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秘境系旅行会社に勤め、海外を飛び回ったり、インドで駐在したりしたのち、2016年4月青森県十和田市に移住。現在は看板犬2匹と『民宿南部屋』を経営している。
青森県十和田市の温泉宿『民宿南部屋』を営む田村暁さんと、2匹の看板犬とのくらしとは?
目次
- 看板犬の雑種・リュックとラブラドール(推定)・クララと暮らす田村暁さん
- お客さんを見送る、哀愁漂う犬の背中が話題となった温泉宿『民宿南部屋』
- 先代犬・ネロくんとの別れ「もう二度とペットは飼えない」
- 「保健所にいる犬の命を救いたい」殺処分直前に引き取ったリュック
- ブリーダーの飼育放棄? 山の中で餓死寸前だったクララ
- お互い知らないことを教え合う。愛犬の仲の良さに救われる
- 責任・覚悟・犠牲・お金の負担に勝る、愛犬たちがくれる幸せ
看板犬の雑種・リュックとラブラドール(推定)・クララと暮らす田村暁さん
帰っていくお客さんの姿を寂しそうに見送る、2匹の看板犬を写したSNS投稿が「こんな姿見たら帰れない!」と犬好きで話題となりました。
これは青森県十和田市奥瀬にある源泉かけ流しの小さな温泉民宿、『民宿南部屋(なんぶや)』の宿主・田村暁さんによって投稿されたものです。
田村さんは雑種の男の子「リュックさん」とラブラドール(推定)の女の子「クララさん」2匹の飼い主でもあります。
「なぜだか自分でも良く分からないのですが、普段からふたりのことを『さん』付けで呼んでいるんです(笑)」と田村さん。
田村さんは2016年に前職を辞め、埼玉から青森へ移住し『民宿南部屋』を開業しました。保護犬のリュックさんとクララさんも、引越しや開業準備で忙しいなかで、迎えています。
前職を辞め、移住・開業という人生での一大決心のタイミングで、保護犬を迎えることとなった理由とは? また、お客さんのことが大好きな2匹とのくらしを聞いてみました。
お客さんを見送る、哀愁漂う犬の背中が話題となった温泉宿『民宿南部屋』
温泉宿の入り口から名残惜しそうにお客さんを見送る姿で一躍有名となったのが、リュックさんとクララさんです。
2匹は、もともと宿の看板犬ではありませんでした。
宿主の田村さんは、ワンちゃんが苦手なお客さんにも配慮し、最初は2匹をお客さんが使うスペースに足を踏み入れさせていなかったからです。しかし、常連のお客さんや日帰り入浴に来る地元の人たちに2匹の存在が知られ、だんだんと玄関でお客さんと交流するようになりました。
田村さんと一緒にお座りをしてお見送りをするうちに「私が何も言わなくても自然と2匹ともお座りして見送るようになったんです」と田村さんはいいます。
とはいっても、2匹には「看板犬」という自覚があるのではなく、遊んでくれたり、おやつをくれるお客さんに帰らないでほしい一心がこの背中に現れているのだ、と田村さんはいいます。
「お客さんが好きすぎて、いまでもたまに一緒に帰ろうとすることがあります(笑)」
『民宿南部屋』は田村さんが一人で切り盛りしており、基本的にリュックさんとクララさんは宿裏の住居スペースにいるため、必ず2匹に会えるわけではありません。しかし最近では、2匹に会いたいがために訪れるお客さんも増えたのだそう。
リュックさんとクララさんに触れ合うことで、亡くなった愛犬との思い出を涙ながらに話すお客さんもいるといいます。
「ピッタリ蓋をしていた心の一部が、旅先でふたりを撫でることによって解放されるみたいです。感情があふれでたように思い出話をされるお客さんが多いです」
田村さんもかつて愛犬を亡くした経験があります。
「亡き愛犬を想う気持ちは痛いほどわかりますし、お客さんの気持ちの整理にふたりがお役に立てるのであれば、こんなにありがたいことはないですよ」
最初は少し緊張した面持ちでやってきたお客さんも、2匹と遊んだり撫でたりしているうちに、表情が柔らかくなっていきます。2匹がいるおかげで、お客さんの本音がぽろっとこぼれたり、素顔を垣間見ることができる。田村さんとお客さんが話をし、心を通わせるきっかけになっているようです。