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手品ファンの欲求を“驚く”から“驚かせる”に変えた、世界屈指の手品グッズメーカー「テンヨー」
ハンズの手品コーナーには人々を「あっ!」と驚かせるグッズが並ぶが、実はその大半が、1960年創業の手品メーカー「テンヨー」の商品。開発部の小宮賢一氏・佐藤総氏にお話を伺うと、テンヨーの深すぎる歴史と、手品の奥深すぎる妙までもが明らかに。
300以上もの手品グッズを開発してきた世界的メーカー
時代の流行り廃りに動じることなく、根強い人気を誇る「手品グッズ」。ハンズの手品コーナーには誰もが簡単に披露でき、見る人を「あっ!」と言わせるグッズが並んでいる。バラエティに富んだ商品が数多く展開されているが、売場の大半を占めているのは、実はとあるメーカーの商品だ。
そのメーカーとは、手品業界では世界に名前を知られる株式会社テンヨー。
テンヨーの手品グッズは、手品を覚えたてのキッズにも、手品を趣味として突き詰めるマニアにも、さらには人々を手品の魅力に引き込むプロのマジジャンにも愛され、創業から60年以上が経った今も毎年のように新作を世に送り出している。
国内外に手品グッズの開発メーカーは数あれど、一年ごとに欠かさず新作を発表している企業は稀だ。日本ではテンヨーが唯一と言っても過言ではない。その証として、これまでに手がけた手品グッズは300種類を超える。
テンヨーは、人々を「あっ!」と驚かせる手品グッズをいかにして生み出しているのか。人の心を捉える手品グッズには、どのような共通点があるのか──。それらを探るべく、テンヨーの開発部に身を置く小宮賢一氏・佐藤総氏の元を訪ねた。
始まりは“マジックの民主化”を拓いた天洋奇術研究所
手品グッズ界の雄であるテンヨー。創業は1960年であるものの、母体となる組織が誕生したのは1931年にまでさかのぼる。1904年(明治37年)に生まれ、大正から昭和にかけて活躍した奇術師・松旭斎天洋が「天洋奇術研究所」を設立したことから、その歴史は始まる。
奇術師とは、今で言うところのマジシャン。松旭斎天洋は奇術の一座を率いて各地を巡り、当時の観衆たちを大いに沸かせた。
天洋奇術研究所を設立した松旭斎天洋は、日本橋三越本店に売場を設け、それまではいわば門外不出だった手品のタネを仕込んだグッズを実演販売した。その実演は見る人を「あっ!」と驚かせ、同時に「自分も人をあっと驚かせてみたい!」という気持ちを掻き立てた。
佐藤氏
それから時が経ち、1960年のこと。松旭斎天洋の六男である山田昭が組織を法人化しました。以来、実演販売を続けながら手品グッズの開発にもより力を注ぎ、皆さんを驚かせ、楽しませられる商品をお届けしています。
かのMr.マリックも、テンヨーの手品グッズを実演販売していた
かつて百貨店の玩具売り場では、手品グッズの実演販売は人だかりのできる人気イベントのひとつ。ライフスタイルの変化に伴いあまり目にすることはなくなったが、ハンズ名古屋店では土・日曜を中心に、今も実演販売を行っている。お店に足を運びさえすれば、手練のプロマジシャンの手品を目の前で拝めるのだ。
小宮氏
テンヨーは創業時より、一般の方に広くマジックの楽しさを知っていただくため、実演販売を大切にしてきました。マジックグッズの実演販売をする人のことを「ディーラー」と呼びますが、かのMr.マリックさんも、かつてはテンヨーのディーラーとして活躍された一人です。
Mr.マリックといえば、「きてます、きてます」のフレーズとともに超魔術と称したマジックを披露し、平成初頭に起きた手品ブームを牽引した人物。今も第一線で活躍を続け、最近では「4K映像でもタネを見破れない手品」が話題を呼んでいる。
Mr.マリックを筆頭に、時代ごとにアイコニックなプロマジシャンが現れては一大ムーブメントが巻き起こる手品の世界。私たち観衆はマジックの不思議さに驚くのと同時に、なぜそのような不思議が起こるのか、その隠された仕掛けにも興味をかき立てられる。
しかし、多くの人は知らない。驚きの手品を披露するマジシャンがいる一方、驚きの根っこにあるタネを生み出している「クリエイター」という人たちが存在することを。そう、手品には作り手がいるのだ。
手品を披露するマジシャンと、手品を作り出すクリエイター
佐藤氏
手品を考案し、考案した手品を販売する人のことを「マジッククリエイター」と呼びます。多くの場合、マジシャンはクリエイターが考案した手品のアイデアを購入したり書籍で学んだりして、その見せ方を独自に磨き上げ、より不思議に見せているのです。
手品を自分で考案していないからといって、マジシャンを決して侮ってはいけない。マジシャンAとマジシャンBが、同一のクリエイターが考案した同一の手品を披露したとしても、それぞれの見せ方によってまったく違う手品に見えることがあるからだ。
同一の手品をロジカルに見せるのか、それともエンターテインメント性を重視するのか。マジシャン自身の技術はもちろん、その人が持つキャラクターや話芸によっても、その手品のどこに不思議があるのか、見え方が見事なまでに変化する。
今はテンヨーの開発部に身を置く佐藤氏も、かつては会社員として働きながらマジックの創作を続けていた一人。幼少期にカードマジックに魅了されるも、彼を惹きつけたのは手品を披露することではなく、手品を考案することだった。
佐藤氏は数々のカードマジックを編み出し、オリジナルの手品集まで上梓。それがテンヨーの目に留まり、開発者としてヘッドハンティングされたのだ。
一方の小宮氏は、ディーラーの経験を持つ開発者だ。誰もが簡単に披露できるのに、そのタネは一向に見破れない──子どもの頃から、そんなテンヨーの手品グッズに魅了されるとともに、そのようなグッズを考える人たちに憧れを抱くようになった。
実演販売のアルバイトを、なんと中学3年生から始めて、大学卒業後にプロディーラーとしてデビュー。そしてこの20年は、念願だった開発者としてその手腕を発揮している。
ポケットに収まり、誰にでもすぐにでき、タネを見抜かれない
テンヨーは、手品を披露する立場の視点も、手品を考案する立場の視点も熟知している。ディーラーの過去を持つ小宮氏、クリエイターの過去を持つ佐藤氏を筆頭に、新たな手品グッズの開発に勤しんでいるが、彼らが目標とする理想形のひとつがこの商品だ。
小宮氏
1972年に発売した『ダイナミックコイン』です。空っぽの容器から100円玉が現れ、通り抜け、消える。こうした不思議なアイテムがポケットに収まり、誰にでもすぐにでき、見る人に渡してもタネを見抜かれることはありません。
テンヨーが掲げる「理想の手品グッズの条件」とは、ポケットに収まり、誰にでもすぐにでき、見る人にタネがわからないこと。これら3つの条件を高レベルに網羅した『ダイナミックコイン』は、発売から半世紀が経った現在も同社のトップセールスを誇る。
そして、2023年に発売された『ミスターデンジャー』もまた、テンヨーが掲げる理想形の条件を高度に満たす。先述のとおり、こちらの開発者は佐藤氏。ステージ上でダイナミックに披露される剣刺しマジックが、誰にでも簡単に、手元でできるのだ。
佐藤氏
新たな手品グッズを考案しようと頭を悩ませていたところ、棺桶に収まった人がめった刺しにされている、不気味な光景が頭をよぎりました。同時に、刺されたはずの人形が無傷で取り出せるトリックも、おぼろげながら思い浮かんだ。しかし、実際には当初の構想とはまったく異なるタネに帰着した商品です。
つまり手品の考案は、必ずしもタネ作りから始まるわけではない。ふと思い浮かんだ光景から手品が生まれることもあれば、日常のちょっとした違和感から新たなトリックが導き出されることもあり、そこに決まったセオリーは存在しないのだ。
研究対象にされるほど。テンヨーのグッズは手品界の誇り
それでもテンヨーは毎年のように4・5点もの新作を発表し、さらには『ワールドグレイテストマジック』と題した手品グッズをシリーズ化。これは、世界各国のクリエイターが考案した手品をテンヨーが商品化し、より世間に広めるための取り組みだ。
2024年の新作は、日本人クリエイターが考案した『ショッキングパスケース』(考案:Yuji Enei/将魔)。パスケースを指で弾くと、ケースに収めていた白い紙がお札に変わったり、真っ白だったはずのカードが名刺に変身したり……。発売直後から人気が沸騰しているが、世界のクリエイターにとって、テンヨーに商品化されることは誇りでもある。
小宮氏
ありがたいことに私たちテンヨーは、世界中の手品愛好家から評価をいただいています。例えば、この百科事典のような分厚い書籍。これはテンヨーが発表してきた歴代の手品グッズを、海外のマジック研究家がまとめあげて米国で出版したもの。開発者のプロフィールから手品の概要、開発の背景からより発展的な見せ方まで網羅されています。
小宮氏も佐藤氏も、世界から注がれる熱視線を後押しに次なる新作の考案に挑むが、それだけではない。テンヨーは手品グッズのみならず、ジグソーパズルから知育玩具まで、人々を「あっ!」と言わせるさまざまな商品を世に送り出している。
手品グッズもパズルも玩具も、根底にあるのは「サプライズ」
その一例が1971年に発売された『シーモンキー』だ。シーモンキーとは、アルテミアと呼ばれる甲殻類の一種。商品に付属した粉によって水道水を浄化し、浄化した水にシーモンキーの卵を入れてかき混ぜると、一瞬で孵化する。その不思議さから昭和の時代に一世を風靡し、多くの小学生たちがシーモンキーの飼育に夢中になった。
また、テンヨーでは1973年にジグソーパズルの輸入を開始し、国産品の定着に寄与。世界に名だたるキャラクターともタッグを組み、色鮮やかな絵柄のジグソーパズルのほか、プラモデルさながらに立体的な『メタリック ナノパズル』も手がけている。
小宮氏
たしかに私たちは、さまざまな商品をお届けしています。しかし、すべての商品の根底にあるのが、「皆さんを驚かせたい」というサプライズの気持ち。一世を風靡した『シーモンキー』にも、実は手品のトリックが応用されていました。
何をもってして、人は驚くのか──。
サプライズの感覚は時代によって変わっていくものだが、テンヨーはその変化も見逃さない。Windows95が発売された直後にはコンピューターが手品を演じるソフトウェアを、iPhoneの発売直後には手品アプリをリリース。さらにはスマートフォンのカメラを用いた、美しくも驚きのしかけが施されたジグソーパズル『フラッシュマジック』シリーズも人気を博している。
新作の衝撃と、古典の力強さと──手品は時代を経ても色褪せない
デジタル機器はもちろん、インターネットが一般化した現代はSNSの時代。そうした今、テンヨーは新たな試みとしてSNSを活用したプロモーションに踏み出している。
なかでもYouTubeショートに投稿された『ミスターデンジャー』の動画は約960万回も再生されている(2024年5月時点)。
佐藤氏
言うまでもなくSNSの拡散力はすさまじく、従来型のプロモーションとは比にならないほどの効果を期待できます。しかも、秀逸な手品は時代が移り変わっても廃れません。むしろ多くの方から愛され、長く残り続けている手品こそ、初めて見る人を「あっ!」と驚かせます。SNSの拡散力が、古典の力強さを証明するはずです。
テンヨーが誇る古典的な手品グッズのひとつが、先に紹介した『ダイナミックコイン』。1973年の発売以来、長く愛され続けるこの商品の動画も414万再生を記録し、5.7万個の「いいね!」と700に迫るほどのコメントが寄せられている(2024年5月時点)。
秀逸な古典マジックがどれだけ最注目されたからといって、テンヨーが新たな手品グッズの開発をやめることはないだろう。この姿勢が新たなサプライズをもたらし、人々を驚かせるのと同時に、人を驚かせたいという気持ちを掻き立てるのだ。
小宮氏
マジックの興行は、明治時代には大変な人気でした。現代と大きく違うのが、手品は“見る”ものであり“見せる”ものではなかったということ。手品を見せるのは奇術師の仕事であり、一般の人にとっては、自身でやってみせるという類のものではありませんでした。そうした慣習を塗り替えたのが、テンヨーの前身である天洋奇術研究所です。