼い主の関係性やライフスタイルにフォーカス。登場するのは、日本舞踊家の藤間翔さんとフレンチブルドッグの晴男くん。ふたりの行きつけは、東京・国立市の『倶楽部 六六食房』です。
目次
- フレブル晴男のいるところには、いつも晴れやかな風が吹く
- 張り詰めた心をほぐす、フレブルこその“ぶさかわ”
- 愛犬同伴も歓迎。国立のダイニングバー『倶楽部 六六食房』
- 犬連れOKの場所が増えたなら、夢は日本一周
フレブル晴男のいるところには、いつも晴れやかな風が吹く
「伝統にかかわる仕事をしていると、緊張する場面も少なくありません。でも、この愛嬌たっぷりの顔に迎えられると、疲れもプレッシャーも一気に吹き飛ぶんです。“気張りすぎなくていいよ。俺の気ままさを見てみなよ”って、言われている気がして」
フレンチブルドッグを飼う人なら、共感するに違いありません。愛嬌に満ちた鼻ぺちゃの顔立ちに、人懐っこく甘えん坊な性格。日本舞踊の流派、紫派藤間流の初代家元を祖母に持ち、自身も舞踊家として活動する藤間翔さんもまた、フレンチブルドッグの存在は、生活に欠かすことのできない癒しであるとおっしゃいます。
「名前は晴男。今年の夏に11歳になります。名付け親は、僕の父です。うちの親父は雨男。カーレースが趣味なのに、大事なレースの日は雨のことが多くて。“愛犬と一緒の日は晴れる、晴れてくれ”。晴男という名前はそのまま、父の切なる願いです(笑)」
晴男くんが藤間家の一員になったのは、今から10年ほど前のこと。以来、晴男くんと共に出陣するレースは大方が晴れ。晴男くんは名前にふさわしく晴天をもたらし、その存在をもってして、藤間家に晴れやかな風を吹かせています。
張り詰めた心をほぐす、フレブルこその“ぶさかわ”
「晴男を見つけてきたのも親父でした。愛嬌たっぷりの顔にやられたんでしょうね。それは僕も一緒。ひと目見た瞬間に“お前、かわいいな。うち来るか?”って、声が出ていましたから(笑)。10年経っても愛くるしさは変わらず、実家を出た今も晴男に会うため、よく帰っています。晴男がいないと、僕の生活は成り立ちません」
藤間さんは幼少期から日本舞踊の稽古に励み、初舞台を踏んだのは弱冠9歳のときでした。しかも、その舞台はかの歌舞伎座。初舞台から約20年。家元の地位は俳優としても脚光を浴びる妹の爽子さんが継承し、ご自身は2021年2月に初代・藤間翔を襲名しました。
「日本舞踊には“ちんとんしゃん”に代表される、独特の感性があります。舞踏家の家系に生まれた以上、この独特の感性を若い人にも伝えていきたい。そのためには、縁の下の力持ちが必要です。妹が家元として表に立ち、僕は内側から屋台骨を支える。若い感性に訴えるには、どんな挑戦が必要なのか。いつも、そんなことばかり考えています」
伝統芸能の世界は華やかな一方、厳かでもあります。藤間さんは「ピリッと緊張感のある現場に立ち会うことも多くて」と話し、その張り詰めた心をほぐしてくれるのが、ほかでもない晴男くんであるとおっしゃいます。だからこそ、藤間さんの生活に晴男くんの存在は欠かせません。
「フレンチブルドッグって鼻ぺちゃで、頬は垂れ下がっていて、いわゆる“ぶさかわ”。でも、そこがいいんです。こうした顔立ちだからですよね、とにかく表情豊か。晴男が居眠りをしている姿を見るだけでも、本当に癒されます。お腹を出したまま、白目をむいて寝ていることもあって(笑)。その無防備さに、自分の心も和らぎます」
愛犬同伴も歓迎。国立のダイニングバー『倶楽部 六六食房』
藤間さんは日本舞踊を後世に伝える担い手として舞台に立ち、お弟子さんに稽古をつけ、劇団の講師として所作の指導に励み、さらには裏方仕事にも精を出します。
そうしためまぐるしい生活のなか、時間を見つけては犬同伴で訪れるのが、東京・国立市の学園通りに佇む『倶楽部 六六食房』。ここはピンクに塗装された外壁が目を引く、隠れ家のようなダイニングバーです。
「店主の是枝さんは、車好きには有名な人物。日本最古の自動車倶楽部として知られている『Automobile Club Japan』の会長さんです。僕も、うちの親父も車好き。確か、僕が中学生のころだったかな。是枝さんと親父が意気投合して以来、ここは藤間家の行きつけです」
藤間家の行きつけとあれば、『倶楽部 六六食房』は晴男くんの行きつけでもあります。しかも、さすがは車好きの聖地。藤間さんは愛車であるクラシックカーの助手席に晴男くんを乗せ、ドライブの途中に立ち寄るのが定番だとか。
「フレンチブルドッグのルーツは闘犬にありますよね。いつもは甘えん坊の晴男にも、その血が受け継がれています。車に乗せると闘犬の血が騒ぎ出すのか、戦車にでも乗ったような感じ(笑)。車の窓が曇るくらいに息が荒くなって、ちょっと大きな車を見ると吠える吠える。たまにヒヤヒヤしつつも、闘志むき出しの晴男もかわいいんです」
犬連れOKの場所が増えたなら、夢は日本一周
国立界隈はペット連れの人が多く、『倶楽部 六六食房』もワンちゃんは大歓迎。しかし、店先に“ペット連れOK”の表示はなく、その姿勢はあくまでもフラットでした。
店主の是枝さんいわく、「ペット連れにいいも悪いもないじゃないですか。お客さんがペットを連れていたなら、そのままお迎えするだけ」その自然さが心地よさにつながっています。
「晴男のことも自然と受け入れていただいて、僕が食事をするかたわら晴男がペットフードを食べるのも、ここでは当たり前の光景です。晴男は家に置いてけぼりにされるのを嫌うから、ここへも何度も一緒に来ています。それだけに晴男もリラックス。僕が食事をしていると“俺にもくれ”って、僕の股の間に入り込んできたりして(笑)」
『倶楽部 六六食房』のように、ワンちゃん連れ歓迎の飲食店が増えつつある昨今。藤間さんは「こんな場所が、もっと増えたらいいですよね」とおっしゃいます。晴男くんは全く車酔いせず、5時間、6時間の長距離移動もなんのその、だそう。ワンちゃん連れOKの場所が増えたなら、一緒に出かけられる場所もさらに増えます。
「父の影響もあって、僕も車好き。晴男も車好き。欲を言うなら、晴男と一緒に全国をドライブして回りたいくらいです。飲食店だけでなく、ペット連れOKのホテルも増えたなら、全国を回ることも夢じゃないですよね。でも、晴男もそろそろ老犬の領域。体の調子も見ながら、晴男と一緒に日本各地を旅するのが夢ですね」
藤間さんの夢は、多くの愛犬家の夢でもあるでしょう。そして、藤間さんは晴男くんに癒されては日本舞踊と向き合い、伝統を後世に伝えるための挑戦を続ける。藤間さんと晴男くんの夢の実現も、藤間さんが切り拓く日本舞踊のこれからも、どちらも覗きたくなりますね。